第64話 決戦場は異次元空間!?
「Start Up! シャイニーフェニックス!!」
「Start Up! シュナイダー!!」
私と仁さんは並び立ち、ポーズを取ると声を合わせて叫んだ!
0.001秒の世界の中で、私と仁さんはSPスーツを纏い宇宙戦士へと姿を変える……。
もちろん、互いの変身プロセスを見ることは出来ないけれど、同じ宇宙戦士なので、仁さんの変身プロセスも私と同じもののはずだ。
まず、身に着けていたものすべてが光の粒子と化して、SPチェンジャーに収納される。
この瞬間、完全に生まれたままの姿になるのだけど、0.001秒の中のさらに一瞬なので、誰にも知覚することすらできない、わかるのは変身してる本人だけだ。
ともかく、収納されたものと入れ替わりに飛び出してきた光の粒子と化していたSPスーツが纏わりつくように裸体へと装着されていくのだ!
SPスーツの形状は装着者の心次第、どんな姿にだってなれる! ただ、初めて変身した姿が記憶されているので、後からより強いイメージで上書きしようと思わない限りはその姿に変身することになるらしいけど……。
仁さんの変身後の姿は青いプロテクターを纏った戦士……ある意味宇宙戦士という通称に最も相応しい姿をしていると思う……!
そして、私の姿は……。
パンッと光が弾け、私の姿が現れる!
赤と白を基調としたミニスカートタイプのフリル付きドレス。スカートの下にはスパッツも穿いてパンチラ対策は万全だ。
胸には炎を連想させる、赤い色をしたハート型のブローチが付いており、背中にはちょこんと小さな翼状のパーツがある。
茶髪ショートの髪は、ピンク色のロングヘアーへと変化しており、瞳の色も茶から赤へと変わっているはずだ。
その姿は、変身ヒロインアニメ『プチピュア』を参考にして、私がイメージした、最高に可愛くて、同時にカッコよくて、そして強い! まさに私の理想とする正義のスーパーヒロインが具現化したものである!
優しく、強く、かっこいい最高のイケメンお兄さんである仁さんと、私が並び立ち変身をして、理想のヒーローシュナイダーと理想のヒロインシャイニーフェニックスへと変わる……これはまさにずっと憧れていた夢のシチュエーションだった……!
……そう、大丈夫、私にはシュナイダーさんがついてるんだ!!
私は右手を握りしめ拳を作り、胸へと当てる、トクトクと心臓の音が高鳴るのがわかる……! よしっ……!!
「行きましょう!」
シュナイダーさんに向けて言うと、私は空へと舞い上がる! 向かうは紗印市のシンボル、紗印タワー前の広場……!
「よくビビらんとやって来れたもんやな、シュナイダー!!」
指定された場所へとやって来た私とシュナイダーさんとルビィをそう偉そうに言いながら出迎えたのは、ヤーバンではなかった。
人間の体に虎の頭がそのまま乗っかったような容姿を持つ怪人だったのだ。どことなく愛嬌のある見た目をしたその姿は――見た目で判断するのはどうかと思うけど――とても強そうには思えない。
というか、なんで関西弁なんだろう……? ん……虎……関西弁……もしかして……? まあどうでもいいかそんなことは。
しかし、それにしても、私もいるのにシュナイダーさんにだけ呼びかけたりして……いくら私がヤーバンに負けてるからってバカにして……!
ムカムカする私とは対照的に、同じように存在無視された私の肩の上のルビィは特に気にする様子は見せていない。
まあ、彼は戦闘能力ないから、自分は無視されて当然とか思ってるのかもしれないけど……。
私がそんな事を考えている間に、シュナイダーさんは周囲に頭を巡らせると、「貴様、一人か……?」と訝しげな声で虎怪人に尋ねる。
シュナイダーさんが疑問に思うのは当然だ、私の事を物の数に入れてないのはともかくとして、シュナイダーさんの実力は知っているはずなのに、こんな奴一人よこして、ギーガーク帝国の連中……というか、ヤーバンは何を考えてるんだろう……?
私が思っていると、問われた虎怪人は、何がおかしいのか大声で笑いだす。
「そないなわけないやろ! 流石のわいも上級宇宙戦士のあんさんに一人でアレ出来ると考えるほど身の程知らずちゃいまっせ?」
そう言われても、やっぱり周囲には他の敵の気配は全くない。ついでに言うと幸いなことに人の気配もない、遠くの道路を歩く通行人の姿はあるけどね。
変身した私には、あくまで簡易的な物だけど、エネルギー感知能力も備わっていて、周囲数十メートルくらいなら敵の気配を感じ取る事ができるのだ。
そんな私でも何も感じないのだから、本当にこの一体だけなのだろうと思うのだけど……。
「だけど、あなた以外姿が見えないようだけど……?」
「まあ、少し待ちなはれ、今からおもろいことが起きるよって……」
思わず問いかける私に、虎怪人はそう言って不敵に笑う。私とシュナイダーさんは、困惑しつつ、いつでも動けるよう身構えたのだった……。
*
ギーガーク帝国要塞基地――
「奴らが現れたぞ、ヒィラーよ例の物を起動させろ!」
「了解!」
レガーンが地球の様子を映したモニターに目を向けながら発した言葉に答え、ヒィラーが目の前の機械のパネルを操作する。
「次元転換装置起動! さあ、宇宙戦士さんたち、今からあなたたちの墓場にご案内するわ……」
ニィと笑いながら、ヒィラーはモニターに視線をやる。
そこには、装置によって出現した時空の歪みに驚き戸惑うシュナイダーとシャイニーフェニックスの姿があった……。
*
「な、なに……これぇ……!?」
突如目の前に出現した黒い穴に、私は戸惑いの声を上げながら足に力を入れる。
その穴はとてつもない吸引力を持っていて、まるでブラックホールのように私とシュナイダーさん、ついでに虎怪人をも吸い込もうとしていた……!
「こ、これは……そうか、奴らも次元転換装置を所有していたのか……」
私と同じように踏ん張りながら、そう言ったシュナイダーさんの言葉に、私は彼に顔を向けて尋ねる。
「シュ、シュナイダーさん。次元転換装置って……?」
「異次元空間へのゲートを作る装置だ。かつて俺が滅ぼした宇宙犯罪組織がよく使っていた手だ、異次元空間に引きずり込み、そこで秘密裏に相手を始末する……。どうやら、連中は異次元空間で俺たちを迎え撃つつもりのようだな」
「そやでぇ、というわけでわいは一足先に異次元空間で待っとるからな、次元の迷い子にならんように気ぃつけて来るんやでぇ~!!」
横から割り込むようにシュナイダーさんの言葉に答え、虎怪人は自ら黒い穴に飛び込んでいく! そして、次の瞬間には私たちの視界から消え去ってしまったのだった――。
私は引きずり込まれないようなんとか踏ん張るものの、引っ張る力はどんどん強くなっていく……!
「ひゃあああっ!」
肩の上では、ルビィがなんとかしがみ付きながら悲鳴を上げているけど……もう限界かも……!
思った瞬間、足がふわっと浮き上がり私はルビィと共にそのまま黒い穴に吸い込まれていく……!
「シャイニーフェニックス! くっ、仕方ない、どちらにせよ虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ!!」
そう叫ぶと、シュナイダーさんは地面を蹴り右手で私の腕を掴み、左手でルビィの身体をむんずと掴んだ!!
そして、私たちはそのまま穴の中に吸い込まれてしまうのだった――……。
ところでシュナイダーさん、今のは相手が虎怪人だけにって事なんですか……?
「き、気持ち悪い……吐きそう……」
穴の中は、言葉では言い表せないほどの妙な空間だった。
身体が引き伸ばされてるような、押しつぶされているような、そんな感覚と上下左右も分からないような空間に私は思わず吐き気を覚える。
「ブラウヴォルフ!」
シュナイダーさんが虚空に向かってそう叫ぶ。すると、どこからともなく、ブルーメタリックの二輪タイプのマシンが飛んできた!
シュナイダーさんはそのマシンに乗り込むと、私を後ろに乗せた。
「シャイニーフェニックス、しっかり掴まってるんだ、この空間に投げ出されたら下手すれば永遠に彷徨うことになる。君も宇宙戦士だから空間同調能力や次元を渡る能力があるはずだけど、流石に初めてじゃそれを使いこなすのは無理だろう?」
そう言いながらアクセルを踏んで発進させる。そしてそのまま出口らしき光の中に飛び込んでいく……!
異空間を走るマシンの上で私は必死でシュナイダーさんにしがみついていた、生身の時に散々ドキドキさせられたバイクの二人乗りだけど、今回ばかりはそれどころじゃなかった。だって永遠に彷徨うとか恐ろしい事言われたんだもん……!!
そんなことを考えている間に光を抜けると、そこはさっき吸い込まれた場所だった。
よかった……、脱出できたんだ……。
ホッと息を吐く私だったけど、ふと違和感を覚える。
何かが、違う……。マシンが止まり、シュナイダーさんが地面に降り立つと私も慌てて降りる。
そして、周囲を見回して気づいた。遠くに見えていた通行人が、消えている……! 車も! さらに、なんとなく空を見上げてみて気づいた。太陽が……黒い……!
ここは、違う! 見た目はほぼ同じだけど、さっきとは違う場所なんだ!!
「ここが異次元空間の終着点。元の世界からは微妙にズレた次元に存在する世界だ。この空間は元の世界にそっくりだけど、生物は存在しない、ここで起こったことは元の世界の誰も知らないし、何も気づかない……」
シュナイダーさんの説明を聞き私は納得する。
その時、私の耳に声が聞こえてきた、さっきも聞いた怪人の声だけど、その声は自信と余裕に満ち溢れていた。
「ようこそ、決戦の地へ!!」
私とシュナイダーさん、そしてルビィはそちらに目を向け……。
「あ、あ、ああ……」
私は思わず呻き声を上げながら数歩後ずさる……。
そこにいたのは、あの虎怪人だけじゃなかった、視界を覆いつくすほどの大量の敵、敵、敵!!
もしかしたら百体以上はいるかもしれない。大半はギーガーク兵だけど、より強力な怪人やオドモンスター、ロボット兵士なんかも混じっている……。
こ、こいつらと、戦わなきゃいけないなんて……!! そんな絶望的な光景を見て私とルビィが愕然としていると、隣でシュナイダーさんが不敵な様子を見せる。
「これはまた随分な大所帯で来たもんだ。予想より大分数が多いな」
「何余裕見せとんねん! たった二人でわいらに勝てる思っとんのかいな! 知っとるかもしれんがわいらを全滅させん限りあんたらは元の世界には戻れんで!」
そう言って私たちを嘲笑うようにゲラゲラと笑う虎怪人に、シュナイダーさんは一切動じることなく言い返す。
「勘違いするな、お前らを相手にするのはこの俺だ。シャイニーフェニックスの手は煩わせんさ」
そして、シュナイダーさんは奴らに向かって歩き出そうとするもんだから、私は慌てて引き留める!
「シュ、シュナイダーさん、何を言ってるんですか! 無茶にもほどがあります、ここは協力して……」
しかし、シュナイダーさんは顔だけをこちらに向けると、フッと小さく笑う。
「シャイニーフェニックス、この間の作戦会議で言わなかったかい? ヤーバン以外の敵は全部俺が引き受ける、と。どうやらヤーバンはまだ来てないらしい、君はヤーバンとの戦いに備え、離れたところで体力を温存しつつ、力を溜めておくんだ。いいね?」
そんなシュナイダーさんの頼もしい言葉に思わず胸が熱くなる……。でも……! やっぱりこんな大勢相手に一人で戦うなんて無謀すぎるよ……!!
そして、そう思ったのは敵も同じみたい、虎怪人はゲラゲラと笑うと、シュナイダーさんに指を突き付ける。
「わいらを舐めるのも大概にせぇよ! わいらのホームであるこの空間内ではわいもパワーアップしとんねん! お前がどれだけ強くても、楽勝! 負ける気せぇへん、地元やし! 予め胴上げもしとるし、間違いなくVやね……」
ドゴッ! 虎怪人の言葉は途中で遮られる。
瞬きより速くシュナイダーさんが間合いを詰めてパンチを叩き込んだからだ。その一撃は見事に敵の顔面にヒットし、奴を吹き飛ばす。
「あ、あが……」
吹き出す血を止めようとするかのように鼻を押さえながら呻く虎怪人に、シュナイダーさんはゆっくりと歩み寄る。
「舐めるのも大概にしろ、その言葉、そっくりそのまま返してやろう」
「く、くうう。まだまだ!」
そう言いながら、虎怪人はパンチを繰り出す。唸りを上げて迫る拳を、しかしシュナイダーさんは片手で軽く受け止める。
グシャ……!
「ぎゃあっ!」
何かが潰れるような音が響き、虎怪人が絶叫を上げる。シュナイダーさんが、そのまま奴の拳を握りつぶしたのだ。
そして、苦悶の表情を浮かべる怪人の腕を掴むと、そのまま空高く放り投げた。
「ブルーレーザー」
静かに呟くように言いながら、かざした手から、名前に違わぬ鮮やかな青い光線を放つ! その一撃を受けた瞬間、怪人はまるで花火のように空中で大爆発を起こす!
戦闘時間僅か33.4秒……。虎怪人は跡形もなく消え去ったのだった。
「う、嘘……」
私は目をまん丸くして呟く。信じられなかった、自分が今見た光景が……。
だ、だって、シュナイダーさんたらあまりにも強すぎるんだもの……。あの怪人、馬鹿っぽかったけど、私の見立てではこの間出てきたアオ・イットリーという名の怪人(しかも強化版!)と同等クラス……それを、それを……まるで、雑魚戦闘員でも倒すかのように一瞬で倒してしまうなんて……。
違う、強さのレベルそのものが……。ヤーバンがシュナイダーさんの姿を見ただけで逃げ出すのも当然だよ!!
私はゾクゾクっと全身を駆け抜ける震えを感じていた。もしかしたら僅かな恐怖もあったのかもしれない、あの優しい理想のヒーローシュナイダーさんが秘める圧倒的な破壊の力に。
だけど、それ以上に私は魅了されていた、私の先輩は……憧れのヒーローは、やっぱり最高にカッコよくて、強くて、とにかく凄いんだってことに……!!
そんな私の心中を知ってか知らずか、シュナイダーさんは私の方を見るとグッと親指を立てた。
『俺に任せろ、君は自分がやるべきことをやるんだ』
私には彼のそんな声が聞こえたような気がした……!
私のやるべきこと……それは、ヤーバン戦に向けて力を溜めることだ。だから、一緒に戦えないことがもどかしくても今は堪えなくちゃ……!
そして、シュナイダーさんの戦いをしっかりとこの目に焼き付け、少しでも彼に近づけるよう彼の戦いから学ぶんだ!
私が力強く頷くと、シュナイダーさんは駆け出した、その背を見つめる私の心にもう不安は一切ない。確信していた、例え敵が何百、何千と来ようとも、あの人は負けないって!!
お読みいただきありがとうございました。
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