第32話 怪人ミケホームズとの決戦です!
「う、嘘だ……。そんな事があるはずがない!? シャイニーフェニックスの変身者はここにいるのだぞ!」
そう言って巨大猫の怪人――確かミケホームズとかって名前だったか――は、みうを指差した。
オレ――氷川翔平は全身を苛む痛みに耐えながらそちらに顔を向ける。そして、みうがそこにいることをしっかりと確認したうえで再びシャイニーフェニックスへと視線を戻した。
(マジかよ……。本当にオレの勘違いだったてのか……)
あの日――みうがシャイニーフェニックスの正体なんじゃないかと疑惑を持った日から、今日にいたるまでオレはずっとそれを抱いていた。いや、違うな、99%間違いないとさえ思っていたんだ。だってそうだろ? みうはあまりにもシャイニーフェニックスに似ていたのだから。
容姿もさることながらその精神性というか、とにかく中身もそっくりだったのだ。みうのシャイニーフェニックス疑惑がこうもあっさりと学園中に広がった理由もおそらくそこにある、みんな思ったのだ“香取みうならあり得るかもしれない”と。
みう自身は否定していたが、オレはそれをそうせざるを得ない理由があるからではないかと思っていた。
だからもう追及はやめることにしたし、その事を考えないようにしようと努めてきたんだ。だが、心の中に“オレぐらいには真実を教えてくれてもいいじゃないか”という思いが燻ぶっていたのも事実で、今日の騒ぎでもしかしたら真実が分かるかもと思ったオレがいたのだが、真実はオレの予想を大きく裏切るものだったのだ……!
みうはシャイニーフェニックスではなかった、それが真実だったのだ。こうして目の前に本物のシャイニーフェニックスがみうと同時に別人として現れたのだから、これは疑いようがないだろう! そして同時にそれはオレにとって大きなショックでもあったのである。なぜなら今まで信じていたものが全てひっくり返ってしまったからだ。つまり、今までのオレの推理は全て間違っていたということになる。
それは朗報だ、みうがオレに隠し事をしていなかったという事なのだからな。だが、同時にそんなみうを心の中では疑ってしまっていたという事実を突きつけられたようで、なんだかとても複雑な気分だった……。
(みう……ごめんな……。お前の事、信じ切れなくて……)
オレは心の中でみうに謝罪した。いや……この場を切り抜けたらちゃんと正面から謝んなきゃな……。
「変身者? みうちゃんがボクの? そんなわけないでしょ。素のボクがみうちゃんみたいなドジっ子のわけがないし、なによりボクは簡単に正体掴まれるような間抜けじゃないよ」
オレがそんな事を考えていると、怪人ミケホームズの言葉を受けたシャイニーフェニックスが肩をすくめながらどこか呆れたように答えた。
「おいこら……」
ボソッと聞こえた呟きにそちらを見ると、みうが鋭い視線をシャイニーフェニックスに向けていた。
シャイニーフェニックスはぎょっとした表情を浮かべると、なにやらみうと視線で言葉を交わした後、もう一度怪人に視線を向ける。
「とにかく! ボクはここにいる!! ボクが正真正銘シャイニーフェニックスだ! みうちゃんを襲ったところで、意味なんかないぞ!」
そう言って腰に手を当て胸を張るシャイニーフェニックス。
むぅ……もしかしたらシャイニーフェニックスはみうを自分の正体だと間違われたことがかなり心外だったのかもしれない。口調が変わるほどに怒っているようだ。一人称もボクになってるしまるで別人みたいだぜ……。ん……別人……?
「ヒールビーム!」
オレの中に一瞬だけ浮かびかけた思考を遮り、シャイニーフェニックスの声が響く。
彼女がかざした手から放たれた淡い光が、オレとみうに降り注ぐ。
一瞬の暖かさに包まれると、全身を苛んでいた痛みがピタリと治まった。これは、前にも体験したことがある、シャイニーフェニックスの持つ回復能力だ。
みうを見ると新部を庇った時に受けたあいつの傷もオレと同じように完全に癒えていた。
それを確認し、オレは確信した。やはり彼女は本物のシャイニーフェニックスだ。一瞬別人がコスプレした姿かもと思ったが、姿かたちは真似出来ても能力までは真似できないだろうからな。
「サンキュー……!」
立ち上がりながらオレが声を掛けると、シャイニーフェニックスはニッと笑って親指を立ててくれた。
やはり今までのシャイニーフェニックスにはなかった仕草だが、考えてみればオレはシャイニーフェニックスとそこまで深い付き合いがあるわけではない。単に今まで見せていなかった面を見せているだけかもしれないなと考え直した。
「おのれ、我輩の推理が外れてしまうとは……。だが、貴様を引きずり出すという目的は達成できた、元々重要なのは正体などではない、貴様を仕留めることなのだからなぁ!!」
その時、気を取り直したらしいミケホームズが、そう叫びながらシャイニーフェニックスに向けて飛び掛かる。
「え!? ちょっと、いきなりぃ!?」
戸惑いの声を上げ屈みこむシャイニーフェニックスの頭上数センチ上を奴の拳が通り抜け、その先にあった窓ガラスに突き刺さるとガシャンと音を立てて砕け散った!
「ひゃああああっ!」
飛び散るガラス片から逃れるように、両手を床に突き四つん這いの姿勢で慌ててその場を離脱するシャイニーフェニックス。その姿はなんだかすごく間抜けだ。
う~ん、シャイニーフェニックスってもっとこう凛々しかった気がするんだが、まあ突然だったのだから仕方ないか。
「危ないなぁ! ちょっとは手加減してあげようとかそう言う気はないわけ!? 一応ボク女の子なんだよ!!」
「この間の戦いで貴様の実力を知ったからな、もう油断はせんよ」
抗議するシャイニーフェニックスに口元を歪めて答えるミケホームズ。
そう言えば、こいつは以前シャイニーフェニックスに撃退されてたんだっけ。それがこうしてまた出てきてるということは、パワーアップしてるってことなんだろうか?
こりゃ油断できないぞ、シャイニーフェニックス……。
「くっ……」
シャイニーフェニックスもそう考えたのか、彼女の頬を冷や汗が一筋流れる。
だが、それでもファイティングポーズを取るシャイニーフェニックスに横から声が飛んだ。
「シャイニーフェニックス! こんな狭いとこで戦うのは不利だよ! いったん校庭まで逃げて、そして校庭の片隅の茂みまで移動して! そこで……」
叫んだのはみうだ。みうの奴、この状況でシャイニーフェニックスに冷静なアドバイスを送れるなんて、まるでこういう状況には慣れっこであるかのような立ち振る舞いだ。
オレなんてさっきから胸がドキドキしっぱなしでとても冷静ではいられない。新部に至ってはさっきから呆然と突っ立っているだけだしな……。
「う、うんわかったよ! やってみる!」
シャイニーフェニックスは反論することもなくみうに答える。そして、ミケホームズの方に顔を向けると叫ぶ。
「聞いた通りだよ、お前だってこんな狭い場所じゃ実力発揮できないでしょ、表に出るんだ!!」
「いいだろう! この学校の校庭を貴様の墓場にしてやるわ!」
ミケホームズはそう答え、階段を駆け下り昇降口に向けて走っていき、シャイニーフェニックスも後に続く。
そして、みうまでも駆け出した。おいおい、あいつ何を考えてるんだ? オレたちが行っても邪魔になるだけだろうに……。
だが、一瞬考えてオレも駆け出した。やっぱりこの戦いの行く末を見届けたいという気持ちがあったのだ。
「あ、ちょ、ちょっと待って! 私も行くわ!!」
後ろからようやく我に返ったらしい新部の叫び声と足音が聞こえてくる。
「危険だから新部は下がってた方がいいぜ……なんてオレが言っても説得力もないか……」
「どちらにしろ私は止まるつもりはないわ、シャイニーフェニックスの戦いをしかと目に焼き付けて記事を書くのよ!」
オレの制止の言葉など聞く耳持たずといった様子で走り続ける新部だった。まったくもう、こいつの行動力には驚かされるよ……。
校舎から出ると、校庭の中央ではシャイニーフェニックスとミケホームズが対峙していた。
先にたどり着いていたみうの横に並び、オレは戦いの行方を見守ることにする。
「ははは、シャイニーフェニックス、校舎を見るがいい、生徒たちが我らの戦いを見物しているぞ」
ミケホームズはそう言いながら校舎の方に顔を向ける、窓からはたくさんの生徒がこちらの様子をうかがっているのが見えた。
「この衆人環視の中で、貴様を葬り去ってやるわ!」
「派手好きな怪人だね。まあ、そっちの方が都合がいいけどね、これでボクの正体がそこにいるみうちゃんではないと言うことがみんなに証明できるわけだし」
そう言ってシャイニーフェニックスはみうに顔を向けるとウインクをしてみせた。どうやらシャイニーフェニックスはみうが自分の正体だと疑われたことを気にしていたようだな。
「ほほう、小娘を気遣うとは余裕な。だが、お前が今心配するべきは自分の身だ!!」
言うが早いが、ミケホームズはシャイニーフェニックスに向かってダッシュを掛ける!
「う、うああ……」
気づいた時にはシャイニーフェニックスの腹にミケホームズの拳がめり込んでいた。 速い……全く見えなかった! あれが怪人って奴の本気なのか……。
しかし、シャイニーフェニックスがああも簡単に一撃を貰ってしまうとは……。
「ぐぅぅ、い、痛い……。ふ、普段こんなパンチとか受けてるんだね……。改めて感心しちゃうなぁ、ボク……」
腹を押さえ、意味が分からないことを呟くシャイニーフェニックス。そんな彼女の姿にミケホームズは高笑いをしてみせる。
「はーっはっはっは、どうだ、思い知ったか、我が力を!! やはりこの間の敗北はただの油断に過ぎなかったようだな!!」
そして今度は回し蹴りを放つと、それは見事に命中して再びシャイニーフェニックスを吹き飛ばすのだった。
吹き飛ばされたシャイニーフェニックスはそのまま地面に叩きつけられ、ゴロゴロと転がっていくと校庭の片隅の茂みの傍で止まりヨロヨロと立ち上がる。
「そ、それはどうかな……? シャイニーフェニックスは強いんだ、油断してると、痛い目見るよ……?」
「痛い目を見てるのは貴様だろうが!!」
強がるシャイニーフェニックスにミケホームズが飛び掛かり、連打を繰り出す! その攻撃をなんとかガードしようと腕を構えるも防ぎきれず、次々とパンチがヒットしていく! たまらず後ずさりするシャイニーフェニックスだったが、ミケホームズはさらに追い打ちをかけていく。
「ははは、そろそろ終わりが近づいてきたようだな!」
「ぐ、ぐうう。あ、甘く見ないでよ……。せ、正義の味方はね、追い詰められてからが怖いんだ……!」
なおも強がって見せるシャイニーフェニックスだが、足はガクガク震えており立っているのがやっとという状態だった。
「つ、強い……なんて強さなの、あの怪人……。シャイニーフェニックスが手も足も出せないなんて……」
オレの横で新部が顔面蒼白で呻く。確かにあの怪人は強い。だが、オレはどこか違和感を覚えていた。
シャイニーフェニックスはこの間の駅前商店街での戦闘ではあのミケホームズという怪人を圧倒して見せた、あの怪人の動きはその時の戦闘で見せたものとほとんど変わってないように見えるのだ、それなのに今は一方的にやられている……まるでシャイニーフェニックスが急激に弱くなったかのように見えるぞ? これは一体どういうことだ?? 疑問に思うオレの耳にシャイニーフェニックスが上げた悲鳴が突き刺さる。
「う、く……うああっ!」
ドクン! オレの心臓が激しく鼓動を始める。理由はどうでもいいが、今シャイニーフェニックスは追い詰められている、このままでは敗北は必至だ、負ければどうなる? 捕らえられるか、殺されるか、とにかくオレはもう二度とシャイニーフェニックスには会えなくなるだろう、それだけは絶対に嫌だ!! そう思うと激しく胸が痛んだ。
「シャイ……」
声を上げ飛び出そうとしたオレの腕が誰かに掴まれる。見ると、新部が悲痛な表情で首を振っていた。
「氷川くん、気持ちはわかるけど、あなたが行ってもどうにもならないわよ!」
新部の言う通りだった。オレが行ったところで何の助けにもならないかもしれない、それどころか足を引っ張る可能性すらある、それでも行かずにはいられなかったんだ。
しかし新部はそんなオレに諭すように語りかけてくるのだった。
「シャイニーフェニックスはきっと勝つわ、正義のヒーローだもの。彼女の言う通り追い詰められても絶対逆転してくれるはず……、だからここは黙って見守るしかないのよ……!」
そして、シャイニーフェニックスと怪人の方に目を向ける。釣られて再びそちらに顔を向けたオレが見たものは、強烈な一撃によって吹き飛ばされ茂みの中に消えていくシャイニーフェニックスの姿であった……。
「「シャイニーフェニックスーーーー!!」」
オレと新部の声が重なる。そんなオレたちとは裏腹にミケホームズは勝利の高笑いを上げた。
「やった、勝った! 我輩があのシャイニーフェニックスを倒したのだ!! これで今までの失敗は全て帳消し、それどころかこの功績で幹部昇進も夢ではないぞ!! ぐはははは、ざまあみろシャイニーフェニックスめ!!」
高らかに笑うミケホームズだったが、突然その笑い声が止まる。茂みの中から高らかな声が聞こえてきたからだ。
「フェニックスヒーリング!!」
茂みの奥が光に包まれる。これはシャイニーフェニックスの回復技だ。自分を回復させたんだな、つまりまだシャイニーフェニックスは負けちゃいないってことだ……!! オレは安堵し胸をなで下ろす。だが、回復したところであの実力差では勝ち目はないんじゃないか? そんなオレの心配をよそに、やがて光が収まると茂みの中からは完全に回復したシャイニーフェニックスが飛び出してきた。
スタッ……と華麗に着地すると、ミケホームズに不敵な顔を向ける。
「なんだその顔は? 回復しただけで力が増したわけではあるまいし、もう力の差は歴然としていているのだ、再び吹き飛ばしてやるわ!!」
シャイニーフェニックスの態度が癇に障ったのか、激高し殴り掛かるミケホームズ!
ドガ……! 鈍い音が響く……。シャイニーフェニックスが殴り飛ばされる、そんな光景を想像していたオレだったが、しかしそうはならなかった。
「力の差が、なんですって?」
シャイニーフェニックスの繰り出した蹴りが、前かがみに突進したミケホームズの顔面に突き刺さっていたのだ。
「ごふっ……!」
後ろ向きに倒れこむミケホームズだったが、なんとか両手を使いバック転で体勢を立て直すと、信じられないといった表情で叫んだ。
「ば、馬鹿な、我輩の攻撃が見切られた!? さっきは簡単にヒットしたというのに!!」
「まさかさっきまでのが私の本気だとでも思ってたの? あれはあなたの力を確かめるための小手調べだったのよ!」
そう言って不敵に笑うシャイニーフェニックス。その自信たっぷりな態度に、さすがのミケホームズも動揺を隠しきれないようだ。
そうか、そういうことかよ! シャイニーフェニックスも人が悪い、最初から全力見せてくれればこんなに気を揉まずにすんだのによ! だが、これでオレも安心して見ていられるぜ! シャイニーフェニックスは改めて構えを取るとミケホームズに向かって言い放った。
「私を甚振ってくれたお礼はたっぷりとさせてもらうからね! 覚悟しなさい!」
その言葉と共に、目にも留まらぬスピードで一気に間合いを詰めると強烈な蹴りを放つ! ズガッ!! 鈍い音が響きミケホームズの身体が宙を舞う。
だが、奴は空中で体勢を立て直すと、地面に着地すると同時に再び殴り掛かってきた!
「遅い遅い! 動きが丸見えなのよ! 前回から何も反省してないんじゃないの!?」
次々と繰り出される拳をあるいはかわし、あるいは腕で弾きながら、シャイニーフェニックスは余裕の表情で挑発する。
一方、そんなシャイニーフェニックスとは対照的に、ミケホームズは必死の形相で攻撃を繰り出していた。しかし、そのどれもがシャイニーフェニックスに軽くいなされていく。
「バーニングブロウ!!」
シャイニーフェニックスの声に応えその拳が炎に包まれる、そしてカウンター気味にミケホームズの左頬に強烈なパンチが炸裂した!! ドゴォッ!! 鈍い音と共に吹き飛ばされ地面を転がっていく。
「やったぞ、シャイニーフェニックス!!」
オレの横でみうがガッツポーズと共に歓声を上げる。うわっ、こいついつの間に。さっき戦いの場が茂み近くに移動したあたりから姿が見えないと思っていたんだが……。
しかし、少しだけ変な気分だ、何しろ今までみうと来たらシャイニーフェニックスが姿を表すと同時に姿を消してたからな、こいつと一緒にシャイニーフェニックスの戦いを観戦するなんて初めてのことなのだ。
オレがそんな事を考える余裕があるのも、シャイニーフェニックスの勝ちがほぼ決まっている状態だからだ。
だが、ミケホームズはまだ闘志を失っていないらしく、ヨロヨロと立ち上がると両手を広げ、妙な構えを取り出した。
「何、その変な構えは……?」
訝し気な表情を浮かべつつも油断なく見据えるシャイニーフェニックスにミケホームズは不敵な笑みで答える。
「見事だシャイニーフェニックス、正直まだ貴様の実力を侮っていた。だが、我輩にはまだ奥の手があるのだ、見せてやろう我輩の『バリツ』をな!!」
「ばりつ……?」
首を傾げるシャイニーフェニックスだったが、オレはその単語に聞き覚えがあった。確かあの名探偵シャーロック・ホームズが使うとされている武術のはずだ。
この怪人、名前もそうだし名探偵を自称していたことからそうじゃないかと思ってたが、どうやらシャーロック・ホームズにかぶれてるようだな……。
宇宙人(多分)が地球の探偵小説にかぶれてると言うのも変な話だがそれはどうでもいい、気になるのは『バリツ』ってのは確か小説の中にしか出てこない架空の武術だったって事だ、柔道に近いものだって説もあるらしいがこいつは一体どんな攻撃をしてくるんだ……? ミケホームズは両手を大きく広げ、まるでダンスでも踊るようにそれを上下に動かすとドタドタとシャイニーフェニックスに向けて走り出した。
……ハッキリ言って非常にカッコ悪い、というかむしろ滑稽ですらある。シャイニーフェニックスもその姿を呆然とした表情で見ていた。って、おい完全に棒立ちでいるじゃないか! 危ないぞ!!
「掴まえた!」
「あっ、し、しまった……! あまりのカッコ悪さについ……!」
オレの心配は的中してしまった、シャイニーフェニックスはミケホームズに抱き着かれるような形になってしまったのだ!
「くっ、放してよ……! 間抜けな動きで隙をつくのが狙いだったのね……!!」
もがきながら悔し気な声を上げるシャイニーフェニックス。
「あ、いや、そういうわけではないのだが……」
それに対して、申し訳ないような声で答えるミケホームズ。どうやらあの動きは作戦ではなかったようだ。だが、とにもかくにもシャイニーフェニックスは掴まれてしまった。このままじゃまずいぞ……!
「とにかく、掴まえた以上もう絶対に放さんぞ! このまま絞め殺してやる!!」
そう言って、シャイニーフェニックスの腰に回した手に力を籠めるミケホームズ。
「う、ぐ、ぐぐ……」
シャイニーフェニックスの顔が苦痛に歪み、ミケホームズがにやりと笑う。だが。
「なんてね。怪人さん、あなた名探偵を気取る割に私に対する調査が甘いわよ?」
そう言ってニッと笑うと、シャイニーフェニックスはそのまま空へと舞い上がった。
「な、なに!? だが、空に飛んだところで……」
しかし、ミケホームズは腕を放そうとしない。シャイニーフェニックスはその言葉には取り合わず、怪人と共に高く高く飛び上がるとそのまま空中で一度静止した。
「行っくよー、急降下!!」
そして、勢いよく地面に向けて急降下を始めた! その勢いは凄まじく、シャイニーフェニックスに取りつくミケホームズに強烈なGがかかる!
「う、ぐ、あがががががががが!!」
ミケホームズは堪らずシャイニーフェニックスから手を放そうとするが、逆にシャイニーフェニックスに身体をホールドされてしまう。
「バーニングダイブ!!」
おおっ、この技は前にも見たことがあるぞ! その時と同じようにシャイニーフェニックスの身体が敵ごと燃え上がる!
「ぐわああああああああ!!」
Gと炎の二重苦を受け、たまらず悲鳴を上げるミケホームズ! そして、シャイニーフェニックスは地面に激突する寸前で手を離し自らは離脱した。
ドゴッ!! すさまじい音を立て頭から地面に突き刺さるミケホームズ。だが……まだ生きているようだ! なんてしぶとさだ、前の怪人はこれで燃え尽きたってのに……敵もパワーアップしてると言う事か。
「ぐぐ、負けん。我輩は負けんのだ!!」
「しぶとさだけは褒めてあげる、でもこれで終わりだよ!」
地面に着地し、ミケホームズを指差し宣言するシャイニーフェニックス。そんな彼女にミケホームズが叫ぶ。
「よ、読めたぞ、シャイニーファイナルエクスプロージョンとかいう必殺技を使うつもりだろ!?」
その言葉にシャイニーフェニックスは一瞬キョトンとした表情を見せるが、クスッと笑うと言った。
「最後の最後で推理が当たったね。それじゃ、行くよ! シャイニーファイナルエクスプロージョン!!」
シャイニーフェニックスが両手から放った光弾がミケホームズに迫る。
「は、はは。当たった我輩の推理が! 我輩は、我輩は……名探偵だーーー!!」
ドゴーン!! 大爆発の中に消えていく怪人の顔はどこか満足げだった……。
「ふう、ようやく終わった……」
額を拭い息を吐くシャイニーフェニックス。そして、顔を上げるとこちらに顔を向けニッコリと微笑んだ。
ドキッと心臓が高鳴るのを感じた。相変わらず可愛いぜ……! そうだ、この子がみうの訳がないんだ……みうとこの子を比べるなんてあまりにも失礼だよな。うん、間違いない、この子はみうじゃない。
「シャイニーフェニックス!」
オレがそんな事を考えてる間に、そのみうと新部がシャイニーフェニックスに駆け寄り彼女の勝利を祝福する。
オレも駆け寄り、「大丈夫だったか?」と声をかけると、彼女は、「全然だいじょーぶ! 私はあんな怪人なんかに負けないよ!」と胸を張って答えてくれた。
「ところで……」とシャイニーフェニックスがオレたちを見回しながら切り出した。
「私の正体がみうちゃんだっていう噂が広まってたみたいだけど……」
その言葉に、新部がハッと顔を上げる、そしてシャイニーフェニックスとみうに交互に視線を送りながら申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさい……。私、完全に間違ってたわ。私の記事のせいで香取さんには大分迷惑かけてしまった、それに、シャイニーフェニックスにも……」
「もとはと言えばオレの責任だ、最初にシャイニーフェニックスがみうじゃないかと言い出したのはオレだからな……」
新部に続きオレが言った。心の中は反省の嵐だった……。
そんなオレにシャイニーフェニックスが言う。
「そんなに落ち込まないで、誰だって間違うことはあるからさ。それに……」
と何かを言いかけるシャイニーフェニックスだったが、その言葉を飲み込むとみうに向かって言った。
「……みうちゃんも、怒ってないよね?」
「え? あ、うん、そうそう! 怒ってない、怒ってない。ぜーんぜん怒ってないから」
急に話を振られたからかどこか妙な口調でみうは答える。
しかし、それは気にせず改めてみうに謝罪する。
「みう、悪かった。この埋め合わせはいつか必ずするよ……」
オレの言葉を受け、みうはどこか戸惑った様子でシャイニーフェニックスに顔を向ける、すると彼女は一つ大きく頷いた。
「謝んなくてもいいって、そんな顔されるとこっちの方が困っちゃうよ」
そう言うと、みうはニコッと笑みを浮かべながら続けた。
「だから、この話はもうおしまい。誤解が解けたんだからもういいのさ」
「ありがとう、香取さん……。だけど、おしまいではないわ。私はちゃんと訂正記事を書く義務がある! それが誤報を出してしまった新聞部としてのケジメよ!」
新部はそう言うと拳をググっと握った。
「オレも、その記事の作成手伝わせてもらうぜ」
そんなオレたちのやり取りを見守っていたシャイニーフェニックスだったが、やがて口を開いた。
「さてと、それじゃ私はそろそろ帰るね」
その言葉と共に、シャイニーフェニックスの身体が宙に浮かんでいく。
そして、見上げるほどの高さまで上がると、手を振りながら別れの言葉を口にする。
「じゃ、また何かあったらいつでも呼んでね!」
そのままさらに空高く舞い上がっていく彼女をオレたちは手を振り見送るのだった。
「私はこのまま新聞部の部室に行くわ、さっき言った訂正記事を書かないと!」
そう言って新部は駆け出していく、オレはみうに顔を向けながら言った。
「とりあえず、オレたちは教室に戻るか……」
オレは新部の記事作成の手伝いをするつもりだが、どちらにしろ一度教室に戻り鞄なんかを持ってこなければならない。
みうはおそらくこのまま帰るんだろうが、やはり鞄を取ってこなければならないだろう。
しかし、みうはオレの言葉に、「あ、ええと、ボク、ちょっと用事があるんだ。翔平くんは先に教室に帰っておいて」と答えそのままどこへともなく走って行った。
オレはその背中を見ながらぼんやりと考えていた。今あいつ自分の事をボクって言わなかったか? それにオレの事も翔平くんって……。
その事に少し違和感を覚えたものの、まあ今日は色々とあって疲れているんだろうと思い直し、オレは校舎に向かって歩き出したのだった……。
お読みいただきありがとうございました。
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