その日僕は―――
「あはは!完璧だわ!さっすがアタシねっ!シュピーンッ」
(……何この状況)
僕は今自分の声を客観的に聞きながら、その体が様々な"恥ずかしいポーズ"を取るのを鏡を通して見ている。
「おおっ、こういうポーズもありね!きゃぴーん!」
(わわっ!?そ、そんなバカみたいなポーズとらないでぇぇええええ!)
……状況を整理しよう。
僕は夢咲凜夢。ちょっと可愛いだけの普通の高校生だ。
もちろんアニメや漫画のような特殊な能力だって持ってないし、変な召喚術をしたわけでもない。
しいて言うなら……ちょっと魔が差して鏡の前でアイドルっぽいポージングをしただけ。
そしたらどうなったか?
体が動かなくなった。そして勝手に動き始めて、挙句の果てには勝手にしゃべり始めちゃった。
もう、金縛りとかそういうレベルのホラー体験じゃないよね……。
(これって……まさかとは思うけど)
実に馬鹿らしい推測だけど、この状況からしてほぼ間違いないと思う。
ああ、なんということでしょう。
どうやら僕の体は―――
「うんうん。こっちのアタシもなかなか可愛いじゃない~!まぁアタシなんだから当然よね!あっは!」
―――誰かに乗っ取られてしまったようです。