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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第10章【超決戦! シャイニーフェニックスVSヤーバン・ジーン!!】

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第66話 ヤーバン再び、ここからは私の戦いです!

 さて、どうしたものか……。

 あまりやる気があるとは思ない攻撃を仕掛けてくる敵怪人をエクスブレードで切り裂きながら、俺――シュナイダーは考える。

 戦いが始まってからどれだけの時間が過ぎたのだろう?

 感覚としては、もう何十時間も戦っているような気がするが、実際は1時間も経っていないはずだ。

 異次元空間とはいえ、時間の概念はある。あの黒い太陽は未だ沈まずあたりは陽光に照らされているのだから。

 ともかく、そんな風に時間感覚が狂ってしまうほど、無数の敵を倒しているのだが、一向に敵が尽きる気配も、ヤーバンが出てくる気配もなかった。

 俺は僅かに焦りを感じていた。その理由は、体力とSPスーツのエネルギーの消耗が思ったよりも激しいことにあった。

 俺たち宇宙戦士の纏うSPスーツは自然エネルギーを吸収し、自らの力に変換する機能を有している。

 だから、半永久的に活動可能なのだが、それはあくまで日常生活程度の動きをしている場合の話だ、激しく動き回れば、当然その分だけエネルギーを消費することになるわけで……つまり今のように戦闘を続けていればいずれ限界が来るということだ。

 ましてやここは異次元空間、空間同調能力によってこの空間でも問題なく戦えるようアジャストされているのだが、それの維持だけでも結構なエネルギーを消費しているのだ。

 果たしてヤーバンが出てくるまでに持つかどうか……?

 ヤーバンとの戦いは約束通りシャイニーフェニックスに任せるつもりなので、俺はエネルギーが尽きるまで暴れてもいいのだが、万が一のためにもシャイニーフェニックスを連れてこの場から離脱できるぐらいのエネルギーは残しておきたい。

 戦闘中にも関わらずそんな風に考え事をしていたせいか、それともやはり体力低下の影響か、ガンと激しい衝撃が俺の頭部を襲う。

 見ると、一体の怪人が俺の頬に一撃を食らわせたところだった。

 腹の立つ顔で笑うそいつをすぐさま殴り飛ばす俺だったが、モロに食らった一撃のせいで頭がクラクラとして思わずよろけてしまう。

「シュナイダーさん!」

 シャイニーフェニックスの悲痛な叫び声が聞こえてくる。

 なんて声出してるんだよ、シャイニーフェニックス……ヒーロー物が好きな君ならわかるだろ? これはただのピンチの演出だよ……だから、気にするな、君はヤーバンが出てきたときに備えエネルギーを温存しておくんだ……。

 心の中で彼女に語り掛け、俺は頭を振ると怪人軍団に視線を向けて叫ぶ。

「なかなかやるじゃないか。だが、隙を突いた一撃でこの程度ではお前らでは俺を倒すことなど一生かかっても無理だな!」

 そう挑発気味に言ってやれば、案の定奴らはいきり立って襲い掛かって来た。よし、いいぞ、狙い通りだ……。

 正直冷静に連携して攻撃される方が厄介だからな……怒りは強い力を生むが、戦いにおいては必ずしもプラスに働くとは限らないのだ。むしろ冷静さを失った奴ほど御しやすいものはないのだから。

「うおおおお!」

 先ほどのダメージなどまさに演技だとばかりに猛々しく戦う俺に、シャイニーフェニックスは安堵したように笑顔を見せる。

 その様子をチラリと伺いながら俺もまた安堵する。

 苦戦した様子を彼女に見せてしまうと、飛び出してきかねないからな……無理にでも楽勝ムードを演出しておかなければ……。

 しかし……と俺はもう一度だけシャイニーフェニックスに視線をやった。その瞳はキラキラ輝いている、『ヒーロー』の活躍に胸を躍らせているのだろう。

 なんというか、実に胸に来るものがあるな。

 俺は宇宙戦士として今まで多くの戦いを潜り抜けてきた、様々な星も救い、そこで賞賛を受けたり、上司や後輩たちからも信頼され頼られる存在となりつつあったのだ。

 だが、シャイニーフェニックス……みうちゃんとそれらの人々には大きな違いがある。

 それは、彼女は俺が見出し、宇宙戦士に任命したいわば『俺の子』ともいうべき存在だということだ。

 まだその時には早いという理由で、俺は指導者的立場になることを拒否していた、だから俺にとっては彼女は初めてできた直接の後輩であり、弟子のような存在。

 そんな彼女から向けられる尊敬と憧れに満ちた眼差しというのは、他の誰の物よりも深く俺の心を揺さぶるように感じられるのだった。

 彼女の期待に応えるためならばどんな苦労でも厭わない覚悟が俺にはある! そうさ!! たとえこの身がどうなろうとも……!!

 ……ッ! 駆け出そうとして、俺は思わず足を止める。

 ……いや、ダメだそれじゃ……彼女の事を想うなら、後輩の事を想うなら……俺はここで倒れるわけにはいかないんだ……!

 そう考えなおすと俺は、敵の動きを見極め、最小限の動きで確実に仕留めていく戦法に切り替えるのだった。


 俺は荒い息を吐きながら、未だに襲い来る敵の群れへと目を向ける。

 あれからさらに戦い続けて倒した敵の総計なんと9000以上! ギーガーク兵は計算に入れずにこの数字である。

 もはや、疲労感も隠しきれず、俺はエクスブレードを杖代わりにしてなんとか立っているような状態だった。

「シュナイダーさん! もういい、もういいです! 後は私が戦いますから、だからもう休んでください!!」

 ほとんど涙声でシャイニーフェニックスが叫ぶが、俺は彼女に向けて手を突き出す。

「き、君は俺を嘘つきにするつもりか……? こいつらは俺が倒すと言ったら倒すさ。それより、そろそろ準備を始めるんだ、来るぞ、奴が……」

 強がりのような言葉だが、決して何の根拠もない発言ではない。

 目に見えて、敵の数が減ってきているのだ、つまり打ち止めは近いということ……。

「シュナイダーさん……」

 彼女は目尻にたまった涙を拭うと、再び建物の影へと移動する。彼女を追おうとする怪人にエクスブレードを投げつけ倒すと俺は気力を振り絞り駆け出す。

「貴様らの相手はシャイニーフェニックスではなくこの俺だ! さあどうした、俺はかなり疲れてるぞ、これだけの大戦力を相手に大立ち回りを繰り広げた上級宇宙戦士を倒せば貴様らは一躍ギーガーク帝国の英雄になれるんだぞ!!」

 そんな俺の挑発に乗ったのかは不明だが、無数の敵が俺に殺到してくる!!

「うおおおお、おらおらおら!!」

 もはや戦法も何もあったものではない、ひたすら突撃し目の前の敵を殴り飛ばすだけだ。

 さらにそれを繰り返していると、ついに敵の増援が止んだ。

 残る敵は10体ほど。

「ひいいいっ!」

 全身を怪人たちの血でどす黒く染めたボロボロのプロテクターを纏う俺の姿はさぞ恐ろしい事だろう。

 完全に怯えた声を上げる怪人に斬りかかり一刀のもとに切り伏せる!

 残り9体!!

「か、囲めぇ! 奴も限界だ、俺たちでも勝てるはずぅぅ!!」

 そんな叫びと共に、5体の怪人が俺をぐるりと取り囲む!

 だが、それは命取り、まだ俺にはこういう技もあるんだよ!

「はあっ!」

 両手を広げ全身からエネルギーの衝撃を放つと、そいつらはまとめて吹っ飛んでいく。

 残る4体のうちの1体に素早く近寄り腕を掴んで投げ飛ばすと、その先にいた怪人が驚きに目を見開く。

 まさか自分の方に飛んでくるとは思わなかったのかそいつは避けることもできずまともに喰らって倒れた。

 残り……2体……。

 もう限界だ……俺は初めて、SPスーツが発するエネルギー残量残り5%の警告音を耳にしていた。

「くっそおおおおお!!」

「うわあああああああっ!!」

 残る二体がまさにヤケクソといった様子でこちらに向かってくる。

 俺は右手にエネルギーを宿らせると、抜き手の形でそいつの胸を貫く! 吹き出す血を浴びながら、もう一体にも同じ攻撃を放とうとするも、フッと腕を覆っていたエネルギーが消えてしまった。

 ついにエネルギーが尽きたのだ……! 驚愕の顔を浮かべつつ口の端を歪めるそいつだったが、エネルギーを込めない普通のパンチがその笑いを打ち消した。

 ブバッと鼻血を吹き出し倒れ込むその怪人だったが、単なる腕力頼りのパンチ一発で倒せるような相手ではなかったらしく、ぐぐっと呻きながらも身を起こす。

 一瞬どうすべきか判断に迷う俺だったが、その怪人は俺の考えよりヘタレだったらしい。

「バ、バケモノだ……勝てるわけがねぇ! もうこんな戦いやってられるか!」

 そんな叫びと共に踵を返し走り出す怪人。S.P.Oの宇宙戦士としては怪人を逃がすわけにはいかないのだが、正直今の状況では逃げ出してくれて助かった。

 ともかく、ついに俺は敵の大戦力を全滅させることに成功したのだった。

 はうと息を吐きつつ、逃げる怪人の姿を目で追っていた俺だったが、すぐにその瞳が驚愕に見開かれることになる。

「がっ……」

 なんと、その怪人の首が突然宙を舞ったのだ!

 これは……まさか……!?

 思った瞬間、正面から放たれた凄まじい衝撃波によって、俺の身体が吹き飛ばされる!! そして、そのまま地面に叩きつけられてしまう。

 疲労とダメージで意識が飛びそうになりながらも、なんとか首だけを上げてみると……そこには予想通りの人物が立っていた。

 マントとビキニパンツのみという、肉体をこれでもかというほど強調した変態的衣装を身に纏う赤銅色の肌を持つ大男。

 ついに、ヤーバン・ジーンが現れたのだ……!

「あれだけの戦力を相手にし、なおかつ今の俺の攻撃を受けてもまだ生きているとは……。やはり貴様は素晴らしい力の持ち主だな。出来ればこのような方法は使わず一対一で戦いたかったのだがな……」

 そんな独り言のような呟きを漏らしつつ俺を見下ろしながらニヤリと笑うヤーバンを前に俺はフッと笑みを漏らす。

「戦闘狂の貴様にしては随分と弱気な作戦だったな。だが、効果的ではあった、事実俺はもうボロボロで戦う力もこれっぽっちも残っていない。正直舐めていたよ、地球方面部隊の戦力をな。ここまで追い詰められたのは計算外だった」

「戦士である前に兵士である俺にとって重要なのは確実な勝利なのだ。そのためならどんな作戦でも使わせてもらう。それよりも、いいのかそんなものが辞世の句で? 今から死ぬというのに余裕なものではないか?」

 そう言って俺の目の前にしゃがみ込むヤーバンだったが、俺は余裕の態度を崩さずにその瞳を見据える。

「ヤーバン……お前は何かを忘れているようだな。俺が何のために一人で戦ったのか、お前には察することすら出来ないのか?」

「何……?」

「喜ぶんだな……お前お望みの一対一の戦いの時間がやって来たようだぞ?」

「わけのわからぬことを! もういい、死ね!!」

 俺の言葉に苛立ったような表情を浮かべるとヤーバンは大きく腕を振り上げる。今の状態でこれを食らえば死は免れないだろう……しかし。

「シャインブリット!!」

 凛とした声と共に、ヤーバンの背後から飛んできた光弾が奴の背中で炸裂する。

「何だ……!? む、貴様は……!!」

 慌てて振り向いたヤーバンの視線の先には、ピンクの髪をたなびかせる少女の姿……!

「転生の炎は悪を焼き尽くす正義の業火! 宇宙戦士シャイニーフェニックス!! ヤーバン・ジーン! あなたの相手はこの私よ!!」

 ポーズを決めながらその可愛らしい顔に強い決意を宿して彼女はヤーバンに指を突き付けるのだった!

「ククク……誰かと思えば、いたのか小娘……。シュナイダーに戦いを任せ隠れて震えているのかとばかり思っていたぞ? しかし貴様が俺を相手にするとは……。まさかとは思うが本気で言ってるのか?」

 そう挑発的な言葉を投げかけるヤーバンだったが、シャイニーフェニックスは気にすることなく俺の方へと視線をやるとそのまま顔を上げ口を開く。

「ルビィ、どっかで見てるんでしょ!? シュナイダーさんを介抱してあげて!」

 そんな彼女の呼びかけに答えるように、建物の影から飛び出してきたルビィがこちらに飛んでくる、その際ヤーバンの横を通るが奴はチラリと視線をやっただけでそれを妨害するようなことはなかった。

「シュナイダーを回復させ共に俺と戦うつもりか?」

 そうせせら笑うヤーバンにシャイニーフェニックスは小さく首を振る。

「勘違いしないで、ここからは私の戦いよ。どちらにしても、ルビィの力ではシュナイダーさんの傷は治すことは出来ても、失われたエネルギーは戻せないしね」

 その通りだ、エネルギーに関してだけは自然回復を待つしかない、つまり今の俺は完全に戦力外の存在になってしまっているわけだ。

「シュナイダー様、大丈夫ですか?」

 俺の傍までやって来たルビィが、回復効果を持つ光線を照射しながらそんな言葉を掛けてくる。

「ああ……おかげで、傷だけは治ったよ」

 俺はヨロヨロと立ち上がると、少し離れた位置で睨み合いを続けるシャイニーフェニックスとヤーバンに視線をやった。

「どうやら本当に、しかも一人で俺と戦うつもりのようだな……。数日前の戦いで俺に手も足も出せずに殺されかけたのを忘れたのか?」

 腕を組みふんっと鼻を鳴らすヤーバンに、しかしシャイニーフェニックスは負けじと言い放つ。

「忘れてないから戦うのよ! あなたにやられたことで、私は戦いの怖さ、絶望を知った……それを乗り越えるためには、あなたを倒すしかないの!」

 ググっと拳を握りしめながらそこまで言うと、シャイニーフェニックスは一旦言葉を切りニヤッと口元を歪める。

「私を数日前……あの時やられた私と同じだと思わない方がいいよ? 特訓で強くなったの、あなたにも負けないほどにね!!」

 自信に満ち溢れたシャイニーフェニックスの言葉にヤーバンはほうと面白そうに目を細める。

 ハッタリだと受け取ったのか、それとも彼女から発する闘気とでもいうべきものを感じ取ったのか……。

 しかし、俺は見逃さなかった、不敵に微笑むシャイニーフェニックスの頬を一筋の汗が流れ落ちたことを、その体がほんの僅か小刻みに震えていたことも……。

 当たり前か……特訓で力を身に着けたとしても、何者にも負けない強い意志を持っていたとしても、彼女の実態は平和な地球で暮らす12歳の中学一年生の女の子なのだ……。

 そんな少女が命懸けの戦いに身を投じているのだ……恐怖を感じずにいられるわけがないのだ…………だが彼女はそれを克服しようとしている……!

 ……ならば俺が今すべきことはただひとつ、この少女の覚悟を信じることだ!!

 どちらにしろ、今の俺では仮に乱入してみたところで足手まといにしかならないのだしな……。

「ククク、まあいい、正直なところ、大戦力相手に疲れ果てたシュナイダーの始末などという俺にとって何の面白みもない、ある意味屈辱的な任務で終わることへの不満があったのだ。かかってくるがいい、その力、今再び俺に示してみろ! ただし、今度もまたつまらん戦いを見せるようならば、容赦なくその身切り裂くぞ!」

 そう吠え、ヤーバンは腕組みを解くと、両腕を腰の左右に構えて戦闘態勢に入る。

 それを見てシャイニーフェニックスも足を開き、ボクシングのファイティングポーズにも似た独特の構えを取る。

「しゅっ!」

 先に動いたのはシャイニーフェニックスの方だった、鋭く吐き出した息と共に地面を蹴り一気に間合いを詰めるとヤーバンの顔面――右頬に向けてストレートを繰り出した!

 対するヤーバンは……避けようともしない! そう言えば最初の戦いのとき、シャイニーフェニックスの打撃はヤーバンに対して何の痛痒も与えていなかったな、だからこそ今回も同じようにガードもせずに受けるつもりなのだろう。どうやら奴はシャイニーフェニックスを相当に甘く見ているようだ。

 しかし、その代償は、すぐに奴を襲うことになる。

 ドゴォッ!

 シャイニーフェニックスの拳が奴の頬にめり込み、そのまま振り抜かれると同時に鈍い音を立てて吹っ飛ばされる。

 拳が当たった瞬間の奴の驚愕の表情はハッキリ言って痛快だった、奴の頬には凄まじい衝撃と共に激しい痛みが走っていることだろう。

「ぐっ……なんだと、この一撃は……」

 吹っ飛ばされながらも、空中で体を起こすとそのまま回転しつつ着地し体勢を立て直すヤーバンであったがその表情からは余裕が消え去っていた――

 しかし、焦りは感じられない、シャイニーフェニックスの一撃は確かに奴の想定以上の威力を発揮して見せたようだが、だからと言ってそれで怯むような男ではないだろうことは想像がつくからだ……さてどう出る?

お読みいただきありがとうございました。

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