第35話 テレビ局見学ツアーに行けることになりました!
「はぁ~。それにしてもちょっとショック~。きらりちゃんは才能と努力で夢を実現した凄い子だと思ってたのに、まさかそんな秘密があっただなんて……」
私はパソコンを操作しながら呟く。どんな願いも叶えられるシックザールクリスタル、それの力でアイドルになったということはつまり一種のドーピングみたいなものというわけで、私の中できらりちゃんはちょっとズルい子という印象になってしまったのだ……。
「仕方ないよ、誰だってそんな凄い水晶を手に入れたら、その力に溺れちゃうもんさ……」と、ルビィが言うので私も思わず納得してしまう。確かにその通りだよね……。
でも、もし私だったらどうなんだろう? 手に入れてたら、願ってたのかな……ヒーローになりたいって……。
考えてもわからない、シャイニーフェニックスになる前と今とでも感覚は違うだろうし……。
「ダメだね……。やっぱりそう簡単にはきらりちゃんには接触できそうにないよ……」
私はモニターの前に肘を突き、大きくため息を吐く。
とりあえずきらりちゃんに接触してシックザールクリスタルの話を聞くとか、ギーガーク帝国に注意をするように警告しようと思って彼女に関してパソコンを使って色々と調べ、接触できる方法を探しているのだけど、相手は芸能人、ただの中学生である私がおいそれと会えるような相手じゃないんだよね……。
シャイニーフェニックスに変身して彼女に会いに行くという案もあったのだけど、それはあまりにも目立ちすぎるということで却下した。
もし、ギーガーク帝国の連中がまだきらりちゃんがシックザールクリスタルを持ってると気づいてない場合、逆に奴らにきらりちゃんを注目させてしまう可能性があるのだ。
きらりちゃんのコンサートにでも行ってみようかな? けど、当然個人的に会おうとしても警備の人に止められるだろうし、ましてや楽屋になんて行けるはずもないし。うーん、難しいなぁ。
そんな事を考えながらふと時計を見ると、すでに夜の10時を過ぎてしまっていた。
「とりあえず、今日はもう寝ましょう。明日寝坊して学校に遅刻するのは嫌だし、眠いままじゃ頭も働かないしね……」と私はルビィに向かって言う。
ルビィは頷くと私の肩から飛び立ち、テーブルの上に置かれたクッションの上に着地した。そしてそのまま丸くなって眠り始めるのだった。私はそんなルビィを見て可愛いなぁと微笑むと、パジャマに着替え、ベッドの中に潜り込むのだった。
翌朝、学校へと登校してきた私が教室に入ると、教室の一角に人だかりが出来ていた。
見ると、その中心では、一人の生徒が何やら自慢話をしていた。
その生徒は須根という名前の物凄い髪型をした男の子だ。
家がお金持ちで事あるごとにそれをひけらかしているのだけど、正直あまり関わりたくないタイプだった……。
「それでね、僕のパパがテレビ局の社長と友達でさ。今度、ドラマの撮影現場の見学に連れてってくれることになったんだ。知ってる? あの星野きらりちゃん主演の新作ドラマだよ!」
ピクッと私の耳が反応する。今なんて言った!? 星野きらりちゃんが出演するドラマの撮影現場の見学……今確かにそう言ったよね!!
つまり、そこに行けば、きらりちゃんに会うことが出来るんじゃ……。
私はバッと、生徒たちをかき分け、須根くんの前に立つと彼に尋ねる。
「ね、ねぇ! その見学に行くの、私もついて行っていいかな!?」
私がそう尋ねると彼は少し驚いたような顔をした後、「どうしようかな~」と考えるそぶりを見せる。
「お、お願い! 私どうしてもきらりちゃんに会いたいの!」
「う~ん。そこまで頼まれちゃ、聞かないわけにはいかないな、いいよ、連れてってあげる」
「ほ、本当!? あ、ありがとう!!」
やった!! これできらりちゃんに会えるかもしれない!! 私は思わずガッツポーズをする。
須根くんはさらに周囲を見回しながら、「せっかくだから、香取さん以外にも一緒に来たい人がいるなら言ってよ、僕がなんとかしてあげるからさ」と言った。
……なるほど、こうやって心の広いとこを見せようって事ね、なかなか強かな考えだけど、そのおかげで私も見学に行けるわけだし……。まぁいっか……。
「いいなぁ、僕も連れてってよ~!」
真っ先に手を上げたのは眼鏡をかけた少年だ、彼はクラスで一番の落ちこぼれで、なんと男の子なのに私より運動が苦手というのだからビックリする。
「悪いな、このツアーには制限があるんだ。お前は連れていけないよ」
「そ、そんなぁ!」
あっさり却下され、しょんぼりする眼鏡くん。
きっと彼は家に帰った後で、押し入れで飼ってるペットの猫相手に須根くんのことを愚痴るんだろう。
そんなやり取りを眺めながら、私の心はすでにきらりちゃんに会えるかもしれない喜びでいっぱいになっていたのだった!
*
ギーガーク帝国要塞基地。
その中の一室では、一人の男が眠りについていた。
「ぐへへ、シャイニーフェニックス……やっぱりお前は最高だぜ……」
とても描写など出来ない破廉恥極まりない夢を見てにやけながら寝言を漏らしつつ、口から涎を垂らしているこの男――おなじみ、ギーガーク帝国シックザールクリスタル地球探索部隊第一部隊長ブーミ・ダインである。
「おらぁ、もっとしっかり腰を……」
「ブーミ様!!」
これ以上ブーミが寝言を喋ると、年齢制限が付いてしまいそうだったが、部屋に飛び込んできた部下のおかげでなんとか事なきを得たようだ。
「……なんだ、人がせっかくいい夢を見てたのに……」
不機嫌そのものと言った口調で言いながらゆっくりと体を起こすブーミ。現実での負け続きの恨みを夢で晴らしていたところを叩き起こされたのだから当然だろう。しかし、そんなブーミに対して部下は慌てた様子で報告する。
「し、失礼しました! ですが、朗報です! 偵察部隊の一人がシックザールクリスタルらしきものを発見いたしました!」
その知らせを聞いた瞬間、ブーミの表情が一変した。先ほどまでの不機嫌そうな表情から一転して喜びに満ち溢れた顔になり、ベッドから立ち上がると部下に掴みかからんばかりの様子で身を乗り出した。
「ほう! ついに見つけたのか、あのシックザールクリスタルを!!」
シャイニーフェニックスを気に入り、彼女ばかりつけ狙っているブーミであるが、そもそも彼は地球のシックザールクリスタル探索の責任者であったのだ。だからこそ、この吉報には飛び上がるほど喜んだのである。
「それで、どこにあるのだ?」
興奮を抑え、冷静に尋ねるブーミ。ここで焦ってはせっかくのチャンスを逃してしまうかもしれないからだ。そんな彼に対し、部下の報告が続く。
「この地球人の少女が、所持しているようです」
そう言って部下は手に持っていた端末を操作し、空中に映像を映し出す。
そこには、アイドルの星野きらりの姿が映し出されていた。
彼女の美少女っぷりにブーミの顔が喜色に染まる。しかし、部下の視線を感じコホンと一つ咳ばらいをすると顎に指を当て呻くように言った。
「地球人が所持しているのか、これは少々厄介だな……」
ギーガーク帝国は様々な理由から地球人に直接的な被害が出るような行動は自重している。
従ってシックザールクリスタルを手に入れるためとはいえ、あまり強引な手段に出るわけにはいかないのだ。
「いかがいたしましょうか?」
部下たちが指示を仰ぐ中、ブーミはしばらく考え込んだ後口を開いた。
「ふむ。まずは、内偵だな。その少女が本当にシックザールクリスタルを所持しているのかどうかを確かめる。完全に確定できたのならば、ある程度は強引になっても構わんだろう」
そう言ってニヤリと笑うブーミに対し、部下は「わかりました!」と答え敬礼する。そして続けて、「内偵作業は誰に担当させましょうか?」と問うた。
「この少女はアイドル活動をしているようだな……。ならば、おあつらえ向きの奴がいる」
そういうブーミの脳裏には、一人の怪人の姿が浮かんでいた。
「なるほど、奴ですな。それでは早速指令を送りましょう」
そう言うと、部下は頭を下げて部屋から出て行った。
一人残されたブーミは口元に笑みを浮かべる。
「これは最高のチャンスだ。きっとシャイニーフェニックスもシックザールクリスタルの噂を聞きつけ星野きらりの元へ現れるに違いない」
ブーミはペロリと舌なめずりすると、言葉を続けた。
「上手くすれば、シックザールクリスタルとシャイニーフェニックス、俺の欲しいものが一度に手に入るかもしれんな……」
そんな独り言を漏らすと、立ち上がり、「ヒャーハッハッハッハッァ!!」と馬鹿笑いを上げるのだった。
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