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なぜ、我々はこうしていない?

なぜ、我々はこうしていない?なぜ、我々はこうしていない?なぜ、我々はこうしていない?なぜ、我々はこうしていない?なぜ、我々はこうしていない?


 そう。現実の地球人は、それをしていない。

 実際にやっていることは、石油を燃やしてポンプを動かし、化石地下水で農業をしている。

 QWERTYキーボードとマウス、薄い液晶ディスプレイ。携帯電話は絶対に一体式、車載以外ヘッドセットと分離することはない。

 荒野に点在する、円形の緑。巨大スプリンクラー棒が円を描いて回り、化石地下水をまく。飛行機でまかれる種・農薬・化学肥料。巨大なトラクター。その多くは、巨大な密封された工場に、高密度で詰めこまれた牛・豚・鶏が食う。それが、この地球では、最も安いデンプン・タンパク質の作り方とされる。

 どうやら、油脂で一番安いのは、原生林である熱帯雨林を先住民を追い出すか虐殺して皆伐し、アブラヤシのプランテーションとして、子供たちを買って家畜同様に使い捨てて作った油のようだ。

 本当に、その二つのやり方は、沿岸砂漠で塩生植物を育て、ラクダを飼うより圧倒的に安いのか? メガフロートより傭兵に弾薬代を払い、ジャーナリストを暗殺させ、賄賂を払って熱帯雨林を切るほうが安いのか? 本当にそれが一番安いのか?

 また、七〇億の人口……その相当数は教育されている……がいる。世界全体で資金がだぶついており、石炭も鉄鉱石も温暖化さえ気にしなければ何千年分もある。つまり、今現状の十倍使っても、何百年ももつ。いくらでも、戦艦でも都市でも作れるだろう? サハラ砂漠を海面下五十センチに掘り下げてアッケシソウを育てマングローブを茂らせ、ついでに風力タービンだらけにするぐらい、できるだろう? なのに月基地どころかマレー半島横断運河も作らず、年に何千万人も餓死し、読み書きのできる若者が何億人も失業している。

 七〇億の人口、頭脳……何十万人も天才が今いるんじゃないのか? 活用できないのか?

 もちろん宇宙にはほとんど関心を持たない。宇宙に種をまこうなどとはしていない……救命ボートが一つもない宇宙船地球号で暮らし、一つの籠にすべての卵を入れている。地球という文明のゆりかごで、ひたすら喧嘩しているか、ずっとゆりかごで過ごすため欲を捨てて質素に暮らそうと訴えている。SETIに予算は出ない、異星文明向けの電波放送すらろくにしない。

 客観的に人類を見れば明らかに、生息地を広げ種を存続させる努力をしていない。ビッグバン、進化……科学は、人が必ず死ぬことと同じく全人類共通の検証された真実なのに、大きな物語は終わった、という言葉に支配されている。自分は原子でできた生物で、死んでも子孫や親戚・人類・生命が宇宙にはびこり生きつづける、という物語は拒まれたようだ。

 人類全体に目的がない。

 それとも先ほど描いた、海を耕し宇宙に向かっている世界には、何か物理法則違反があったのか?


 特許局は永久機関を受けつけない。エネルギー保存則を破る第一種永久機関も、熱力学第二法則を破る第二種永久機関も。それは受け入れよう。ワープや小型核融合炉ができないことも受け入れよう、少なくとも今は。

 物理学も確かなのか? 日本のインターネットで、温暖化や原発の議論を見ていると、科学・医学などの水準で前提が異なっている。

 放射能は安全か危険か……チェルノブイリの死者は十数人という人たちも、数万人という人たちもいる。

 風力・太陽光発電など再生可能エネルギー。「世界では風力発電が急速に普及し、コストも原発より安くなっている」という人もいれば、「再生可能エネルギーでは文明を支えられないことは、三十年前に実験で証明されている、熱力学第二法則から自明、さらに今はあちこちの国の財政を破綻させ、三十年前も今も一%以下」という人たちもいる。それどころか、将来進歩するかどうかも、どちらの立場の人たちもよく()()()()いる。

「天然ガスだけで千年分もあるから考えなくていい」という人もいるし、「再生可能エネルギーもシェールガスもメタンハイドレートも、ウサギを追う運動の消費カロリーとウサギ肉のカロリーの比が悪いので文明は支えられない。近代文明は良質な油田があるうちだけで、もう枯渇した」という人もいる。

 そして温暖化。「化石燃料を燃やせば温暖化になるのは科学界で合意されている」人たちも多いし、「温暖化は大嘘なのが世界の常識」「地球は寒冷化している」という人々もいる……

 何が科学的事実なのか、何が世界の科学者の合意なのか、何が世界の常識・現実・趨勢なのかが違う。同じ物理学の教科書を使っているのかすら疑わしい。

 それも、思想の左右で科学的事実を決めている……温暖化、脱原発、風力発電、捕鯨の是非など別々の分野の科学的問題と、南京大虐殺、改憲、消費税、死刑など関係のない社会問題を混ぜてアンケートを取ってみればいい。

 検証できないのか? 実験で。月にあばたが、太陽に黒点が、木星に衛星があることは、望遠鏡をのぞけばわかる。ちなみにガリレオにそう言われた聖職者は、望遠鏡をのぞくことを拒んだという。望遠鏡をのぞくことを拒むことは、それ自体が間違っている。だが人間は望遠鏡をのぞくのは嫌いだ。

 そしてどの立場の人たちも、技術の進歩はもうないと思っている……自分の立場に都合のいい技術以外は。どの立場の人たちも、軌道エレベーターと宇宙太陽光発電、核融合、加速器の荷電粒子ビームで核廃棄物を核反応させエネルギーも搾る炉、二酸化炭素貯留、浮体洋上風力発電、技術的特異点など技術の進歩は、考えもしない。宇宙全部、物理法則そのものが当人の立場のために微調整されているらしい。


〇エネルギーと未来の盲点

 少し脱線するが、未来を考える上で一番大事なエネルギーの論争には、とんでもない穴がある。

 温暖化は嘘だし石油は何万年分もある、今は何も考える必要はない、という人もいる。天然ガスが最善だという人もいる。科学技術など災いにしかならない、悪だ、捨てろという人もいる。科学技術はもう十分だ、という人もいる。主に風力発電で持続可能文明にという人もいる。いや原子力で……

()()()()()()()()()()。》

 石炭・石油・天然ガス、原子力、水力、風力・太陽熱、地熱・波力……コジェネガスタービンだろうが浮体洋上風力発電だろうが核融合だろうが、全部そこだけは同じ原理の、発電機のコイルに使う銅線。太陽電池も必要な微量元素は多いし、銅がなければ電線がないので無意味だ。もちろん銅だけではない、発電機の電磁石・軸受け・タービン・パイプなど膨大な部品は高度な合金で、多種類の、多くは埋蔵量が少ない元素が必須だ。

 肥料も、窒素は事実上無限だがリンは有限だし、他にも多くの元素が必須。化石地下水も有限だ。

 その他、周期表の元素のほとんどに、現代文明を支える必須の役割があり、鉄などいくつかを除いてそれほどたくさんはない。

 どれか一つでも尽きれば終わりだ。放射能が無害で、原発の人命を含むコストが最善でも。温暖化が嘘で天然ガスが千年分あるとしても。風力発電や、砂漠に注ぐ太陽で全人類のエネルギーがまかなえても。高速増殖炉や核融合炉が実用化されても。

 現代の科学技術文明、特に大気中の窒素を肥料にする技術と大量のリン・カリウム肥料がなければ、地球号の収容人数は十億人以下だろうし、それも長くはない。長期的には石器時代の文明水準で数百万人程度だ。

 脱原発か否かも、温暖化の真偽も、再生可能エネルギーが石油の無駄かどうかも、どれも千年で見れば問題ではない。


●リサイクル……百%のリサイクルはない。一時的に持続可能に見えても、何千年も続けていれば必ず必須元素がどれか枯渇する。

●海水にも資源は溶けている……熱力学第二法則。それを集めるには無限と言っていいエネルギーや、おそらく多くの資源が必要になる。

●銅が尽きても代替資源……陸が見えない難破船で、冷凍ステーキが尽きたら缶詰がある。缶詰も尽きる! 岸に着かなければ解決にはならない。岸を捜しSOSを打ち、鳩を放ちボートを出すことはしないのか? せめて手紙を壜に入れて放るぐらい、なぜしない?

●地表に事実上無限にある数種類の元素をうまく組み合わせ、今は枯渇しそうな元素でやっている用途すべてを代替する……できたとしても、宇宙に出なければいつか巨大隕石などで滅びるだろう。

●物質文明を捨てよ、原始の狩猟採集生活に……数百万人以外は死んでもらうわけだ。さらにその後も、誰かが禁を破ればまた文明が発達してしまい、人口が増えて破局に至るだろう。

●千年後には想像を絶する技術がある……技術は発達しないかもしれない。何百年かけて、何をどうやっても軌道エレベーターが可能な素材はできないかもしれない。未来の技術の予測は当たらないことと、熱力学第二法則・量子電磁力学・相対性理論など徹底的に検証された物理法則以外、絶対は絶対にない。今の技術でできることを今やるべきだ。

●宇宙だけでなく地下深くにも資源はある……手が届きさえすれば。技術予測は無駄なので挑戦はすべきだが、困難なのは確かだ。素手で、手元のヤシの実と、遠くのクルミの木だ。ヤシの大きな実の中[地球の核]にはたっぷりと栄養[金属資源]があるが、殻[地殻・マントル]に歯が立たない。表面の虫[地表資源]を少し食えただけ。クルミ[小惑星]には今は手が届かないし一つ一つは小さいが、手が届けば容易に割れる……「はやぶさ」の時点で手は届いている。

●地球で足りないなら宇宙に出ても、どのみち指数関数だからすぐ使い尽くされる……豊かになれば出生率は下がるし、太陽系の資源量はとんでもなく多い。

●なら地球に留まっても出生率が下がるのが間に合う……地球でみんなが豊かになって人口が減るのが間に合い、持続可能文明に安全着陸することが、絶対に成功するとなぜ言い切れる? うまくいかなかったら? 一つのシナリオの成功にすべてを賭けるのは、救命ボートを積まない船と同じだ。そしてうまくいっても、その遠い未来は?



 どの道、宇宙に資源を取りに行かなければならない。《一つの籠にすべての卵を入れるな》だけでも、宇宙に出る必要はある。

 なぜそうしていないのだろう?


 本当は、僕が間違った情報をうのみにしているだけ、アッケシソウは大量に収穫できず、ラクダは海水とマングローブでは生きられず、極超音速スカイフックは不可能なのか? それは試せばいいことだ。

 それとも、別の理由だろうか。

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