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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第8章【絶体絶命! ヤーバン・ジーンの挑戦状!!】

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第48話 お寿司屋さん危機一髪! これが本当のモンスタークレーマーって奴ですか?

「まったくなんて酷い寿司屋だろうね。客を差別して追い出してさ。今の時代これは問題になるよ?」

 寿司屋の前では一匹の変な生物が両手を広げてそいつを追い出したらしい寿司屋の大将に向けて抗議していた。

 でっぷり太った青い人型サイズの巨大な鳥、そんな容姿を持つそいつはどう見ても地球の生物ではない。

 間違いなくギーガーク帝国の怪人だ。

 声は高く、口調もどことなく女性っぽい雰囲気があるが、見た目が見た目なので性別はわからない。……そもそも怪人に性別の概念ってあるんだろうか?

 それはともかく、この怪人がひたすら面倒臭い性格をしてるらしいということだけはハッキリとしていた。

 市民たちは喚く怪人を遠巻きに眺めておりそこには異様な雰囲気が漂っていた。

「何が差別だ! いいか、あんたがうちを追い出されるのは怪人だからじゃない。あっしはあんたを誠心誠意もてなそうとしたんだ、だけどなぁ、店の中で無断で動画撮影はするわ、大声で騒ぐわ、挙句の果てには他のお客さんに絡みだすわ……。そんな迷惑な客だから叩きだされんだよ! わかったか!!」

 怪人の言葉に寿司屋の大将がそいつに向かって指を突きつけながらそう言い放つ。

 しかし、怪人は怯むことなく、さらに声を高くし喚き散らす。

「ハッ、そんなの言い訳だね。最初からアタシを店から叩き出す腹積りだったんだろ? あー、やだやだ、せっかく寿司屋に来たってのにこんな不快な気分にさせられて。この事SNSで拡散してやるから覚悟しとくんだね!」

「おい、てめぇ! いい加減にしろよ!!」

 ついに堪忍袋の緒が切れたのか寿司屋の大将が声を荒げた。

 そして、怪人の胸ぐらに摑みかかる。だが、怪人はそんな大将の様子にニヤリと嫌らしい笑みを浮かべる。

「あらら、やっちゃった……。これであんたの人間性が明るみに出ちゃうね。暴力を振るう店主とアタシ、世間はどっちを信用するかな?」

 その言葉に大将はギリッと歯を噛み締めると、怪人を掴んでいた手を放す。

「くっ……この野郎……」

 悔しげに呟く大将に怪人はさらに調子に乗って両手を広げて周りを見渡しながらこう叫んだ。

「見たかい? この大将は客の胸ぐらに摑みかかって罵詈雑言を浴びせるとんでもない男だよ! みんなも見ただろ? 大将の本性を!! さあ、SNSで拡散しちまいな!!」

 状況は大将に不利だった。店を追い出したのは怪人が店内で迷惑行為を働いたからだという大将の主張は密室での出来事のため証明しづらい。

 そこに来て、さっきの大将の行動だ。明らかに怪人の挑発が原因とは言え、人の大勢いる前で大将が人(?)の胸ぐらを掴むという行動に出てしまったのは事実なのだ。

 客観的に見て、それは店側が悪いと思う人間も少なくないだろう。

(これはまずいよ……このままじゃ、寿司屋の大将、暴力店主としてネットで炎上しちゃう……)

 私は物陰から様子を伺いながら、焦りを感じていた。

 今のところ怪人が明確な悪事を働いていない以上私が出て行って問答無用で倒してしまうわけにもいかない。

 そんな事をすれば、怪人は私の事も「怪人だからって差別するなんて、酷い正義の味方もいたもんだ」と非難し市民を味方につけてしまうかもしれない。

 私はあの大将の事は昔から知っている、ちょっと頑固なところもあるけど、お客さんに寄り添い、丁寧な仕事をするいい人だ。

 その大将の店が怪人に潰されようとしているのだ。どうにか助けてあげたい……。

 怪人が店内で行った迷惑行為を証明できれば……。

 しかし、店員さんの証言は身内のものなので証拠としては弱い。

 怪人に絡まれたというお客さんは怪人を恐れてか、あるいはこれ以上トラブルは御免だと判断したのか、遠巻きに見ているだけで証言をしてくれそうにない。

「ルビィ……どうしよう? なんかいい方法はない? あの怪人の迷惑行為を証明するいい方法……」

 私は涙目にながらルビィに尋ねる。

「う、う~ん……証拠になる動画か音声でもあれば……でも、あの店では動画撮影禁止だったはずだし、防犯カメラも……」

 翼を組んで唸るルビィだったけど、ハッとした表情で顔を上げる。

「あっ、そう言えば()()()()()()()()()()()がいるじゃないか! そいつの動画を証拠にすればいいんだ。大丈夫シャイニーフェニックス、ここはボクに任せて!」

 ルビィの言葉に私は瞳を輝かせる。だけど、どういう事だろう? 店内で動画撮影してた奴って……。

「ハックモードオン! 強制接続、強制再生!!」

 ルビィが叫びその瞳にきぃぃんといくつもの文字や数列が映し出される。

 その直後――

『あの、お客さま、店内での動画撮影はご遠慮ください』

『あぁ? 何言ってんの? アタシがこの店を動画撮影してSNSに拡散したら、この店は大繁盛だよ? アタシはこの店を繁盛させてあげようとしてるの。感謝こそされど文句を言われる筋合いはないわ』

『しかし、他のお客さまの迷惑にもなりますし……』

『迷惑なんかじゃないよ。ねぇ、そうでしょ?』

『え、いや、あの……』

『そ・う・で・しょ?』

『め、迷惑じゃないです……』

『ほら、こう言ってるよ! あーあ、すっかり気分悪くさせられちゃった。お詫びとして寿司を全部タダにしなさい』

『……ふざけるな……』

『はぁ~?』

『ふざけるな! てめぇなんか客でも何でもねぇ、出ていけ!!』

 ――と突然大音量で先ほどの店内のやり取りと思しき音声が流れだしたのだ!

「あ、あにゃにゃ!? どうなってんのよ、これは~。何故アタシのスマホが勝手にさっきの動画を再生……ハッ!」

 さっきまでの余裕はどこへやら、慌てた様子で自分の身体をまさぐる怪人。

 しかし、周囲から浴びせかけられる冷たい視線に気づき、ゆっくりと身体の動きを止める。

「な、なんなのよあんたたち……みんなしてアタシを見て……」

 そして周囲を見回した後で自分を取り囲む人々から一斉に向けられた視線に気圧されたのか、怪人は後ずさりする。

「あんなことやってたら店を追い出されるのは当然だな!」

「しかも大将、最初は冷静に丁寧に対処してたわよね? どう見ても悪いのはあの怪人の方じゃない」

「ここまでの事をしておいて、追い出されたら差別とか喚いてるとか……。厚かましいにも程があるわ!」

「やっぱああいう輩はこの世から排除しないとダメね」

 市民たちの冷ややかな視線、そして先ほどまで怪人に擁護的な意見を述べていた人たちすら怪人の所業に怒り、口々に怪人に対して非難の言葉を浴びせかける。

「なるほど、動画撮影してた奴って怪人自身の事だったんだね」

「そういうこと、自分の動画が悪事の証拠にされるってどんな気分かな?」

 事態が好転したことに、笑顔を向けて言う私に、ルビィが口角を吊り上げて笑う。

「まあ、さっきのはあんまり使うべきじゃない機能なんだけどね。他人の機械機器を乗っ取って操作するなんて、褒められた行為じゃないし」

 続けて言って苦笑するルビィに私も「あはは」と苦笑で返す。

 確かに危険な機能とも言えるだろう。今回は仕方なかったとはいえ出来るならもう使わない方がいいかも知れない。

 それにしても、あんな能力も兼ね備えてるなんて流石はS.P.Oの生み出したサポートアニマル、実に頼りになる相棒くんだ。

「うるさいよっ!! 地球人ども!! せっかくこのアタシがこの薄汚い寿司屋を流行らせてやろうとしてやったのに、それを台無しにするなんて……!!」

 私たちがそんなやり取りをしている間にも、市民たちからの批判の声に晒され続けていた怪人が、とうとう怒り心頭といった感じで身体をぶるぶると震わせ始めた。

「この炎上系怪人アオ・イットリー様を怒らせた事を後悔させてやる!」

 顔を上げ叫ぶ怪人、その言葉に市民たちの間に緊張が走る。

「まずはあんたよ、死になさい!!」

 怪人は目の前にいた大将に目を付け腕を振り上げる!

「ファイアショット!!」

 しかし、火炎弾が怪人と大将の間を切り裂くように通り、怪人は体を思いっきりのけ反らしながら叫んだ。

「だ、誰!? いや、まさか……こういうタイミングで出てくるのは……」

 ふふん、怪人さん。良く分かってるじゃない、お約束って奴。

 そう、もちろんさっきの火炎弾を放ったのはこの私……

「転生の炎は悪を焼き尽くす正義の業火! シャイニーフェニックス参上!! 炎上系怪人だか何だか知らないけど、悪い怪人は、物理的に炎上させるよ!!」

 ビシッと決めポーズを取りながら、言い放つ。

 怪人アオ・イットリーは宿敵の登場に驚きの表情を浮かべるも、すぐに口元をニヤリと歪めた。

「出たね、シャイニーフェニックス……。相変わらずのタイミングの良さだけどある意味狙い通りともいえるわね」

「どういうこと?」

「ふふ、アタシの任務はあんたを誘き出し倒すこと。そのためにここに来たのよ」

「じゃあ、こんな騒ぎを起こしたのも私を誘き出すためだったってこと?」

 もしそうならまんまと釣られた形だ。目を見開き尋ねる私に、怪人はどこかバツの悪そうな表情を浮かべる。

「……違うわ。あんたをどうやって誘い出そうか悩んでたら美味しそうな寿司屋を見つけて、こうついふらふら~っと……」

「え、えぇ……。じゃあ、なんでクレーマーみたいなことしてたのよ! 大人しくお寿司を食べてれば良かったじゃない!」

「せっかく来た寿司屋よ? 店内を撮影するのは当たり前でしょ、それなのに大将ときたら撮影は禁止だの他の客の迷惑になるだの……。腹が立ったから文句言ってやっただけよ!」

 私はあまりの言い草に呆れて言葉も出なかった。この怪人、文字通りのモンスタークレーマーだ……。

 しかし、改めて思うけど、やっぱりギーガーク帝国ってお笑い集団なんじゃ……。

 どいつもこいつもいまいち敵としての緊張感に欠けている気がする、それに正直言って全然強くないし……。

 釣られてこっちまで気が抜けてきそうだよ、やり取りを聞いていた市民の皆さんやルビィもどこか呆れ顔だし……。

「……だけど結果オーライ、こうして見事あんたを誘い出せたわけだし、上には最初からこういう作戦だったと報告しておくわ。……さて、ここで死んでもらうわよ、シャイニーフェニックス!」

 私が心の中でそんな事を考えているとは知る由もない怪人はそう言うと指をパチンと鳴らす! すると周囲からわらわらと戦闘員ギーガーク兵たちが現れ私たちを取り囲んだ。

「ギーガーク兵なんかで私をどうにかできるとでも?」

 周囲を囲む不気味なのっぺり顔集団の兵士たちを見回しながらそう言い放つ私に、怪人は余裕の笑みを浮かべて言う。

「さあ、どうかしらね? こいつらは確かにそれほどの強さはないわ。しかし、多人数で掛かればあんたを疲れさせ力を奪うことはできる。そして、その隙にアタシがあんたに止めを刺す!!」

「そう。なら……やってみなさい!!」

 そう言ってファイティングポーズを取る私に、怪人は片手を上げそれを勢いよく前方に振り下ろす。

「いけ、ギーガーク兵たちよ!!」

 一斉に襲い来るギーガーク兵を、私は口元に笑みさえ浮かべつつ迎え撃つのだった。

お読みいただきありがとうございました。

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