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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第4章【登場! サポートアニマル・ルビィ!】

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第13話 汚名返上? もう一度遊園地へGOです!

 学校へと戻ってきた私は、誰にも気づかれないように屋上へと降りると、変身を解き、香取みうの姿へと戻る。

 時計を見ると、トイレに行くと言って教室を抜け出してからすでに20分ほどが経過していた。

 一応まだ授業は終わってないはずだけど、長時間抜け出してしまったのは間違いない、教室へと戻る私の足取りは少しだけ重かった。

「おや、君は授業中にこんなところで何をしているのかね?」

 ふいに声を掛けられ顔を上げると、一人の男性が立っていた。

 それはよく見ると教頭先生だった。何かの用事で廊下を歩いていたら、授業中であり、本来なら教室にいるはずの生徒()がいたものだから声を掛けたのだろう。

「え、えーと。ちょっとお腹が痛くなっちゃって……。トイレに行ってたんですけど、今から戻るところです」

 少し焦りながらも答える私だったけど、教頭先生は特に疑うことはなく、「そうか、それは大変だったね。それなら呼び止めて悪かったよ」と言ってくれた。

 うう、騙してるみたいでちょっとだけ心が痛むなぁ……。

「あの、ところで教頭先生は何をなさってるんですか?」

 罪悪感はさておき、私は湧き上がる好奇心を抑えられずにそう尋ねていた。すると彼はこう答えてくれたのだった。

「いや、何ね。実はさっき校内ですれ違った人物がいたんだが、あの正義のヒロインシャイニーフェニックスだったような気がしてね……。確かめようとあたりを回っていたんだよ」

 ギクギクッ! そう言えば出発する前誰かとすれ違って廊下を走るなと注意されたんだっけか……、あれ教頭先生だったんだね。

「そ、そうですか~。で、でも、うちの学校にシャイニーフェニックスがいるわけないですよ~。きっと見間違いですって!」

 内心冷や汗をかきながら何とか誤魔化そうとする私の言葉に教頭先生は、「うむ、やはりそうかな? 最近私は疲れてるのかも知れんな」と腕を組んだまま考え込むような仕草をしたかと思うと、不意に顔を上げてこう言ったのだ。

「……まあ、どちらにせよ。これ以上探していても仕方ないだろうな。私は戻るとしよう。君も早く自分の教室へ戻りなさい」

「は、はい。それじゃ失礼します!」

 答えてペコリとお辞儀をすると、私はそそくさとその場を後にするのだった。


「戻りました……」

 教室の前まで戻ってきた私は、そう言いながら静かに扉を開けて中へと入っていく。

 全員の視線が集中し、私の顔は僅かに赤くなる。

 私の顔を見た先生は、「遅かったな、少し心配したぞ? もし具合が悪いのなら保健室で休んでいてもいいんだぞ」と言ってくれる。

 ああ、先生ってば優しい。この優しさがまた私の罪悪感を刺激するけど私は、「いえ、全然大丈夫です」と言うと、両手を上にあげて元気であることをアピールして見せた。

「なんだ、じゃあ単なる長便所かよ。もしかして、大の方だったのか?」

 なっ……!! 教室の一角から飛んできたその言葉に私の顔は真っ赤に染まり、教室が笑いに包まれる。

 私にそんな言葉を飛ばしてきたのは、意外なことに(?)意地悪幼馴染の翔くんではなく別の男子だった。

 クラスのお調子者グループのリーダー格の男子であり、きっとこの状況で一言言わずにはいられなかったのだろう……多分だけど!

 ううう、恥ずかしい……! 少しぐらい笑われるのは覚悟していたとはいえ、こんな状況に追い込まれちゃうなんてぇ……!!

 私は改めてこの事態の元凶であるルビィを恨めしく思ったのだった。

 そんな私の屈辱と怒りなど知る由もない男子は、さらに何かを言おうと口を開く、しかし……

「くだらないこと言ってんじゃねーよ。それより先生、さっさと授業始めようぜ?」

 それを遮ってそう言い放ったのはなんとあの翔くんだった!

 私は目を丸くして彼の方を見る。だって、いつもだったら、翔くんはむしろ私をからかう側だったのに! なんで? どうして!? そんな疑問が頭の中を駆け巡るけど、私は思い出した。

 そうだ、翔くんはいつも私をからかったり意地悪したりするけど、あくまでも私と一対一の時だけだってこと……! 大勢の前で私に恥をかかせるようなことは絶対にしないんだ……!!

 翔くん以外の男の子にからかわれてみて分かると言うのも変な話だけど、そういうところ、翔くんはわきまえてるというか、やっぱり彼は不良とかただのお調子者とかそういうのとは一線を画してる気がするのだ……! そしてそれはクラスのみんなも同じ思いのようで、教室中から感嘆の声が上がる。

 私を助けたヒーロー翔くんの引き立て役と化した男子はつまらなそうな顔をしながら椅子に座り直し、先生はハッとしたように、「ああ、そうだな。ともかく香取は自分の席へと戻りなさい。授業を再開するぞ」と言ったのだった。

 それからは特に問題が起こることもなく、時間は進み放課後。

 私はいつものように智子と連れ立って家への帰り道を歩いていた。

「それにしても、あの時は災難だったわね。越智(おち)君ってデリカシーがないのよね」

 思い出したように言う智子に私はげんなりとした顔を向ける。

 智子が言ってるのは、あの私が授業中にトイレに行った(実際は違うけど)事件の話であり、越智君と言うのはあの時私をからかったお調子者の男子の名前だ。

「まあ、仕方ないよ。実際結構な時間教室から出てたし……」

 苦笑いを浮かべながら言う私に、智子は、「ところで、あんた大丈夫なの? あれだけ長い間トイレに行ってたってことは、体調とかかなり悪かったんじゃないの?」と聞いてきた。

「あはは、大丈夫大丈夫、遅かったのはトイレでちょっと考え事をしてただけだから。実際私お昼はモリモリ食べてたでしょ?」

 そう言って笑ってみせる私に智子は、「それもそっか」と納得顔で頷く。そして続けて、「あんた食べ過ぎ、飲みすぎなのよ。だから、授業中にお腹痛くなるのよ」と言って笑ったのだった。

 うう、実際私は結構な大食いなので反論できない……。まあでもおかげで、トイレに行ってる間にシャイニーフェニックスとして学校抜け出してたという真実を悟られる気配がないみたいなのは良かったかも……?

 その時である、私の左手首に()()()()が走った。

 あー、これは……。

「智子……。ごめん! トイレの話してたらまた行きたくなっちゃった!」

 私がそう言うと彼女は呆れたような顔になり、しかしすぐに笑いながら言った。

「まったくもう、仕方ないわね。いいわ、今日はここで別れましょ。それじゃまた明日」

「うん、ごめんねー!」

 そう言って私は走り出しながら手を振るのだった。


「ルビィ、またなの? せめて後5分待ってくれたらよかったのに……」

 人からは目に付かない建物の陰、左手首に装着されたSPチャンジャーに向かって私は、不機嫌な声をぶつけた。

 そう、さっき急に智子の前から去ったのは、左手首に着信を知らせる振動を感じたからだった。

 後5分後だったら、智子と別れた後での連絡になったはずだけど……。まあでも仕方ないか……。

『みうちゃん、今度こそ本当に怪人を見つけたんだ! 今すぐ来てよ!』

 私の気持ちを知ってか知らずか、SPチェンジャーの向こうからはルビィの焦ったような声が聞こえてくる。

 私は一瞬ドキリとするけど、すぐに訝し気な顔になり、「え~、ほんとにぃ?」と疑わし気な声を上げる。

 午前中の一件もあり、私はルビィの報告に対して懐疑的になっていたのだ。

 しかしそんな私に構わず、ルビィは興奮した様子でまくし立ててくる。

『本当だってば! 場所は午前中と同じ遊園地で――』

 そこまで聞いて、私は額に片手をやる。また始まった……。

「何が怪人よ。どうせまたヒーローショーの着ぐるみでしょ?」

 私が呆れながら言うと、ルビィは『違うよっ!』とビックリするぐらいの大きな声で叫んだ。

『今度は間違えないようにちゃんと確認したんだ! その怪人はハッキリと言ってたんだ、“ギーガーク帝国のため”とか、“レガーン司令のご命令”とか! ヒーローショーの人たちがこんな固有名詞を知ってるわけがない!』

 そう力説してくるルビィの言葉に、私は頭を掻く。

 うーん、確かにそれはそうだけど、聞き間違いの可能性は捨てきれないからなぁ。

『みうちゃん! ボクは確かにドジで間抜けだよ。ヒーローショーの悪役と本物の怪人も見分けられないポンコツさ! だけど、今度の怪人だけは絶対に間違いないって自信があるんだよ!!』

 電話の向こうで必死に訴えてくるルビィの声に、私も少し考えを改め始める……

(そうだ、ルビィは確かにちょっとお間抜けなところもあるけど、私の大事な相棒なんだ……。その大事な相棒がこんな必死になってるのに私が信じないなんて……)

 そんなことを考えているうちに、気づけば自然と口が開いていた……

「わかったわ、ルビィを信じるよ!」

 その言葉にルビィの声がパァッと明るくなったような気がした……

『ありがとう! じゃあ、ボク待ってるから!』

 そう言って通信を終えるルビィに私の口元が緩む。

 仕方ないなぁ。だけど、ルビィも私と同じ、ドジでおっちょこちょいなところがあるけど、必死に正しいことをしようと頑張っているんだよね。

 仮に今回も勘違いだったとしても、その気持ちまで否定することなんてできないよね? よしっ、そうと決まれば早速行動開始だ! 私は決意を固めると、意識を集中しシャイニーフェニックスへと変身すべくポーズを取る。だけど……。

「お前こんなところで何やってんだ」

 唐突に背後から聞こえた声にビクッと飛び上がらんばかりに驚きながら振り返ると、そこには訝し気な顔でこちらを見下ろす翔くんの姿があった。

「しょ、しょ、しょ、翔くん!! も、もしかして、見てた……?」

 私は恐る恐る尋ねると、彼は表情はそのままで逆に尋ねてくる。

「見てたって、何をだ? お前が突然変なダンスを始めたことか?」

 その言葉に私は安堵する。どうやら、ルビィとの通信については見られてなかったようだ。

 危なかった……、もうちょっとで私がシャイニーフェニックスだとバレてしまうところだったよ……。

「そ、そーお、ダンスの練習見られちゃったんだぁ、恥ずかしいなぁ」

 変身ポーズを変なダンス呼ばわりされるのは腹が立つけど、さっきのはただのダンスの練習と言うことにしておけば問題ないだろう。うん、そうしよう!

「ダンスの練習ねぇ、運動神経の悪いお前でもダンスとかするんだな」

 しみじみという翔くんにムッと来るけど、ここは我慢我慢。

「私だってダンスぐらいするよ。ともかく、練習はこれぐらいにして私はもう帰るから。じゃあね!」

 そう言って私は彼の横をすり抜けて歩き出した。

 しかし……。

「なんでついて来るのよ……」

 私は速足で歩きながら、背後の人物に向かって顔も向けずに問いかける。

 もうっ、さっさとどっか行ってよ! 翔くんがいたら変身できないじゃないの!! 変身して遊園地まで飛んでいこうと思ってたのにっ!

「いや、オレたちのうちはこっちの方向じゃないだろ? どこに行くのかと思ってさ」

 翔くんは足を速め私の隣へと移動するとそのまま並走しつつ言ってくる。

 私のうちと翔くんのうちは限りなく近い場所にあるので、違う道を行こうとすればすぐにバレてしまうのだ。

(あんたから離れられる場所よ!)と私は心の中で返しながら、実際の口では「どこだっていいでしょ、翔くんに教える義務なんてないよ」と言うに留めたのだった。

 しかし、翔くんは私の答えに満足しなかったのか、「そりゃそうだろうけど、気になって仕方ないぜ」と食い下がってくる。

 ああもう、しつこいなぁ……。こうなっちゃった翔くんは意地でも引き下がらない。走って振り切ろうとしてみたところで、運動音痴の私がスポーツマンの翔くんを撒けるはずもないし……。

 はぁ、仕方ない。変身して飛んでくのは諦めて遊園地まではバスで行こう。

「バス乗り場よ。今から遊園地行くの。これで満足でしょ」

 言って私はさらに足を速めて遊園地行きのバスの停留所の方向へと進路を取る。これ以上追及されても困るので、ちょっと強引に話を終わらせたのだ。

 そして、バスの停留所。時計を確認する私の横には何故かまだ翔くんがいた。

「なんでついて来るの!?」

 私がさっきとまったく同じことを叫ぶと、彼はニヤリと笑いこう言ってくる。

「オレも一緒に行ってやるよ。お前を一人で行かせたら迷子になっちまうかもしれないからな!」

 はぁぁぁぁぁ!? 何言ってんのよこの男は! なんで私があんたと一緒に遊園地行かなきゃいけないのよ! それに迷子になるとは何よ!

「またそうやって人を子ども扱いして! 同い……同級生でしょ!」

 同い年でしょと言おうとして、この間“オレはお前より誕生日が早いから年上だ”的なことを言われたのを思い出して言い直す私だった。

「まあまあ、そう怒るなって。それに、一人で遊園地なんて行っても楽しくないだろ。このイケメン幼馴染のオレが一緒なら退屈しないぜ?」

 そう言ってウィンクしてくるイケメン幼馴染(笑)の翔くん。

 自分で言うかな普通……。本人は冗談のつもりなんだろうけど、翔くんは実際モテるし、顔だけはいいのでちょっとイラッとくるわ……。

 まあ、彼の言ってることは正論と言えば正論だし、今は犬猿の仲みたいな間柄とはいえ仮にも前はそれなりに仲の良かった幼馴染なのだから、一緒に行けば一人より楽しいとは思う。

 だけど、私が今から遊園地に行くのは遊びじゃなくて、ルビィが言ってた怪人の話が本当なのかどうか確かめるためなんだから彼について来られたら困るのだ。

 特に万が一にでも本当に怪人がいた場合、下手をすれば私は彼の前でシャイニーフェニックスに変身しなければならない事態にだってなりかねないのだから! そんな危険な真似はできないので、ここはなんとしても彼が付いて来るのを阻止しなければならないのだ!

 私は拳をぎゅっと握りしめ、彼に向かって拒絶の意思を伝えるべく口を開くのだった……!

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