第18話 最悪の出会い、変態怪人ブーミです!!
「みう……よかったの?」
学校から商店街に向かう道すがら、早足で歩く私に智子が声を掛けてくる。
「何が?」
智子が何を言わんとしているのかはなんとなく分かったけど、私はあえて聞き返すことにする。
「氷川くんの事よ。せっかく用事に付き合ってくれるって言ってくれたんだから一緒に来てもらえばよかったじゃない」
案の定智子が気にしていたのは、さっきの翔くんの申し出の事だったみたいだ。
やっぱりそう来たか……でも!
「いいのよ別に。翔くんの力なんて必要ないし。それに、翔くんに事情なんて説明したらどういう事になるか分かる? 『ははは、大事なものを失くしちまうなんてお前はやっぱり宇宙一のドジだな!』とか絶対言われるに決まってるもん! そんなの嫌だし!」
彼のものまねも交えつつ言う私に、智子はぷっと吹き出しつつ、「確かにね」と苦笑気味に頷くのだった……。
さて、そんなこんなで商店街までやって来たのはいいけれど、問題はここからだ……。
「でもさ、そんなに大きくない商店街って言っても、この中から、たった一人の人をどうやって見つけたらいいのかな?」
腕を組みつつ言う私に、智子は、「大丈夫よ」と何の根拠があるのか自信満々に答える。
「あんたの腕時計を持ち去った犯人像に関しては、もうあたしには見えてるわ」
「えっ!?」
驚きつつ聞き返す私に智子は指を一本立てて続ける。
「いい? あんたが腕時計を失くしたのは1年B組近くの女子トイレの洗面台でしょ。そこから時計を持ち去れるのは当然1年の女子だけよ。そしてそんな子が放課後商店街で行く場所なんて極めて限られてるわ、つまりそこを中心に探せば見つかるはずってこと!」
なるほど……確かにその通りだ! さすがは智子だね!! まるで探偵物の主人公みたい! 私は感心しながら頷くのだった……。
「でも、一体犯人ってどんな子なんだろうね……」
私と智子は、もし自分なら放課後商店街のどんなお店に立ち寄るか考えながら歩いていた。
私の呟きに智子は「さあね」と言った切り黙ってしまう。
智子がこの話を避けたいと考えていることは明白だった。
その理由は私にもわかる、だって私も同じだから……。
智子がさっき言った犯人像、それを深く考えて行った時、一つの考えが私の頭の中に浮かんできた。
それはつまり、私のSPチェンジャーを持ち去った犯人は、1年B組、つまりうちのクラスの中にいる、ということだ……。
私は信じたくはなかった、クラスメイトの中に落とし物を届けもせずに自分のものにしてしまうような人がいるなんてことを……。
「まあ、見つけてみれば分かることよ。もしかしたら、何か事情が有って届けられなかっただけかもしれないしね」
そう言って笑う智子に私は「そうだね」と微笑み返すのだった。
そんな時だ、智子の肩越しに見えた向こう側の道、そこを横切った人影に私の目は釘付けになった! え……あれって、まさか……。
私の表情の変化を見て、智子は、「どうしたの、何か見つけたの?」と言いつつ後ろを振り返る。
その視線の先にいるのは一人の男だ、スーツ姿、年齢は若者とおじさんのちょうど中間ぐらいかな? 髪は短くも長くもなく平均的、顔も不細工でもイケメンでもなく、特筆すべき点のない平凡な顔だった。
「会社帰りのサラリーマンって感じ? みう、あの人に見覚えでもあるの? それとも、まさかあんたああいうのが好みとか言うんじゃないでしょうね」
冗談めかして言ってくる智子だけど、今の私にはそれに答える余裕はなかった。
そう、智子の言う通り、私はあの男に見覚えがある……あの顔は忘れたことはない。
私に恐怖を植え付けてくれたあの顔は……。
もっとも、同時に私にとっての最高の思い出のきっかけとなった顔でもあったけど……。
男はこちらの視線には気づかず歩いて行く。
どうする? 追いかける? けど、SPチェンジャーもないんじゃ……。
だけど、私の足は知らず知らずのうちに男を追うように歩き出していた。
「ちょっとみう、どうしたの?」
呼び止められて、私はハッとした顔を智子に向ける。
あいつを追いかけたい。けど、智子を付き合わせるわけには行かない……。
私は頭を回転させて考える。そして、ふと思いつきこんな言葉を口にした。
「ね、ねえ智子。二人で一緒に探すのって効率悪いよね。だから、手分けして探さない? とりあえず30分ぐらいしたら、またここに戻ってくるってことでどう?」
この提案には智子も納得したようで、「確かにそうね、そうしましょ」と言って頷いたのだった。
智子がその場を離れていくのを見送りつつ、私は男の後を追いかける。
SPチェンジャーのない今の私に何が出来るのかはわからない。けど、遭遇してしまった以上見過ごすことは出来ない! 私は気づかれないよう、注意を払いつつ男を尾行するのだった。
それから数分ほど男を追いかけていた私だったけど、男は特に怪しいそぶりを見せることはなく、ただ歩いていた。
けど、あいつが何の目的もなく、狙いもなくこんなところをうろうろしているわけがない、きっと何かあるはず……そう思った時だった、男が足を止めたのだ。
そして、その視線の先にあったものは、目立たない路地だった。男は周囲をキョロキョロと窺った後で、そこへ入っていく。
(あそこに何かあるの……?)
私も警戒しつつ、そこへと足を踏み入れる。
ビルの隙間を抜けると、視界が開ける。そこは、ちょっとした広場になっていた。周囲にはゴミ箱や段ボール箱などが散乱しており、人の気配は全くない場所であった。
「あれ……?」
おかしい、あいつの姿が消えている。ここに来る道は一本道、他に道はないのに……。
首を傾げる私だったけど、その時背後から声が聞こえてきた。
「お嬢ちゃん、さっきから俺の後を付けていたようだが、何か御用かな?」
私はハッとして振り返ると、そこにはさっきの男が道を塞ぐようにして立っていた。
(しまった……!)
男のニヤニヤ顔に、私は自分がここに誘い込まれたのだということにようやく気づいたのだった。
「え、ええと、ごめんなさい。私はただ、ちょっとお兄さんがカッコいいなって思ってつい追ってしまっただけですぅ」
私は精いっぱい何も知らないぶりっ子演技をしつつ、心にもない言葉を口にする。
「はっはっは、俺がカッコいいか。本心からの言葉だったら嬉しいんだがなぁ。残念だが、そんな見え透いた嘘では誤魔化されんぞ。お前は何者だ? 俺が何者か知ってて後をつけてきたんだろう?」
男はそう言ってニヤリと笑った。どうやら完全にバレているようだ……。こうなったらもう仕方ない……覚悟を決めよう……。
私は余裕を見せるように口元を歪めると、言う。
「もちろん、知ってるわよ。というか、自分を殺そうとした相手の顔を忘れるほど、私お間抜けじゃないわ。ねぇ、ギーガーク帝国のブーミ・ダインさん」
私の言葉に、男は「何?」と訝しげな表情を浮かべた。自分の素性を言い当てられたことに驚いているようだ。
そう、この男はギーガーク帝国の変態怪人ブーミ・ダインの人間形態なのだ。
私がシャイニーフェニックスとなったあの日、こいつは山でこの人間形態をとっていた。だから私はこいつの正体をすぐに見破ることが出来たのだ。
しかし、まさかこんな所で会うとは思わなかったけど……。
ブーミは私の言葉に少し考えこんでいたようだったけど、すぐにハッとした表情になると、私の全身を舐めるような視線で見回してくる。
「ああっ、お前はあの時の小娘! はっはっは、これは実にちょうどいい。まさかこんなところで会えるとはな。これも運命って奴か」
ブーミの言葉に、私の背中にゾゾゾッと悪寒が走るのを感じた。
「気持ちの悪いこと言わないで! あなたなんかとの運命なんてお断りよ!」
私が叫ぶように言うと、ブーミはニヤリと笑った後、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。
私は恐怖を押し殺しつつ叫ぶように尋ねる。
「あなたの目的は何!? また子供を誘拐するつもり!?」
ギーガーク帝国は最近子供を狙って活動することが多い。だから、こいつの目的もそうなのじゃないかと思ったのだけど、ブーミは首を振った。
「それは俺の担当じゃない。俺がここにいる理由は俺の嫁の居場所を探すためだ」
へ? お、お嫁さん……?
ブーミの意外な言葉に私は目を丸くする。こいつにお嫁さんなんていたんだ……そして、その人の居所を探してこんなところまでやって来たってこと……?
驚きのあまり言葉を発せない私に、ブーミは顎に手を当て何かを考えこむと、思いついたように私に聞いて来る。
「そうだ、お前はシュナイダーに助けられていたな。ならば、お前は俺の嫁の知り合いでもある可能性が高い。お前は知らないか? 俺の嫁シャイニーフェニックスの居場所を……?」
「え……?」
……はああああああああ!? ブーミが発したとんでもない言葉に、一瞬硬直した私だったけど、すぐに猛烈な怒りが込み上げてきた!
「何を言ってるの! なんでわた……シャイニーフェニックスがあんたなんかのお嫁さんなのよ!」
怒鳴るように言う私だったけど、危ない危ない。怒りのあまり、思わず『私』って言いそうになっちゃったよ。
こんな変態怪人に私がシャイニーフェニックスだって知られる訳にはいかないからね……!
そんな私の言葉に、しかし、ブーミは馬鹿にするような笑い声を上げた。
「はーっはは、ギーガーク帝国は力がすべて、力があればなんでも手に入るのだ。俺はあいつを屈服させ自分の物にする、それはすでに確定事項だ、だからあいつはもう俺の嫁だ」
そう言ってニヤニヤ笑うブーミを見て、私は背筋が寒くなるのを感じた。無茶苦茶にもほどがあるよ!
大体何よ、まるで私に勝ったかのようなその言い草は! 確かに前に戦った時は危なかったけど、完全に負けたわけじゃないんだからね!!
こんな奴に私は負けられない……! そう拳を握りしめる私だったけど、今はそれ以前の話だと言うことを思い出した。
SPチェンジャーがないんじゃシャイニーフェニックスになって戦うこともできない。香取みうのままでこいつに勝てるわけはないし……。
今さらながら、こいつを追いかけてきてしまった自分のうかつさに後悔していると、ブーミはさらに言葉を続ける。
「ともかく、知っているなら教えてくれないか? 教えないなら、ちょーっと痛い目にあってもらうことになるぜ?」
そう言うと、ブーミは私の腕を掴もうとして手を伸ばしてくるけど、私は慌てて身を引いてそれから逃れる。
「し、知らないし! シャイニーフェニックスがどこにいるかなんて!」
とりあえず口から出まかせを言ってみるけど、ブーミは肩をすくめる。
「そうか。まあ、それが本当か嘘かは実はどうでもいい。お前を痛い目に遭わせれば、正義感の塊のシャイニーフェニックスは必ず現れる、それが俺の狙いだからな」
またもニヤニヤ笑うブーミを見て、さらに背筋が寒くなる……こいつは本気で言ってるんだ……!
そんな私の様子を見て満足したのか、ブーミは再び私に向かって手を伸ばす。
再びかわしつつ後ろに下がる私だったけど、その時足がもつれドシーンと音を立てて、尻もちを突いてしまった。
ううう、もう最悪……。こんな時に私のドジっ子属性が発動しなくてもいいじゃん……!! 涙目になりながら痛むお尻をさする私はまだ気づいていなかった、今自分がとんでもなく恥ずかしい体勢になっていることに……。
「おおう……。はは、こりゃあ眼福だ……」
「っ!?」
そこでようやく気づいたんだけど、なんと私が転んだ拍子にスカートが完全にめくれ上がってしまっていて、パンツ丸出しの状態になっていたのだ!! 慌てて手で隠すものの時すでに遅しで、ばっちり見られてしまった後だった! うわああ~~ん!!! よりにもよってこんな奴に見られちゃうなんてぇ!! もうやだ~! 恥ずかしくて死にそうだよ~!! あまりの恥ずかしさに顔から火が出そうになるくらい熱くなるのを感じるけど、私はその感情を押さえつけブーミを思いっきり睨みつける。
「そんな目で睨まれても、ちっとも怖くないぞ」
そう言うとブーミは手を伸ばし、私の顔を掴んできた。
「きゃっ……」
そしてそのまま私の顔を引き寄せると、まじまじと見つめてきた。その気持ち悪い視線に耐えられず顔を背けようとするんだけど、顎を押さえられてしまって動けない。
「んん! 最初に会った時から思ってたが、お前もかなり可愛いな。それに、よく見るとシャイニーフェニックスによく似てる。俺のタイプだ……」
な、何を言い出すのよこいつ!? まあ、私がシャイニーフェニックスに似てるのは当たり前、だって私がシャイニーフェニックスなんだもん。
むしろ、『似てる』で思考停止してくれて助かったよ……こいつがもう少し切れ者だったら危なかったかも……。
それはともかく、こんな奴に可愛いとかタイプとか言われても全然嬉しくないし! 性格から顔から何から、このブーミって奴は私の生理的嫌悪を掻き立てることはあっても、好印象を与えるような要素なんて何一つないもん! そんなことを考えている間にも、私の顔を掴んだままジロジロ見てくるブーミ。
そして、ブーミはそのままとんでもない事を口走る。
「決めた、お前のことも嫁にしよう。嫁が一人じゃなきゃ駄目だなんてルールはないしな」
「はぁ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げちゃったけど、無理もないよね? いきなりお嫁さんにするとか言ってるんだもの、驚くなって方が無理でしょ。
ギーガーク帝国の法律は知らないから重婚OKなのかは知らないけど。――私とシャイニーフェニックスは同一人物だから、実質一人ということになるけど、ややこしいからそれは置いておいておくとして――少なくとも私の倫理観的には結婚相手は一人であるべきだと思う。
それに、どっちにしろ、こっちの同意もなしに勝手に決められても困るのよ!
こんな奴のお嫁さんなんて死んでも嫌! 私がお嫁さんになるとしたら、その相手はヒーロー以外ありえないんだから! そんな私の気持ちとは裏腹に、ブーミは私の顎を掴んだままニヤニヤ笑っている……気持ち悪いなぁもう……!
「さあ、正式な結婚式は後でやるとして、とりあえずは誓いのキスだ」
そう言って、私に顔を近づけてくるブーミに対して私は精一杯の抵抗を試みることにしたんだけど、やっぱり身動き一つ取れないままだった。
ひいいいいっ! いやだいやだいやだ~!! 人生最大のピンチだよぉ!! こんな奴に唇を奪われちゃうなんてぇぇぇ!!
大事なファーストキスをこんなのに捧げるなんてやだああああっ!!
ああ、助けて、シュナイダーさん!! あの時みたいに、私を助けに来てぇ!!
心の中で叫ぶ私だったけど、宇宙の彼方のシュナイダーさんが都合よく現れてくれるわけはない。
「いやあああっ!」
思わず口から悲鳴が出てしまう。そんな間にもゆっくりとブーミは顔を近づけてくる。
もう駄目……後1センチ、まさに唇が触れようとした瞬間だった。
ゴッ! という鈍い音とともに、ブーミの側頭部に何かが思いっきりぶつけられる。その衝撃にブーミの体が私から離れる。
私が、足元に視線を向けると、そこには野球のボールが転がっている。どうやら誰かがこれをブーミの頭めがけて投げつけたらしい。
これって……もしかして……。
速度、そして、私に当たらないようにブーミの頭に正確にボールを当てるコントロール。こんなことができる人は私の知る限りでは一人しかいない。それは……。
「な、なんだっ!?」
ブーミが叫びながら、怒りに満ちた視線をボールが飛んできた方へと向ける。
「みうを離せよ。変態親父!!」
そんな台詞とともに現れたのは、やっぱり翔くんだった。
じわっと目に涙が浮かんでくるのが分かるけど、私はそれを必死に我慢しながら翔くんに声をかけることにしたんだ。
「翔くん……」
彼は私の方に視線を向けると、すぐに駆け寄って未だに震える私の肩を支えてくれた。
「大丈夫か? 全く、こんなところをうろついてるから変な親父に絡まれるんだ! 間抜けにもほどがある!!」
そう憎まれ口を叩く彼だったけど、その口調の裏に隠れた優しさに私は思わずきゅんとなってしまう、それが恥ずかしくて、私は顔を背けると、
「い、言われなくてもわかってるよ」と言うのだった。
翔くんはそんな私の態度にやれやれと肩をすくめるけど、私が小さい声で、「でも、ありがとう。助けに来てくれて、嬉しかった……」と呟くように言うと、翔くんは照れくさそうに頬をポリポリとかいた後でこう言ってくれたのだ。
「まあ、あれだ……オレはお前の兄貴分だからな」
もう、なによ、また人を子ども扱いして……。と、いつもだったらムカムカっとする私だったけど、今回は不思議とそんな苛立ちは湧いてこなかった。
「よくもやってくれたな、クソガキ。人の頭にボールをぶつけるとは教育がなってないぞ!」
そんな私と翔くんの会話に割って入るのは、無視された形になっていたブーミだ、奴は怒りに満ちた目で私たちを睨みつけると言ったんだ、それに対して翔くんが言い返す。
「はっ、嫌がる女の子に無理やり迫るような変態親父に教育どうこう言われるとは思わなかったぜ!」
そして、翔くんは私を自分の後ろに隠すように下がらせると、拳を握りしめて構えを取る。
スポーツ万能の翔くんは格闘技にも精通している、その姿は堂に入っていて思わず見惚れてしまいそうになるぐらいだ。実際彼の実力は下手な大人よりも上だったりするんだよね……。
だけど……。
「翔くん駄目! 戦っても勝てないよ、ここは逃げることを考えて!」
慌てて言う私に、しかし翔くんは振り返ると言う。
「おいおい、オレがこんな変態親父に負けるとでも思ってんのかよ。お前にそんなふうに思われてるなんてショックだぜオレは」
実力を過小評価されたと思ったのか、やれやれと言った感じの口調の翔くんだけど、私は首を振って叫ぶ。
「違うのよ! こいつはただの変態サラリーマンなんかじゃないの! 見た目は普通の人間だけど、こいつの正体はギーガーク帝国の怪人なのよ!」
そんな私の言葉に、翔くんはぎょっとした顔を浮かべ、ブーミに視線をやる。
「あいつが……? けど、お前が嘘を言ってるわけはないよな。マジかよ……。どう見ても人間なんだけどな。しかし、ギーガーク帝国の連中ってのは変態だらけなのか……?」
ギーガーク帝国の幼児誘拐作戦を思い出したのか、翔くんは引きつった顔で言った。
確かにね……。でも、その中でもこのブーミって奴は特別変態度が高すぎる気がする……。
私がそんなことを考えている間にも、翔くんは言葉を続ける、額に汗を浮かべつつどこか不敵な顔で……。
「こいつが宇宙人なら、確かにオレじゃ厳しいかもな。けど、どっちにしろこいつをどうにかしない限りここから抜け出すことはできなさそうだぜ」
うっ……そうだ、今ブーミがいるのはこの広場の唯一の出入り口の真ん前だ。逃げるにしろあいつを倒さなきゃどうしようもないんだ!
だけど、危険だとわかってるのに翔くんを戦わせるのは……。
ああああっ、もうっ、SPチェンジャーさえあれば、翔くんに正体バレるの覚悟で変身するのにぃ!!
私はまた自分を罵った。今日何度目になるのだろう、これほど自分のドジが恨めしいと思ったことはない。
そんな私を他所に、翔くんとブーミの間で緊迫した空気が流れる中、先に動いたのは翔くんの方だった。
「はっ!」
先手必勝とばかりに、彼は正拳突きを繰り出す!
それをあっさりとかわすブーミ。そんな光景を想像した私だったけど、聞こえてきたのは「ぐわっ!」というブーミの苦悶の声だった。
へ……?
見ると、翔くんの拳は、見事ブーミの腹に突き刺さっていた。
「おらあっ!」
そのまま翔くんは体を回転させて回し蹴りを繰り出す! その一撃はブーミの顔面にヒットし、彼の体が宙を舞った。
「ぐっ……」
そんな呻き声を上げながら地面に叩きつけられるブーミ。だけどまだ戦意を失っていないようですぐに立ち上がるとまた構えを取ったのだった。
「は、ははっ。なんだよ、意外といけんじゃん。こいつ思ったより強くないぞ!」
そう言って笑顔を見せる翔くん。確かに翔くんの強さもあるんだろうけど、私が想像したよりブーミは弱い気がする。
これなら勝てるよ!
だけど、そう思った瞬間にブーミの笑い声がこの静かなエアポケット的広場に響き渡った……。
「ははははっ、なるほど、ガキだと舐めてかかったのは俺のミスだな。この姿で勝てる相手じゃなさそうだ……」
あ……。そうだ、私は忘れていた……。
ブーミはギーガーク帝国の怪人……。今目の前で笑う冴えないサラリーマンの姿は、あくまでも仮の姿でしかないんだ……! その事を思い出した瞬間、私の背筋には悪寒が走ったのだった。
「光栄に思えよ、貴様ごときが俺の真の姿と戦えることを!」
ブーミは腕をクロスさせ、顔の前へと持っていく。そしてそれがゆっくりと開かれていくと、その身体が変化していく……!
お読みいただきありがとうございました。
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好きなキャラとかいたら、教えてください。もしかしたら、少しだけ出番増やすかも?




