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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第6章【バレちゃった!? 私の秘密!!】

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第30話 襲撃! 学校にまで来るなんて聞いてません!!

「とても信じられん」

 ここはギーガーク帝国要塞基地の会議室。

 とある資料を読み進めていたブーミが吐き捨て、テーブルの上に紙の束を投げ出した。

 投げ出された紙の束の表紙には【地球少女香取みうに関する記録】と書かれており、彼女の写真が添付されている。

 ミケホームズが入手した秋桜(コスモス)学園の学校新聞によって思いがけずシャイニーフェニックスの正体の手がかりを掴んだ彼らは部下を使い、記事に書かれていた『ヒーローオタク少女M』すなわち香取みうに関する情報を集めていたのだ。

 この情報を入手した時、ブーミは大いに喜んだ。そして、記事に書かれていたのが香取みうだと知った時彼はシャイニーフェニックスの正体を掴んだと確信した。

 何故なら、ブーミは香取みうという少女の事を見知っていたからだ。

 彼が初めて地球に訪れた時に遭遇した少女、そして殺そうとしたところをあの宇宙戦士シュナイダーによって阻止された少女……。

 つまり、香取みうという少女は宇宙戦士と縁を持っているという事である。

 そしてこの間の騒動……。ブーミが彼女と連れの少年を襲った時、シャイニーフェニックスが助けに現れた。だが、よくよく思い出してみればシャイニーフェニックスが現れた瞬間から香取みうはその姿を消していた。

 それはまるで彼女がシャイニーフェニックスだったかのように……。

 しかし、さらなる証拠を固めるべく部下に集めさせた資料に目を通したブーミは表情を落とし、先ほどの言葉を吐いたのである。

「確かに顔は似てる。可愛さならまさに俺の嫁シャイニーフェニックスと瓜二つだ……」

 そこで一旦言葉を切り、彼は大きくため息を吐く。

「だが、この子があの強いシャイニーフェニックスとはとても思えん!!」

 彼が指で叩くのは資料の香取みうの能力に関するデータが記載された部分である。

 地球よりはるかに進んだ科学力を持つ彼らにかかれば痕跡を残すことなく、様々なデータベースから情報を引き出す事など造作もないことである。

 特にみうは学生であるので、秋桜(コスモス)学園の生徒のデータベースをハッキングすればほぼすべての個人情報を手に入れることが出来るのだ。

 その結果判明したのが、香取みうという少女のあまりの能力の低さである。

 学力はまだいい、低くはあるが最底辺とまではいかないレベルだ。しかし運動能力は平均以下であり、体力も同年代の女子と比べてかなり低い……いや、はっきり言ってしまえば最底辺に位置づけられるほどであったのだ。

 そんな少女がシャイニーフェニックスとして彼らギーガーク帝国を何度も退けてきたというのだ。あり得ないという感想しか出てこなかった。

 少し前に医療班のヒィラーと交わした会話がブーミの脳裏を過る。

 シャイニーフェニックスは変身前でもすさまじいスペックを持つスーパー少女のはずなのだ。

 こんな可愛いだけがすべてのような小娘にそんな力が秘められているなど到底信じられなかったのである。

「お言葉ですがブーミ様。能ある鷹は爪を隠すという言葉もありますぞ」

 そんな事をミケホームズが言ってくる。彼からしてみたらせっかく見つけてきたシャイニーフェニックスの正体候補なのに、それを否定されてしまっては立つ瀬がないのだ。

 せっかくこの間の失敗を帳消しに出来るチャンスだったのにという気分なのだろう。

「限度がある、限度が!! ここまで弱く見せる必要はないはずだ。それに、シャイニーフェニックスのあの強さは隠し通せるものではない、この香取みうがシャイニーフェニックスであるなら、片鱗ぐらいは見せてもいいはずだ!!」

 そう吐き捨てると彼は資料を掴みブーミに向けて放り投げた。

「へ、片鱗ならありますぞ! シャイニーフェニックスは正義に燃えるヒーローです、この少女も記事にある通り心に正義を宿すヒーローマニアのようですし……」

 紙の束を顔に受けながら慌ててミケホームズは反論する。しかし、そんな彼を鼻で笑うブーミ。

「マニアと本物のヒーローでは天と地ほどの差があるわ!! ヒーローマニアだからと言っていちいちシャイニーフェニックスの正体候補認定してたら、無制限に候補者が増えていくだろうが!?」

「し、しかし……」

「黙れ! 元々こんな誰が書いたかもわからない学校新聞の与太話を信じるのが間違いなのだ! それでもどうしても香取みうがシャイニーフェニックスだと言いたいのなら、証拠を持ってこい証拠を!!」

「しょ、証拠ですか……。ならばこの少女の襲撃許可を頂きたい。襲って変身すればシャイニーフェニックスだと一発で分かります!」

 言われてブーミは「むぅ」と唸る。確かにそれが出来れば簡単なのだが、彼らにはそう簡単に地球人を襲えない事情があるのだ。

(大っぴらに地球人、それも特定の個人を襲うのは色々と問題が生じる。ヤーバン様やレガーン司令にも釘を刺されているからな……しかし……)

 先ほどは頭ごなしに否定しては見たものの、実はブーミも内心ではもしかしたら、香取みうが本当にシャイニーフェニックスでその力を隠し持っているという可能性も捨てきれないと思っていたのだ。

(やらせてみるか……。ヤーバン様たちにはこのミケホームズが勝手にやったんだと言えばいい。これで万が一香取みうがシャイニーフェニックスだと判明したりしたらそれこそ大手柄だ。その時は俺がミケホームズに指令を与えたんだと報告すればいいしな……うん、そうだそうしよう!!)

 心の中でそんな結論を出したブーミはすぐに行動に移すことにしたのである。

「いいだろう、そこまで言うのであればやって見せろ! ただし、失敗したらどうなるか分かっているな?」

 そう言って凄んで見せるブーミに、ミケホームズはごくりと喉を鳴らすのだった……。

 ついに動き出すミケホームズ、その頃香取みうは……。

「やあやあ、おはようおはよう。今日も朝からいい天気ですなぁ~」

 秋桜(コスモス)学園中等部1年B組。妙なテンションで教室へとやってきた私に智子が駆け寄ってきて声を掛けてくる。

「み、みう。どうしたの? まさか、ついにストレスで頭が変になっちゃの……?」

 なんて少し失礼なことを言われてしまうけど、それも仕方ないだろう。何しろ私はここ最近あのシャイニーフェニックス疑惑記事に端を発する騒動のおかげで非常にストレスフルな生活を余儀なくされていたのだから……。

「違う違う、むしろ逆だよ。今日の私は凄く機嫌がいいの!」

 その理由はもちろん、昨夜シュナイダーさんから連絡を貰いこの騒動を収めるためのいいアイデアを頂いたからだ。

 上手くいけばこの騒動が収まるという嬉しさと、シュナイダーさんが私の事を気にかけてわざわざ連絡をくれたという2つの理由で私は朝から脳内がお花畑状態なのである。

「意味が分かんない……ついに雑誌の記者まであんたがシャイニーフェニックスじゃないかと取材に来たってのに、どーしてそんなに上機嫌なのよ……」

 そんな呆れたような声を出す智子には悪いが今の私は本当にご機嫌なのだ! だってこれでもう野次馬たちに追いかけ回されることもないし、何より私がシャイニーフェニックスだとバレないで済むのだから!

 だけど、智子にそれを言うわけにはいかない。なので、私は曖昧な言葉でお茶を濁す。

「あー確かにね。だけど、私もう気にしないことにしたの。だって私はシャイニーフェニックスじゃないんだし、どうせすぐにシャイニーフェニックスと私が別人だって証明されるんじゃないかなーって思ったから」

「それはどういう意味?」

 首を傾げる智子に私は指を一本立てて言う。

「次にシャイニーフェニックスが現れれば分かるよ。まあでも、シャイニーフェニックスが現れるのはギーガーク帝国が出てきた時だから、それを望むのは少し不謹慎かもしれないけどね~」

 私の言葉に、智子はどこか納得しかねるという感じの様子だったけど、これ以上追及しても無駄だと思ったのかそれ以上何も言うことはなく席に戻って行った。

 私も彼女の背中を追って彼女の隣の自分の席へと座るとそのままホームルーム開始の時間を待つのだった。


 そして休み時間、相変わらず私の元には今日もシャイニーフェニックスファンたちが押し寄せ私に握手やらなんやらを求めて長蛇の列を作っていた。

「ありがとう。私はシャイニーフェニックスじゃないけど、これからもシャイニーフェニックスの応援よろしくね~」

 正体がバレるんじゃないかとビクビクしていた時には恐ろしかったこの光景だけど、その恐れがなくなった今となってはなかなかどうして、実に気分のいいものだった……。

 だってこんな大勢の人たちがシャイニーフェニックス、つまり私を応援してくれてるんだもん! きっちり別人だと否定はするけど、それでもやっぱり嬉しいものは嬉しかったのだ。

 むぅ……シャイニーフェニックス疑惑が解消されたらこの光景も見れなくなっちゃうんだよね……。

 ああっ、早く平穏が戻って欲しいけど、このアイドル扱いも捨てがたい! この複雑な乙女心、いったいどうしてくれよう……なんてね。

 だけど、もしかしたらこうやって気を緩めたこと、そしてギーガーク帝国の出現を望んでしまった罰が当たったのかもしれない。

 その日の放課後、()()は突然やって来たのだ……。


「えー、というわけで今日はここまで。帰宅する者は寄り道せずにまっすぐ帰るんだぞ~」

 先生の言葉に私を含めた生徒たちが声を合わせて返事をする。

 そして、先生が教室を出るべく入り口の引き戸に手を掛けた瞬間。ガラガラガラ! と音を立て扉が勢いよく開いた。

 先生が自分が開ける前に動いた扉に「うおっ」と小さく声を上げ、生徒たちの視線が誰が来たんだとそちらに集中する中、一つの影がゆっくりと教室へと入ってくる。

「みなさん。この事件の犯人が分かりました……。実に難解な事件でしたが、この我輩の灰色の脳細胞の前では赤子も同然でした……」

 人間あまりの衝撃を受けると、声が出ないと言うのは本当みたい。

 教室に入ってくるなりいきなりそんな事を言い出した、()()()()()()()()()()()に誰も彼も驚きのあまり固まってしまっていたのだ。

 そんな私たちの事を気にすることもなく、怪人はゆっくりと腕を振り上げ叫ぶ。

「そう、この事件の犯人。シャイニーフェニックスは君だ! 香取みう!!」

 ビシッと怪人は指を突き付ける! 私……の横に座る智子へと!!

「へ? あたし?」

 智子は自分を指差し間の抜けた声を上げる。

「あ、あの~。香取みうは私なんですけど……」

 おずおずと手を上げ声を出す私に、その怪人は動きを止めると、智子に突きつけた指をつつつと横にずらし私に突きつけ直す。

「ふっ、我輩は最初から君を指差していたのだ! まるで人違いをしたかのような言い方はやめてもらおうか!」

 嘘つけ! とおそらく全員の心の叫びが一致しただろう。しかし、次の瞬間。この状況の異様さにようやく気付いた一人の女子生徒が「きゃあああああ!!」と悲鳴を上げたことで教室中がパニックに陥ったのだ。

 生徒たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い、先生などは慌てて机の下に隠れる始末だ……。

 私もハッとしてもう一度その怪人に目を向ける。そうだ、こいつ……確かこの間駅前商店街で戦ったミケホームズとかいう探偵気取りのお間抜け怪人……!

 なるほど、まだシャイニーフェニックスの正体探しをしてたんだ……! そして、おそらくどこからか例の噂を聞きつけてとうとうここまでやって来たわけね……。

 私の心の中に2つの感情が生まれる、一つは安堵、一つは困惑だ。

 シュナイダーさんから知恵を授かった後での襲撃で助かったという思いと、こんなに早く、しかも学校にまで乗り込んで来るとは思ってもみなかったという思い。

 これって、もしかして私がギーガーク帝国が出てきてくれればいいのなんて願ったせい……? いや、今はそんな事を考えている場合じゃない!

 とりあえずまずこの場をなんとかしないと……。流石に目の前で変身して見せるわけには行かない、そんなことをすればその後でどんな事をしても誤魔化しきれない!

「さあ、変身しろ、シャイニーフェニックス! 変身する気がないのならそれでもいいが、痛い目に遭ってもらうぞ!」

「か、怪人まであんな記事を信じてるの……? 私はシャイニーフェニックスじゃないんだってば……!」

 反論する私に、しかしミケホームズは聞く耳持たずに腕を伸ばしてくる。まずいっ、捕まったらおしまいだよ!!

「とりゃっ!!」

 その時、ミケホームズの背後からその大きな頭を蹴りつけた生徒がいた。

「のわっ!」

 バランスを崩し、前に倒れ込むミケホームズの背中を飛び越えてその生徒は私の腕を掴む。

「みう、逃げるぞ!」

「翔くん!」

 全くこの人は……いつも意地悪なのに、いざって時は頼りになるんだから! 私は腕を引っ張る翔くんの後について教室から飛び出したのだった。

「待てー!! シャイニーフェニックス!! いや、香取みう!! 我輩は貴様を捕らえるまで諦めんぞー!!」

 倒れたまま怪人が叫ぶ。思わずそちらに目を向けそうになる私だったけど、翔くんの、「振り返らず走れ!」という言葉に慌てて前を向いて走るスピードを上げる。

「どけどけ!」

 翔くんは騒ぎを聞きつけ集まってきた生徒たちの間をすり抜け、階段に向かって走る。体力のない私は早くも足が痛くなってくるけど、ここは我慢だ。

 ダダダ! と階段を駆け下り、さっきまでいた2階と、昇降口のある1階を繋ぐ踊り場までやって来た時だ。

 翔くんが急に足を止める。なんだろうと私は彼の肩越しからその先を覗き見る。

「あ……」

 私は思わず小さく呻く。そこには一人の女子生徒が腕を組み仁王立ちしていたのだ。

新部(にいべ)さん……」

 その名を呟く私を、彼女はただ睨みつけていた……。

お読みいただきありがとうございました。

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