第27話 衝撃スクープ! シャイニーフェニックスは香取みう!?
「ええええええ!? 翔平くんに正体がバレかけたーー!?」
家へと帰りルビィに翔くんに私がシャイニーフェニックスじゃないかと詰問された事を話すと、彼は驚いたようにそう叫んだのだった。
私はこくりと頷くとそのまま続けるように口を開く。
「うん……。お前がシャイニーフェニックスだろって言われた時は心臓が止まりかけたよ……。でもなんとか誤魔化すことができたから大丈夫だったけどね」
「そっかー。ならよかったけど……」
ルビィは翼で額を拭う仕草をしながら安堵のため息を吐く。
「だけどね、翔くんは多分まだ完全には疑いを解いてないと思う……。ねぇ、ルビィ。なんとか疑いを完全に晴らす方法ってないかな……?」
私がそう言うと、ルビィは難しい顔で考え込んでしまう。
「それは……難しいね……。君とシャイニーフェニックスが同時に別々に現われでもしない限りは疑いを晴らすのは難しいんじゃないかな……?」
やっぱり……そうだよねぇ。だけど、当然無理な話、私とシャイニーフェニックスが同時に同じ場所に現れることは物理的に不可能なのだ。
ああっ、昔のヒーロー漫画で見た鼻をポチッて押すとその人そっくりに変身しちゃうロボットとかがあればなぁ!
「あっ、そうだ! 影武者でも仕立てるとか!!」
ルビィがいかにも名案だというようにそんなことを言うが、私は瞳を輝かせるルビィにジト目を返す。
「そのためにはその影武者役の子に真実を打ち明けて協力してもらわないといけないんだけど?」
正体を隠すために誰かに正体をバラすなんて本末転倒もいいところだよ。それに影武者なら条件として、シャイニーフェニックスの時の私に似てて、ある程度強いことが求められる、そんな相手を探すなんて無理に決まってる……!
「あはは、そ、そうだね……」
私の言葉に乾いた笑いを浮かべるルビィに、私は大きくため息を吐くのだった……。
(ただ、唯一の救いとしては翔くんの性格上疑ってはいても、今後は今日みたいに激しく問い詰めてくることはないと思う……けど……)
それでもいつボロが出るかわからないし……やっぱりなんとかしないとなぁ……。
そんな事を考えながら、その日を終えていく私なのだった……。
翌朝、学校への道を歩く私の足取りは重かった。
今日は久しぶりに早く起きられたというのに全然嬉しくない、その理由は当然シャイニーフェニックスの事で翔くんに疑われているからだ。
昨日のようにいきなり詰め寄られることはもうないだろうけれど、また何か怪しまれるようなことがあったらと思うと気が重いよ……はぁ……。
(顔……合わせたくないなぁ……)
心の中で呟くけど、ここで彼を避けるような真似をすれば、如何にも何か隠し事をしていますと言っているようなものなのでそんな事はできないのだ。
(とりあえずは普段通りを心がけて……自然に、自然に……ね)
自分に言い聞かせ無理やり笑顔を作る。いっそスカート捲りでもなんでもいいからいつもみたいに私にちょっかいをかけてくれれば気まずさなんて吹っ飛ぶんだけどなぁ……。
普段あれだけ嫌だと思ってる翔くんの意地悪なのに、そんな事まで思ってしまう始末である。
そんな事を考えつつ学校までやってきた私は、再び引きつりそうになる顔を無理やり笑顔に保ちつつ校舎へと入っていく。
(……ん?)
私の前方数メートル先、何やら人だかりが出来ていた。
十数人の生徒たちがみんな壁の方に視線を向けて何かを見ているようだ。
(あそこは確か……学校のお知らせとかが貼り出される掲示板があるんだっけ)
何か学校行事に関するお知らせでも貼り出されているんだろうか?
生徒が邪魔で掲示板に何が張り出されているのかが見えない私は、そのまま彼らの背後に立つと、「ねえ、何が貼られてるの?」と誰にともなく声を掛ける。
その瞬間、その場にいた全員が一斉に振り向き小さく「あ……」と声を上げた。
な、なによこれは……別に全員でこっちを見る必要なんてないでしょ!?
その視線から逃れるようにわずかに後ずさる私だったけど、一人の女の子(特に親しいわけじゃないけど同じクラスの子だ)が、「香取さん、あれ……」と掲示板の方を指差した。
彼女の言葉に答えるように、私の視線の妨げになっていた生徒が横にずれ、そこに貼り出された掲示物が私の視界に飛び込んでくる。
【秋桜学園通信中等部版】
貼り出されていたのは新聞部が発行している校内新聞だった。
日刊で発行されており様々なニュースを取り扱っているのだけれど、これだけ生徒の注目を集めるなんて、一体何が書かれているって言うんだろう?
(……!!!)
視線をずらし、記事内容に目を向けた私は思わず声を上げそうになる口を慌てて押さえる。そこにはとんでもない事が書かれていたのだ!
【衝撃! シャイニーフェニックスの正体は当学園中等部1年B組のヒーローオタク少女M!】
見出しにはデカデカとそんな文字が踊り、その下にはどこからどう見ても私の顔写真が目の部分だけを黒く塗りつぶされて掲載されていた。
そして、その横には似た構図のシャイニーフェニックスの顔写真が並び、二つの写真の間にはイコールの記号が記されている……!
そう、これはシャイニーフェニックスの正体に関するスクープ記事だったのだ!!
(嘘……!? どうしてこんな記事が!? なんで!? バレた!? 私がシャイニーフェニックスだって? いや、そんな事って……!?)
パニックになりつつ、私は凄まじいスピードで記事を読み進める。
【巷で噂のスーパーヒロイン・シャイニーフェニックスの正体が当学園の生徒であるという衝撃の情報が舞い込んできた。正体と目される人物はヒーローオタクとして知られる、1年B組のM・K(12)。当新聞部の独自取材により該当少女Mがシャイニーフェニックスと入れ替わりのようにトイレから出てくる姿を目撃したという証言を得た、加えて……】
(これって……まさか、翔くんが新聞部に私のことを喋ったんじゃ……!?)
記事に書かれている私がシャイニーフェニックスとされる根拠、それは昨日翔くんから指摘されたものばかりだ。
(そんな……翔くんは誰かに話したりしないって思ってたのに……)
どうしてもシャイニーフェニックスの正体について知りたかった翔くんが新聞部に情報提供をすることで、私が自分からボロを出すように仕向けたのだろうか?
私、翔くんの事を買い被り過ぎていたのかな……? 裏切られた気持ちになりながら翔くんの姿を探してみるが、彼の姿はここにはなかった。
(だけど、翔くんが教えたとは限らないわけだし……信じたい、よね……)
心の中で思いつつ、今はそれよりも大事なことがあることに気が付いた、とりあえずこの記事について弁解しなければならない。
何とかして否定しなければ、私がシャイニーフェニックスだと完全にバレてしまう……!
「あ、あの……」
おっかなびっくり口を開く私だったけど、みんなの反応は私の想像のどれとも違っていた。
「見ろよ、まーた新聞部がやってるぜ?」
「香取さんも災難ね、こんなデタラメ記事の材料にされて」
「みうちゃんがシャイニーフェニックスのわけがないのにね」
口々に言うクラスメート達に、てっきりこの記事の真偽について追及されると思っていた私は拍子抜けしてしまうのだった……
(あれ? なんで誰も私の事を問い詰めないんだろう……?)
そんな疑問を抱く私だったけど、ここに来てようやく思い出していた。
この秋桜学園の学校新聞が、今までどんな記事を書いてきて、学園内でどんな捉え方をされているのかを……。
やれ誰々と誰々の熱愛が発覚だの、学校内で血まみれの少女の霊を見ただの、深夜の理科実験室で恐るべき人体実験が行われているだの、挙句の果てにはプールで謎の巨大生物を見ただの。
何の根拠もないデマ記事を量産しまくり、『秋桜学園の東〇ポ』なんて蔑称で呼ばれていたことを……!
そんな新聞がシャイニーフェニックスの正体云々書いてみたところで、たとえそれが真実であろうが信じる生徒なんか誰もいないのだ。
事実、みんなが私に向けている視線は、新聞部による『報道被害』の被害者に対する同情的なそれだった。
(よしっ! これならなんとかなる!!)
私は胸を撫でおろしつつ、顔に苦笑を浮かべて見せる。
「あはは、そうだよねー、確かに私はヒーロー好きだけど、シャイニーフェニックスのわけがないよねー」
若干棒読みになってしまったけど、幸い生徒たちはそれには気づいていない。
私はさらに言葉を続ける。
「いやー、新聞部にはほんと困っちゃうよねー。どうしてこんないい加減な記事を書くんだろうねー?」
そう言って私がわざとらしく肩をすくめる仕草をすると、みんなもそれに合わせてくれるのだった。
しかし……。
「ふっ、言い訳は見苦しいわよ、シャイニーフェニックス!!」
突然割り込んできた声に私を含め全員の視線がそちらに向く。そこには一人の女子生徒が立っていた。
意志の強そうな切れ長の瞳、綺麗な黒髪を背中まで伸ばしたなかなかの美少女だ。
腕には『新聞部』と書かれた腕章を付けており、片手にはカメラを携えている。
私はその子には見覚えがあった。話したことはなく一方的に知っているだけだけど……。
<新部 文乃>、私と同じ中等部1年の子で、C組だったはずだ。そして、腕章が示す通りの新聞部員である。
『すっぽん』というあだ名を付けられるほど記事を書くことに熱心で、その情熱たるや凄まじいものがあるらしい。
彼女は仁王立ちになって私を見下ろしている。
「お前は新聞部の『しんぶ ぶんの』!」
その時、一人の男子生徒が声を上げた。その言葉にピシッと新部さんの顔に亀裂が走る。
「『にいべ あやの』よ!」
怒鳴るように訂正する彼女の剣幕に男子生徒は数歩後ずさる。
(しんぶぶんのじゃなかったんだ……)
そんなどうでもいいことを考えつつ、私は小さく首を振ると彼女に向けて言った。
「に、新部さん……言い訳とかじゃなくて私は本当にシャイニーフェニックスじゃないんだってば~」
彼女は名前を間違えた男子生徒に対する怒りの表情そのままで私の方に顔を向けるとギロリと睨みつけてくる。
「うっ……」と気圧され小さく呻く私だったけど、そんな私を援護するかのように周囲の生徒から彼女に対する非難の声が飛んできた。
「そうだそうだ、いつもくだらない記事を書きやがって!」
「恥ずかしくないのかよ!」
「ほんと迷惑な新聞部だよな!!」
ビキビキビキッと新部さんの額に青筋が浮かぶのが見えた気がした。
「だまらっしゃい! 今回はいつものとは違うのよ!」
大声で叫ぶ彼女に生徒たちは一気に大人しくなる。
確かに彼女の言うとおりだ、当てずっぽうがたまたま当たっただけなのか、それとも何か証拠のようなものでも掴んでいるのかはわからないけど、今回の記事は事実なのだ。
だからこそ、私は否定する必要があるわけだけど……。
それにしても、いつもはデタラメばっかり書いてるって認めるんだね……。
でも考えてみれば、彼女は今年中等部に上がった1年なので、今までの記事は先輩たちが書いたものがほとんどのはずだから、彼女としては今までの新聞部の活動は不本意なものだったのかも知れない思うのだった。
(だからと言ってこの記事を真実だってことにするわけには行かないんだよ……)
私がシャイニーフェニックスだと知られるわけには行かない、それどころか疑いを持たれることすら危険を伴うのだ。
だからここは何としても誤魔化さなくてはならないのである!
「何が違うんだよ、記事を読む限りいつもの妄想記事と大して違いはないみたいじゃないか」
幸いなのは生徒たちは私の味方だということだ、新聞部の普段の行いが私にとっては功を奏した形である。
「違うわ、記事にもあるでしょ? 香取みうがシャイニーフェニックスであるという証拠になる証言を得ていると」
そこで言葉を切ると、新部さんは私に指を突きつけ、自信満々な口調で続ける。
「ふっふっふ。香取みう。年貢の納め時よ、これを聞いたら顔色が変わるわよ!」
私はゴクリと唾を飲み込む……。見守る私たちの前で新部さんは懐に手を入れて何かを取り出す。
黒い長方形のそれは窓から差し込む朝日を受けてキラリと輝いた気がした。
「ICレコーダー?」
誰かの発した言葉に新部さんは「ええ」と頷くと、それを操作する。
誰もが固唾を飲んで見守る中、録音されていた音声が流れだした……。
『単刀直入に聞くぞ? みう、お前がシャイニーフェニックスなのか?』
ドキッと私の心臓が跳ね上がる。それは昨日屋上で翔くんから問いかけられた言葉そのものだったからだ!
「あれ? これって氷川の声か?」
一人の生徒の言葉に新部さんは一旦音声を停止すると、「その通り、これは昨日の放課後私が録音したものよ」と答える。
まさか……! あの時の翔くんとの会話を聞かれてた……!?
翔くんが誰に話したわけではなくて、あの時の会話そのものを聞いていた人がいたんだ……。しかもそれがよりによって新部さんだったなんて……!!
「昨日の放課後私は氷川くんがこっそり校舎裏に行くのを偶然目撃したの。思わず追いかけてしまったのだけど、その後すぐに香取みうがその場にやってきた。思わず茂みの中に隠れた私は思ったわ、これは告白だと! あの学園の人気者氷川くんの告白、しかも相手は彼の幼馴染の香取みうよ、大スクープだと思ったのだけど、そんな私の耳に飛び込んできたのは愛の言葉ではなく、氷川くんが香取さんをシャイニーフェニックスの正体だと指摘し、詰問する声だったのよ!」
そして新部さんは音声の続きを再生する。
流れるのは、翔くんが私を追い詰め、私が何とか言い訳をする音声。
さっきの新部さんの言葉通りに自分の顔色がどんどん青ざめていくのがわかる。
「優しい氷川くんは幼馴染であるあなたに対しては強く追及できない、だからあなたの苦しい言い訳を信じ引き下がったようだけど私は違うわ! この会話で確信したの、あなた――香取みうこそがシャイニーフェニックスであると!!」
ドーン! と効果音が聞こえてきそうな勢いで私を指差す新部さん。
(まずい!!)
このままでは私がシャイニーフェニックスであることがバレてしまうかもしれない! そうなったらもう終わりだ、今まで必死に隠してきた努力が全て水の泡になってしまうのだ! そんなのは絶対に嫌だ!! 私が恐れてるのは正体がバレた先に待っている事態である。
マスコミに追いかけ回されるかもしれない、政府からお呼び出しがかかるかも知れない。少なくとも今までみたいな生活は送れなくなるだろう……それだけは何としても避けなくてはならない、絶対にだ……!! だからこそ、ここは何としてでも誤魔化さなくてはならいのである。なのに……。
「そうか、情報元は氷川か……。こりゃあ、案外本当かも知れないぞ……」
「氷川くんなら信用できるもんね~」
新部さんが出してきた翔くんの音声は場の雰囲気を一変させてしまった。私に対する意地悪はしてもそれ以外では極めて真面目かつ誠実な彼の発した言葉だからみんなも納得してしまったようだ。これは非常にマズイ状況になってしまった……!
「さあ、どうするの? 香取みう!」
勝ち誇った表情で私を見る新部さんに私は何も言い返すことが出来なかった。
翔くんとの時はまだ一対一だったから冷静さを保てていたけど今は違う、みんなの視線が私に集まっているのだ!
「さあ、認めなさい! 自分がシャイニーフェニックスであるとね!! 隠す必要などないでしょう? むしろシャイニーフェニックスだと判明すればみんながあなたを称賛するわ、人気者になれるわよ?」
人気者になりたくないか、ヒーローの正体として注目を浴びたくないかと言われたらそれは嘘になる。
だけど、認めてしまえば引き換えに私は多大なるリスクを背負うことになるんだ……!!
(どうすれば良いの……?)
必死に考えるが答えは出てこない、その間にも時間は刻一刻と過ぎていくばかりだ……このままではいけないと思い何か言おうとするが上手く言葉が出てこなかった。
それが余計に私に対するみんなの疑いを増幅させているという事に気づく余裕すら今の私にはないのだ。
本当は平気な顔して笑い飛ばせばよかったんだ、翔くんにも言ったことだけど明確な証拠なんて何一つないのだから……。むしろ私のドジっぷり落ちこぼれっぷりを知ってるみんななら「やっぱりそんなわけなかったかー!」って笑って済ませてくれるはずだもん!
でも、黙り込むことで、私は新部さんの指摘が真実であることを自ら証明してしまっていた。
「さあ! もう言い逃れはできないわよ!!」
そんな私に彼女は更に追い打ちをかけるように言葉を投げかけてくる……!
もう……ダメ……。
「おい、人の会話を勝手に録音して使うのはやめてくれよ」
思った刹那、背後から現れた誰かが私の横に並ぶ。
私が恐る恐るそちらに顔向けると、そこにいたのは翔くんだった!
一瞬、私は救世主が現れたような心境になるが、すぐに違うと考え直す。
今の言葉は、新部さんに対する非難の言葉だけど、そもそもすべては翔くんが私への疑いを持ったことが始まりであり、彼もまだ私への疑いを晴らしていないはずなのだ。
翔くんも今の私の脅威の一つなのだ……!
「氷川くん……」
小さく呟くように言う新部さん。私は黙って事の成り行きを見守ることしか出来ない、翔くんが何を言うかによって私の運命が決まってしまうのだから……。
「オレは確かにみうのことをシャイニーフェニックスだって疑った。けどな、みうは否定してたし、よく考えれば何も証拠はないんだぜ?」
言いながら翔くんは新部さんに近づいて行く、そして彼女の目の前まで行ったところで手を伸ばしその手からICレコーダーをすっと抜き取った。
「だから、オレはもうこの件については追及しないって決めたんだ。なのにオレの声を利用してみうを追い詰めるようなことはしないでもらいたいな」
翔くんは新部さんに顔を寄せ、言い聞かせるような口調で言う。
これって……! 翔くんを救世主と感じたさっきの感覚がもう一度甦ってくる! 翔くんは私の事を庇ってくれているのだ……!
自分だってまだ疑いを捨てきれてないのに、それでも私が大勢の生徒から詰め寄られて困っているこの現状を見て見ぬ振りが出来なくて助けに入ってくれたのだ……!!
じーんと感動する私だったけど、よくよく考えてみればそんな場合じゃない! それを受けて新部さんはどういう反応を見せるのか……?
だけど彼女の反応は私の想像するものとは少し違っていた、彼女は翔くんに顔を近づけられ顔を赤くしながら上体を逸らし、「ちょっと待って! ちょっと待って! 落ち着いて、そんなに顔を近付けないで!」と言いながら両手を前に突き出して距離を保とうとする……なんか照れてる?
いや、まあ幼馴染の私が言うのもなんだけど、翔くんはハッキリ言ってかなりカッコいいし、私以外の女の子に対しては優しい紳士的な男の子だから、新部さんが翔くんの事を(それが恋愛的なものかアイドルに対するそれかはさておき)好きだとしてもなんら不思議はないのだけど……。
だけどこれは私にとってはラッキーなのかもしれない。新部さんは翔くんに窘められ、もしかしたらこのまま私への追及をやめてくれるかもしれないのだから!
そんな期待を込めて私は二人の様子を見守ることにするのだった……。
「……確かに氷川くんの言う通りね、まだ確実な証拠もない段階で香取さんを糾弾するのは報道に携わるものとして正しい態度ではなかったわね」
やった! 新部さんが引き下がってくれた! そう思った私だったけど、次の瞬間、その考えは裏切られることになる!! 新部さんはバッと翔くんから離れると赤い顔のままで腕を組むと言った。
「逆に言えば証拠があればいいんでしょ? わかったわ。私が必ず証拠を見つけ出してみせるわ! 香取みう、覚えておきなさい!」
そう私に指を突きつけ鋭く睨みつけつつ宣言すると、新部さんは身をひるがえし走り去って行ってしまったのだ……!
……ってちょっと待ってよ!? なんでそうなるのーッ!? まさかの展開に呆然と立ち尽くすしかない私と翔くんだった……。
「みう、悪かったな、オレのせいで……」
新部さんが去ったことと、あとちょっとでホームルームの開始時間ということで生徒たちも解散した校内掲示板の前。
私に向けて翔くんがそう言って頭を下げてくる。
「ううん、いいの。翔くんが悪いんじゃないから……」
小さく首を振りながら私は言う。そう、翔くんは悪くない、新部さんだって別に悪くない。
悪いのは私……本当の事を言えない、私に原因があるのだから……。
「そう言ってくれると、助かる……」
それだけ言うと翔くんはその場を後にした。私はしばし呆然としていたのだけど、すぐにハッとなると教室に向かって歩き出した。
私が教室に入ると、クラスのみんなの視線が一気に集まるのを感じた。
そして、ヒソヒソと何やら話す様子が見て取れた。
新部さんの追及こそなんとか乗り切ったものの、あの校内新聞の記事がみんなに与えた影響はかなりのものだったのだろう。
きっとみんな私がシャイニーフェニックスというのは本当かどうかについて話してるんだ……!
(大丈夫……さっきよりは落ち着いたから……)
平静を装い私は自分の席に座る。
「みう、とんでもないことになっちゃったわね。だけど、あたしはあんな記事信じてない。というかあんたの事を信じてるからね?」
そう声を掛けてきたのは智子だ、隣の席から優しい笑顔を向けてくる彼女に私の胸はチクチクと痛んだ。
智子……ごめんね……。あの記事は本当なんだ、私はあなたにも嘘をついてるの……あなたが信じてるのは私の嘘なの……。
「ありがとう……。智子」
必死で胸の痛みを押し殺し、私は精一杯の笑顔で答えたのだった……。
お読みいただきありがとうございました。
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