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四天王体力最弱は持久戦に弱い

 全国の創作SNSもとい女子高生御用達、ハンバーガーチェーン店でお昼を頬張りながら、手元のスマートフォンを操作して予定を確認いたします。


 ふむん、この時間帯なら眼鏡の彼もまたお昼を召し上がっている頃合いですね。

 平日は学食や購買部にお世話になっていることが多い彼、土曜日のランチの主戦場はファーストフード店。

 そこでのドッキリを演出してもいいのですが、飯時厠時布団の中、副交感神経が活発になっている間に仕留めに行くのは暗殺者の業。


 いえ、(SHINOBI)ですから白昼堂々ドラマチックに暗殺しに行ってもいいんですけどね。そこはほら乙女心、応にせよ否にせよある程度しゃんとした状態でお答えがいただきたいというところと、堅気相手ですゆえあんまりフィクションに偏るのはどうかと思うこと、後は……勘、でしょうかね。


 あの眼鏡の君、なーんか隙だらけでありつつも隙がないというか、不思議な気配の持ち主なんですよね。記憶に絶妙に残らない顔といい、どうにも印象がちぐはぐでして。ですから私は逆に自然を装いつつも真正面から挑みに行く作戦を採用したのです。


 彼の学校の授業は平日のみ、部活も基本的に生徒の本業を妨げない程度でやる気のある生徒がいる場合のみオプションがつくという、根性論大好き民族の作った組織にしてはやたら融通の利くスケジューリングになっています。


 (SHINOBI)は特殊な訓練を積んでいますから休みがなくても活動できますが、普通の人間は休まないと壊れる生き物ですからね。

 それに土曜午前中のみ部活動というスケジュールのおかげで私もお付き合いの第一歩が踏み出せそうですから、実に良いと思います。


 私ですか? 弓道部です。

 一応運動部だけど何とも言えない微妙な位置とか言うなかれ、人に恵まれているのでなかなか快適ですよ。今日の練習も、


「自分ちょっと気になる男子とデートしてきたいので休んでいいですか」


 って言ったら、


「うむ、行ってきなさい」

「当たり前だろうそっちの方が大事だ」

「弓なんかいつでも撃てるが、人の心はタイミングで勝敗が決する。気張れ」

「大丈夫失恋したら道場に人型の的を用意してやる」


 と先生にも同輩達にもつつがなく許可と激励の言葉をいただきました。

 いやまあ、全国の弓道部がこんな感じと言ってしまったら著しく風評被害の顰蹙ひんしゅくを買いそうですが、我が校の部はこのゆるふわっとした空気がいいのですよ、


 平和ボケって素晴らしい言葉ですよね。我々(SHINOBI)がプライベートに色ボケしていられる時代がいつまでも続けばいいのにと切に切に思います。


 とまれ、ではそろそろ、と席を立ち上がろうと片付けたはずの机にとんと突如置かれる将棋盤。


「忍闘開! あね様、ここを通すわけには行きませんわ!」


 早口に唱えられるは新たな挑戦の言葉。

 出たな愛染家マスコット(四天王体力最弱)。別名愛染萌花(モカ)こと我が妹。


 現在女子中学生、なのですがやたらと小柄で可愛いとしか言ってもらえないことがちょっと気になるお年頃。ツインテールにセーラー服なんてけしからん。ランドセル装備したらどう見ても小学生ですからね。

 とは言え、兄上と違って己のロリ属性について、若干のコンプレックスを持ちつつも利用もするような強かなメンタル、そしてなかなかの策士っぷり。最近は少女漫画のライバル令嬢に嵌まったとかで口調が若干おかしいのですが、そんなところも魅力に変えてしまうあざといさすが妹あざとい。

 今回も男共とは一味違い、得意な頭脳戦の場を用意して勝負を挑んで参りました。


 そんなわけで、変則的に勝負を挑まれました私は盤面に向かいます。

 大丈夫、将棋だって強いですよ。そう、(SHINOBI)だからね。


 まあ、今挑まれたのは将棋崩しの方なんですけどね。

 妹様は手先も器用ですし、まあハンバーガーチェーン店で将棋差してたら色々と悪目立ちしますから、この辺が妥当な勝負なのでしょうかね。私は別に弱点特にないので何が来ても怖くないのですが。


 彼女の手はいつも、果敢に攻めて早く終わらせたがる。故に私は、あの手この手でのらりくらりと、何度か追い詰められながら、ひらりとかわして絶妙なバランスの綱渡りを続け、時間を延ばしていきます。


 そして訪れた一瞬の隙、長期戦によって彼女の集中が切れた瞬間、一気に刃を返す!


 がらがらと崩れたのは、萌花の手番でございました。


「忍闘・閉」

「ま、まだです! 三本勝負なのです!」


 萌花は慌てて駒を並べ直し、顔を真っ赤にして言いつのります。


 まあ、最近遊べていませんでしたからね。姉様姉様と昔から後をくっついてきていた癖が抜けていないのは、困ったなあと思いつつ可愛いところ。私が今日の時間を空けているのは刺客対策な訳ですし、持久戦は私はむしろ得意な方ですよ。


 大丈夫、お姉ちゃんあなたの体力を、優しく、確実に、削っていってあげるからね。



あね様に彼氏ができるなんてヤダアアアアアアア!」


 と嘆きつつすっかり疲弊した妹に忍術を仕掛けて眠らせ、私たちの長い戦いは幕を閉じました。三本所か十回ぐらい仕切り直した気がする。持久力と忍耐力のない彼女にしては大分粘った方かもしれません。そんなにお姉ちゃんと遊びたかったんだね、素直に遊びましょうって言えないのはお年頃で拗らせているのか我が家の環境が特殊なせいなのか、うーんどっちもあり得そう。


 時間を確認してみますと、いよいよおやつの頃合い、作戦はいよいよクライマックスにさしかかってきました。

 大丈夫、四天王達の犠牲を無駄にはしないわ。私、初告白頑張る。


 ……まだ、最後にして最大の懸念事項さんが、残っていらっしゃるんですけどね。ハハッ。

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