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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第6章【バレちゃった!? 私の秘密!!】

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第25話 放課後! 校舎裏! もうアレしかないでしょう!?

 昼休み、手早く弁当を食べ終えたオレは校庭の片隅の木の下で頭の下に手をやり寝転がりながらぼんやりとしていた。

(朝からみうの事を観察してるが、あいつのどこにも変わった様子はない……オレの知ってるみうそのものだ……)

 シャイニーフェニックスらしい部分などどこにもない。もっともオレは肝心のシャイニーフェニックスについてほとんど知らないが、あれだけ強く美しい正義のヒロインならば普段から強く、聡明で美しい女の子であるはずなのだ。

 みうはどうだ? 可愛らしさはある。だがそれだけだ、強くはないし聡明とも言い難い。体育の時間で晒して見せた運動オンチっぷりもそうだが、他の授業においても先生から指され慌てて答えられずにしどろもどろになっている姿も散見された。

(やっぱりみうがシャイニーフェニックスなわけがないんだ……。だけど、ならあのトイレの一件はどう考えるんだ……?)

 あれがある限り、オレの中の疑いはやはり消えそうにない。それに……。

(シャイニーフェニックスと接してる時に感じるドキドキ、あれをみうを見てる時も感じるんだよ……!)

 朝からの“観察”はオレに別の発見を与えてくれた。それは、やっぱりみうはめちゃくちゃ可愛いということだ! いや、昔から可愛かったしそれはわかってるつもりだった。

 だが、(特に小学校中学年以降)ここまでじっくりとあいつの顔を見る機会なんてなかったからな。あいつの仕草や表情を見ていると改めて思ってしまうのだ。

 ってこれじゃまるでオレがあいつに恋でもしているみたいじゃないか!? そんなんじゃないぞっ、断じてそんなんじゃ!!

 オレがそんな風に心の中で誰に対してやってるのか分からない弁明をしていると、ふとオレの身体を誰かの影が覆う。

「氷川くん」

 ハッとしてオレは顔を上げる。身もだえてる姿を見られたか!? と警戒しながらその人物の顔を見てみるとそれはクラスメイトの森野智子だった。

 少しだけ周囲をうかがって見るが、他の人の気配はない。どうやら彼女一人だけのようだ。

「森野……」

 オレはのそのそと立ち上がりながら森野の顔色をうかがう。

 森野はみうの親友であり当然オレは話したこともあるのだが、彼女とオレは実はそこまでは親しい間柄ではなかった。

 みうの親友である彼女とみうの幼馴染であるオレ、みうを通した間接的な付き合いをしているおかげで傍から見れば結構仲が良いように見えるかもしれないが、実のところはそれほどでもないというのが実情なのだ。

 そんな微妙な距離感の関係なので、みうが不在の時にこうして二人きりで話すというのはかなり珍しい状況だった。

「何か用か?」

 尋ねるオレに森野は腕を組むとこう言った。

「氷川くん。あなたは今日は一体どうしたの? 朝からみうの事をじろじろと舐め回すように見てたりして。みうが気持ち悪がってたわよ」

 うぐっ……相変わらず結構キツいものの言い方する奴だな……。

 森野は元々勝気な性格をしている上に、オレがみうにちょっかいを掛けていることをみうの親友としてあまり快く思っていないのだ(もっともこれはオレの自業自得なのだが)。

 しかし、わざわざこうして出向いてきたのは、おそらくみうが彼女に今日のオレの“観察”について話したからだろう。

 確かに今日のオレは気持ちの悪いことをしている。みうを見るにしてもその視線に含ませているのは“シャイニーフェニックスかどうかを見極めてやろう”という意図だ。そんな目で見られていい気がするはずがない。

「別に……なんでもねーよ……。ただ、ちょっと、気になることがあって、な」

 そう言葉を濁すオレに森野は僅かに首を傾げ視線を斜め上にやるが、すぐに納得したような顔になった。

「気になること……? ははあん、そういうことぉ」

 そして、にやあっと嫌らしい笑みを浮かべながら眼鏡をクイッと上げた。

 レンズの奥の瞳の輝きにこいつは何を想像したんだと嫌な予感が込み上げてくるものの、オレは何も言わずに黙り込む。

「そっかー、そうなのね。とうとう氷川くんも自分の気持ちを認める気になったのねー」

 ボソボソと呟くように首を上下にうんうんと振る森野。その態度にオレは思わず眉をひそめる。

(こいつ、なんか勘違いしてないか?)

 だが、ここで変に反論しても話がこじれるだけだと思いオレはやはり何も言わなかった。

 オレがみうの事を好きだとか勘違いされるのはいつもの事だ、そしてそれを否定しても意味も効果もないことはオレの今までの経験からわかっていた。

 それに、今はどちらかといえばこう勘違いしてくれていた方がありがたいのかもしれない。

 オレがシャイニーフェニックス疑惑を抱いていることをみうに悟られるのはまずい気がしたからだ。

「まあ、そういうことならいいんだけどね。氷川くんもさー、みうをあんまり不安がらせるんじゃないわよ」

 しかし、森野の奴は本当にみうの事を大事に思ってるんだな。みうと森野が友達になってからまだ一年も経ってないというのにすでにオレ以上の……。

「森野!」

 オレは突然大声を上げた。森野は驚いた顔をしているがそれには構わず言葉を続ける。

「お前、みうと親友だよな!? 最近のみうについて多分オレより詳しいよな!?」

 肩でも掴みそうな勢いで詰め寄るオレに気圧されながらも、それでも冷静に対応する辺りはやはりこいつらしいなと思う。

「ま、まあ。氷川くんと比べてどうかは知らないけど、みうについてはそれなりに知ってるつもりよ?」

 よし! オレの睨んだ通りだ。今のみうについて知りたいなら“観察”よりこっちの方が効率がいいはずだぜ!!

「なら、聞きたいことがある。ズバリ、最近のみうについてだ」

「いきなり来たわね。んっふふ。でもいいわよ教えたげる。氷川くんがいよいよ自分の気持ちを自覚する気になったってことだもんねー」

 ニヤニヤしながら言う森野。こいつはぁ……! やっぱり勘違いしてやがる!! だが今は気にしてられない、誤解されることよりも真実を知りたいという欲求の方が強いのだ。

 オレはそのまま森野に質問をぶつける事にしたのだった。

「みうに何か変わったことはないか? 特にここひと月ばかりの間で何か大きな変化があったとか……」

 シャイニーフェニックスが初めて紗印(しゃいん)市に現れたのはひと月ほど前。

 みうがシャイニーフェニックスだとするなら、入れ替わったなり、力に覚醒(?)したなりしたのはその頃だとみて間違いない。

 そう思い尋ねるオレに森野は変な質問ねとばかりに首を傾げるが、顎に指を当てて少し考える素振りを見せた後で口を開く。

「別に……。大きな変化って言うのは感じないわね……。しいて言うなら、ちょっと浮き沈みが激しくなった、と言うことぐらいかしら?」

「浮き沈みが?」

「ちょっと悩んでるような様子を見せたと思ったら、次の日にはそれまで以上にご機嫌な様子で登校してきたりとか」

 うーん、どうなんだ? みうは元々結構感情の振れ幅が激しいタイプだからなぁ。平常運転ともいえるが……。

「まあ、みうのご機嫌の理由は分からないでもないけどね。何しろあの子がご機嫌な時って、シャイニーフェニックスがギーガーク帝国の奴らに快勝した日だったりするからね!」

 何……? 森野の言葉にオレの心臓がドキリと鳴った。

 シャイニーフェニックスが勝った日にみうの機嫌が良くなる……? つまり、言い換えるならシャイニーフェニックスの機嫌が良くなるであろう日にはみうも上機嫌になっているということなのか!?

 いやいやいやいや、またも短絡的過ぎるぞオレよ、みうはヒーローが好きなんだ、シャイニーフェニックスが勝った日に機嫌が良くなるのは当然だろう!

 オレだってシャイニーフェニックスが勝てばいい気分になる。これを理由にみうがシャイニーフェニックスだなんて言えるわけもないじゃないか……!

 オレは気を落ち着けてさらに森野に質問をぶつける、このままではらちが明かない。ある程度核心に迫れるような質問をすることにしたのだ。

「なあ、森野。お前はみうとシャイニーフェニックスの話したりするか? もししてるなら、あいつがシャイニーフェニックスについてどんな事を言ってたのか教えてくれないか?」

 オレがそう尋ねると、森野は少し困ったような顔をした後、こう答えたのだった。

「うーん……それがちょっと変なのよねぇ。みうってばあたしがシャイニーフェニックスの話を振ってもあんまり食いつき良くないのよね。さっきも言ったようにシャイニーフェニックスが勝った次の日とかは機嫌良くなるんだから好きなはずなのによ? だから、本当のところみうがシャイニーフェニックスについてどう思ってるのかまでは知らないの」

 まただ、オレの胸がざわめく。シャイニーフェニックスの話への食いつきが悪いだって? 明らかにおかしい、ヒーロー好きのあいつが現実に現れたスーパーヒロインの話題に対してそんな態度を取るなんて……!

(下手なことを喋れば、自分がシャイニーフェニックスだとバレるから話題を避けている……)

 頭に浮かんできた推測をオレは再び否定する。

 だから、なんでそんな短絡的なんだよオレ! たまたま、そうたまたまだろ? テレビなんかのヒーローと違ってシャイニーフェニックスは謎だらけだ、単純に語り合うには情報が足りないってだけさ!

 だけど……。

 オレは以前シャイニーフェニックスが言ってた言葉を思い出していた。

 彼女はみうと気が合って友達になったと言っていた。そして、みうの口調が移ったからオレを『翔くん』と呼んでしまったのだと。

 つまり、みうとシャイニーフェニックスは別人だとしても、お互いにかなり親しい間柄であるはずなのだ。

 なのに親友である森野にすらその事を告げずに隠している、当のシャイニーフェニックスがオレに説明したんだからこれは別に誰かに明かしても問題ない内容なはずだろ……?

 なら、やっぱり……。くそっ、ダメだ。とてもスーパーヒロインとは思えないみうの様子から一旦疑いを解きかけたのに、森野との会話でまた疑念が再燃してしまった。

 やはり、みうはシャイニーフェニックスなのか?

「どうしたの? 難しい顔しちゃって」

 そう言ってくる森野にオレはなんでもないと小さく答えると、カムフラージュのために、シャイニーフェニックスとは関係ない別の質問をいくつかするのだった。


「それじゃ、そろそろあたしは戻るわ。氷川くん、みうのことあんまりいじめんじゃないわよ?」

「あ、ああ。わかってるよ」

 背を向けて歩いて行く森野の背中をぼんやりと見ながらオレは考えていた。

(やっぱり……みう本人に直接この疑問をぶつけてやるしかないのか……)

 観察したり周りの人間から話を聞いてるだけではどうしようもないし、結局誰だろうとこのオレの疑問に対する明確な回答なんか持ってるわけないのだ。

 本人以外は……。

(だが、もう昼休みは終わりだ。聞くとしたら放課後しかないな。それも、誰にも聞かれないような場所が望ましい……)

 オレは脳内の学園の地図を使いそんな場所を検索してみる。

(校舎裏、そこがいいな……)

 放課後に女の子を校舎裏に呼び出す。まるで告白か何かでもするようなシチュエーションだ。

 ドキドキするという意味では似たようなものかもしれないが、このドキドキは恐れに近い感情だ。

『えぇー? 翔くん何言ってんの。私がシャイニーフェニックスなわけないじゃん!』

 そう笑い飛ばしてくれ。そしてあのトイレの一件も論理的な説明でもってオレに納得させてくれ……。

 心の中で懇願しながら、オレは校舎に向かって歩き出した。

 勝負は放課後、それまではみうの“観察”はやめて時間が過ぎるのを待つんだ……。

「それで、どうだったの智子?」

 朝からの翔くんの私を観察するような視線。それが気になって昼休み智子に相談したのはよかったけど、「じゃあ、あたしが直接氷川くんに聞いてきてあげるわ」なんて言い出し翔くんのところに行っちゃったもんだから慌ててしまった。

 だけどやっぱり気にはなるもの、戻ってきた智子にそう尋ねる私に智子はどこかニヤついた様子でひょいっと肩をすくめるとあっさりと言った。

「別に本人は何でもないって言ってたわよ」

「そ、そうなの……?」

 智子の態度が少し変な気がする。それもあっていまいち信用できないと言った視線を向けてしまう私に智子はこう続ける。

「大丈夫よ。氷川くん別に変なことを企んでるとかじゃあないから。むしろ……うぷぷぷ……今後あんたに対する態度に変化が見られるかもしれないわよ?」

「はぁ?」

 わけのわからない智子の言葉に思わずそんな声を上げる私の背中をバンバンと叩きながら智子は、「まあ、あんたはまだ分からなくてもいいのよ」とだけ言うとさっさと自分の席に着き私の事を無視するように次の授業の準備を始める。

(何よもう!)

 そんな智子の様子に私は少しムッとするもののすぐに気持ちを切り替えて彼女にならい教科書やノートを取り出すのだった。


 放課後になった。

 智子が釘を刺したおかげかそれとも単に飽きたか、あれ以来私を観察するような翔くんの視線は感じなくなった。

「智子、一緒にか……」

「ごめんみう! 今日はあんた一人で帰って! あたし大事な用事があんの!!」

 声を掛ける私を遮るように智子は言う。

「用事? いったい何の?」

 用事があるのは特に珍しくはないけれど、なんだかやけに慌てた様子だ。

 尋ねる私に智子はうーんと唸ると、「まあ、もう言ってもいいか」と言うと指を立てて続けた。

「実はね、今日A組で放課後交霊実験があるのよ。あんたもこの間会ったからゆうなのことは知ってるでしょ? あの子主催で霊に未来の事を占ってもらうってやつよ!」

 ゆうなちゃんの事なら覚えている。この間私がSPチェンジャーを失くした時に友達になった子だ。彼女は『ゴーストガール』なんて呼び名を付けられてるオカルト少女で心霊的な話題には事欠かない子だけど……。

「そ、そーお……」

 私は少し引きつった顔を智子に向けた。

 ゆうなちゃんと友達になりはしたけど、お化けなんかが大の苦手の私にとってはそっち関係の事には正直あまり関わりたくないというのが本音だった。

 ショッピングとか、明るいところに遊びに行くとかの話だったら大歓迎なんだけどねぇ……。

「あんたも来る? あんたが来ればゆうなもよ……」

「ごめん! 私は行けない」

 最後まで言わせず即答する私に智子はやっぱりね的な表情を見せる。

「ま、分かってたわよ。超怖がりのあんたがそんなオカルトチックなことに興味持つわけないもんね」

 そう笑いながら言う智子の言葉に私は、全く興味がないわけじゃないんだけどね、と心の中で呟いた。興味より恐怖が勝ってるだけなのだ。

「ま、とにかくそんなわけであたしそれに参加するからあんたは一人で帰ってね」

 A組で行われる交霊実験とやらにどのぐらい時間が掛かるのかは分からないけど、数分で終わるようなものじゃないだろう。

 流石にそれが終わるまで学校で待っているのは退屈すぎる。

 私が、「わかったよ。それじゃまた明日。ゆうなちゃんによろしく言っといてね」と答えると智子は、「うん。また明日ね~」と手を振りながら教室を後にしたのだった。

(一人での下校か……ちょっとつまらないなぁ)

 あいにく智子以外の私の友達はみんな部活に所属している。だから智子と一緒に帰れないとなると一人で帰るしかないのだ。

(私もなんか部活に所属しようかな……?)

 だけど、こうイマイチ、ピンとくる部活がないんだよねぇ。私の夢はヒーローだからヒーローぽっい部活がいいんだけどね。

 ヒーローっぽさを演出したいのならスポーツ系の部活が一番なんだろうけど、運動オンチの私には無理そうだし……。

 そんな事を考えながらも私は帰り支度を済ませる。そして、いざ教室から出ようとしたその時。

「みう」

 聞き慣れた声を背後から浴びせられ私はゆっくりと振り返る。

「何? 翔くん」

 私は少しだけぶっきらぼうに答える。そりゃそうでしょ、いつも意地悪してくる相手、かつ今日は人を観察するような謎の視線で私を不快な気分にさせてくれたんだから! そんな私の態度を気にすることなく翔くんはどこか神妙な面持ちで言った。

「みう……お前、これから特に用事とかない、よな?」

「まあね、帰るだけだし家に帰っても別にすることないし……」

 一体何を言うつもり? まさか、いつかみたいに「オレ部活サボるから一緒に帰ろうぜ」とか言い出すんじゃないでしょうね!?

(そんなの絶対お断りよ!!)

 私が心の中で拒否反応を示していることなど知るよしもなく彼は続けた。

「……そうか、なら今から一人で、誰にも見られないよう校舎裏に来てくれないか? 大事な話があるんだ……」

 え……? 真剣な表情で告げられたその言葉に私の心臓がどきりと跳ね上がる。

 だ、大事な話……? それって一体……。

 私はもう一度、翔くんの顔をうかがって見る。彼の頬が赤く染まっているように見えるのは私の気のせいだろうか……?

「な、何よ……大事な話って……こ、ここじゃ言えないような事なわけ……?」

 自分の声が震えているのが分かる。きっと顔も真っ赤になっていることだろう。そんな私を翔くんは真剣な眼差しで見つめながら答えた。

「……ああ、そうだ」

 その返答を聞いた瞬間、私の顔はさらに真っ赤になった。

(ま、まさか……まさかまさかまさかまさか……)

 そんな事なんてあるわけない、だけど、でも、このシチュエーションは……。

 よく鈍感とか言われる私だけど、流石にここまでの材料が揃ってしまってはそう考えざるを得ない。

 すなわち、翔くんが私を校舎裏に呼び出す理由は……告白のため……。

 ドキドキドキ!! 想像をしただけで心臓が破裂しそうになる!

 全く考えなかったわけじゃない。翔くんが私に対して意地悪する理由……そして、今朝から感じていた私を観察するような翔くんの視線の意味……。

 翔くんはもしかしたら、私の事を好きなんじゃなかろうか、と。

 だけど、彼はそれを周りの人から指摘されるたびに否定してきた。私の前でも「オレはお前の事はそう言う意味では好きじゃない」と何度も言ってきたのだ。

 だけど、何かのきっかけで私への気持ちが幼馴染に対する友情から恋心へと変わったんだとしたら……。

(ど、どうしよう……)

 私の頭は大パニックを起こした。まさに思考回路はショート寸前だ。

 私は翔くんの事が好きだ。兄妹同然(同級生だけど)に育ってきた幼馴染なんだから当然だ。

 意地悪されても根本的な部分では嫌いになんてなれない相手だ。

 けれども、だからこそ私には分からない。その自分の好きは果たして恋愛感情なのだろうか? それとも友情(というかほぼ家族愛?)の延長線上にあるものなのかが。

 いや、そもそも私は翔くんがどうとか言う以前に、まだ恋愛感情というものがどういうものかが分かっていないのだけれど……。

「とにかく、オレは先に行って待ってる。周りに誰もいないのを確認する必要があるしな……」

 黙り込んでしまった私を見て、翔くんはそう言った。

 待って待って! 私行くなんて一言も言ってないよ!!

 だけど、その言葉は出てこず代わりに私は小さくコクリと頷いていたのだった。

(どうしよう……どうしよう……どうしよう……どうしよう……どうしよう……どうしよう……どうしよう……どうしよう……)

 校舎裏に向かう私の頭の中は同じ言葉で埋め尽くされていた。

 逃げてしまおうか? だけど、それは失礼過ぎる気がする。

(だけど、もし本当に告白だったりしたら……)

 私はどうすればいいんだろう? というか、どう答えてしまうんだろう?

 頭の中でシミュレーションを繰り返してみても答えが見つからない。

 実際に言われないと、きっと分からないだろうと思う。だって、私は今まで誰かに好きだと言われた事なんて一度も無いのだから。

(もうっ、しっかりしてよね、香取みう!! 大体翔くんの呼び出しが告白と決まったわけじゃないでしょう!?)

 私の中でもう一人の私が叱咤激励をしてくる。それはあるいはシャイニーフェニックスなのかも知れない。

 私の心の中にいる強い私、変身しなくても心は同じだと思ってたけど、変身前の私は心まで弱いのかな……?

(……違う! 私は香取みうでシャイニーフェニックス! 心に違いなんてないの!)

 行こう! 校舎裏に! 告白でもそうじゃなくても、私は翔くんの言葉を真正面から受け止めよう! もう逃げないって決めたんだから!


「お待たせ。何、大事な話って?」

 校舎裏――一種周囲から隔絶されたようなこの場所で、私は翔くんと対峙していた。

 心臓は相変わらずドキドキと激しく脈打っている。だけど、さっきまで感じていた不安や恐怖は不思議と感じなくなっていた。

 今私の胸にあるのは期待と緊張……そして僅かな高揚感だ。

「ああ、そうだな……」

 対する翔くんは少し緊張した面持ちだった。

 私は静かに彼の言葉を待つ――。

 彼はどう切り出そうか迷っているのか、少し思案顔だ。長い長い、だけど現実においては極めて短い時間が経過した後、翔くんは再び口を開いた。

 だけど、彼の口から飛び出した言葉は、私の想像とは全く違うものだった……。

「単刀直入に聞くぞ? みう、お前がシャイニーフェニックスなのか?」

お読みいただきありがとうございました。

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