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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第3章【みうと翔平とギーガーク帝国と】

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第9話 慣れない空中戦に苦戦です!

「くそっ!」


 もう何度目か、オレの繰り出したパンチはまたも空を切る。

 アグダプトスとかいう怪人は俺の攻撃をひらりひらりと身軽な動きでかわすと、ニヤニヤとした笑みを浮かべてくる。


 ちくしょう、完全に遊ばれてる……。


 腕っぷしにはそれなりに自信はあるんだけど、この怪人はかなりの実力者のようだ。


「どうした、そこまでか? ならばそろそろ終わりにしてやろう!」


 叫びアグダプトスは大きく羽を広げる!


「フェザーショット!」


 そこから打ち出された羽根の弾丸が、オレ迫る! とっさに両腕をクロスさせてガードするも、全身を切り刻まされオレは後方へと吹き飛ばされる!


「おにいちゃん!」


 オレがさっき助け出した女の子の悲痛な声が響き渡る。


 うう、くそ……全身が痛い……痛みをこらえてなんとか立ち上がるが、顔を上げたオレの目の前にはすでにアグタプトスが立っていた。


「ククク、殺さぬように手加減してやった、だがもうろくに動けないだろう? さあ、来い! このまま宇宙船で要塞まで連れ去ってやる!」


 ぐいっと腕を掴まれるとそのまま強引に立たされてしまう。くそっ……! もう身体が動かないぞ!? このままじゃ連れ去られちまう……!!


 焦るオレを尻目にアグダプトスはパチンと指を鳴らす。すると、上空に一機の小型円盤が飛来してきた。


 アグダプトスはオレの脇腹に両手をやり抱っこをするような体勢になると、その円盤に向かって飛び立った。


「くそっ、離せ、離せよ!!」


 宇宙人なんぞに攫われてたまるか! オレはじたばたともがくけど、がっちりホールドされていて抜け出せない……ちくしょう!!


 オレを抱えたアグダプトスが円盤の間近に迫る。その時、シュゥゥンという音と共に円盤の下部ハッチが開いた!


 ヤバイ、あそこに入られたら終わりだ、ちくしょう! これでオレは本当に連れ去られてしまうのか……? そんなの嫌だ……!


 ドゴオオオン!!


 しかし、次の瞬間、轟音と共に円盤が爆発四散! 残骸すら残さず消滅してしまった。


「な、何ぃ!?」


 アグダプトスが驚愕の声を上げる、オレも何が何やらわからないまま呆然としていると、「あなたの好きにはさせないよ!」という声が聞こえてきた。


 みう? まさか……。聞き覚えのある声に一瞬そう思うが、あいつに円盤を爆発させるような力があるわけはないと思い直す。


「どこだ、姿を見せろ!!」


「どこを見てるの? 私はこっちよ」


 アグダプトスの声に答えるように、凛とした声が響き渡る。声のした方向を見ると、そこには一人の少女が()()()()()


 ピンク色のロングヘアー、強い意志を感じさせる赤い瞳、赤と白を基調としたフリルの付いたミニスカドレスのようなコスチューム。


 その姿は以前みうに付き合わされて見せられた変身ヒロインアニメ(プチピュア)に似ていた。


 ニュースでその子の事を知っていなければ、空中に浮かんでいるという普通の人間ではあり得ない登場の仕方でなければ、ただのコスプレ少女としか思わなかっただろう。


「何者だ!?」


 アグダプトスが誰何の声を上げる。その時、オレは見た、その少女の口元が心底楽しそうにクイッと上がるのを……。


「転生の炎は悪を焼き尽くす正義の業火!! 不死鳥の戦士シャイニーフェニックス、子供を狙う悪い怪人を倒すために参上!!」


 少女は華麗にポーズを決めながらそう叫んだ。


 やっぱり……! 彼女が噂の正義の味方、スーパーヒロインシャイニーフェニックス!!


 ドクンとオレの心臓が跳ねる! 可愛い……ニュース映像で見るよりも何倍も可愛かった……。


 そして、やっぱり顔立ちがみうにそっくりだった……同一人物だと言われたら信じてしまいそうだ。


 オレが彼女に目を奪われていると、アグダプトスがニヤリと口元に笑みを浮かべた。


「ほう、貴様が我がギーガーク帝国の邪魔をするシャイニーフェニックスか! こいつは都合がいい、貴様を倒せばレガーン様からお褒めの言葉を頂けるぞ!」


「レガーン……確かあなたたちの司令官の名前だったわね。今回の幼児誘拐作戦はそいつの主導ってわけね……」


「その通り! そして、貴様が邪魔をして来たら倒せと命じられているのだ!!」


 そう宣言すると、アグダプトスはあろうことか、抱えていたオレを投げ捨てた!


 戦いの邪魔になるという判断だったのだろうが、当然空なんて飛べないオレはそのまま落下していくしかないわけで……!


「うわあああっ!」


  あ、これ死ぬかも……? 叫び声を上げながらもどこか冷静な自分がいた。だってそうだろう? このまま地面に激突してグチャッてなる未来しか見えないし……。


 しかし、次の瞬間柔らかいものに受け止められた感触があった……。


 あれっ!? 恐る恐る目を開けると、そこには……オレのことをお姫様抱っこしている美少女の姿があった!!


「大丈夫、翔くん!?」


 呼びかけられ、オレは助かったという安堵と抱きかかえられているという恥ずかしさからただただコクコクと頷くしかなかった。


 そんなオレに安心したのか、彼女はにっこりと微笑むとその視線を上に向ける。そして、怒りに燃える瞳でそこに浮かんでいるアグダプトスを睨みつける。


「なんてことするの、もう少しで翔くん死んじゃうところだったんだよ!!」


 彼女の口から飛び出したのは激しい怒気を含んだ言葉だった。それは本気で怒っている証拠だ。それだけオレを心配してくれたということなのだろうと思うとオレは胸が熱くなってくるのを感じた。


「フェニックスヒーリング!」


 彼女が叫ぶと同時に、オレの身体が光に包まれる。次の瞬間にはオレの全身についていた傷は全て治っていた。すげぇ、こんな力も持ってるのか……。


「翔くんは下がってて、あいつは私が倒すから」


 感心しきりのオレにシャイニーフェニックスはそう言うと、地面へと降ろしてくれた。


 思わず「オレも戦うよ」なんて言い出しそうになるが、どう考えてもオレでは足手まといにしかならないだろう。ここは大人しく言うことを聞くしかないか……。


 オレは彼女に対して小さく頷くと、離れた場所――戦いの終わりを見届けないと安心できないという判断からかまだその場にとどまっている女の子とその母親の近くへと移動した。


「俺様を倒すとは大きく出たな、ならば来い!」


「言われなくても!!」


 シャイニーフェニックスは高く飛びあがると、その勢いを利用しアグダプトスに殴りかかる。


 しかし、アグダプトスはその攻撃は読んでいたようで、あっさりと身をかわすと逆に彼女の腹に蹴りを入れた!


「きゃあっ!!」


 悲鳴を上げながら吹っ飛ぶシャイニーフェニックス。しかし空中で体勢を立て直すと、すぐさま反撃に移る!


「シャイニーリング!!」


 叫びと共に彼女が突き出した右腕から、名前の通りのリング状の光線が放たれた。しかし、アグダプトスは僅かに横に動いただけでそれもかわしてしまう。


「そんなものに当たるか」


 余裕の表情を浮かべるアグダプトスだったが、シャイニーフェニックスもまた余裕の表情で返す。


「余裕見せてていいのかな~?」


 その言葉に何かを感じ取ったのか、アグダプトスは再び身をひるがえした。さっきまで奴がいた場所をシャイニーリングが通過していく! どうやらあれは敵に当たるまで追い続ける追尾機能があるらしいな。


「こしゃくなっ!」


 アグダプトスは迫りくるリングから数度身をかわす、だがじれったくなったのか、避けるのをやめて腕をクロスさせると、そのままガードの姿勢に入った。


 ドオオン! 


 意外なほどに大きな爆発音が鳴り響く、威力もかなりの物のようだ。


 やった、とオレは思わずガッツポーズを取る。しかし、煙が晴れた後に見えた光景を見て愕然としてしまった。そこには無傷のアグダプタスの姿があったのだ。あの攻撃をまともに受けたというのに……。いったいどうなっているんだ!?


「あれ一発で倒せるなんて思ってなかったけど、まさか無傷とはね……」


 当のシャイニーフェニックスは驚いた様子を見せつつも案外呑気な様子だ。あれだけの威力を誇る技だというのに、彼女にとっては防がれたところで問題のない程度のものだったということなのだろう。


「俺様を甘く見るなよ?  誘拐だけが俺様の能ではない、対貴様用に戦闘能力も強化されているのだ!」


 言うが早いがアグダプトスは翼を大きく広げシャイニーフェニックスに向かって突進する。


「はやっ……」


 シャイニーフェニックスの驚きの声を搔き消すように轟音が響く。そして次の瞬間には彼女の姿は見えなくなっていた。どうやら体当たりで吹っ飛ばされたらしい。彼女の小柄な身体は軽々と宙を舞い地面に激突する!


 ドオオン!!


 激しい音と共に土煙が巻き上がる!


「シャイニーフェニックス!!」


 思わず声を上げてしまうオレだったが、土煙の中からすぐにシャイニーフェニックスが飛び出してきた。


「いった……。やるじゃない……」


 しかし、完全に無傷というわけには行かなかったようだ。露出した肌からは少し出血していた。


「バリアが突き破られるなんてね……。乙女の柔肌に傷をつけた罪は重いわよ?」


 言って彼女はアグダプトスへと飛び掛かる、だがアグダプトスはひらりと身をかわした。


 アグダプトスというあの怪人、翼を持ってるだけあって空中戦には一日の長が有るらしいな。


 シャイニーフェニックスも飛行能力を持ってるようだが、どうもぎこちない感じがする。まるで戦い慣れてない感じだ。


 もしかして、シャイニーフェニックスはまだ実戦経験が少ないのか? だとしたらまずいぞ! このままでは負けてしまうかもしれない! 


 そんなオレの心配をよそに、二人の闘いはますます激しさを増していく!


 激しい攻防が続く中、先に仕掛けたのはアグダプトスの方だった。わずかに距離を取ると、翼を大きく広げる。


「トルネードクラッシュ!」


 バサバサと激しく羽ばたきながら突風を巻き起こす! その威力たるや凄まじく、まともに食らったシャイニーフェニックスの身体が浮き上がったほどだ!


「きゃああっ!」


 悲鳴を上げながら吹き飛ばされるシャイニーフェニックス。


 アグダプトスはさらに追い打ちをかけるように彼女を追撃すると強烈な体当たりをぶちかました!


「うぐぅっ!!」


 再び上方向へと吹っ飛ばされるシャイニーフェニックス。


「はっはっはっ、そら、シャイニーフェニックスのお手玉だ!」


 アグダプトスはシャイニーフェニックスが地面に落下する前に、彼女の身体を蹴り上げる。そして、それを二度三度と繰り返す。


 その度に彼女は上空へと打ち上げられ、口からは苦悶の声が漏れ聞こえてくる。


「シャイニーフェニックスがんばれー!」


 オレの横では女の子が必死に声援を送っていた。


「そ、そうだ、シャイニーフェニックス、そんな奴に負けるな! 君は、君は本物の正義のヒーローだろ!!」


 オレは思わず叫んでいた。


「うるさいな、もうっ、翔くんに言われなくてもわかってるよ!」


 何故か怒鳴られた……なんだこの感じ……まるでみうとのやり取りみたいだ……。


 そう言えばさっきから、シャイニーフェニックスの奴、オレの事を『翔くん』って……。この呼び方をする奴はそう多くないはずなのに……。彼女とは初対面のはずなのに……。


 思わずそんな事を考えこむオレだったが、シャイニーフェニックスの戦いは続く。


 オレの言葉に発奮したのか、シャイニーフェニックスは体勢を立て直すと、アグダプトスに向けて指を突き付け叫んだ。


「さっきから何度も攻撃してきてるけど、全然私を倒せてないわね。しょぼい攻撃しか出来ないの!?」


「なんだと……」


 アグダプトスの顔が怒りに歪む。シャイニーフェニックスは挑発するように言葉を続ける。


「悔しかったら私を一撃で倒すような凄い攻撃を見せてみなさい!」


 これはシャイニーフェニックスの作戦か? 怒らせて奴の冷静さを失わせるつもりなのだろうか?


 しかし、アグダプトスはオレと同じことを考えたようだ、ニヤリと口元を歪めると言った。


「そんな安い挑発に乗って冷静さを失う俺ではないぞ? だがその言葉には乗ってやる、俺の最強技で一気に決めてやろう!」


 そう言うと、アグダプトスは全身にエネルギーを集中し始めた。


 オレは思わずシャイニーフェニックスの方に視線を向ける、彼女は不敵な笑みを浮かべていたが、その頬を一筋の汗が伝っていた……やはり彼女も余裕は無いのだろう……。


 そしてついに、エネルギーチャージが完了したのか、アグダプトスは翼を大きく広げると空高く舞い上がった! そして空中で静止すると、そこから一気にシャイニーフェニックスに向かって急降下してくる!


「くらええええええ!!」


 全身にエネルギーをまとった一撃、実にシンプルな攻撃だが、それだけに威力は高いはずだ……!


 スピードもすさまじく、シャイニーフェニックスは避けられない……いや避けようともしていない!?

 彼女は腕をクロスさせ、防御態勢を取っている!


 あれを受け止めるつもりか!?  無茶だ!!


「バリア全開!!」


 シャイニーフェニックスの叫び声が響いた刹那、ドガアッと凄まじい衝撃音が響いた!


「何っ!?」


 アグダプトスの驚愕の声が響き渡る! 奴の繰り出した腕はシャイニーフェニックスの腕にしっかりと掴まれていたのだ。


「掴まえた……! もう逃がさないよ、ロリコン怪人さん!」


 そうか、これが彼女の狙いだったのか……奴の素早い動きを封じるには接近してきたところを掴まえてしまうしかない。


 しかし、普通に掴みにかかったのではすぐに避けられてしまう。そこで彼女はわざと大技を誘発し、それを繰り出した直後という一番大きな隙を狙っていたのだ。


 そして、それは見事に成功したのである。


「誰がロリコ……!」


 抗議の声を上げようとするアグダプトスを無視し、シャイニーフェニックスは凄まじいスピードで垂直上昇していく。


「がああ、なんだっ!?」


 戸惑いの声を上げるアグダプトス、シャイニーフェニックスはかなりの高さまで舞い上がると、一瞬だけ静止し、今度は逆に垂直落下に近い形で上昇時をさらに上回るスピードで降下してくる!


「あ、あぐ、あがががががが!!」


 アグダプトスが悲鳴を上げている、おそらく今奴の身体にはすさまじいGが掛かっていることだろう、並の人間なら一瞬でペシャンコになってしまうほどの衝撃に違いない。


「バーニングダイブ!!」


 シャイニーフェニックスの声が響き渡った瞬間、シャイニーフェニックスとアグダプトスの身体が燃え上がった!


「ぐぎゃああああああ!!」


 Gに加えて炎、アグダプトスの悲鳴が一際大きくなった。


 そして地面に激突する寸前シャイニーフェニックスは手を離した!


 ドゴッ! と轟音を立てて、地面へと突き刺さるアグダプトス、奴の身体にまとわりつく炎はそのままその身体を焼き焦がし、完全な消し炭へと変えてしまった……。


 やがてその身体は、灰となり風に吹き散らされていった……。


「ビクトリー!」


 地面に降り立ったシャイニーフェニックスが、こちらにVサインを向けてきた。


 その瞬間、パチパチパチと拍手の音と歓声が巻き起こった。いつの間にかオレとアグダプトスに誘拐されそうになっていた子とその母親以外にも大勢の人が集まりシャイニーフェニックスの戦いを見守っていたようだ。


 まあ、あれだけ騒いでいたのだから当然といえば当然だが、それにしてもよくもこれだけ集まったものだなと思う。それだけシャイニーフェニックスの活躍にみんな興奮していたのだろう。


「えへへ、みんな応援ありがとー!」


 シャイニーフェニックスは照れたように頭を掻きながら、周囲に手を振っている。しかし、そんな姿すらも可愛いのだからすごいよな、なんて思いながら見ていると、不意に彼女と視線が合った気がした。


「っ……!」


 慌てて視線を逸らす、なんだか妙に気恥ずかしかったからだ。


「あれ? どうしたの?」


 シャイニーフェニックスが不思議そうに首を傾げている、どうやらオレの行動の意味がよくわかっていないらしい。


「いや、なんでもない……それより、改めて礼を言わせてくれ、助けてくれて、ありがとな」


 しかし、オレの言葉にシャイニーフェニックスは首を振ると、「ううん、あの子を救えたのは翔くんが飛び込んだおかげだよ」と言ってくれた。その言葉に胸が熱くなるのを感じた……だが、それと同時に再び疑問が浮かび上がってきた。


(やっぱりオレの事を“翔くん”と呼んでいる……。それにいやに親しげじゃないか、まさか、いや、でも……)


 オレはいてもたってもいられず、彼女に質問をぶつけてみることにした。


「な、なあ、君、もしかして……オレの、よく知ってるやつだったり、しないか……?」


 オレが掛けた言葉にシャイニーフェニックスは一瞬硬直する、しかし、すぐに表情を戻すと平静を装った声で答えた。


「えっ? な、なんでそんなこと聞くの?」


「いや……君さ、オレの事を翔くんなんて呼んでるだろ? 名前を知ってること自体もさることながら、オレをその呼び方で呼ぶのはごくごく一部の親しい人間だけなんだ。だから、もしかしたらと思って……」


 そう、その筆頭といえばあいつ……みうだ。それにこうして間近で見ているとますますもってみうにそっくりじゃないか、彼女は。


 そして、ヒーロー好きのあいつと本物のヒーローであるシャイニーフェニックス、あまりにも共通点が多すぎるんだ。


 自分の中で生じた疑問が段々と確信へと変わって行く。


 しかし、次に口を開いた彼女が発した言葉は意外なものだった。


「あ、ああ、その事ね。それはねぇ、みうちゃんに聞いたのよ」


「へ?」とオレは間抜けな声を上げてしまった。


 みうから聞いた、だって……?


 みうこそがシャイニーフェニックスだと思っていたというのに当の本人からみうの名前が出てきたことにオレは驚きを隠せなかった。


 シャイニーフェニックスはさらに続ける。


「この間のゲームセンターでの事件の話は知ってる? あの時私みうちゃんと知り合ったんだけど、ほら、あの子ヒーロー好きでしょ? だから私と気があったというかなんというかで色々とお話したりしたのよ。その時あなたのことも聞いてさぁ、だからつい私にとっても友達みたいな気持ちになって、みうちゃんが呼んでた呼び方で呼んじゃったのよねー! あははっ!」


 そう早口で捲し立てながら笑う彼女の表情はとても無邪気で可愛らしく見えた。


(そうか……そういうことだったのか……)


 そりゃそうだよな。さっきの戦いから見ても、シャイニーフェニックスが普通の女の子であるはずがない。世間で言われている宇宙人だというのがおそらく正しいのだろう。


 顔立ちがちょっと似てるからって変なことを考えすぎだな、世界には似た顔の人間は3人はいるというし、そんなことで彼女の正体がみうかもなんて思うなんてどうかしている。


「ま、まあ、そう言うわけなの。馴れ馴れしくてごめんね」


「いや、それは別にいいんだけど……」


 推測は外れたが正義のヒロインと仲良くなれるならむしろオレとしては大歓迎だ、それに彼女を見ているとこう、なんというか胸がどきどきとしてくるのだ。これが恋ってやつなのだろうか……?


 まさかな……オレそこまで惚れっぽくないはずだし……。


 しかしそう思ってしまっても仕方がないくらい彼女は魅力的なのだ!


「そう言ってもらえると助かるよ。それじゃ、私はそろそろ帰るね」


 オレの考えなんて知る由もなく、シャイニーフェニックスはそう言うと、オレの横をすり抜けて、攫われかけていたあの女の子の前まで歩み寄るとその子の頭を撫でる。


「怖かったね。もし、また何かあったらいつでも私を呼んでね」


「あ、ありがとうございます」


 安心した表情でコクリと頷いた女の子に合わせるように彼女の母親が頭を下げる。


「いえいえ、それじゃ、さようなら!」


 そう言って片手を上げると、シャイニーフェニックスは空へと飛び立っていくのだった。


「……くん、翔くん!」


 シャイニーフェニックスが消え去った空をいつまでも見上げていると、不意に後ろから声を掛けられた。振り向くとそこにはみうがいた。


「ああ、なんだ、みうだったのか……。どうしたんだ?」


「どうしたじゃないよ! ずっと呼んでるのに全然気づいてくれないんだもん!」


 そう言って膨れっ面をするみうにオレは頭に手をやりながら「悪い悪い」と答える。


 そして、ふと気になった。こいつ、さっきシャイニーフェニックスが戦ってるときどこにいたんだ? 姿が見えなかった気がしたけど……。


 気になったオレはその事を聞いてみたが、みうは腕を組みながら呆れた顔をオレに向ける。


「いたよ、私はずっと。シャイニーフェニックスの戦い見てたの。翔くんってばシャイニーフェニックスに見とれて私の存在忘れてたんじゃないの?」


 むぅ、確かに言われてみればみうもいたようないなかったような……。


 本人がそう言っている以上信じるしかないし、シャイニーフェニックスに見とれていたという指摘は正しいのでオレは反論することができなかった。


 そんなオレに呆れ果てたのか、彼女はため息を一つ吐くとオレの手を取り歩き出すのだった。


「ほら、もう帰ろう」


「お、おい待てよ!」


 彼女に引っ張られるようにしてオレもまた歩きだしたのだった……。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「じゃあ、またな」


 そう言って翔くんは自分の家の方へ向かって歩いて行く。私は笑顔でそれを見送ると自分の家へと入った。


「あ、危なった……」


 自分の部屋に戻り、扉を閉めたところで安心した私はへなへなとその場に崩れ落ちる。


 今日は色んな意味で危なかった……あのアグダプトスという怪人との戦いではもう少しでやられちゃうところだった……。


 でも、それよりも何よりも私が肝を冷やしたのは、翔くんに正体がバレかけたということだった。


 いや~失敗失敗、うっかり翔くんなんて呼んじゃったもんだから、思いっきり疑われちゃったよ……。


 何とか誤魔化せてよかった……。でも、これで香取みうとシャイニーフェニックスは友達だという既成事実を作ることには成功したぞ!


 みうの時にシャイニーフェニックスの情報話しちゃっても、シャイニーフェニックスの時にみうの情報を話しちゃっても、「みうに(シャイニーフェニックスに)聞いたんだよ~」といえば大抵の場合はなんとかなるだろう。


 こういうの怪我の功名っていうのかな?


 まあそれはともかくとして……。


 私は今日の事件の事をもう一度頭の中で反芻する。


 ギーガーク帝国……、子供を攫って奴隷にしたり商品にしようとしたりするなんて、絶対に許せない……!


 そうだ、これからも私は、今まで以上に気合を入れて、あいつらの野望を打ち砕いていかなきゃ!


 決意を固め、私は拳を握りしめるのだった……。


 翌朝、学校に向かうために通学路を歩いていた私は、完全に油断していた。


 だから、背後から一つの影が迫っていることには気が付かなかった……。


「よっ、おはよ」


 そんな言葉と共に、私の脚にスースーした感触が走る。突然のことに驚き振り返るとそこには悪戯っぽい笑顔を浮かべた翔くんがいた。


 瞬間、私は何をされたかを理解し、「ひゃあっ!」と叫び声を上げてスカートの裾を押さえながらその場から飛び退いたのだった。


「また……!」


 せっかく昨日のことで見直してあげたってのにぃ……!


「何てことすんのよ!」


 怒鳴りつける私に翔くんは肩をすくめると、ヘラヘラとした顔のままで言った。


「いや~、あまりにも無防備だったからよ。ついこの手がだな……」


「何がついよ! 全然反省してないじゃない!」


 私が怒り心頭といった様子で叫ぶと、翔くんは、「別にいいだろ。オレたちは……」と例のネタを口に出そうとする。


「昔一緒にお風呂入った仲なんだから、でしょ。もうっ、何回この話で私をからかうつもり?」


 言われる前に言ってやれとばかりに、私は先回りしてそう答える。


「む、むぅ、ついに自分からそれを口にするようになったか」


 定番のネタを先んじて言われて悔しかったのか、翔くんは少し顔を歪める。


「だって、毎回同じ手口でからかわれたらそりゃ学習もするよ」


 そんな彼に、私は勝ち誇ったような笑みを浮かべてそう言ったのだった……。


 って、結局自分で口に出してるんだから、私の恥ずかしさは何も変わらないんだけど……翔くんのからかいネタを潰したという事実が大事なのだ……うん……。


「……悪かったよ、みう。お詫びのしるしとしてこれやるよ」


 意外なほど素直に謝ると、翔くんは私の手に何かを握らせてきた。


 そして、「じゃ、オレ先行くわ」と言って歩き出した。


 もう……翔くんってば、本当に悪いと思ってんのかなぁ? 大体物で人を釣ろうだなんて……。


 そう思いながらも、私は少しだけわくわくしながら、手を開いた。


「きゃああああっ!」


 手の中には、大きな蜘蛛の姿が……!


「ははは、引っかかった引っかかった。ゴム人形だよ。どうだ、ビビったか?」


 そうケラケラ笑う翔くん。お、おのれぇ、新しい手を使ってくるなんて……!


 私は怒りやら何やらで顔を真っ赤に染めながら、翔くんに食ってかかった。


「もうっ! 許さない!」


 そう言って翔くんに向かって走り出す私だったけど、翔くんは背を向けて走り出した。


「こら待て! 一発でいいから殴らせろー!」


 そんな私の叫びも虚しく、翔くんはそのまま走って逃げていく。


 くっそー、絶対に捕まえてやるんだからー!! こうして私と翔くんの追いかけっこが始まったのだった……。


 あーあ、どうしてこうなっちゃうかなぁ。だけど、ある意味私たちらしいかもね……。


 私はすごく怒っている、怒っているはずなのに、何故かその口元は緩んでいた。


 それはきっと、私が心のどこかでこの状況を楽しんでいるからだろうと思う。だって、こうしてふざけ合えるのは今が平和で幸せな時だって証拠だもんね……!


 私は一層スピードを上げて、あの意地悪で優しい幼馴染を追いかけて行ったのだった……。


第3章【みうと翔平とギーガーク帝国と】


【次回予告】

みう「一人での戦いはやっぱり大変! そんな私のために宇宙からシュナイダーさんが私をサポートする可愛い仲間を送ってくれたんだ。――けど、それはいいんだけど、この子なんだか頼りないんだよねぇ、私も誰かの事言えないけど……次回、シャイニーフェニックス『登場! サポートアニマル・ルビィ!』次回も見てね☆」

お読みいただきありがとうございました。

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