第50話 ヤーバンの圧倒的パワー! だけど私は負けません!!
「ヤーバン・ジーン!」
私は目の前に立つ赤鬼を彷彿とさせる容姿を持つ男を睨みつけ、指を突きつけながらその名を呼ぶ。
そんな私を見てヤーバンはニヤリと笑い、禍々しい声で言う。
「久しぶりだな、小娘。俺の名前を憶えていてくれて嬉しいぞ。それに、貴様は俺の目論見通り戦士として成長を遂げ俺が戦うに相応しい存在となった。俺の身体も歓喜に打ち震えている」
そして、ヤーバンは私に見せつけるようにピクピクッと筋肉を震わせた。
……ううっ、相変わらず気持ち悪い奴……。
いちいち描写したくもないけど、ヤーバンは服と呼べるものをほとんど纏っておらず、ビキニパンツ一枚に黒いマントという実に変態チックな出で立ちをしているのだ。
しかし、そんな恰好だからこそ、見た目にもその全身を覆う筋肉の鎧がはっきりとわかる。
そして、その肉体から発せられる禍々しいオーラは周囲を圧倒するに十分だった。
しかし、私は怯むことなく不敵に口元を歪めつつ腕を組む。
「もちろん、忘れたことなんかないわ。いつか戦い倒さなければならない相手だと思っていたから……」
一度だけ相対したことのあるこの色んな意味で恐ろしい男……。ギーガーク帝国との戦いを続けるにあたって必ずぶつかり合うだろうと思っていた相手だ。
あの時はただ圧倒されていただけだったけど、今の私はあの時とは違う。
あれから何度も戦いを繰り返してきた私は強くなった……。今こそあの時の雪辱を果たす時なのだ!
私の態度と言葉にヤーバンは、「ほう」と楽し気に目を細める。
「ヤーバン・ジーンだって!? もしかして、あのヤーバン星の王子の!?」
その時、ヤーバンとは初対面のルビィが驚きの声を上げた。
え……お、王子様……? こいつが……? この筋肉お化けが……?
私はルビィの発した言葉に一瞬呆気にとられる。
いや……そりゃ別にね、王子様って王様の子供って意味だから別にどんなのでも生まれがそうなら王子様には違いないんだろうけど……。
でも、王子様って言ったらさ、普通はこう……キラキラしてて、スマートでイケメンで、性格も良くて……。
それこそ、私の大好きなヒーローみたいな人でいて欲しいというか……。
王子様という存在に対する理想と現実のはざまで私が葛藤していると、ヤーバンが口を開く。
「良く知っているな、貴様。その通り、俺はヤーバン星の王子だ」
「ヤーバン星はギーガーク帝国に侵略され、王族は皆殺しにされたはずだ! なんで生きてギーガーク帝国に与してるんだよ!?」
自分の素性を言い当てられたことに動揺もせずあっさりと首肯するヤーバンにルビィは叫ぶ。
それに対して、ヤーバンは事もなげに言うのだった。
「ハッハッハッ、確かにその通り、ヤーバン星は侵略を受け、王族……父や母、兄も殺された。だが、高い戦闘能力を誇っていた俺はギーガーク帝国のアーク・ノヴォス皇帝陛下の目に止まり、部下として迎えられたのだ!」
「そ、そんな……」
私はヤーバンの言葉に絶句する。
自分の両親やお兄さんを殺した帝国にそのまま仕えるなんて……。
私はあまりの衝撃に言葉も出なかった。
表情から私のそんな考えが伝わったのか、ヤーバンは不敵に笑う。
「ククッ、この世は弱肉強食。俺は以前からそう考えていた。その真理に従い、俺は帝国に忠誠を誓ったのだ。……貴様のような小娘にはわからんだろうがな」
そして、ヤーバンはそう吐き捨てるように言い放つ。
そのセリフと態度に私の怒りが沸騰する!
「それで、ギーガーク帝国の宇宙侵略計画に荷担したっていうの!? そんなこと、許されるとでも思ってるの!?」
私の怒りに満ちた言葉にヤーバンはフンと鼻で笑う。
「許す許さないの問題ではない。強いものが弱いものを蹂躙するのは当然の事なのだ、それが嫌なら強くなればいい。……それだけだ!」
そして、ヤーバンは高らかにそう宣言した。
その圧倒的な自信と言葉に私は気圧されそうになる。
だけど、ここで引き下がるわけにはいかない!
「そんなの間違ってるよ!! 強い力を持ってる人は、その力を弱い人のために使うべきなんだ!! そうすれば、誰も傷つかないし悲しむ人が減る!!」
ノブレス・オブリージュ――高貴なる者はそれにふさわしい義務と責任を持つ。
私の大好きなヒーローモノではよくそんなフレーズが出て来る。
力を持ってるからってそれを無軌道に振り回すんじゃ、ただの暴力だ。
そしてそれは決して良い結果を生まない。
力には責任が伴うものだから……。
「素晴らしい、大した『正義の味方』っぷりだ。だが、そんなものは理想論に過ぎない。お前が何を喚こうが、どんなに否定しようが強大な力に抗えないのは世の常だ」
ヤーバンが私に向かって言う。
そんなのわかってる! でも、だからこそ私がやらなきゃいけないんだ!!
「それでも私はその理想を信じたい! そして、それを正しいことだと証明するためにもあなたを倒す! 従わせるんじゃなくて、自分の想いを伝え分かり合うために私はこの力をあなたにぶつける!!」
私はそう言うと、ファイティングポーズを取った。
ヤーバンもニヤリと笑うと私に向かって構えを取る。
「どちらにせよ、俺と貴様が戦うという結果には変わりはなさそうだな。ならば、全力を持ってかかってこい!」
言われなくても!!
私は答えの代わりに地面を蹴りヤーバンに肉薄すると、右拳で殴りかかった。
ガアアン! 拳が見事に奴の腹に決まり確かな手応えが伝わってくる。
「はああああああああ!! だだだだだだだだだだだだ!!!」
そのまま、パンチの連打をヤーバンに向けて放つ!
まさにラッシュだ、ヤーバンは防御することも出来ずにされるがままに殴られ続ける。
そして、私はとどめとばかりにヤーバンの顔面に力を込めた強烈なストレートを放つ!
ガガン! と鈍い音が響き渡り、私はニヤッと口元を歪めるとさっとその場から飛び退く。
なんだ、偉そうなこと言ってた割に全然大したこと……。
「何だ今のは? それで攻撃のつもりか? 全く痛くも痒くもないぞ?」
……って、えぇ!? 嘘でしょ!? あ、あんな思いっきり殴られたのにノーダメージなの!? 私は信じられない気持ちでヤーバンをマジマジと見つめる。
ヤーバンはそんな私にニヤリと笑いかけてきた。
「どうした? そんな豆鉄砲では俺は倒せんぞ?」
う、嘘だぁ……やせ我慢に決まってるよ……! そうだ、そうに違いない! 私が今そう決めた!!
だけど、ノーダメージはハッタリにしても、さっきの攻撃が効果が薄かったのは事実みたい、考えてみたら筋肉お化けなんだから打撃にはかなりの耐性があって当然なのかも……。
ならば、これで!!
「ファイアショット!!」
私は指を突き出し、火炎弾を放つ! 私はよくこれを牽制として使ってるから弱い技だと思われがちだけど、直撃すれば大ダメージ&大火傷必須の技なのだ。
いくら筋肉があっても、さすがにこれならかなり効くでしょ!
もしかしたらかわされるか何らかの方法で迎撃されるかもだけど、それならそれで隙が出来て好都合、次の技に繋げられるもん! 私はそう目論んだのだけど……。
「フン、温いわ!!」
ヤーバンは私が放った火炎弾をなんと素手で受け止めてしまった!?
ポンッ……と意外と軽い音を立てて奴の拳の中で炎が消滅する。
う、うそ……!? そんなのあり!?
「どうした? もう終わりか?」
「そそそそそ、そんな私の技の中で、いいい、一番弱いのを防いだ程度で、いいい、イキらないでよっ!!」
思いっきり声に動揺が出てしまった! だ、だけどあれが弱い技だというのはほんと。さっきも言ったように牽制に使うようなしょぼ技だもん!
だ、だからあれが通じなくてもそこまで動揺することなんかないんだ!! そう自分に言い聞かせる私の心情などは知らずにヤーバンは私の言葉に対してそう来なくてはとばかりに小さく笑う。
「そうか、安心したぞ。ならば、そろそろ手加減はやめてもっと強い攻撃で来て欲しいものだな」
て、手加減してるわけじゃないんだけど……。
むしろ手加減されてるのはこっちだ、何しろあいつはさっきから攻撃を一切せずに私の攻撃を受け止めているだけなんだから……。
しかし、これはチャンスともいえる。あいつが本格的に攻撃を仕掛けてくる前に一気に最強技で勝負を決めてしまおう!
「よーし! ならお望みどおりにやってやるわよ! もっと強力な必殺技!!」
私はそう宣言し、両手を突き出しエネルギーを集中する。
使うのはもちろん、数多くの怪人を倒してきた必殺技シャイニーファイナルエクスプロージョン!
多少格上でもこれを受けたら大ダメージは免れない。
しかも今回は敵が余裕を見せてるのをいいことに、よりエネルギーの集中に時間をかけて今までにないくらいの特大のやつをお見舞いしてやる!!
これなら間違いなく倒せる!!
私はその確信のもと、溜め込んだエネルギーを一気に放った!
「いっけえ!! シャイニーファイナルエクスプロージョン!!!」
「これがシャイニーフェニックスの最強技だ、ヤーバン! お前がいくら強くてもこれを受け止める勇気はないだろ!?」
撃ち出された光弾がヤーバンに突き進む中、ルビィがそんなセリフを叫ぶ。
ナイスルビィ! ヤーバンの性格上こう言われたら真正面から受け止めようとするはず!
超速で逃れダメージ軽減されるかもという唯一の懸念があったけど、これなら!!
「ムン!」
案の定ヤーバンはググっと腰を落とし、両腕でガードの体勢を取る。
そして、光弾がヤーバンに命中する……!
ドッガァアアアン!! 凄まじい爆音と共に爆炎が上がる! よし、直撃……!
いつもより盛大な爆発が巻き起こっております。
おかげで商店街のお店の窓ガラスは割れるわ、地面は抉れるわで大変な騒ぎになってしまった。
先の炎上怪人との戦いから続けて遠巻きに見物してた人たちもあまりの爆発の大きさにポカーンと口を開けている。
商店街の人ごめんなさい! でも、これでヤーバンを倒せたんだから許してね♡




