大切な仲間
熱い。いやになく熱い。身体が残る熱が思考を鈍らせる。絶えず私を責める二人の手。私の弱いところ刺激してか細声で鳴かされる。いや、手慣れた手つき。私という身体を解かれていく。
「んっ、あっ。いやだ。そこは触る必要ない」
「これはどうかしら?」
「あの、テレン?服は別に制服があれば問題ないはずです」
私の体を弄るテレンをよそに、レイアが意気揚々と服を脱がしていく。
「え?そんなの駄目決まっているじゃない。もっと可愛いくて可憐な感じのほうが唆るもの」
「じゃぁ、こっちはどうかな?」
「ええ、とてもいいわね。澄み切った青のドレスはフィリアにとても似合うわ。思わず黒く染めてしまいたいくらいに」
「もう、許してください。もうお昼にしませんか?」
「「駄目よ」」
あっさりと私の意見は否定されて、二人は服を着せてくる。リーナ達を叩きのめした次の日に普通に授業のある平日なのに、私は王都にある貴族御用達の服屋にやってきていた。
「あ、これはどうですか?」
胸が見えるような際どいドレスに私は首を横にふる。でも決定権は私にはない。
「あら、それもいいわね。んー、いっそのこと全部買ってしまいましょう」
「いや、それはやめましょう」
「いいえ、これは主人の決定です。私の大切な従者なの。身嗜みも最高のものにさせないと私の気持ちが許せないもの」
テレンの言葉にわたしは感動する。テレンは生徒会長である。学園の仕事で忙しく、自由な時間がないのは少し時間を一緒にしただけでわかった。その彼女が私のために時間をつくってくれたのが少しうれしかった。
「といいながら、テレンが遊びたいだけでしょう?」
「もちろんよ」
「はぁ、感動した私を返してください」
レイアの言葉にすぐうなずいたテレンに私はため息を吐いた。そして、数時間を経て私の服の買い物は終わった。
「はぁはぁ、やっと終わった」
「うんうん。とってもいい買い物をしたわ」
「そうですね」
疲れ切った私を慰めるように、レイアが私の背中をなでる。が、彼女も私をたくさん弄んだのだ。じとりと目を向けると彼女はにこりと微笑んだ。
「楽しかった」
「………よかったね」
主従それってこれである。もう何も言うまい。
「あ、お茶。おいしい」
貴族御用達のバルコニーつきのお茶屋で私は現実逃避する。まだ買い物は終わっていない。これは休憩なのでまだまだ買い物が控えている。
「そうね。ここは私の行きつけの場所なのよ」
侯爵家いきつけのお茶屋。お茶はとても美味しいのだが、周囲には誰もいない。
「ここは私たちが来るときは貸し切りですから」
どうやら店一つ貸し切ったらしい。今思うと服屋も私達以外、店員を除いて誰もいなかった。そのことを聞いたら、テレンは笑顔で当たり前じゃないと言った。
やっぱり公爵家、怖い。下手すれば店丸ごと買い取ってても不思議じゃないと思うくらいに自由すぎる。私の家ではありえない。
「レイア、次は首輪を買いにいこうかしら」
「そうですね。聖印を隠す必要がありますから。あ、それならばリードも必要と思います。意匠にこだわったものを扱っているのは、たしか」
「いやいや、それよりも先に杖を買いにいきましょう!そっちが、主題だったはずです!」
そう。買い物に来ることになった発端は私がリーナに杖をあげてしまったのが始まりだった。渡した武器、それは私がもっているたった一つであったから。
魔法は杖なくしては効力が落ちる。媒体を通すことによって、魔法の指向性もたすことができる。そして使い慣れた杖は、個人の魔法を数倍に、ものによっては数十倍に引き上げてくれる。
逆に言えば杖がない魔法使いは力の半分もでない。渡したものは何年も改良を重ねた杖は大事なものだった。
私は別に学園にある支給品でいい。そう二人にいったら怒られた。杖を選ばないのはあり得ない。
まぁ、リーナ達にあれだけ全力でやるように言っておきながら、自分が装備に手を抜いていいわけがない。
それで善は急げということで、授業を一日サボって三人で買い物に出た。
もともと今年、卒業ということもあって三人とも単位は足りている。やることは生徒会の仕事がメインで、三人いれば一日の遅れは取り戻せるらしい。
「はぁ、でも違和感しかないですね。平日の日にお茶会というのも」
小心者だから周囲が勉強している中、こうしてお茶会をしていると悪い気しかない。社交という授業があるが、あれはマナーを教えられるもので決して楽しくないし。
「せっかく一日休みにしたもの。楽しみましょう?」
「そうですね。楽しむくらいの気持ちでいます」
「では。次の」
「待って、買い物の話は一旦中止でお願いします」
レイアが地獄を促そうとして私は、すぐに止める。何時間も着せ替え人形になるのも、首輪をはめられるもの勘弁願いたい。レイアが同じ衣装の首輪を渡してお揃いですねと言われたときは笑うしかなかった。
えーとレイアが頬を膨らませる。無邪気なその姿に、私は小さくため息をはく。レイアと接してみて意外と彼女はお茶目な人だった。遠巻きに見ていた時は、怜悧な大人の女性にしか見えなかったのに、わからないものである。
私とレイアのやり取りに、テレンはくすくすと微笑む。着飾り症候群なのはどちらかというとレイアの方なのかもしれない。
「むぅ、もっといろいろしたい事があったのに」
「何をというのは聞かないでおくからね?でも、他に従者の方々がいないのですか?護衛が二人というのは、少なく感じます」
「あ、それが休日に人はつけないのよ」
私の疑問にテレンが紅茶に口をつけながら応える。
「え?」
「私、個人の従者はレイアを除いていないのよね。家の従者はそれなりにいるのだけど、契約主は、お母様のものだからあまり使いたくないの」
え?嘘?じゃぁ、まさかテレンの戦力って私とレイアだけ?それって一年生でそれなりの数を揃えたヘレンよりも酷かったりしない?
って、あ。そっか、思い出した。テレンはゲームでの最優秀の最強キャラだった。軒並み事務処理から、戦闘かけてほとんどのことが一人で事足りるし、さらに近接最強のレイアがいる。
ぶっちゃけこの二人で、ゲーム最強の魔物を討伐できてしまうほど、無敵コンビである。でも、最強であった二人だからこそ油断する。
「だからリーナの件を見逃すんですよ」
「そうね、それは本当に不覚をとったわ」
すねたように言う私の言葉にテレンはコクリとうなずいて私の頭を撫でた。リーナの件は情報収集を怠った故に起こったことだ。二人を敵に回してまで、事を起こさないという油断がリーナを守れなかった。
「今は、お母様の者達を使って学園内の情報は事細かに報告させているわ。だから、学園は大丈夫よ」
「あ、あの?」
「ご褒美。貴女のおかげで私の面子は保たれたもの」
「恥ずかしいのですが」
「あら、レイアはとっても喜んでくれるのよ」
ほらと空いている手でレイアの頭を撫でると嬉しそうに微笑んで私の頬にキスをした。スキンシップも無駄に激しい。一応ここ、公共の場であるのだけど、私がおかしいのか?いや、店員を除いて誰もいないのだった。
「あら、照れないのね?」
「もうなれました。それに夜はその」
「もっとすごく触れ合ってるものね」
テレンが私の髪を撫でる。彼女の手つきは優しい。こちらのことを思ってくれている。
「それとも、フィリアは嫌なの?」
「別に嫌じゃないけど」
「ならいいじゃないですか」
レイアは嬉しそうに私と手を繋ぐ。何故だろう、これでいいのだという気持ちが、いっこうに無くならない。大事なものをなくしているそんな不安が消えてくれない。むしろ怖い。理由はよくわからないけど、怖いと言う感情が消えてくれない。
「二人が仲良くてとても嬉しい限りだわ」
「当然です。たった一人の仲間ですから。ね、フィリア?」
「え、はい。そうですね」
「フィリア、敬語は駄目っていった」
「あ、うん。そうだね」
手を握られて向かい合わせにじっと見つめられると、レイアは美人なせいか嫌に圧力があった。
「えへへ」
大人から一転して子供のように笑う。これが学園最強の騎士なのだから、ほんとうにわからないものである。ゲームでは常にクールな態度を崩さなかったのに。
「さて、今後の事についても話しましょうか」
「そうですね。リーナ達含めてどうするかですね」
今の学園は危うい。公爵家の人間が三人も在学しリーナという学園、国そのもの吹き飛ばしかねない爆弾が転がっている。
「またリーナ様たちの様子を見に行きますか?」
「それはやめた方がいいよ、レイア。彼女達を贔屓しても良くはならない。なにより警戒されると思う」
「ええ、ひとまずそっちはもう大丈夫なはずよ。むしろ、気にする方はクイーンズベリー家ね。随分と聖印、従者を増やす事に躍起になっているようね」
呆れたテレンの声に私は胸が痛い。かっての主。幼少の頃は姉様と自分を慕ってくれた時もあった。リーナの時の意見が対立するまでは良好な関係だった。主人公の敵たなる彼女であるが、嫌いじゃなかった。
「でも上手くいってはいないわね」
「テレン、そんなの当たり前ですよ。暴君の従者になりたい人なんていないもの」
暴君。私が出会った間もないころは気弱く動物が好きな普通な子だった。心配になる。私に彼女を心配する権利がないとしても、私の妹のような存在だったから。
「ルイーズは孤立しているのですか?」
「そのようね。派閥として形にはなっているけど、いつ暴走してもおかしくないわ」
はぁとため息を吐くテレン。伝統ある貴族の学園で暴動など考えたくもないのだろう。しかもその学生の諍いが政治に影響するなんて最悪すぎる。
「フィリアから見て、ルイーズが問題を治める力はあるかしら?」
「今はまだ無理だと思います。リーナの件で失敗、ルイーズだけじゃなく周囲の方が焦っているはずです」
「つまり、はやくても次の武芸大会で動きが見えるかしら」
「一月後ね、今回の大会は荒れそうだなぁ」
武芸大会。この大会で成果を残せば七冠へと挑戦する権利を得られる。学園、特定の分野での最強の七人を決める大会の一つ。七冠、その一人になれば進路、将来は保証される。
「レイアも出場するんだね」
「うん、負ける気はしない」
自信いっぱい胸を張るレイアに、そうでしょうねと頷いた。彼女こそがこの武芸大会で結果を残し、七冠へと至った近接戦闘のスペシャリスト。
前大会も優勝し、今この学園で彼女に純粋な剣術で敵う人間はいない。
しかもレイアは、すでに学生の身ながら特派任務を受けており、国の正式の騎士すら手を出せない竜を狩っていた。国から竜殺しの称号を与えられて、国中に彼女の名は知られている。学生という枠から隔絶された絶対強者の一人になっている。私ではどんな条件でも近接戦闘では彼女に勝てやしないだろう。
「フィリアは出場しないの?」
「近接戦闘はパスかな。得意分野じゃないし」
大方、優勝者が決まっている大会にわざわざ出る気もない。最終的に、目の前のレイアが優勝を拐っていくのは目に見えている。
「あら?リーナといい戦いをしていたじゃない。それなりのところまでいくと私は観たけど」
「リーナと互角だったの?フィリア、手合わせしよう!」
レイアはるんるんと私の手を持って決闘を申し込んでくる。いやだ。絶対にいやだ。死ぬほど苦しい近接の戦いなんて私はもう求めていない。
ていうか、レイアはいつリーナと試合をしたの?そんなの聞いてない。
「絶対いや」
「お願い。最近、誰も相手にしてくれないの。リーナは向こうから相手を頼まれたけどね、最近はだれも私に戦いに来てくれないの」
当たり前だ。誰が竜殺しをした相手とやるんだ。竜は小国や街を一匹で滅ぼす存在なのだ。それを単独撃破する彼女。軽い運動で息の根を止められかねない。魔法ありでも絶対にいやだ。というか、リーナは何をやっているんだ。死にたいのか?
竜殺しと試合は、確かに負けても生き残れば経験値は良いだろうけど、少しでも受け間違いをすれば重傷になる一撃を放つ強者だぞ。二度と戦えない身体になるか、死ぬ方が高い。ゲームで彼女との鍛錬に、何人のプレイヤーがキャラクターをダメにさせられたか。
それでついたあだ名が、破壊者である。RTAでもしない限りに彼女との訓練は必要にないし、RTAでもその経験値効率から見事タイムを破壊した女である。
「私はレイアと試合をしない」
断言した私に、レイアはぷくりと頬を膨らませる。元々クールな顔立ちの貴女がそれをしても似合っていない。
「テレンにやってもらったいいでしょ」
いっそのこと主人を盾にしよう。ゲームで二人が一緒に訓練しているのは知っているし、テレンならレイアに相性がいい。魔法有りならテレンなら負けることは多分ない。
「テレンは怖いの」
「あらレイア。怖いとはどういうことかしら?」
にこりとテレンが微笑む。私とレイアは視線を合わせて頷きあう。やっぱり怖い。万能の絶対強者。近接物理と遠距魔法をどちらも完成したレベルで戦える天才であり、彼女も七冠の一人というか歴代含め最高峰の強さをもつ。
近接戦闘だけならレイアに分がある。魔法ありならレイアすら勝率がゲームでも三割はない。物理回避五十パーセントと魔法ダメージ半減さらに必中のスキルを併せ持つ英霊の加護をもっているのに。
他にもレイアは追撃、乱撃、二回行動など有能スキルをランダムでストーリー進行に合わせて覚えてくる。
そんな彼女を倒そうと思ったら、ゲームの有能キャラを複数最大まで成長させ、それらを引き換えにするしかないくらいにはぶっ壊れたキャラをテレンは圧倒する。
「いっておくけど、私がレイアに勝てるのは相性の問題だからよ。幻影、幻覚の魔法をつかえば純正の騎士に負ける要素がないもの」
相手の物理攻撃が強いのなら、その攻撃が当たらなければいい状況をつくればいいとテレンは言う。けど、彼女の魔法耐性もしっかり持っている。私の魔法程度では彼女に致命打を与えられないかもしれない。
「フィリアなら私の幻術を見破ることは可能でしょう?」
「それはうん」
魔法使いが相手の魔法に摑まされることはあってはならない。相手の魔法を止めるのは、魔法使いの役目。だからまず、魔法を使うものは相手の魔法を見切る訓練を何よりもつむ。
幻影と幻覚を主に扱うテレンと、複数の属性を扱う私は相性だけはいい。勝てるかはともかく。
「私は幻影と幻覚の魔法が得意なだけよ?貴女みたいに全ての属性を使えたりしないわ」
「近接戦闘も出来ますよね」
「もちろん。じゃないと幻影と幻覚の魔法特化にした意味がないでしょう?」
テレンシアはそう笑うのだが、レイアに渡り合えるだけの体術と剣術があるだけでおかしいことなのだ。
魔法だけの戦いなら、私が有利だが総合力では絶対に勝てない。私ではテレンに勝ち目はない。
「はぁ、自分の非才が嫌になるなぁ」
「あら、むしろ私たちの世代で最初に七冠へとたどり着いた貴女がそれを言うの?」
テレンが呆れたように私を見ていて、レイアも刻々と頷いている。
「新入生、私たちのなかで誰よりも早く学園の頂点の一角になったんだよ。非才なんて言わないで」
「フィリア、貴女は強いわ。貴女が認められてくても、ずっと観てきた私達がその強さを誰よりも知ってているもの」
「私は………そうだね。うん、ありがと」
私は転生者だった。この世界の未来を知っている卑怯者だった。弱いままならあっさりと死んでしまう世界。魔物と戦う必要のあるこの世界で生きていくには力が必要だったから求めただけ。
ただの貴族では、この世界で生まれる魔物に殺される。成人し幸せに生きていくには、強くなるしかない。
未来を知っている。それだけ私がもつ、この世界のアドバンテージだった。この世界に私が取れる選択肢は多くないしやれることはあまりない。この世界を幸せに持っていく主人公がいてくれると信じて、強さだけを求めた。
強くなった。そう思ったら、今度は開き直って改めてこのゲームの世界を未来を変えたいと思った。せっかく強くなるのだ。せめて、ゲームで幸せになれなかった人を幸せにしたいと願った。
一つの未来を変えるために子供の頃からずっと苛烈な特訓を求めて、実力をつけることに腐心して生きてきた。特訓を好奇な目で観られようとも、血反吐を吐きながら続けてきたことが役に立つと思ったら嬉しかった。
この世界に生まれてから未来を変えるために戦い以外のすべてを捨てるつもりで学園にきた。そこからも強さを求めて時間を戦いにかけ続けて、やっと上り詰めた学園の頂点の一角。
「私は弱いままです」
「あら、なら今から強くなっていけばいいじゃない」
「お手伝いしますよ」
「あ、ありがとう」
二人の協力者。もう一人、未来のことで不安になる必要はない。未来は確実に原作から離れてしまった。怖いという感情と後悔が一人になると消えてくれないけれど、この二人といるとどこか何とでもなる気がする。
「貴女は私のもの。貴女の不安も貴女の痛みも全部、これからは私達で分け合っていくのよ」
テレンが私の手を握り締めて胸に持っていく。テレンの心臓の音が聞こえる。とくんとくんとうつ鼓動が心地よい。
「もう貴女は一人じゃないわ」
テレンの言葉に泣きそうになって、私は静かに頷いた。
「一緒に武芸大会がんばろうね」
「いや、私は武芸大会には出ませんからね」
けどレイアの言葉でその涙もすぐに引っ込んだ。えー、とレイアが言っているがそれとこれとは別の話だ。
私はその大会に出たくない。出たら確実に主人公達と関わることになる気がする。まだまだ芽吹いたばかりの彼女達では、どうあっても私が負けることはない。彼女達の経験値を私が摘み取るわけにはいかない。
「いえ、フィリア。貴女は出なさい」
「………どうしてですか」
「勘よ」
満面の笑顔でテレンシアはいう。いやとはいわせない圧があった。
「といいたいところだけど、理由はいくつかあるわ。まず、一つフィリア、貴女実戦をしたのはいつかしら?」
「え?えっと、半年以上前?」
「そうね、それだけの空白があるのはリーナとの戦いでわかったわ。貴女、リーナを育てることだけしてこなかったわね?リーナが貴女の手の内を知っているとはいえ、あそこまで追い詰められることはなかったはずよ」
「うぐ」
「これは貴女の落ち度よ。近接戦闘なら、この学園に貴女と同等クラスはそれなりにいるわ。鍛え直しなさい」
「うぐっ」
テレンの言葉が突き刺さる。彼女の言はもっともであり、リーナを迎え入れてから彼女を、守る事に注視していた。そのせいで実戦離れしているのは事実だった。
「二つ目。今の貴女は魔法を十全に使えるのかしら?」
「うぐっ」
「杖も新しくして実戦から離れている。そんな貴女を実戦に出せると思う?」
「無謀だと思います」
「そうよ。少なくとも貴女が使っていたクラスの杖が完成するまでは時間がかかるわ。さぁ、その時間、貴女は魔法の鍛錬を実戦レベルで鍛えることができるかしら?」
「はい、武芸大会に出させてください」
笑顔で言い募るテレンに、もう逆らうという選択肢はなかった。まさか、身から出た鯖で一番苦手な物理訓練をする事になるとは。
「はい、よろしい。さて、今はフィリアの特訓をすると決まったところで、大会の前にある新入生歓迎会のパーティのドレスも買わないとね」
「え?騎士の正装じゃ駄目なのですか?」
「駄目だよ。従者の私たちがテレンを飾る花にならないといけないの。貴女は従者なのよ」
レイアの言葉に私は絶望した。そういえばこの二人は基本、ゲームでもパーティでの立ち絵は全部ドレスだった。学園にきてからドレスを着ることだけは、可能な限り避けてきたというのに。
「さぁ、いこう」
「え、あれ?」
レイアに手を引かれて立ち上がる。振り返るとテレンがニコニコと笑っている。
「これで一緒に鍛錬もできるね」
「待って、レイア。お願いだから待って。貴女と鍛錬だけはまって」
なんでこんなにも積極的なんだ。ゲームだったらテレンに引っ付いて、その指示に忠実に待っているイメージしかなかったレイアなのに。それに言葉使いも完全に友達のようなきやすい感じになっているし。
「ちょっ、テレン。レイアを止めて、わっ、待ってよお願いだから」
私はレイアに引っ張られて、そして急ターンしてくるりと回転する。くるくると視界が回る。せっかく飲んだ紅茶が胃の中を暴れまわっている。
「テレン、早く早く」
待ちきれないレイアにテレンはやれやれといった表情で席をたつ。お願いだから早くレイアを止めて願う。声は気持ち悪くなっていてとても出るような状況じゃない。
「さぁ、二人ともいくわよ」
「うん!」
「うぅ、はい」
テレンが真ん中にたち右に私、左にレイアが並ぶ。たった三人の進軍。ゲームはまだ序盤。それでもこの二人とならうまくやっていけるそんな感じがした。でも、レイアとの鍛錬だけは勘弁願いたい。えっ、ダメ。あ、そうですか。
この後、私はレイアによって足腰が立たなくなるまで、たくさんたくさん扱かれた。




