マリーさん人形
フフ……。
フフフ……。
フフフフ……。
フフフフフ……。
薄暗く、冷たく感じる室内。木霊する不気味な笑い声。周囲を駆け回る足音。
その音が止み、静けさが戻るとそれは呼吸するタイミングを見計らったかのように一切の淀みなく、淡々と告げる……。
「あたしメリー。今 あなたの後ろにいるの」
「あたしはミリー右にいるわ」
「あたしはサリー左よ」
「あたしはマリー正面に――」
僕はマリー人形を持ち上げ、スイッチをオフにした。
まったく、技術が発達してロボットブームが来たのは良いけど一つ当たると、どこもすぐに似たような商品を作るから忙しないんだよな……。
オマケに消費者はすぐ飽きるし。 だからこうして僕は床に座り込み、たった一人でこのリサイクルショップに持ち込まれたロボットを一つ一つ点検している。
店長はすでに帰った。新作ロボットのお披露目会に行くらしい。業界の動きをチェックだのなんだの御託を並べていたが、どうせスケベなやつ目当てだ。
「……あたし、エリー。上よ!」
「させるか!」
振り下ろされた手刀を受け止めた僕。
先輩は見下ろしたままふふん、と笑った。
「やるじゃない。褒美にご飯を奢らせてあげる」
「文章おかしくないですか?」
クスクス笑う先輩。音もなくどうやって近づいてきたんだか。「ほら早く!」と急かす先輩の横に並び、歩く。
「何?」
「いや、別に」
チラリと膨らんだお腹を見た僕を先輩は訝しげに見つめる。
僕らの子。
声はまだ聞こえないけど、すぐ傍にいる。