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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第10章【超決戦! シャイニーフェニックスVSヤーバン・ジーン!!】

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第58話 智子の決意……って、こう書くとカッコいいけど……

 週の始まり月曜日――あたし、森野智子はこの少しだけ憂鬱な日の朝、自分の教室に向かうべく学校の廊下を歩いていた。

 すると、前方で一組の男女が何やら話をしている姿が目に入った。

(ん……氷川くんとみうね。今日はいつもみたいに喧嘩してるわけじゃなさそうだけど……)

 あの幼馴染コンビの朝からの喧嘩は最早風物詩のようなもので、あたしも最初は驚いていたけど今ではすっかり慣れっこだ。

 でも、今日はどうやら喧嘩中というわけではなさそうだ……。

 あたしは何となく気になり、そっと耳をそばだててみる。

「みう、お前一昨日駅前商店街での騒ぎの現場に居合わせたらしいな、大丈夫だったか?」

「う、うん……大丈夫だったよ」

 一昨日の騒ぎと言うのは、シャイニーフェニックスと怪人の戦闘の事だろう。

 氷川くんはどこからかみうがその現場に居合わせたことを聞きつけ、みうの身を案じているらしい。

 全く氷川くんってば、いい加減に素直になったらいいのに。

 あたしはそんなことを考えながら、再び二人の会話に耳を傾けた。

「そうか……それならいいんだけど、オレ変な噂聞いてさ……」

「噂?」

 氷川くんの言葉にみうが首を傾げる。

「シャイニーフェニックスが負けたって……しかも、かなり酷いやられ方をしたって噂を聞いたんだ……」

 氷川くんの言葉にみうの表情が強張った。

 あの日のシャイニーフェニックスと怪人の戦いはニュースにはなっているが、その顛末に関しては一般には知られていない。

 理由は不明だが、あの時の様子を映したはずの目撃者のスマホやビデオカメラが機器異常をきたし、撮影データが消えてしまったらしい。

 そのために、戦いがどうなったかについては、目撃者の情報に頼るしかなく情報が錯綜している。

「え、えーとね。その噂は半分は本当だよ。シャイニーフェニックスが負けたのは事実……」

 みうはもごもごと言いづらそうにしながらもそう答える。

「う、嘘だろ……」

 氷川くんは呆然と呟くが、みうは慌ててフォローするように続ける。

「でも、シャイニーフェニックスは大丈夫! すぐに復活して怪人倒してたし!」

「そ、そうか……よかったぁ……」

 安堵のため息を吐く氷川くんを見ていてあたしは思った。

 氷川くんってひょっとしてシャイニーフェニックスのことが好きだったりするんじゃなかろうか、と。

 氷川くんはみう一筋なのかと思ったけど、もしかして案外そうではなかったりして……。

 まあ、シャイニーフェニックスは一種のアイドルみたいなもんだから、恋とかとは違うのかもしれないけど……。

 それはともかく、みうは氷川くんの様子に何やら胸を打たれたようで、瞳をウルウルさせながら、

「翔くん、心配してくれるんだ……」

 と、呟く。

 すると氷川くんは僅かに首を傾げる。

「ん? なんでお前がそんなに感激してんだよ……オレはシャイニーフェニックスの事を心配してんだぜ?」

 確かに彼の言うとおりだ、みうの反応はまるで自分の事のように喜んでいるように見える。

「えっ!? あ、そ、そうだね! で、でも翔くんさっき私の事も心配してくれたし、やっぱり翔くんは優しいなって思うよ!」

 慌てた様子でそう言うみうに、氷川くんは、

「バッ、ちげーよ! シャイニーフェニックスの事はともかく、お前を心配してやったのはお前が毎度毎度トラブルに巻き込まれるから仕方なくだ、保護者としては見過ごせねーんだよ!」

 と、顔を真っ赤にしながら反論した。

 あ、これヤバイ……。

「ほごっ……またそうやって人を子供扱いして! 同級生のくせに自分だけ大人ぶらないで!!」

 あちゃー、案の定だ……みうは子供扱いされるの嫌うからなぁ。特に氷川くんには。

 みうは氷川くんに文句を言うが、彼はどこ吹く風だ。

「ハッ、ヒーローヒーロー言ってる奴が、ガキ扱いされて怒るとか笑えるな。やっぱりお前はまだまだ子供だよ」

「むきーっ! 誰が子供よ!! もう、いいもん!!」

 みうはそう言うとプイッと顔を背け、そのまま教室へと入って行ってしまう。

 何やってんのよ氷川くんは……途中までいい感じだったのに自分から台無しにしちゃって……。

 こんなことばかりやってるから……先を越されるのよ……。

 あたしは一昨日出会った伊勢さんの事を思い起こしため息を吐く。

 みう、完全にあの人にやられちゃってるもの。

 幼馴染という絶対的有利な立場にありながら、もたもたのろのろしていた結果、みうのハートをかっさらわれてしまった。

 自業自得とはいえ、ちょっと同情しちゃうかな……けど……まだ氷川くんにも十分にチャンスはあると思う。

 伊勢さんは26歳の立派な大人だ、子供であるみうがいくら想いを寄せたところでそれに応えてくれる可能性は限りなく低い……。

 みうが伊勢さんへの恋心を認めないのもおそらくそれが理由だ、あの子は怖いのだ……傷つくことが、拒絶されることが……。

 ともかく、みうがそうやってもじもじやってる間に氷川くんが彼女の心を掴むことができたとしたら……。

 あたしはチラッと氷川くんに視線をやる。

 彼はみうに怒鳴られたことで頬をポリポリと掻きながら気まずそうにしていた。

 しかし、なかなか難しそうねぇ……まず氷川くんが自分の想いを完全に自覚して、もうちょっと精神的に大人になって、みうに対する態度を改めて……。

 ……まあ、そんな簡単じゃないだろうけど。

 そんな事を考えながらあたしは教室へと入り席に着く。

 隣の席からはみうが能天気な顔で「おはよー」なんて言ってくる。どうやらもう氷川くんへの怒りは失せたらしい。

 む、むむむむ、この子の能天気な顔見てたらなんか腹立ってきたぞ、よく考えたらなんであたしがみうの恋愛事情で色々と考え込まなきゃいけないのよ。

 大体この子ときたら、性格はガキっぽいとはいえイケメンの氷川くんと幼馴染だわ、伊勢さんみたいな大人の超絶イケメンと知り合えるわで、凄まじく充実した生活送ってんじゃないの!

「みう!」

「な、何……?」

 いきなり大声を出したあたしにみうはビクッとなる。

「今日からしばらく、あんたは一人で帰って! あたしは放課後用事が出来たから!!」

「う、うん、別にいいけど……もしかして、またゲーセン巡りにでも行くの?」

「違うわ。あたしは放課後素敵な出会いを求めて旅に出るのよ!!」

 あたしはみうの問いにそう答える。

「あ、そう……」

 若干引き気味でそう返すみうを無視しあたしは机に肘を突く。

 みうが伊勢さんと出会えたようにあたしだって運命の出会いが出来るはず! だけどそのためには自分から動かなきゃダメ、相手から来てもらうのをただ待ってちゃダメなのよ。

 あたしは放課後のシミュレーションを入念に行いながら一日を送るのだった――……。

お読みいただきありがとうございました。

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