第19話 負けられない! ブーミとの対決です!!
「あ、あ、ああ……」
翔くんの口から恐怖の声が漏れる。一度ブーミの変身を見たことがある私はそれに関しての驚きは薄かったけど、相手が強くなってしまった――つまり私と翔くんがここから無事に抜け出せる確率が大幅に下がってしまったことに動揺していた。
そんな私たちを見てニヤニヤと笑う怪人の姿となったブーミ。
もうさっきまでの冴えないサラリーマンの面影はどこにもない。
まるで鬼のような外見をした怪人の姿がそこにはあった。
「ち、ちくしょう!」
翔くんは恐怖を振り払うように叫ぶと、果敢にブーミに殴りかかる!
ガアン! という音と共に、再び彼の拳がブーミの腹へと突き刺さった! けど……。
「今何かしたか?」
そう言ってニヤリと笑うブーミ。翔くんは慌てて拳を引くと後ろに飛んで距離を取る。
「そんな、まともに入ったはずだぜ!?」
「ククク、バズーカ砲すら通じないこの俺の皮膚に貴様のようなガキの攻撃など効くものか!」
余裕の表情を見せるブーミに対して悔しそうに唇を噛む翔くんだったけど、すぐに体勢を立て直すともう一度構えを取った。そしてまた怪人に向かって突進していく……!
「頭の悪い奴は嫌いだ」
そう言ってパンチを繰り出すブーミ。翔くんを馬鹿にしているのか、その動きはゆっくりとしていた。
「自慢じゃないが、オレは学校の成績はいいんだぜ?」
そんな言葉を吐きながら、翔くんはその拳をかわすと腕を取り相手の力を利用して投げ飛ばす!
えっ、す、すごい……。あんなこと出来ちゃうんだ……。
「なにいぃぃ!?」
「力だけが武術じゃないんだよ!」
驚愕の声を上げるブーミにそう言い放つと、翔くんは私に駆け寄り手を掴む。
「みう、オレに出来るのはあれぐらいだ。どうせダメージなんか受けちゃいないだろうがチャンスだ、今のうちに逃げるぞ!」
「う、うん!」
頷くと私は、手を引かれるままに走り出す、しかし、もう少しで広場を出られると思ったその時、「うわっ」と翔くんが声を上げて倒れこんだ。
見ると、彼のズボンの太もものあたりが切り裂かれており、露出した肌にも赤い線が引かれていた。
「逃がすか!」
聞こえた声の方向に目をやると、ブーミが倒れたままでこちらに片手を向けているのが見えた。
おそらく、風の刃か何かを放ったのだろう。
「くそっ……。あんな技まで使うのかよ……」
翔くんは悔し気に地面を拳で叩く。
そんな……、なんとか逃げられるかもと思ったのに……。
もう駄目だ……。私の脳裏に絶望の二文字が浮かぶ。このままじゃ翔くんは確実に殺される。
そして私はあいつに捕まって『嫁』にされてしまう。
何をされるのかは正確にはわからないけど、どうせ碌なことはされないだろう。殺された方がマシというぐらい酷いことをされるかもしれない。
そんな目にあうのは絶対に嫌だ! けどどうすれば……? 私がそう考えている間にも起き上がったブーミはゆっくりとこちらに近づいてくる。
その目は嗜虐的な光を帯びていて、まるで獲物を前に舌なめずりをする肉食獣のようだった。
シャイニーフェニックスにさえなれれば……。SPチェンジャーさえあれば……。
どうして失くしちゃうの……。私なんでこんなに馬鹿なの……!!
もう何度目か、私は自分自身へとあらん限りの罵声を浴びせる。
そして、強く祈った、心の底から願った。誰にかはわからない、神様かも知れないし、私のヒーローシュナイダーさんにかも知れない。
(助けに来てくださいなんて願いません……。ただ、もう一度SPチェンジャーを私の元へ戻してください……。もう二度と失くさないよう気を付けますから……。今まで以上にシャイニーフェニックスとして正義のために戦うと誓います! だからどうかお願いします……!)
しかし、やっぱり何も起こらなかった……。そんなの当たり前だよね……。願っただけで失くした物が見つかったら誰も苦労なんてしないもの……。
――だけど、奇跡は起こってくれた、それは物凄く意外な形で……!!
「くうっ!」
翔くんは、苦痛に満ちた声を上げながら、足を抑えなんとか立ち上がろうともがく。
その時だ、彼の懐から、何かが地面へと落ちたのが見えたのは。
――え……?
それを目にした瞬間、私の目が大きく見開かれた。
彼の懐から落ちたもの、それは一見ただの腕時計にしか見えない銀色のブレスレットだった。しかしそれは私にとって見覚えのあるものだったのだ……。
そう……それは私が失くしてしまったはずのSPチェンジャーだったのだ……。
なんで……どうして……!? どうしてそれがここにあるの……!? なんで彼が持ってるの!?!?!?
ゆうなちゃんのこっくりさんが示した『しよう』の言葉……あれはもしかして、翔くんの名前を教えようとしてくれたって言うの?
「あ、これ……。そうだ、すっかり忘れてた、お前に渡そうと思ってたんだけど……」
どういう事? いや、今そんな事を言ってる場合じゃない、事情は後で聞けばいい!
とにかく、これがあれば百人力だよ!
私はそれを拾い上げると、素早く左腕に装着し、表面をタップする。
本当ならすぐにでも変身したいところだけど、翔くんやブーミに正体をバラすわけにはいかない。
正体をバラさないように変身するためには、あの子の力が必要だ、ここから家は少し遠いけど、間に合ってくれるはず……!
幸いブーミは、翔くんの足を負傷させたことで私たちが逃げられないと高を括っているのか、ゆっくりゆっくりと歩いてきていた。
早く……早く……!
焦る私だったけど、その間にもブーミは歩みを進める。そしてついに私たちの前へと来ると、翔くんに視線を向けながら言う。
「さあ、お遊びはここまでだ。そろそろこのガキには死んでもらおう。こいつが死ぬところを見ればみうも抵抗する気を失くすだろう」
こいつ……。翔くんが呼んでたのを聞いてたんだ、私の名前を呼び捨てにして……!
怒りが込み上げてくる、だけど、それよりも何とかしないと翔くんが殺されてしまう!
「やめて! 翔くんを殺さないで!!」
懇願するように言うが、ブーミは私の言葉を無視して腕を振り上げる。
もうっ、何をやってるの!? 遅いよぉ!! こうなったらこのまま変身してしまおうか……。
いや、ここでの変身は最後の手段、まだ出来ることはあるはず!
「待って! あなたの目的は私でしょ! 翔くんを殺さないと約束してくれれば私なんでも言うことを聞いてあげる、だからお願い!」
嫌だけど、時間を稼ぐにはこれしかない!
そして、予想通り私の言葉にブーミは「ほう!」と喜色に染まった声を漏らす。
「なんでもか。面白い。ならば、服従の証を見せてもらおう」
「何をしろって言うの……」
「もちろん、ここで服を脱いで裸になってもらう」
こいつぅ……本当にどうしようもない変態怪人だ。
「み、みう。オレのためにこんな奴の言うことを聞くな……」
呻き声を上げて立ち上がろうとする翔くんだけど、やっぱり足のダメージのせいで上手くいかないみたい。
ありがとう翔くん。だけど私は大丈夫だよ。
「わ、わかったわ……」
私は頷き、服に手を掛ける。
最悪下着姿までならなってもいい……今は時間を稼ぐことが何よりも重要なのだから……!
覚悟を決めて、私はまず制服のリボンを解きにかかる。
「おおっ」
ブーミが嬉しそうな声を上げたその時だ、プシュアーッという音が響き、あたりに煙が立ち込める!
「な、なんだ、火事か!? こんな時に!!」
ブーミが戸惑いの声を上げる。
私はその自分の鼻先すら見えない煙の中で会心の笑みを浮かべる。
もう、気を持たせてくれるんだから……。あの可愛い相棒くんはさ……!
「Start Up! シャイニーフェニックス!!」
ブーミ、あなたの時間はもう終わりだよ。ここからは私の時間、シャイニーフェニックスのステージなんだから!!
「なっ!?」
気まぐれな風が、煙を吹き散らしていく。
その中から現れた私の姿に、ブーミは驚愕の表情を見せた。
「私を探してたみたいね、お望み通り出てきてあげたわよ」
「お、お前は……!」
その声にどこか嬉しそうな響きが混じってるのは気のせいではないだろう。
もっとも、すぐにそれを後悔へと変えてあげるけどね!
ともかく、私はいつものようにポーズを取りつつ名乗りを上げる。
「転生の炎は悪を焼き尽くす正義の業火! シャイニーフェニックス参上!!」
「その相棒、ルビィ!!」
あれだけ遅れたって言うのに、まったく気にしてない様子のルビィが私の肩へと止まりながら私に合わせて名乗りを上げる。
そう、さっき私が変身前に起動させたのは、ルビィへの緊急通信モードだったのだ。
彼は私のサポートアニマルとして、変身を誰にも見咎められないようにするための煙幕を発生させる能力を持っている。
だから、彼に来てもらったのだけど、もう少しだけ早く来て欲しかったよ……。
それはともかくとして、私の名乗りを聞きブーミは嬉しそうに笑う。
「はははは、来てくれたんだな、俺の嫁! 待ってたぜ!」
また嫁とか言ってるし! こいつはもう……!!
「何が嫁よ、人を勝手にお嫁さん扱いしないでくれる!?」
私は思わず怒鳴ってしまう。だけどブーミは全く気にせずに再び笑う。
「照れるな照れるな、俺とお前の仲じゃないか!!」
そんなんじゃないってば!! ああもう、こいつには何を言っても無駄だわ……。
「シャイニーフェニックス、君、変なのに目を付けられちゃってるんだね……」
ルビィが私の肩の上で気の毒そうな声を上げる。
そう言えばルビィはブーミを見るのは初めてだったっけ、ともかく私は「まあね」とげんなりとした表情で言うのだった。
「シャ、シャイニーフェニックス……。来てくれたんだな……」
弱弱しい声に私はハッとしてそちらに目を向ける。
そこでは翔くんが足を抑えたままうずくまっていた。
「翔くん!」
私は慌てて屈むと、彼へと手をかざし叫ぶ。
「フェニックスヒーリング!」
手から照射されるピンク色の光が彼を包むと、みるみるうちに傷が治っていく。
「相変わらずすげぇ力だ。また助けられちまったな……」
翔くんはすくっと立ち上がると、照れくさそうに頭をかくのだった。
そんな彼の姿を見てホッとすると同時に、私もつい嬉しくなって笑顔になってしまうのだった……。
しかしその時だった……。
「くうううううっ! 俺の嫁のくせに何を他の男に色目を使ってやがるんだ!」
突然背後から聞こえた声に振り向くと、そこには怒りの形相をしたブーミが立っていたのだ……!
「だから、私はあなたのお嫁さんじゃないって言ってるでしょ! いい加減にして!!」
しかし、怒ってるのはこっちも同じだ、コイツと来たら人を勝手に嫁呼ばわりするわ、翔くんを傷つけるわ、変身前の私のパンツは見るわ、服を脱がそうとするわでもう最低だ!!
コイツには一度痛い目に遭わせてやらないといけないみたい……!!
「ルビィ、翔くんをお願いね」
「了解! さあ、翔平くん、シャイニーフェニックスの戦いの邪魔にならないようにちょっと下がってようね」
「あ、ああ。それにしても。鳥が喋るなんて……、この間も見たけど信じられないぜ……」
そんな会話を交わしながらも、翔くんとルビィは私から離れていく。よし、これで心置きなく戦える……! 私は改めてブーミへと向き直ると、キッと睨みつけたのだった。
「さあ、覚悟してもらうわよ! みうちゃんが受けた屈辱の分もたっぷりお返ししてやるんだから!」
そう言い放つ私に、ブーミはそう言えばと首を傾げる。
「みうって子はどうした?」
あ、やっぱり聞いて来るか……そりゃあね、気になるよね。シャイニーフェニックスの私が現れた途端に香取みうが姿を消したのだから。
ここで何も言わなければ、同一人物と疑われるところだ。
だけど、これに対する答えはすでに用意してある。
「私が一足先に避難させたのよ。あなたがいる空間からは一刻も早く引き離さなければならないと思ってね!」
そんな私の返答をブーミは疑うことなく信じた。
「なるほど、まあいい。あの子はあくまでもおまけだ、お前さえ手に入れられれば俺はそれでいい!」
よし、これでブーミの中では香取みうとシャイニーフェニックスは別人認識になったはず。
翔くんにもこの会話は聞こえてるはずなので、彼も納得しているはずだ。
それに関しては一安心。
とはいえ、ルビィの言葉じゃないけど、本当に私とんでもない奴に目を付けられちゃったなぁ……!
敵として命を狙われるだけならいいんだけど、こんなストーカーみたいな事までされるなんて冗談じゃない! とにかく今はコイツを倒すことだけを考えなきゃ!! 私は拳を握りしめ、改めて戦闘態勢を取るのだった。
すると、それを見たブーミは薄ら笑いを浮かべながら余裕に満ちた態度で言ってくる。
「シャイニーフェニックス、お前俺に勝てると思ってるのか? この間俺はお前を圧倒したんだぞ? ヤーバン様が邪魔しなければ、俺はお前を倒してたんだ」
確かにそうだ、私はこの間こいつに負けそうになった、けど……。
「確かに私を圧倒してたわね。ゲームキングって奴との戦いでエネルギーを消費した私を、ね……」
暗に、フルパワーだったら負けなかったよ! と言ってやると、ブーミは一瞬言葉に詰まるもすぐに言い返してきた。
「口の減らない奴だ。いいだろう、ならば今回はお互いフルパワー同士、どっちが上かはっきりさせようじゃないか!」
言われなくても!
返答の代わりに、私はブーミに向けて駆けだすと、まずは軽い挨拶とばかりに左のジャブを放つ。
軽々とかわし、ニッと笑うブーミだったけど、すぐにその顔面に力を込めた右ストレートをお見舞いしてやる。
「ぐげっ!」なんて間抜けな声を上げながら吹っ飛ぶ奴だけど、それでも倒れることなく着地するあたり流石ね……って感心してる場合じゃなかったわ!!
体勢を立て直した奴はすぐさま反撃してくるけど、こっちもそれに応戦して拳を交える。
ガガン! と拳同士がぶつかり合い、比喩ではなくて本当に火花が飛び散った。
シャイニーフェニックスに変身した私のパンチ力はトラック数台をまとめて吹っ飛ばすほどの威力がある、そしてブーミもそれと同じくらいのパワーを持っている。
その二つの力がぶつかり合ったのだ、当然衝撃だって半端ないものになるわけで……。
ドゴォッ!!! という轟音と共に発生した衝撃波によって私は吹き飛ばされそうになるものの何とか踏みとどまった。
……っくぅ~……! 相変わらずとんでもない威力だわ。
ブーミはそのまま怯んだ私へと追撃を仕掛けてくる。
やっぱりいかんせん体格差が大きい、純粋なパワー勝負では私の不利は否めないみたいだ……。
荒々しく攻めてくるブーミの攻撃を私はかわし、防ぎつつも徐々に後方に追い詰められていくのだった。
そんな攻防がしばらく続いた後、ついに壁際まで追い込まれてしまった私に奴は強烈な右ストレートを放ってくる!
あれはおそらくガードしてもダメージは必至……、ならば……!
私は体を開くとそのまま奴のパンチを受け流し、勢い余ったその腕を摑んで投げ飛ばした。
「な、なにぃぃぃ!?」
驚愕の声を上げつつ、ブーミは背中を地面に叩きつけられる。
相手の力を利用した投げ技、さっき翔くんがやっていたのと同じ技だ。
変身した私の運動能力にかかれば、あれをこうして再現することも出来るというわけ。
ありがとう翔くん、あなたのおかげで新しい戦い方に開眼できたよ!
力だけが武術じゃない。パワーの不利分は技術で補えばいいんだ!
「おのれ、味な真似を……」
ブーミは頭を振りながらゆっくりと立ち上がる。私はその動きに罠臭いものを感じ、油断なく奴を見据えながら言う。
「演技しても無駄よ。流石に私も今のだけで倒せると思ってないから」
「……チッ!」
舌打ちするブーミだけど、どうやら図星だったみたい。
「油断はしないってわけか? だがな、それはこっちも同じだ、お前が予想以上にやると分かった以上ここからは本当に本気を出させてもらうぜ……!」
睨まれ私は思わずうっと後ずさる、ブーミの表情からは先ほどまでのニヤニヤ笑いが消え去り、真剣そのものになっていたからだ……。
そして次の瞬間、奴の腕が素早く振りかざされたと同時に、私がいた場所をすさまじい衝撃が通り抜けた!
あ、あぶな……。とっさに横に飛ばなければ直撃していたかも……! そう思わせるほどの威力を持ったその一撃によって地面は大きく抉られクレーターが出来上がっていたのだ。
あんな攻撃をまともに喰らったらひとたまりもないことは明白だ、絶対に当たってはいけないだろう。
「上手く避けるな、だが一発で終わりじゃないぞ!」
そう言って奴は再び腕を、今度は連続して振るう。
「ひゃあああっ!」
奴が腕を振るうたびに繰り出される衝撃波を、私はなんとか避け続けるものの完全に防戦一方だった。
「い、いい気に。ならないでっ!」
かわしながら私は、指先から炎の弾丸を繰り出す。
しかし、それは奴に当たる前に衝撃波でかき消されてしまう。
「そんなちんけな技でこの俺を倒せると思うなよ?」
奴は余裕の表情でそう言った。くうう、悔しいけど奴の言うとおりだ、あの攻防一体の衝撃波がある限り私の攻撃はかき消されてしまう。
私最強の必殺技シャイニーファイナルエクスプロージョンならわからないけど、あいにくあれは発動するのに少し溜めが必要だ。動きを止めた時点で衝撃波をまともに受けてしまうだろう……。
なんとか、なんとかあれを止めないと……。
私は攻撃をかわしながらも必死に頭を回転させて考える。そして気づいた、一見隙がないように見えるあいつの攻撃だけど、一つだけ弱点があることに……! よし! そうと決まれば早速行動開始だっ!! 私はその場で大きくジャンプする。ブーミは当然空中に向けて衝撃波を放ってくるけど、私は空中で姿勢を制御しそれをなんとかかわす。
そして、一撃を放つ!
「ヴォルケーノクラッシュ!」
「ははは、どこを狙ってるんだ!」
地面に向けて放たれた私の一撃に、狙いが外れてるとでも思ったのか笑いながらそう言った奴だったけど、次の瞬間には驚愕の表情に変わることになるのだった!!!
「噴き上がれ、マグマのごとく!!」
私の叫びに応えるように、ブーミの足元から一気に炎が噴き出したっ!! その勢いは凄まじくまるで活火山の噴火のように天高く噴き上がる!!!
そう、これがヴォルケーノクラッシュ。これは地面に打ち込み、相手の足元から炎を噴き上げさせる技なのだ。
あの衝撃波はやっかいだけど、足元ががら空きであることを見抜き、私はこの必殺技を放ったのだ!
「うっぎああああああ、熱い、熱い熱いぃぃぃ!!」
炎に巻かれて絶叫するブーミ。あまりの悲痛な叫び声に思わず少し同情してしまうけど、これも自業自得だから仕方ないね……!
私が受けた屈辱はこんなもんじゃないぞーだっ!!
「ぐ、まだ、終わりじゃない、ぞっ!」
しかし、ブーミもさるもの、炎に耐えきり再び身構える。根性だけは褒めてあげてもいいね、だけどもうそろそろ終わりにするよ!
私は、素早くブーミに近づくと、一旦身を屈め、勢いをつけて必殺のアッパーを繰り出す!
「フェニックスアッパー!!」
ゴッ! と私の拳が奴の顎に突き刺さり、そのまま空中高く舞い上がる……!
「とどめ、必殺シャイニーファイナルエクスプロージョン!!」
飛んでいくブーミに向かって私は必殺の光弾を撃ち出す。
あれが直撃すればブーミだってひとたまりもないはず!
ドッゴオオオオン!!
上空で大爆発が巻き起こり、その衝撃がこちらまでやってくる。
「やったー!!」
私たちの戦いを見守っていたルビィが歓喜の声を上げる。
「すげぇ、やっぱりすげぇよ、シャイニーフェニックスは……」
翔くんも感嘆のため息を吐き、私も笑顔を見せるけどすぐにその表情が凍り付くことになった。
どさっとブーミが落ちてきたのだ、全身にやけどを負い、体中も傷だらけだけどまだ倒せてはいない。
あれを耐えきるなんて……凄い耐久力……!
「は、はは。甘く見るなよ。俺だって伊達にギーガーク帝国の部隊長を任されてるわけじゃない。まだあの程度ではやられないんだよ」
くううっ! だけど、ダメージを受けてるのは間違いない。こうなったら倒せるまで何度でも攻撃を続けてやるわ!
私は再びエネルギーを溜めるべく意識を集中する、しかし、ブーミは両手を前に突き出し言った。
「おっと、流石にこれ以上やられては本当に死んでしまう。今日のところは撤退させてもらうぞ!」
そしてそのまま高く飛び上がる! 逃げる気だ! 私は慌てて後を追おうとするけど、その腕が誰かに掴まれる。
見ると翔くんが硬い表情で首をゆっくりと振っていた。
「深追いはしない方がいい。あいつは仲間のところに逃げたんだろ? 下手したら、あいつらの全戦力と戦うことになるかもしれない」
その言葉を聞いて私も冷静になることが出来た……確かにその通りだね。悔しいけれど今は我慢するしかないか……。
私が頷くと、彼は掴んでいた腕を放してくれたので、私は深く息を吐いて言った。
「ありがとう翔くん、おかげで冷静になれたよ」
「いや……。礼を言われるほどのことじゃねぇさ……。ただ、オレは君のことが心配だっただけだ……」
そう言って照れ臭そうに頬を掻く彼を見て、ドキッとする私だったけど、同時に少しだけ複雑な気分になった。
だって、今翔くんは“シャイニーフェニックス”に対して言ってるんだもん……。もしこれが、“香取みう”相手だったら彼はこんな言葉はかけてくれないんだろうなって思っちゃったから……。
「どうしたんだ?」
私の表情の変化を見て取ったのか、翔くんはそう尋ねてきたけど、私は小さく「あはは」と笑うと、「なんでもないよ」と答えるのだった。
「そうか。それよりも、本当にお礼を言わなきゃなんないのはこっちの方だ。シャイニーフェニックス。助けてくれてありがとう。君が来てくれなきゃ、オレもみうもあいつに殺されていたかもしれない」
「いいの、気にしないで。正義の味方として、当然のことをしただけだから!」
ググっと拳を握り、バックに炎でも背負うような勢いで言う私に翔くんは、「そ、そうか……」と言って苦笑いを浮かべた。
「ともかく、私はそろそろ帰るね。それじゃ!」
そう言って私は空へと舞い上がり、ルビィもそれに続く。
「あ、そうそう。翔くん、みうちゃんのことあんまりいじめちゃ駄目だよ? 正義のヒロインシャイニーフェニックスとの約束! それじゃーねー!!」
そう言って飛び去って行く私に、翔くんは、ポカンとした顔を浮かべていたけど、「あ、ああ」とだけ言って手を振り返してくれたのだった……。
「翔くん……」
遠くに飛び去ったふりをして、近くに着地しそこで変身を解いた私はルビィを先に家へと帰らせた後で、再び翔くんの元へと戻り彼に声を掛ける。
「みう、惜しかったな。シャイニーフェニックスはもう行っちまったぜ?」
翔くんはどこかポーっとした顔で、こちらを振り向きつつそう言ってくる。
「そ、そう? あはは、残念だなぁ、シャイニーフェニックスとお話したかったのにぃ!」
自分がシャイニーフェニックスとバレないようにするために、私はそう言って悔しがるふりをして見せた。
「ははっ、まあそのうちまた会えるさ。それより、今回は災難だったな、あんな変態怪人に襲われることになるなんてさ」
しみじみと言う翔くんに、私は「そうだね」と少し疲れた表情で返した。
本当にあのブーミって奴には参っちゃうよ……。私を自分のお嫁さんにするとか言っちゃってさ……。
その時私の脳裏に奴の気持ちの悪い笑顔が浮かんできて、慌ててそれを振り払う。
そして、話題を変えるべく翔くんへと尋ねた。
「ところで翔くん。どうしてあなたが私の失くした腕時計持ってたの?」
私には不思議でたまらなかった、女子トイレの洗面台で消えたはずのSPチェンジャーを何故翔くんが持っていたのか。
私に渡すつもりだったようだから、盗んだという訳ではないだろうけれど、それでも気になるものは気になった。
すると彼は、頬をポリポリ掻きながら答えるのだった。
「ああ、あれか。あれ、中川がオレに寄こしたんだよ」
え? 好美ちゃんが……?? どういう事??
困惑する私に、翔くんは説明してくれる。
彼の言葉によれば真相はこういう事らしい、女子トイレで腕時計の忘れ物を見つけた好美ちゃんは、すぐにそれが私のものだと言うことがわかったらしい。
しかし、ここからが翔くんにも私にもよくわからない好美ちゃんの思考なのだけど、好美ちゃんはなぜか翔くんへとそれを預け、私に返して欲しいと言ったんだそうだ。
「なんで好美ちゃんそんな事を……」
翔くんからの説明を聞き、呟くように言う私だったけど、翔くんは「さあな」と肩をすくめるのだった。
「それはねぇ、きっと好美はあんたと氷川くんの仲を取り持ってあげようと思ったのよ!」
そんな時、突然背後からそんな声が響いてきて私はビクッとなる! 慌てて振り返るとそこには……智子が立っていたのだった!!
「智子!」
「まったく好美のせいでいらない苦労をさせられるわ。あたしが『犯人』を見つけるために商店街を捜し回ってた時間を返して欲しいわ」
そっか、智子はずっといもしない『SPチェンジャーをネコババした犯人』を捜していてくれたんだ……。
それはともかくとして……。
「今のってどういう意味?」
私は首を傾げながら尋ねる。すると彼女は肩をすくめて見せた。
「だからぁ、好美としてはこう考えたんじゃない? 氷川くんにあんたの腕時計を渡せば、氷川くんはあんたにそれを返すためにあんたに話しかけるでしょ? あんたと氷川くんは幼馴染同士なんだから、そんな小さなきっかけでも、話が弾めば氷川くんとの距離も縮まるんじゃないかなーってさ! まあ要するに、世話焼きおばちゃんみたいな事をやろうとしたって事よ」
そんな智子の言葉に私は思わず絶句してしまうのだった! え……? ええーーっ!? そんな理由だったのぉ!!?? いや、確かに好美ちゃんは私と翔くんをくっつけたがってる節はあったけど、それにしたってこんな回りくどい事をしなくても良いじゃん!!
「はあっ!? 中川の奴そんなこと考えてたのかよ、なんでオレがみうなんかと……」
そんな私の隣では、翔くんが心底嫌そうに顔をしかめていた。
「ちょっと、みうなんかとはどういう事よ! 私だって翔くんなんて願い下げだわ!!」
そして私もまた、つい反射的にそんな事を言ってしまうのだった……。
「はぁ、まったくお互い素直じゃないんだから……好美が気を揉むのも無理ないわ」
私達のやり取りを見ていた智子は大きなため息をつくと、呆れた様子でそう呟いた。
「何を勝手な解釈をしてるんだ! オレは本心からみうなんてお断りなんだよ。オレの好みは、もっとこう強くて、カッコよくて、とにかく、みうみたいなドジな奴じゃねー!」
そう言って私をビシッと指差す翔くんに私はムッとして言い返す。
「なによー!! 私だってこんな意地悪で嫌味で口が悪くて乱暴者な人は願い下げだわ!! 私の理想はヒーローだもん、翔くんみたいに意地悪な人じゃないのっ!!!」
そんな私と翔くんの言い合いを見て、智子は再び呆れたように肩をすくめるのだった。
ああ、もうっ、どうして私たちっていつもこうなるんだろう!? けど、これが私たちなんだから仕方ないよね。
そう、私たちはこれでいいの……きっと……。
第5章
完
【次回予告】
ルビィ「ギーガーク帝国の怪人相手に連勝を重ねるシャイニーフェニックス。だけど、翔平くんが彼女の正体を疑いだしちゃった! このままじゃ正体がバレてみんなにも危険が……ボクがなんとかしないといけないんだけど、いい方法なんて思いつかないよぉ! 次回、シャイニーフェニックス『バレちゃった!? 私の秘密!!』見てね♪ 絶対だからね! 約束だからね!!」
お読みいただきありがとうございました。
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