第45話 智子とお出かけ、楽しい一日の始まりです!
夜、夕食を終え、お風呂を済ませた私はベッドに横になりながら、夕方の事をルビィと話していた。
「それにしても、最近の私、なんか絶好調! って感じだよね。この間はブーミを倒して、今回はあんな強そうな怪物をあっさり撃退、もう怖いものなしだよ!」
私は浮かれていた。今日の戦闘でもピンチらしいピンチもなく、危なげなく勝利できたし、みんなからの賞賛の声も浴びることができたからだ。
「そうだね、正直みうちゃんがここまで出来るようになるなんてボクも思ってなかったよ、もう見習いじゃなくて一人前の宇宙戦士と名乗ってもいいくらいだ。このままじゃボクもサポートアニマル廃業かな、なんちゃって」
そんなふうに冗談めかして言うルビィに私はさらに気を良くする。
「あはは、そうかもねぇ、でも私が強くなっても楽はさせないから安心してね」
「えぇ? それは困るなぁ」
同じく冗談で返す私におどけた口調でそう答える彼の頭を軽く撫でながら、私たちは笑い合った。
~♪
その時、部屋に小さな音が響く。これはメッセージアプリ『線-SEN-』の通知を報せる音だ。スマホを手に取り画面を見ると、智子からのメッセージの着信の旨が表示されていた。
「誰から?」
覗き込んで来るルビィに私は、
「智子からだよ」
と言いつつ画面を隠す。
いくら相棒といえども親友とのプライベートなやり取りを見せるわけにはいかないのだ! 特に見られて恥ずかしいやり取りしてるわけでもないけど、一応ルビィって精神は男の子だし……ね?
そんな私の意図を察したのかルビィもそれ以上は追及せず、「そっかぁ」と言ってベッドに飛び込んだのだった。
私はそれを確認すると、アプリを起動しトークルームを開き、内容に目を通す。
『みう。まだ起きてるよね?』
今時間は丁度午後10時を回ったところだ、寝ていても不思議じゃないためにまずは確認を取ることにしたようだ。
私もそれに答えるように素早く指を動かし返信を打つ。
『うん、起きているよ』
送信ボタンを押すと同時に既読マークが付く。そしてすぐに次のメッセージが表示される。
『明日第二土曜日だからお休みだけど、あんたもう予定入れちゃった?』
私たちの通う秋桜学園はちょっと珍しい隔週週休2日制で土曜日は休みの時とそうじゃない時がある。
明日は丁度お休みの日なのだけど、私は実はこのメッセージを見るまですっかり忘れていたのだった。
だってややこしいんだもん! と誰に言ってるのかわからない言い訳を心の中でしつつ、私は再び返信を打ち込む。
『特に予定はないよ。もしかして、どこかに遊びに行こうって話?』
『察しがいいわね、って誰でもわかるか。そんなわけで、あんたが良いなら明日どこか行きましょうよ』
表示されたメッセージに私は僅かに逡巡する。せっかくのお休み、一人で過ごすのもいいけど、ここはやっぱり……。
『うん、いいよ!』
そう打ち込んで送信ボタンを押す。すぐに既読マークが付き、返事が返ってくる。
『じゃあ決まりね、時間は……』
そんなやり取りをしながら私たちは明日どこに遊びに行くか、何をしようかと話し合った。
そして、ある程度話がまとまるとおやすみの挨拶を交わしてアプリを閉じるのだった。
「出かけるの? 気を付けてね、もしかしたらギーガーク帝国の連中が出てくるかもしれないし」
「ちょっと、嫌なこと言わないでよ。もう……」
せっかくの楽しい気分に水を差すようなことを言われ、私はルビィを半眼で睨みつける。
「ご、ごめん。だけど心配で……」
慌てて謝るルビィに私は苦笑しつつ、「大丈夫だよ」と返す。
「仮にギーガーク帝国が出てきても、今の私なら平気平気! 瞬殺して楽しい一日に華を添えるよ!」
そう言って力こぶを作って見せる私に、「頼もしいなぁ」と苦笑しながらもどこか安心した様子のルビィだった。
「さあてと、そうと決まればさっさと寝ないとね~。智子って時間には厳しいから寝坊なんてして遅刻したら怒られちゃうし」
そんな軽口を叩きながら、布団を被る私。そしてすぐに、心地よい眠気が襲ってくるのだった。
明日はきっと楽しい一日になりそうだ……そう、楽しい一日に……。
「あああああああああああ!!」
翌朝、香取家のリビングに私の大絶叫が響き渡る! 理由は、お察しだろう。
そう、私は見事に寝坊してしまったのだ! 昨夜の自分のセリフが完全にフラグになってしまった形だ。
言い訳するわけじゃないけど、昨日の私は実は疲れていたのだ。
シャイニーフェニックスに変身して戦う、つまりSPスーツを纏うという行為はそれだけで体力を大いに使う。
だから、戦いがあった次の日はこうして寝過ごしてしまうことが多いのだけど、まさに今日もそのパターンにハマってしまった。
まあおかげで体力は万全、仮にルビィが危惧した通りギーガーク帝国の奴がやってきても負ける気はしないけどね!!
ともかく私は、私が出掛けることを知らなかったママの驚き顔に見送られながら、急いで家を飛び出したのだった!
ちなみにルビィは……まだ寝てました……。
智子との待ち合わせはいつもの駅前商店街。
その中心部にある時計の下で不機嫌そうに足を踏み鳴らす親友の姿を遠めに確認し、私は思わずさっと身を隠してしまう。
あっちゃ~。これは智子怒ってるよぉ……。これで5回連続だからなぁ彼女との約束に遅刻するのは……。
とはいえここで隠れてても余計に智子を怒らせるだけだ。
大丈夫大丈夫、親友だもん、「ごめん、待たせちゃって」とか言って軽く上目遣いでもしてあげれば笑って許してくれるに決まってるよ!
え? それは、男の子相手に使うような手だって?
まあね、翔くんとかだったらそれで、「うっ……」とか言っちゃって顔を赤くしながら「もうすんなよ」って許してくれるんだけど、智子だからねぇ、むしろ、「そんなんで誤魔化そうとして……あんた、反省って言葉知ってる?」なんて言われちゃうかも。
そんな想像をして苦笑しつつ、私は意を決して彼女の前に飛び出した!
「ごっめんごめーん! 待ったぁ!?」
精一杯の明るい声で謝罪の言葉を口にすると、智子はゆーっくりとこちらに顔を向け、にっこりと笑顔を見せてくれた。
ほらっ! やっぱり!! 流石親友!! 許してくれるんだ!!
しかし、そんな感じで目を輝かせる私に向けて智子は、
「今から行く喫茶店の代金、全部あんた持ちね」
と非情の一言を口にしたのだった。
ああ……私のお財布の中がどんどん寒くなっていくよぉ……。
さて、私たちは商店街の片隅に最近オープンした小さな喫茶店へとやって来た。
私が素直に謝り、奢りという罰を受け入れたからか智子は比較的簡単に機嫌を直してくれて(それでも、二度と遅刻するなと念を押されたけど)、二人向かい合い席に座ってメニューを眺めているところだ。
「へえ~、結構種類あるんだねぇ~、どれにしよっかなぁ~」
私は楽しげに呟きながら、美味しそうな写真付きのメニューに視線を走らせる。
「あたしはこのジャンボパンケーキってのにするわ。おススメって書いてあるし」
流石智子、即断即決だね。私は色々と目移りしちゃって簡単に決められないよ……。
なんだったら、この店のメニュー全部食べつくしちゃいたいくらい。
とはいえ当然そんなわけにもいかないし、決めないとなぁ。
私は智子が頼んだというジャンボパンケーキの写真に視線を向ける。
じゅるっ……。写真だけでわかる、ふわふわ具合、それにとろーっとしたメープルシロップとバターたっぷりの生クリームが最高に美味しそうだよぉ……!!
思わず涎が出てきちゃう。
「私も智子と同じのにする!」
私が勢いよく言うと、智子はにっこりと笑い、店員さんを呼ぶために手を上げた。
「すっごいボリューム! 美味しそ~!」
目の前にデンと置かれたジャンボパンケーキに私は瞳を輝かせる。
いや、これは本当に凄いよ! 私の顔よりも大きいんじゃない!?
しかし、カロリーの高そうなことこの上ない一品……。それがまた背徳感をそそってたまらないんだけど!! これ絶対美味しいやつだ……間違いない……!
「確かに、写真で見るのとでは迫力が違うわね。思わず引き込まれそうよ……」
私の向かいに座る智子もゴクリと唾を飲み込んだ。そして彼女はナイフを手に取り、その巨大な一切れを切り分けると、フォークを使いそれをゆっくりと開いた自分の口に運んでいく……。
パクッ……! もぐもぐ……。
「……っ!?」
次の瞬間、智子は目を見開き驚いたような表情を見せたかと思うと、そのまま無言で黙々と食べ進めていったのだった。どうやら予想に違わず相当美味しかったらしい。
私はそれを眺めていたのだけど、口元を伝う涎の感触にハッと我に返ると慌てて口元を拭い、智子がしたのと同じように自分の皿からパンケーキを取り分けて、一口食べてみることにする。
ぱくりっ! ふわぁ~!! 何これ!? お口の中でとろけるぅ~! 私はあまりの美味しさに感動してしまっていた。こんな美味しいものがこの世にあったなんて!
いや、もしかしたら、これは天国の食べ物なのかもしれないよ。だってこんなに幸せな気持ちになれるんだからさ♪
「いや~、これは当たりだったわね。流石おススメメニューと書いてあるだけの事はあるわ~」
智子は一緒に注文してあった紅茶とパンケーキを交互に口にしながら満足そうに頷いている。
実に優雅で品のいい食べ方だ。私はと言えばパンケーキを口いっぱいに頬張りもしゃもしゃと咀嚼している真っ最中である。我ながらとても上品とは言えない……。
「ほんほほんほ、ほもほとほはひほほをはほんへへいはひはっはひょ!(ほんとほんと、智子と同じの頼んで正解だったよ!)」
おまけにその状態で智子の言葉に答えるように喋ってしまったものだから彼女は呆れたような視線を向けてきた。
「全くあんたって子は……。喋るか食べるかどっちかにしなさいよ」
そう言われ、私は視線を斜めにやり僅かに逡巡すると、視線を下に動かしパンケーキに取り掛かることにした。
「食べる方を選ぶんかい!」
全力でツッコミを入れてくる智子だったけど、今後は私はそれを無視し黙々とパンケーキを口に運ぶのだった……。
だってどっちかにしろって言ったの智子でしょ? お喋りは食べ終わってからいつでもできるけど、この瞬間は今しかないんだからね!
お読みいただきありがとうございました。
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