第63話 いざ往かん、戦いの場へ!!
「おお、こ、これは……!」
ここはギーガーク帝国要塞基地の格納庫、用意された戦力を一目見たシィ・レガーンは感嘆の声を上げた。
オドモンスター、怪人、ロボット戦士など総勢3500体超!
戦闘機、戦車合わせて6000機以上!!
さらに雑兵であるギーガーク兵に至ってはもはや総数不明、数える気にもならない。
これが、対シュナイダーのために、ズゥ・ノーハーが用意した戦力の全てであった。彼は基地をフル稼働させ兵器を増産しこれだけの戦力を整えたのだ。
「いかかですかな、レガーン様。いかなシュナイダーと言えどもこの大戦力を相手に戦うのは至難の業でしょう」
そう言って手を広げるノーハーにレガーンは大きく頷く。
「もし万が一、奴を仕留めきれずとも、その時はヤーバン殿にご登場願いとどめを刺していただきます。消耗したシュナイダーならば確実に倒せますからね」
ノーハーは続けてそう言うと、横で難しい顔で腕を組んでいるヤーバン・ジーンに目を向けた。
ヤーバンは内心では不満を抱いていた。戦士としてシュナイダーと戦いたい彼としては、このような多勢に無勢の戦いなど不本意極まりないのだ……。
「ヤーバンよ、思うところはあるだろうが、ここは我慢してもらうしかない。貴様も理解しているはずだ、今は貴様の個人的な感情よりも優先すべきことがあることを……」
そんな彼の心中を見透かしたようにそう告げるレガーンに対し、彼は黙って頷いたのだった。
「しかし、ノーハーよ一つだけ問題があるぞ。これだけの大戦力を地球に送り込むのはまずい。間違いなく地球人が横槍を入れてくるぞ?」
地球の軍隊が迎撃に出てきたところで、相手になどならないが、ギーガーク帝国は例のシックザールクリスタルの特性の件もあり地球と本格的に事を構えるのは避けたいと考えている。
だから基本的には秘密裏に行動したいのだが……それをするにはこの大兵力は少し目立ちすぎると考えたのだろう、レガーンがそんな懸念を口にする。
「わかっております、ですのでシュナイダーは宇宙空間におびき寄せてから叩く手はずとなっております」
それに対し、ノーハーは余裕のある態度で答えた。だが……。
「あのシュナイダーが大人しく宇宙にまでおびき出されてくれるでしょうかねぇ?」
突如聞こえた声に、その場の全員がそちらに目を向けた。すると、医療班のヒィラー・ラヴィットが格納庫の入り口から中に入ってきたところだったのだ。
彼女はノーハーの目前で立ち止まると、その兎顔で彼を見上げるように見つめるのだった。そしてそんな彼女に対し、ノーハーは鋭い視線を向ける。
「私の作戦に文句を付ける気ですか?」
「そう言うわけではありませんわ。ただ、シュナイダーという男は決して侮れない相手です、我らが戦力を整えていることはすでに察知しているでしょう、そんな状況で果たしてのこのこと罠が待ち構えているであろう宇宙空間に来てくれるのか、甚だ疑問なのですよ……」
そんな彼女の指摘はノーハーにとっても痛いところを突いていたようで……彼は少しバツの悪い顔をすると黙りこくってしまった。そんな彼にヒィラーはにっこりと笑う。
「地球人に悟られることなく、シュナイダーに向けて大戦力を送り込む、もっと確実でいい方法がありますわ。この基地に搭載された機能を使って、ね」
「我が基地に搭載された機能だと? 何のことだ?」
彼女の言葉に反応し問いかけるのは、この基地の主であるところのレガーンである。彼は自分の知らない基地の機能をヒィラーが知っていることに驚きを隠せない様子だった。
いや、彼だけではない、ノーハーも、そしてヤーバンもこの基地に長くいるにもかかわらず初めて聞く話であったから、三人とも興味深そうに彼女を見つめていたのだった。
「ふふ、何故私だけがあなた方の知らないことを知っているのか、疑問に思っているようですわね。別に簡単な事ですわ、この基地の設計者は誰でしょう? それを考えればおのずと答えは導き出されるはずですわよ……?」
そう言いつつ彼女は意味ありげに微笑んで見せたのである。そしてそんな彼女の言葉に三人はハッとした表情を浮かべる。
「そうか、貴様はクー・ルッテル博士に師事していたな……」
最初に口を開いたのはやはりレガーンだった。そんな彼の発言に対し、ヒィラーはニッと前歯をむき出しにして笑って見せる。
クー・ルッテル博士というのはギーガーク帝国の本星にいる彼らお抱えの超天才科学者の名である。
「我らギーガーク帝国の兵器の数々はルッテル先生の作品です、そう、この基地も。私は先生から基地の機能について全て教えていただきましたわ」
「あのタヌキジジイめ……。基地の最高責任者である俺には教えず、自分の教え子にだけ教えるなどけしからん!」
「先生は悪戯好きですから。まあ、それはともかく、そんなわけで、この基地には今回の作戦にピッタリの機能が搭載されているのです」
怒りに満ちた声を上げるレガーンにそう返すと、彼女は得意げに胸を張り、説明を始めるのだった。
*
「フェニックスアッパー!!」
ドゴッ! 私の拳が立体映像の『シャイニーフェニックス』の顎に見事にヒットする。その途端、『彼女』は苦痛の声を漏らし、地面に倒れ込んでしまった。
私は油断なく、『彼女』の様子を伺っていたが、立ち上がってくる様子がないことを確認し。ふうと小さくため息を吐いた後で拳を突き上げた。
「やったー!!」
全身で喜びを表す私の耳に、パチパチパチと拍手の音が聞こえてくる。そちらに視線を向けると、仁さんが笑顔で私の勝利を讃えてくれていた。
「やったな、シャイニーフェニックス。戦闘時間僅か30秒。新記録達成だよ」
「あ、ありがとうございます!」
私はお礼を言いながらペコッと頭を下げる。
仁さんの宇宙船内部での立体映像相手の特訓を開始してから早4日、私はメキメキと実力をつけていったのだった。
特訓開始前の私と同等の能力を持つ立体映像も先ほどの通り、もはや相手にならないレベルにまで成長していたのである!
「全く、君を落ちこぼれとか言ったのはいったい誰だろうね? これだけの才能を秘めてるなんて、俺も完全に予想外だったよ」
「いえ、そんな……むしろ特訓前の私が弱すぎただけです……。改めてこの過去の自分を再現した『シャイニーフェニックス』を見ても、動きに無駄が多すぎるし、カッコつけだし、変に自信過剰なところもあったりして……」
私は倒れ伏している『シャイニーフェニックス』を見ながら答える。
いや、実際、自分との戦いって言わば自分の恥ずかしい部分を見せられているようなものだからね……。これは結構きついものがあるのだ……。
まあ、それはさておき、仁さんからお褒めのお言葉と励ましの言葉をかけていただいたことで、私は俄然やる気が出てきてしまった! 我ながら相変わらずの単純さである……!
「よーし、もう一本行くわよ! 仁さん、お願いします!!」
私の言葉に、仁さんは苦笑を浮かべる。
「シャイニーフェニックス……今ので十本目だよ? そろそろ一度休憩した方が良くないかな?」
う、う~ん……別にそこまで疲れてるわけでもないんだけど、ここは仁さんの言うことを聞いておいた方がいいかな? あまり頑張り過ぎても逆効果になっちゃうかもしれないしね。うん、そうしよう! というわけで、私は大人しく従うことにする。
左手首のSPチェンジャーを操作すると、私の身体が一瞬光に包まれ、変身が解除された。
私はふうと一息つくと、そのまま部屋から出て行き、隣にあるメディカルカプセルへと入った。
このカプセルは使用者の傷や疲れを癒してくれる効果があるものだ、なんでもよほど酷いダメージじゃない限り治せるんだとか。
1分ほど、温かい光に照らされると、特訓で付いた細かい傷が癒えていき、疲労感が取れていくのを感じた。
ぎゅるるる……。
私はハッとして自分のお腹へと目を向ける……。
このカプセルは対象者の自己治癒能力を促進させるものなので、回復に使えばその分お腹が減るのである!
「何か食べようか?」
その時、仁さんがそう言いながら私の近くにやってきたので私は僅かに顔を赤くしつつ、コクリと頷いたのだった。
「みうちゃん、君は大分強くなった。おそらく今なら、ヤーバンともそれなりの勝負が出来るレベルにはなったと思う」
リフレッシュルームで仁さんが用意してくれたパスタ――宇宙食とかじゃなく地球で普通に売ってる冷凍食品であり、仁さんが買い込んできたものであるらしい――を食べていると、仁さんがふいにそんなことを言ってきた。
ううん、どうなんだろう……確かに私は強くなったという自負はある。実際特訓では過去の自分自身を秒殺してるのだから、これは決して自惚れではないだろう。
だけど、あのヤーバンと比べてどうなのかと言われたら、正直まだ全然敵わないように思うのだ……!
あいつにボコボコにやられ過ぎてトラウマになってるというのも原因なんだろうけど……何しろ未だにあいつの名前を聞き、顔を思い浮かべるだけで全身に冷や汗が吹き出し、吐き気がしてくるほどなのだ!
ってそのトラウマを克服し、ヒーローとして一皮剥けるための訓練だったはずなんだけどね!? いやまあそれはともかく、この状態で果たして本当に戦えるのだろうか……? そんな私の不安を見透かしたかのように、仁さんは言う。
「不安になる気持ちはわかるよ? だけど、今君に最も必要なのは、自信を持てるようになることだと思うんだ」
「……はい!」
そうだ、その通りだ! いつまでもビビっていてはいけないよね……! 私が頷くと、仁さんも頷き返してくれるのだった。
その時である、リフレッシュルームに騒がしい声が飛び込んできた。
「仁様! みうちゃん! 来た、来ました!! ギーガーク帝国からの挑戦状です!! 今から30分以内に紗印タワー前の広場に来いとの事です!!」
そうせわしなく私たちの周りを飛び回るルビィに私は、カタンと立ち上がった。
「思ったよりも遅かったというべきか、早かったというべきか……。しかし妙だな? 紗印タワーとは……奴らは俺を宇宙におびき出してくると思ってたんだが……」
「確か、ギーガーク帝国ってシックザールクリスタルの成長に必要な、幸せの感情を奪わないよう、地球人を巻き込むような攻撃は避けてるんですよね?」
尋ねる私に、仁さんは、「ああ」と頷く。
「俺を倒すため、大戦力を投入してくると睨んでいたんだが……そんな大部隊を地球上で展開したら大騒ぎになるのは目に見えている。だから、決戦の場は宇宙になると思っていたのだがな……」
「何かの罠ですかね?」
「わからん、だが、行ってみるしかないだろう……。みうちゃん、君は……」
「行きます!」
仁さんが続きを言う前に、私はそう即答していたのだった! だって……! もう怖いとか言ってる場合じゃないもん……!!
それに、最初から決めてたことだ、私はヤーバンと戦い、そして……勝つ! この身に残る恐怖を克服するためにも!! そんな私の決意に満ちた表情を見てか、仁さんはフッと笑う。
「俺としたことが、野暮なことを言いそうになってしまったな。よし、ならば行こう!」
「はい!」
私と仁さん、ついでにルビィは宇宙船の外へ飛び出した。
お読みいただきありがとうございました。
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