第49話 自信? 過信? たまには調子に乗ることもある私です
「あ、ああ……」
ざりっと、怪人は驚愕の表情を浮かべ後ずさる。
その瞳に映るのは私の足元に倒れ、泡となって消えていくギーガーク兵。
奴らが襲い掛かって来てから僅か1分足らず、私は無数のギーガーク兵をあっさり撃退して見せたのだった。
「ふふん、どう? これが私の実力よ?」
私は余裕たっぷりに微笑んでみせると、怪人を見据える。
「くっ! そんな馬鹿な……またデータより強くなってる……。今回のギーガーク兵たちは質の良いものを揃えたはずなのに……。こんな短時間で……」
怪人は私が倒したギーガーク兵を見て驚愕の表情を浮かべる。そして、キッと私の方を睨んで来る。
「どうしたの? まだやるつもり? 逃げるなら逃げてもいいよ、私は追わないから」
なんとなく自分で言いながらちょっとだけ悪役チックなセリフだと思うけど、私は無駄に人を傷つけたいわけじゃない。
大人しく引いてくれるなら、それに越したことはないのだ。
だけど、怪人はさらに表情を引き締めると、きっぱりとこう言った。
「逃げるわけないでしょう! アタシをギーガーク兵なんかと一緒にしないで頂戴!」
そして、怪人はそのふくよかな体を揺らしてこちらにダッシュしてきた!
……遅い。あまりに遅すぎる……。
体重が重すぎるんじゃないの? 戦いをする怪人なんだからちょっとはダイエットしなさいよね……。
「てい」
私が無造作に足を突き出すと、怪人は自らそこめがけて飛び込んできて、
「ぎゃん!」
そのまま盛大にスッ転ぶ。……なんだかちょっと可哀想になってきたよ。
「つ、強い……。これがシャイニーフェニックス……」
「あなたが弱いんじゃないの?」
信じられないといった感じで呟く怪人に私は呆れた口調で肩をすくめる。
「そんなことはないわ……。アタシはこれでもあんたが前に戦ったゲームキングとかと同じくらいの力はあるのよ!」
ゲームキング? それは確か以前私を苦戦させたギーガーク帝国のエージェントロボの名前だ。
そっかー、もうあいつレベルの相手でも楽勝クラスにまで私って強くなっちゃったんだ。
思いもかけず怪人の言葉で自分の成長っぷりを実感した私だった。
「こうなったら……方法は一つしかないわね……」
私がウンウンと頷いていると、怪人が何やら覚悟を決めた表情で言った。
「何をするつもり?」
「もちろん、こうするのよ!!」
叫びぐわっと両手(両翼?)を広げる怪人に慌てて身構える私だったけど、怪人は想像すらしていなかった行動に出た。
「すいません~。アタシが悪かったですぅ!!」
怪人は突然、地面に膝をつき土下座したのだった。
「え? あ……いや……急にそんなことされても……」
私は困惑を隠せないながらも、とりあえず構えを解きポリポリと顔を掻く。
そんな私に怪人は涙でも流しそうな勢いで、身の上話を語りだした。
「ア、アタシは実はしばらく前までとあるSNSのマスコットキャラだったんですぅ、でもリストラされて……。ギーガーク帝国に拾ってもらった恩返しと、捨てられたSNSに対する復讐心でSNSを利用した炎上騒動を仕掛けようとしていたんですぅ」
SNSのマスコット……? 青い鳥みたいな姿……もしかしてそれって……。
「そ、そうなんだ……。ま、まあ、ちょっと同情する部分がないわけじゃないけど……。お寿司屋さんに迷惑を被らせたのは良くないと思うよ?」
「仰る通りです……。申し訳ありません……」
怪人はしょんぼりとうなだれながら呟く。
「反省してるなら、もうこんなことしないって約束できる? お寿司屋さんにちゃんと謝って。」
「はい……。わかりましたぁ……でもその前に、シャイニーフェニックスさんにしっかりと謝りたいんです。顔をこちらに……」
「え? う、うん……わかった。」
私は怪人の言葉に頷くと、ファイティングポーズを解き怪人の方に歩み寄る。そして少し屈んで話をよく聞くべくその顔を覗き込んだ。
「チャーンス! 甘いわよ、小娘ぇ!!」
ピシッ!
私の頬に一筋の赤い線が走り、そこから血が流れる。
あ、危なかった……。とっさに顔をずらしてなかったらまともに顔に食らってた……。
私は頬に流れる血を拭いながら、怪人を睨みつける。
「そっか、そっか。そういうことしちゃうわけ……。ほんのちょっとでも反省してると思った私が馬鹿だったよ……。もう、許さないから!!」
私は拳を握りしめてファイティングポーズを取る。
「ちっ、なんて反応速度! こうなったらヤケクソよ!! 必殺……」
「マグナムブレイカー!!」
怪人が行動を起こそうとするより早く、私は猛烈な回転を加えることで威力を高めた右拳を怪人の顔面に叩きこむ!
「みぎゃあああああ!」
怪人は悲鳴を上げて吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。そしてそのまま気絶してしまう。
カンカンカン! 私の心の中でゴングが鳴り響く。
「決まった! 正義は必ず勝つ!」
私は高々と拳を振り上げ勝利を宣言するのだった。
わああああああっ!! その瞬間、周囲からそれこそボクシングの観客みたいに歓声が響いた。
「すげぇぜシャイニーフェニックス!」
「俺たちのヒーロー!! あんたは最高だ、強くて可愛くて……」
「みうが戻ってくる前に決着を付けてしまうなんて……。この戦い見逃したあの子悔しがるかも……」
周囲から投げかけられる歓声と称賛の言葉。
あ、智子もいた。そういえば私トイレに行くって言い訳して変身してきたんだった……。
ま、いっか。宣言通り、あっさり勝てたわけだし、この程度の時間なら智子も不信感は抱かないでしょ。
「凄いよ、シャイニーフェニックス! 本当に強くなったね!」
そんな事を考えている間にも私への賞賛の言葉は止まない。
今度はルビィが私の元へと飛んできて、私の周りをグルグルと飛び回りながら言う。
「まさかここまでとはね……。正直、予想外だったよ」
「まあね……まあね、まあね!!」
皆からの賞賛に私は満更でもない気持ちで胸を張り、ふふんと鼻を鳴らす。
「もうどんな敵でも来なさいってなもんよ! 無敵のシャイニーフェニックスがちょちょいのちょいっと倒して見せちゃうんだから!」
私はルビィに向かって握りこぶしを突き出すと、満面の笑みを浮かべる。
私はひたすら舞い上がり調子に乗っていく……。
「ほう、大きく出たものだな小娘……。ではその力を見せてもらおう……」
その時、周囲に誰かの声が響き渡る。それはまるで地獄の底から聞こえてくるような重く、禍々しい声だった。
直後、未だに地面に倒れ気絶する怪人の前に上空から一つの影が降り立った……。
その影の主は全身を筋肉の鎧で固めた赤銅色の肌の鬼のような大男。
私はそいつに見覚えがある。かつて一度だけ相対したことのある相手だ。
確か、名前はヤーバン・ジーン。ギーガーク帝国の将軍を名乗っていた。
不敵に身構える私はまだ知らない。これから始まる戦いの前では、今までの戦いなんてまだほんのお遊びみたいなものだったということを……。
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