第4話 昨日までとは気分が違います
「シャイニーフェニックスパーンチ!」
どっかーんという音と共に爆発が起こり、怪人が吹っ飛んでいく。
「シャイニーフェニックス、ありがとう!」
「シャイニーフェニックス、最高だぜ!!」
「シャイニーフェニックスちゃん可愛い~!」
街の人たちの称賛の声が聞こえる。
ああ、最高……! 私、本当に正義のヒーローになっちゃったんだ!
私は照れながら手を振った。
「えへへ、みんなありがと!」
大歓声が上がり、私目掛けて街の人たちが駆け寄ってくる。
「わぁ、ちょっと待って……!」
「握手して~」
「ずるいぞ、俺が先だ!」
「私が」「オレが」「あたしが」「僕が」「わしが」「わてが」「ウチが」「拙者が」「それがしが」「わがはいが」「おいどんが」
口々にそんな事を言いながら私に殺到する人々。
「ちょ、ちょっと! 落ち着いてください! 皆さん、順番に並んでくださ~~~~~~い!」
だけど、もうみんな私の言葉なんて聞いていないみたいだった。
「ちょ、ちょっと痛い痛い、苦しいってば……」
私はもみくちゃにされ、しまいには押し倒され、踏んづけられてしまった。
「やめてください! やめてぇ~~~~!!」
私は必死に叫んだ。
その瞬間、ハッと目が覚めた。
い、今の……夢? なんであんな変な展開に……。
その時、私は目を開けたはずなのに視界が暗いことに気が付いた、おまけになんか息苦しい気がする……。
これって、何かが私の顔に覆いかぶさってるの?
私は腕を動かし、顔を覆う物体を引きはがす。
「あ、なんだ。あなたかぁ……」
私の手の中にあったのは枕元に置いてあった『プチピュア』に出てくる妖精の超巨大ぬいぐるみだった。
どうやらこれが寝てる間に私の顔の上に倒れてきたせいであんな夢を見たらしい。
あーあ、途中までは最高の夢だったんだけどなぁ、私がヒーローになって……
そこで私はバッと体を起こす。
夢……まさか……?
私は恐る恐る首を動かし、机の上を見る、そこには……。
「あった……」
私は思わず安堵のため息を漏らす、机の上には寝る前に外したSPチェンジャーが置いてある。
よかった、これは夢じゃなかったんだ……。
「ふぅ……」
もう一度息を吐いてからベッドから降りる。
そして、机の上のSPチェンジャーを手に取った。
「うふ、うふ、うふふふふふふふ……」
そう、夢じゃない、夢じゃないんだ! 私はついに正義のヒーローになったんだ!! 私は嬉しさのあまり思わず笑ってしまった。
途中で変な展開になっちゃったけどさっきの夢、あれが現実になる日もそう遠くはないかもしれない、だって、私はもうシャイニーフェニックスなんだもん!
「よぉし、せっかく今日は早起きできたんだし、余裕をもって朝ごはん食べて学校行こうっと!」
私は鼻歌を歌いながら階段を下ってリビングへと向かった。
「ねぇ聞いた、見た? シャイニーフェニックス」
「なんか、悪い奴らをやっつけたんだって」
「すご~い、かっこいぃ」
「でも、どこの人なんだろ?」
「宇宙人らしいよ」
「えぇ! そうなの!?」
ふっふっふっふっ、噂してる噂してる……!
教室へと向かう廊下を歩きながら聞こえてくる生徒たちの話し声に私はほくそ笑む。
紗印市に突如現れた謎のスーパーヒロインシャイニーフェニックス(とギーガーク帝国)の話題で学校中は持ちきりだった。
まあ、無理もないよね、突然こんなのが現れたら誰だって気になるし。
だけどそれが私のことだなんて……。
私は一夜にして世間の注目の的、有名人になってしまったのだ!
と言ってもみんなが噂してるはあくまでも“謎の人物シャイニーフェニックス”であって“香取みう”としての私じゃないんだけどね……。
本当なら今すぐこの場でクルッとターンして、みんなに向かってピースサインしながら、「私がシャイニーフェニックスなんだよー!」って言ってやりたいくらいだけど、それはやっちゃいけないことだった。
宇宙戦士は出来る限りその正体を隠さなければならない、正体がバレたら周囲の人が危険な目にあうから……。
それだけじゃなくて、正体がバレたりしたら、きっとテレビとか新聞とかネットで大騒ぎになって普通の生活が出来なくなっちゃうかもしれないし……。
だから、私はみんなの前ではシャイニーフェニックスとして振舞っちゃダメなんだ……。
ああ、でも……言いたい、言いたいよぅ! この複雑な乙女心(?)を誰かにわかってほしいよ~~~!!
そんな事を考えていたら、私はいつの間にか自分の教室の目前までやって来ていた。
もうみんなさっさと教室に入っちゃったのか周囲には誰もいないし、声も聞こえてこない。
ハッと私はあることに気づき素早く後ろを振り返る。
すると、今まさに私のスカートに手を掛けようとしていた翔くんと目が合った。
「きゃっ!」
私は思わず悲鳴を上げ飛び退く、だけどそのせいで足がもつれ、その場に尻餅をついてしまった。
「へへ、今日は水玉か」
そう言って翔くんは私を見下ろしながらニヤリと笑った。
私は今ちょうど翔くんの目の前で足を大きく広げて座り込んでいる状態だ。
つまり、今の私はパンツ丸見え……。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
私は慌てて立ち上がり、両手でスカートを押える。
「いつもいつも、何を考えてるのよっ!!」
私は翔くんをキッと睨みつける、だけど彼はいつものように涼しい顔をしながら、
「なんだよ、その顔は、お前が勝手にコケたんだろ? オレが何をしようとしてたかわかるのかよ、えぇ!? ん~?」
なんてふざけたことを言ってきた。
「な……!」
両手を広げ完全に馬鹿にしたような口調で言う彼に一気に頭に血が上った私が言い返そうとするより早く、翔くんはお得意の、そして私にとって恥ずかしいあの話を持ち出してくる。
「それにいいだろ、オレはお前に関してはパンツなんかよりもっとすごいもの見たことあるんだからな」
そう、『オレはお前と一緒にお風呂に入ったことあるんだぜ』というやつ。
「ま、また、そのはなしぃ……っ!」
私は顔を真っ赤にして俯く。
翔くんってばこの話を持ち出せば私が恥ずかしがって黙り込むと思って調子に乗って何度も何度も……!
ああ、もうっ! 今ここにタイムマシンでもあったら過去に戻ってちっちゃいころの私に言ってやりたい! いくら幼馴染だからって男の子とお風呂なんて絶対入っちゃダメだって!!
それにしても、恥ずかしいし悔しいぃ……! 私は翔くんの狙い通りに顔を伏せ黙り込んでしまった。
いつもこうだ、翔くんは私が恥ずかしがるのを見て楽しんでるんだ……。
「へへ、どうだよ、参ったか?」
翔くんが勝ち誇ったように言う。
私は悔しさの中で考えていた、なんとか一つだけでいいから彼を言い負かす材料がないものかと。
そして、一つ見つけ出した、翔くんを確実にやりこめられるネタを……。
私は顔を上げると、彼の目をまっすぐ見つめる。
「そうだね、お風呂の話は恥ずかしいけど、事実だから仕方がない、さっきパンツを見たのも私が勝手に転んだだけってことで許してあげてもいいよ」
「な、なんだよ、急に……」
怒りを引っ込めて穏やかな口調で言う私に対して、翔くんは少し戸惑った様子を見せる。
「ところで翔くん、翔くんはもちろん昨日のニュースは見たよね」
「ニュ、ニュース? 見たけど、それがどうしたんだよ」
突然話題を変えた私に翔くんは戸惑いながらも答えてくれた。
「じゃあ朝からみんなが話題にしてるあの話も当然知ってるよね?」
「あ、ああ。オレも驚い……」
言いかけて翔くんはハッと口をつぐむ、その反応に満足しつつ私は彼にビシッと指を突き付けた。
「翔くん私に言ったよね、ヒーローなんて現実にはいないって、でもいたじゃない、正義のヒーロー・シュナイダーと正義のヒロイン・シャイニーフェニックス!」
「うっ……」
私は翔くんに詰め寄る、彼は顔をしかめながら後ずさる。
「謝ってよ」
「あ、謝る!?」
「オレが間違ってました、ヒーローの存在を信じてたお前のことを馬鹿にしてすみませんでしたって」
「なっ……!」
「ほら、早く、翔くんが自分の負けを認めて謝れば私だってこれ以上怒らないよ、ね?」
「ぐっ……」
私はさらに翔くんに近づき、彼の目の前まで顔を近づける。
「ねぇ、翔くん、どうするの? 認めるの、それとも……」
鼻先がくっつきそうなほどに詰め寄る私に翔くんは慌てたように叫んだ。
「だーっ、ああ、もうわかった、わかったよ、オレが悪かった! その件に関しては負けを認めてやるからそれ以上顔を寄せるな!」
上体を逸らせつつ両手を上げ降参ポーズをする翔くん。
よっぽど私に謝るのが屈辱的なのかな? 顔が真っ赤だよ。
「ふふん♪ わかればよろしい♪」
ようやく勝ったことに満足し、私は彼から離れると腰に手を当て胸を張る。
そして勝ち誇った顔で彼を見下ろしながら鼻を鳴らすのだった。
「くそ、なんなんだよこの敗北感は……」
翔くんは悔しそうな顔をしながらブツクサ言っている。
「どーよ、これが言い負かされるって感覚なのよ。これに懲りたら少しは反省することね~♪」
「ちくしょう……今のは反則だろ……顔が近いんだよ、顔が……」
なにやらモゴモゴ言いつつ、なおも悔し気な様子を見せてる翔くんに背を向けると、私は颯爽と教室の扉を開き中へと入って行った。
ああ、気持ちいい! 口で翔くんに勝ったのなんて初めてかも知れない。
泣きわめいて謝らせたことならちっちゃいころに何度かあるけど、こうして正論で打ち負かしたのって多分生まれて初めての経験だよね? しかも大好きなヒーローに関する話題で! ああ、なんてスッキリした気分! 今日はいい夢見れそう! そんなことを考えながら、私はスキップでもするように軽やかな足取りで自分の席へと向かう。
パンツ見られてた時点で翔くんの目的は達成されてしまったとか、勝ったという感覚のせいで他の事への怒りがどうでもよくなっちゃったとか、よくよく考えてみれば9対1ぐらいで私の大敗北なんだけど、この時の私はそんなことにも気が付かないほど浮かれていたのだった。
「おはよ~、みう」
私が翔くんとのやり取りを振り返って悦に入っていると、隣の席から智子が声をかけてきた。
そう、智子と私の席は隣り合っていた。親友にして隣同士の席、この席順に決まった時私は運命の巡り合わせに感謝したものよ。
ちなみに翔くんの席は私の斜め後ろで、私が彼に視線を向けるにはいちいち振り向かなければいけないのだ、あいつの顔なんて好き好んで見たいわけじゃないからいいんだけど……
「おはよう、智子」
私は軽く手を上げて応えると、鞄の中から教科書や筆記用具なんかを取り出し机の中に入れ始める。
「ねぇ」とそこで突然智子が私に話しかけてきた。
「ん?」
「みうはどう思う、例のシャイニーフェニックス」
私はやっぱりきたかと、心の中で呟いた。みんなが話題にしてる事柄だもの当然智子も興味あるよね……でもあんまりその話題には触れてほしくないんだけどな……
そんな私の思いとは裏腹に、彼女はさらに言葉を続ける。
「ヒーローオタクとしては現実に突如出現した自称正義のヒロインについてどう思ってるのか気になってさ」
「う~ん、そう、だね……」
私は言葉を濁しながら曖昧に答える。正直言ってあまり触れたくない話題だった。だって下手なことを言って私がそのシャイニーフェニックスだってバレたりしたら大変だもの。
特に私のことを良く知ってる関係者――たとえばパパやママとか、智子とか――相手にうかつなことを言えば私とシャイニーフェニックスの微妙な共通点から私がシャイニーフェニックスだとバレてしまうかも知れない。それは絶対に避けたかった。
……本当ならさっき自分から翔くんにシャイニーフェニックスの話題を振ったのも結構危ない橋ともいえたんだけど、あの時はとにかく頭に血が上ってたからそこまで考えが回らなかったのよね……
ともかく、せめて智子にはこれ以上この話を続けないで欲しかった。でもそんな私の心中などお構いなしに、彼女の追及の手はさらに続く。
「ねぇ、どうなのよ?」
そう言って身を乗り出してくる彼女に対して、私は慌てて両手を前に出して押しとどめるようなポーズを取ると、言葉に気をつけつつ答える。
「ちょっと、落ち着いてってば……。私もニュース見てびっくりしちゃってさぁ、なんというかちょっと現実感がなさ過ぎてまだ受け入れられてないって感じなのよね……」
そう言いつつ私は苦笑いを浮かべるしかなかった。だってまさか自分がその当事者だなんて言えるわけがないもの。それに下手に喋ってボロが出るよりは適当に誤魔化しておいた方が無難だと思うし……。
「そうなの? なんかヒーロー大好きのあんたにしてはいまいち熱量が感じられないわね……」
私もそう思う。もし自分が当事者じゃなかったとしたら、夢にまで見たリアル正義のヒーローの出現に狂喜乱舞してたはずだもの……。
というか実際自分がヒーローになったという事実に昨日から狂喜乱舞しっぱなしだもんね。
だけど、みんなの騒ぎっぷりを見て少しだけ冷静になって正体がバレた時のリスクを考えてしまうと、やっぱりどうしても不安になってしまう。
そんな私の内心を知ってか知らずか、なおもしつこく質問を続けようとする智子の言葉を遮って、担任の先生が教室に入ってきたので私たちはそこで会話を打ち切ることにした。
ありがとう、先生! 普段はもっと遅く教室に来てよとか思っててごめんなさい、今日はナイスタイミングです!!
などと自分勝手な感謝を送る私など気にすることもなく(当たり前)、先生はいつも通りのホームルームを始めた。
今日も私の学校での一日が始まろうとしている。私は大きく伸びをすると、気合を入れ直して授業に臨むことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『ファイアショット!』
『だだだだだだ、てりゃあっ!』
『シャイニーファイナルエクスプロージョン!』
俺――ブーミはギーガーク帝国移動要塞基地内部にある自室で、昨日のシャイニーフェニックスとオドモンスターの戦いの記録をモニターで確認していた。
「ううむ、宇宙戦士に成りたての新人でこの強さとはな……。末恐ろしい。この娘が成長した我らにとってどれほどの脅威となるか……」
俺は思わず声に出して呻いていた。あの伝説の宇宙戦士シュナイダーが見出しただけのことはあると言わざるを得ないな……。
だが、それよりも……。
俺は機器を操作し、シャイニーフェニックスの顔をアップにする。
やはり可愛い……! 俺はロリコンではないが、ロリがイケないというわけではない、むしろ美少女を屈服させ自分のモノにするというシチュエーションには大いに興奮するし大好物だ! そして今俺の目の前にはその理想とする少女がいるわけで……。
「クク……」
俺は思わず口元を緩めてしまう、そして映像を再開する。
「ほう、敵の戦力分析か。貴様にしては真面目なことだな」
突如後ろから掛けられた声に俺は心臓が飛び出るほど驚いた。慌てて振り返るとそこには一人の男が立っていた。
赤銅色の肌を持つスキンヘッドのその男は、ビキニパンツ一丁の上にマントという変態チックな格好をしているが、鍛え抜かれた肉体に刻まれた数々の傷跡や歴戦の勇士を思わせる鋭い眼光から只者ではないことが窺える。
「ヤ、ヤーバン様。いつの間に……。というか俺にしてはってのはちょっと酷いじゃないすか、俺だってたまには真面目に仕事しますよ」
「フン、どうだかな……」
この男の名は<ヤーバン・ジーン>。俺たち戦闘部隊をまとめ上げる将軍で、司令官シィ・レガーン様の右腕としてこの基地のナンバー2の立場にいる男だ。普段は寡黙で冷静沈着なのだが、戦いとなると人格が変わったように好戦的になり、その圧倒的な力で敵を蹂躙するのだ。
「それにしても、これがシャイニーフェニックスか、どう見てもただの小娘だが……」
俺を押しのけてモニターを覗き込んだヤーバン様はそう呟く。
「そう見えるでしょ、しかし、実際はとんでもない実力の持ち主なんでさぁ! それに見た目も可愛らしいじゃないですか!」
思わず熱弁してしまう俺を無視してヤーバン様は映像を食い入るように見つめる。
ヤーバン様に相手にされないので、俺は言葉を止め再び映像に注目する。
映像の中のシャイニーフェニックスの短いスカートがひらひらと揺れるたびに中身が見えないものかと期待しながら……。
(ああ、やっぱり可愛いなぁ、あの柔らかそうな太ももに顔を挟まれたい……)
そして、期待通りにシャイニーフェニックスは吹き飛ばされ大股を広げる。
おおっ、と心の中で歓喜の声を上げるが、彼女のスカートの下は黒いスパッツで包まれておりパンツは見えなかった。残念である。
しかし、俺のシャイニーフェニックスのあられもない姿をヤーバン様に見られるのは嫌なので、残念な反面少しホッとしたのだった。
当のヤーバン様はと言えば、興味があるのは戦士としてのシャイニーフェニックスの実力だけらしく、すぐにモニターから目を離すと俺に話しかけてきた。
「それで、この小娘について何か分かったのか?」
「いえ、戦場で採取した髪の毛を調べてみたのですが、分かったことと言えば純粋な地球人であることと、女であることだけでした。どうも変身すると機密保持機能が働くらしく、素性どころか、正確な年齢すらわかりません。変身で年齢までは変わらないはずなので、見た目通り10~14歳くらいだとは思いますが……」
俺はお手上げだと言わんばかりに肩を竦める。
「戦闘能力に関してはまだデータが少なすぎてなんとも……。オドモンスターを倒せたのはまぐれの可能性もありますし……。ただ、戦闘センスはかなり高いかと……」
俺は正直に答えた。
「ふむ。この戦いぶりを見てもそれは確かだろうな」
ヤーバン様は映像が繰り返されるモニターをコツコツと指で叩きながら考え込む。
「あの、ところでヤーバン様。ここには何をしに来たんですか?」
俺が尋ねるとヤーバン様は思い出したように顔を上げた。
「ああ、そうだったな。レガーン殿がお呼びだ。作戦会議室に来い、だそうだ」
レガーン司令のお呼び出し……。俺は頭を巡らせ考える。
まさか、何か叱責されるようなミスでもしてしまったのだろうか? オドモンスターを倒され逃げ帰った件に関してはすでにお許しを頂いているはずだが……。
となるとやはり任務――シックザールクリスタル探索に関しての話か、あるいはシャイニーフェニックスへの対応についての相談だろうか……?
(まあ、どっちにしろ行かないわけにはいかないよな……)
俺は覚悟を決めると立ち上がり、ヤーバン様に向き直る。
「わかりました、すぐに向かいます」
そして、ヤーバン様の横をすり抜け、俺は作戦会議室へと向かった。
作戦会議室、広いテーブルの一番奥でレガーン司令が待っていた。
「第一部隊長ブーミ・ダイン、仰せの通り、ただいま到着いたしました」
俺が敬礼をすると司令は鷹揚に頷く。
「うむ、ご苦労。さて、単刀直入に言おう、貴様を呼んだのは他でもない、貴様を対シャイニーフェニックス特別対策班班長に命じるためだ」
よっしゃー! と俺は思わず心の中でガッツポーズを取る。
まさかこの俺が、シャイニーフェニックスの専任担当になれるとは……!
これで大手を振って奴と戦える……ッ!!
(やったぜ……!!)
俺のテンションはもう最高潮だった。
しかしそんな内心とは裏腹に、努めて冷静に振る舞うことにする。
「かしこまりました、謹んでお受けいたします!」
「シャイニーフェニックスについては今後は貴様とその部下に一任する。殺すなり捕らえるなりとにかく奴を排除せよ! よいな?」
「はっ!!」
俺は敬礼をすると作戦会議室を後にした。そして足早に自室に戻ると椅子に腰かけ机に肘を突く。
「ククク、シャイニーフェニックス、お前を必ず俺のものにしてやるぜ……ッ!! フハハハッ!!!」
俺の頭の中に、暗い欲望に満ちた妄想が次々と浮かんでくるのだった……。
「おっと、こんな事をしている場合じゃない。さっとく部下と共に地球に赴き、シャイニーフェニックスを見つけ出さねば……!」
俺は椅子から立ち上がると、早速行動を開始することにしたのだった。