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自己紹介5全地球への拡大

 人類は、何百万年もアフリカ大陸の一部で、少人数の群れで移動して生き延びていた。総数も少なかった。

 だが、ある時期、地球全体に急速に広がり、大型動物のほとんどを絶滅させた。水が固体になる温度よりずっと低温の場以外、大陸から遠く離れた離島にも達した。

 犬の家畜化・原始的な農耕・投槍器や弓矢・火で広大な地域を焼いて大きい植物が育たないようにする・木材の浮力で水面を移動する技術など、多くの技術発展があったのだろう。

 大陸によっては、長時間その生活を続けた。


〇農耕牧畜・都市

 いくつかの人類の群れが、まったく生活様式を変えた。

 犬という動物は古いが、他にも羊・山羊・牛・馬・豚・鶏など、何種類もの別種の動物を、自分の群れに加え、皆殺しにせず繁殖を制御し、水・食物・住居を与えて、全滅しない程度に殺して食物・衣類・道具素材などにすることを覚えた。

 また、植物の生殖も理解し、種や繁殖できる根を保管し、いい土に植え、水や、窒素など必要な元素を含む物を与えて育て、食べたり衣類や住居にすることも覚えた。人が特に好む植物は、小麦・大麦など本来草原で育ち、大型草食動物に食べられる植物。地上すぐから長い葉を延ばし続け、デンプンという炭化水素を多量に含む種が入った塊を多数落とし、それを乾燥させれば長期保存できる。稲という、似ているが水たまりに育つ植物も好まれる。アメリカ大陸のトウモロコシもきわめて収量が多い。

 他、それに似るが空中窒素固定能力が高い豆、地下にデンプンを貯めた塊を作ってそれでも繁殖できる芋なども好む。麻・木綿など繊維、アブラナ・ヒマワリ・アブラヤシなど油作物も重要だ。他にも多様な作物を用いる。

 農耕牧畜ともに、品種改良という重要な技術が伴う。進化を人工的に加速させる、と言ってもいい。都合の良い性質を持つ家畜・作物に多く繁殖させ、そうでないものを繁殖させず食べてしまう。それで、かなり短い時間でも急速に外見や収量が増大し、動物は精神構造すら変わる。

 人は樹木を直接利用することは好まず、木はすべて切り倒して草原環境にしたがる……愚かなことに。

 まあそれにより、大量の食物を安定して手に入れることができるようになり、人口が爆発的に増えた……一つの群れの規模が極度に大きくなり、技術も発展した。

 ちなみに、定住する群れもあるし、また多数の家畜と共に常に移動する群れもある。軍事的には移動する群れのほうが強いが、その帝国はあまり持続しない。

 その前後で見られる重要な技術。



●治水……大きな住居を造るように地形を変えて地表の水流を制御する。農業で、安定して植物に水をやるのに必須。

●分業……人間が生きるためにやるさまざまなことを、この仕事はこの人およびその子孫がやると決める。

●文字……特定の単純な形を衣類素材などの平たい素材に、目で見えるようにつける。音声なら瞬時に消える言葉を保存できる。

●相続・格差・身分……少人数で移動生活する狩猟採集民は平等だが、大人数の農耕牧畜群れでは少数の人が極端に多くの物・権利を持つ土地、ある仕事をする権利などを所有し、多数の人間を家畜化して支配し、その子に所有する物・家畜・権利を継がせる。

●宗教……巨大な群れの維持に、最も重要な精神的な物語。最強の群れの神話および善悪規準を主とするが、群れの巨大化に伴い変質している。繁殖関係、直接の音声言語や顔合わせ、皮膚接触が不可能な人数を、神と物語……その影響力を強める巨大住居・装飾・文字や彫像といった物を変形することによりイメージを他人に見せる技術、言葉で善悪を明確化することによって制御するようになった。

 巨大な群れの最上位者を神とすることも、有効な統治技術。また大文明は常に、許可のない魔術を禁じることを権力の源泉とする。

 また特に有効だったのが、死後に霊が別世界で暮らすとか別の子として産まれるとかの物語と行動の善悪をつなぎ、誰にも知られず悪行をしても死後に罰を受ける、という物語を中心にしたことだ。

●法・官僚……巨大群れの、善悪基準。本来は宗教と一体。言葉にされることで変質する。所有権にも関わる。

 文字を管理することで、群れとそれにかかわる物質全体を文字の集まりとして記録し、分業された集団が近似的に制御する官僚制もできる。巨大群れを管理する、弊害は多いが代案がないシステムだ。

 法の厄介なところは、人類の本来のあり方である「自分の群れ・血縁の利益が絶対善、他は獲物だから残酷に殺していい」を否定してしまうところだ。後には人間にとって最も根源的な感情の一つ、復讐すら否定するようになる。しかもその法が、絶対的な正義を主張するんだ。

●貨幣……交換を、物と物の直接交換から、数に抽象化した「価値」を媒体とする。数を表現する文字と神や支配者の像を刻んだ、希少性が高く破壊されにくい物体を用いる。交易を爆発的に高め、無限の欲望を具現する。

●都市……きわめて人口密度の高い、移動しない住居。全体を一つの巨大住居のように防護するのが一般的だ。燃料の入手・汚物の排除には不利で伝染病が蔓延しやすい。反面、大人数で大規模な土木事業をしたり、物資を短い移動距離で交換して多数の物資を要する複雑な物を作ったり、多くの人が情報を交換して技術を進歩させたりすることに優れる。

●土器や金属……火による高熱で、土を任意の形で石のように固め、水に溶けなくする。また地表にある酸化金属を、火の高温下、燃焼時に出る水素や一酸化炭素に酸素を奪わせることで、金属元素のみの塊にする。石器に近い高硬度で、より破壊されにくく、高温で柔らかくしたり一度液体にしたりして自由に変形できる。銅と錫の合金、より高い温度を要するが安価で頑丈な鉄などが実用的に重要。最大到達温度の高さも、文明の指標にできる。金銀も富として珍重され、水銀や鉛も重要。

●天文……頭上の恒星・住んでる惑星の衛星・多数の恒星や惑星を観察することで、公転周期による温度変化を予測したり、自分が今いる位置や方角を目印のない砂漠や海でも測定する。数学にもつながる。魔術とのつながりもとても深い。

●移動……家畜も、移動の重要な手段だ。馬、ラクダなど、新しい家畜が家畜化されるたびに、またあぶみの発明でも、歴史は大きく動いた。……船。木材などで、住居に似た気密構造を作る。水の浮力で水面上に浮き、水を呼吸できない人が広い水面を移動できる。運べる量が圧倒的に大きい。……ころ、車。円筒が低摩擦で回転しつつ移動できることを利用するころ。応用として太さの違う円筒を組みあわせて台に固定し、運動の自由度を軸回転のみに絞って、小さな力で重い荷物を地上移動できるようになる車。路面も加工する。

●エネルギー……エネルギーは力と距離の内積・積分なので、小さい力を長い距離出し続ければ大きな力を出すこともできる……てこ・輪軸・複滑車など。多くの人力も使うが、人間より強く従順な家畜の筋力や、水や風の力を利用して、重い物を運んだり水を高いところに移したり高速で移動したりする。


 それらを利用して、特に人間が好むのが、宗教用の巨大住居作りだ。


 特に農業と牧畜の組み合わせは、広い範囲で樹木をすべて殺し、そしてそれは、長い時間で見るとおおかた失敗する。

 水流の秩序を高めても、水に混じる塩が土に溜まり、水路に土が溜まり、最後には農業生産が減少し、多数の餓死者が出て戦争に敗れる。樹木がない広い土地、しかも寒い時期にはすべての植物を取り去った状態だと、大気や水の流れで表土が失われる。気候によっては、千年経っても植物が生えず、人口も少ない荒れ地になる。

 特にダメージが大きいのが、建築・燃料などで大量の樹木を、再び生長するより早く使うことだ。土器の一種と言える焼きレンガは重要な建材だし、木造でも木を消費するし、生物遺骸である炭酸カルシウム石を火の高熱で処理した、粉状で水に混ぜると泥のように変形し、時間がたつと固まる素材はどの建築法でも必須だ。

 そう、森を切り尽くし砂漠にして滅びる、そのくり返し。それが、人間がやってることだ。宇宙から客観的に見れば、地球人の農業免許は停止すべきだろう。

 

〇革命・近代

 長い間地球のあちこちで、人の群れが活動し、戦ったり交易したりしていた。だが大陸間、特にアメリカ大陸とオーストラリア大陸は他と通行できなかった。オーストラリア大陸では農耕をせず狩猟採集のままだったりもする。

 ある時、それまでの歴史ではむしろ辺境だったヨーロッパ半島西端から、多くの船が大洋を越え、再び地球全部に着いた。それは異常だ、他の農業による大帝国は海の向こうの征服には消極的だった。

 住んでる惑星自体の磁力を利用して方向を測定するとか、木炭・硫黄・酸素と窒素とカリウムの酸化剤になる分子などを利用した、きわめて急激な燃焼による音と運動エネルギーを用いる弓矢より使いやすい武器、文字を刻んだ小さい塊を順に組み、紙という植物繊維を用いたフェルトに似た安価な素材を用いる文字複製など、技術の進歩の結果でもある。本当はどれも中国が発明したんだが、なぜか成功したのはヨーロッパだ。それに、ヨーロッパに馬があったことや、広い範囲の交流があり多くの伝染病の病原体を持っていたことも、強力な武器となった。

 アメリカ・オーストラリア・アフリカなど軍事水準の低い群れは皆殺しに近く減らされ、多くは家畜扱いされた。伝えられた物語、文化は破壊し尽くされた。

 まもなく、ヨーロッパの別の一部から、それまでの、他の文明とは極端に違う文明のあり方が出現した。

 ひと言で言えば、試行錯誤の容認による技術発展、新しいエネルギーの利用。

 燃料として生えている木に依存するのではなく、太古に埋まって炭素の塊となった膨大な木……石炭を大量に利用し、大規模な製鉄を行った。その鉄は建築素材や船になり、また整えた地面に鉄棒を二本並行に敷く鉄道とその車輪にもなり、建築と交通を爆発的に増した。

 そして、気体が熱により圧力を変える……熱エネルギーと運動エネルギーの相互変換を利用した、それまでの人力・畜力、水力や風力をしのぐ膨大なエネルギーを得た。森の制約から解放されたと言っていい……石炭も有限だから一時的に、だが。

 さらに、高品質な素材と精度の向上によって、単純な衣類の生産も、少人数で桁外れにたくさん作れる機械を発達させた。分業を発展させることで、さらに生産効率は高まった。

 紙に数文字と絵を印刷した貨幣……また文字で数文字と名前を書いた書類だけで、数値化された貨幣を交換する制度が整備されて、それにより膨大な人数・物資を集め、高額な機械や交通設備を作って、巨大な生産をすることも可能になった。

 電磁気力を使う技術も学び、それでアルミニウムを利用したり、情報やエネルギーをより有効に伝達できるようになった。

 新しく知った大陸から奪ってきた多くの有用作物や、人体解剖・微生物の発見・分子の分析と合成など医学の進歩、大気中の窒素分子を生物が使える分子にする強力な機械などで、人口も大きく増えた。

 それらの技術革新を支えるのが、科学技術だ。それまでの人間につきものの、神物語や善悪を決める言葉の蓄積による「試行錯誤禁止」と、「物をいじる階級と、文字と言葉を使って考える階級は別」「知識は貴重な財産なので、群れの外には明かさない」という制限を取っ払い、物をいじって実験しながら文字を使って試行錯誤し、この世界の物がどんな法則に従う、どんな物なのかを数学を利用して徹底的に説き明かし、知識を蓄積し交換し、常に技術に応用し広く教えることだ。

 それらの生産力は圧倒的だった。面白いことに、新大陸に最初に接した国々はむしろ貧しくなった……あまりに多くの資源を簡単に得てしまうと、かえって貧しくなることが多い。

 そんなわけで、圧倒的に使える物・暴力の量が違う群れ同士が、常に接しているのが人間の常になった。ある時期から、弱い方を滅ぼし尽くさなくなったし、公然と家畜化することも禁じられた。だが弱いほうが学んで強く豊かになることは遅い。そして弱い方は強い方を憎み宗教的な悪とみなし、強い方は弱い方を愚かで悪だと思う。

 強弱どちらの群れの構造も、宗教も政治体制も、善悪の考えも大きく変わった……あまり変わってない人も多いし、遺伝子と心の奥底の構造は違わないが。


 その変化でよくあるのが、多数の、巨大群れの中の地位が低く、持っている物も少ない人々が、「この世界は悪に支配されている。我々正義の人々が支配すれば良い世界になり、みんな同じくたくさん物を持ち、飢えず幸せに暮らせる」という考えにとりつかれて暴力で暴走する現象だ。

 それは宗教・魔術と共通した感情で制御された状態で、悪を皆殺しにして全員を同じ善状態にしようと極度に暴力的になる。そして大抵は、悪ではない人を多人数殺し、極端に人を支配し戦うのがうまい人殺しが大好きな……普通には悪人とされる人が群れの最上位者になって、たくさん人が死に、禁止されることや言葉が大幅に増える。そうなると試行錯誤が禁じられるため生産力・軍事力が弱まる。

 平等を求める言葉と、貧富の差を作る現実……特に、多くの交換価値や労働力を一度集中し、大規模に地形を変えたり大規模な機械を作ったりすることで、桁外れの生産力を作り出せる……が、常にせめぎ合う。その平等を求める心は、結局宗教に近い、世界を浄化したいという、要するに感情の側だから制御が難しく、試行錯誤を抑圧し、ろくな結果にならない。

 いくつかは、そのどたばたからうまくいき、「みんなで政治」という建前と権力の相互チェック……民主主義に成功している。その副産物として、法と宗教の分離に成功することもある。宗教が一方的に何が善で悪かを決める状態から、民主主義、みんなで決めるとするし、後にはどの宗教を信じるのも、言葉を言ったり書いたりすることも自由だ、とした。

 民主主義にすれば成功するとは限らないが、試行錯誤があるので有利なことも多い。また、公平でありたい、自分も権力が欲しい、という人の感情を、多数になる弱者たちも含めて満足させることができる。

 まあ、近代にとっては民主主義より、むしろ義務教育・徴兵・刑務所・工場という制度による、人間の教育のほうが重要じゃないかって気もする。豊かさそのものも人の心を変えており、異常に殺人や盗みが少ない。

 あと、経済でも試行錯誤は強力だ。市場経済……誰が何を作って売ってもいい、無闇に財産を取り上げない、取引の約束を破ったら政治が守るよう強制する、などを原則とすると、作る人が勝手に試行錯誤をするため、うまくいくこともある。でもそうすると富が少数の人に集中し、消費する人がいなくなり、ものの価値がおかしくなってひどいことになることも多い。

 工夫・思考・言葉の試行錯誤……政教分離と自由、科学技術。政治の試行錯誤……民主主義。経済の試行錯誤……市場。この試行錯誤トリオが、巨大な生産力と軍事力になっている。それがこの革命の本質かな。試行錯誤は生命進化の本質でもあり、その威力は生命の多様性と豊穣そのものが証拠だ。

 その結果、今は膨大な人数が、贅沢に水・燃料・食糧・衣類素材・紙を使いまくって、とんでもない生活をしている。その生活に使われる農地・淡水・鉱山の廃石・エネルギーを奴隷に換算した人数・ゴミがどんなに多いか知りもせずに。


 とにかく地球の人類全体がある意味一つの群れになり、多くはそれに順応して豊かになろうとしているが、貧しく小さい群れで今まで通り生きている人たちもいて、争ってる……二酸化炭素の過剰はともかく化石地下水の枯渇でそろそろ限界、宇宙技術は人を月面に送ることはできたがそれ以降あまり発達しない、エネルギーは化石燃料や核分裂燃料はまだしばらくあるが核融合がなかなかできない。

 繊維や金属の代用物は一部合成できるが、食料は直接合成することができず、農業や牧畜も続けている。

 ここしばらくは、異常なほど電子・電磁波制御による情報処理だけが発達し、大規模輸送の発達と合わさっている。そんなところだ。

 むちゃくちゃに人口が増えているが、豊かになれば人口は減り出すようだ。


 宇宙から地球全体を見れば、大気の二酸化炭素濃度が上がってる。大気に一時期鉛とか変なのが増えたが、最近は減ってる。地球全体で森林が減り、砂漠が拡大している。

 宇宙空間に、電波を発信する機械がたくさん打ち上げられて地球の周囲を回っている。でも生きた人間はほとんど宇宙に出ない。巨大衛星に数回行ってみただけで、その後はそれもやってない。

 太陽系の外に向けて人工機械が数個打ち上げられ、電波も洩れている。核分裂・核融合を使った、とても強い電磁波が瞬間的に幾度かあったが、最近あまり見られない……

 どう見ても、自滅真っ最中だ。

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