第100話 大爆発!? 命輝く時
「ジャ、ジャイニフェニックス……ご、ごべん、ごべんよぉぉ。出来ない、出来ないんだよぉ、どうやっても、時限装置を止めることも、職員さんたちを縛るロープを切ることもできないんだよぉ」
再び中央制御室へとやって来た私を出迎えたのは涙で顔をぐしゃぐしゃにしたルビィの泣き声だった。
「そんな……ルビィ、お願いだから諦めないで!」
しかし私の言葉にもルビィは首を横に振るばかり。
「諦めてなんかない、だけど、出来ないんだよぉ……」
ボロボロと涙をこぼしながらも、それでも必死に爆弾を解除すべく解析作業を続けるルビィの姿に、私はそれ以上もう何も言えなくなってしまう。
「助けて、死にたくない……」「家族が、地球に家族がいるんだ」「ちくしょう、こんなはずじゃなかったのに……」
部屋の奥では拘束された職員さんたちが恐怖と絶望で顔をぐちゃぐちゃにして泣いている。
そんな彼らを見て私はギリッと歯を食いしばった。
「はははは、いいねぇ、実にいい。まさに僕が見たかった光景そのものだよ」
聞こえてきた笑い声にそちらに顔を向けると、ディストが部屋の入り口でニヤニヤと笑っていた。
「ディスト……あなたって人はどこまで……!」
「怖い顔だ、君の心の中にはさっきの戦いの時よりもさらに激しい怒りが渦巻いている。視線だけでも殺されそうな雰囲気だねぇ。だけど、そんな怒りは無意味だね、仮にここで僕を殺せたとしても爆弾は止まらない、そして君が救える命はゼロだ」
「くっ……」
ディストの言葉に私は思わず唇を噛む。悔しいけど、彼の言う通りだった。設置した相手が死ねば止まるなんて、そんな都合のいい話は、ない。
私に残された唯一の道は……。
「止めて……。ううん、止めて、ください、爆弾を。お願いです、止めてくれるなら何でもします、だから……」
そう言って私はディストに向かって頭を下げる。そう、それこそが私に残された唯一の道だ。
「ふふ、いいねぇ、実にいい。やっぱり君は最高のおもちゃだよ」
私の申し出にディストは楽しそうに笑う。しかし……。
「ダメだね」
彼は一言、そう言い放った。
「なっ、どうして!?」
驚く私にディストはニヤニヤ笑いながら言う。
「言ったろ、僕は爆発の中で散って行く命の輝きを見たいんだ。それに、君は誠実そうだからそんなことはしないと思うけど、爆弾を解除してあげたら、やっぱりあの話はなしとか言われても困るし、君を屈服させるのはいつでも出来るだろうし。何より……」
そこで言葉を切るとディストはこちらに歩み寄り私の顎を掴み上を向かせる。
「散りゆく命を前に何もできない君の絶望の顔を見るのが楽しみで仕方ないんだ」
そう言って彼は嗜虐的に笑った。
悪魔だ、この男。いや悪魔以上のバケモノだ。
ディストという男のあまりの非道さ、異常性に私はもはや何も言葉を発することも出来なかった。
「さあ、爆発まで残り3分ってとこかな? どうしたんだい、職員の皆さん、もっともっと泣き叫んでくれないと。僕の心が昂らないよ」
そう言ってディストはニヤニヤ笑うと、職員さんたちへと視線を向ける。
「うわああああああいやだあああああああ」「死にたくない、死にたくないよおおお」
職員さんたちの泣き叫ぶ声が室内に響き渡る。
「ははは、まさに僕の見たかった光景そのままだぁ。さあ、爆発まで後2分弱、シャイニーフェニックス、そしてそこの鳥くん。共に爆発の中で散りゆく命の輝きを見届けようじゃないか。そろそろバリアを張った方がいいよ、それなりに出力を高めないと怪我ぐらいはしちゃうからねぇ」
私の顎から手を離すと、ディストはググっと爆発に備えて身構える。
爆弾の近くにいるというのにディストがさっきから余裕の表情を見せているのは、バリアを張れば自分は助かるからだ。それを利用し彼は“特等席”で職員さんたちが散って行くのを見届けようと言うのだ。
そして、助かるという点においては私とルビィも同じだった。私とルビィにもバリア発生能力がある、そのバリアならこの爆弾の爆発から身を守れるとルビィがしてくれた計算で出ているのだ。
だけど、職員さんたちは助からない。バリアはあくまで自分自身を守るもの。ギリギリ一人ぐらいなら両手で抱え込めば一緒にバリアの中に入れてあげられるけど、それ以上の人数は無理だ。
つまり、私とルビィはディストと共に職員さんたちが目の前で爆発に巻き込まれて死んで行く様を見届けなければならないのだ。
「う、うぅ……」
思わず涙が零れる。悔しくて悲しくて……だけど、何も出来ない自分が歯痒かった。
「くっそおおおお!!」
バン! とルビィが翼で爆弾を叩く。
「おっとっと、自棄になっちゃあいけないよ、その程度なら問題ないだろうけど、あんまり無茶をすると時間を待たず爆発しちゃうかもしれないよ。僕はそれでもいいけどね」
ディストの言葉にルビィは悔しげに顔を歪める。
「さあ、そろそろ時間だ、残り30秒程度か。カウントダウンを始めようじゃないか。30……29……」
ディストがそう告げると、職員さんたちの泣き叫ぶ声が一層激しくなる。
「いやだぁ! 死にたくない!!」「助けて、誰か助けて!」「嫌だぁ! まだ死にたくない!」「優姫……!!」
「25……24……23……」
そして、ディストのカウントは無情にも続いて行く。
職員さんたちの泣き叫ぶ声が耳に届いてくる度に私の心が軋んだ音を立てる、いっそバリアを張らずに爆発に巻き込まれてしまおうかなんてことまで考えてしまう。
でもダメ、私はここで死ねない、死んだら誰がディストを倒すのよ! 地球を守るのよ!!
それに、思考を止めちゃダメ!! 考えるんだ、最後の最後、ギリギリのその瞬間まで!! 爆弾を止める方法、みんなを助ける方法を!!
「15……14……13……」
ディストのカウントは続く、職員さんたちの泣き叫ぶ声も止まらない。
どうする? どうすればいいの? 爆発を止めるためのあらゆる方法はルビィが試したはず……。
爆発を止める術はない、なら……。
「残り10秒、ふふふ、ははははは、もう何もかもが無意味、絶望と恐怖の中で死んでいくがいい!」
残り5秒……! ディストの声も、職員さんたちの声も、全てが遠くに聞こえる。
「3……」
ディストがカウントを再開する、終わる、後3秒、いや2.4秒で全てが――
「くっ!!」
次の瞬間、思考よりも早く私は動き出していた! 爆弾に飛び掛かるとまるで抱きしめるように両手で包み込む! それと同時に金色のオーラが私の体から立ち上る。今更のエクシードモード……!? でも、これなら!
ディストはそんな私の姿に小さく肩をすくめると最後のカウントを告げる。
「1……0……!」
「うわああああああああああああああ!!!!」
私の口から迸る絶叫! 次の瞬間、激しい閃光と轟音と共に、爆弾は大爆発を起こしたのだった――。
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