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魔法少女よ永遠に

 

 場所はあの喫茶店。5年ぶりで、内装や店員が変わってたりするが、マスターお手製のコーヒーは変わらない美味しさだった。



「スペシャルパフェ、頼まなくてよかったかい?」

「もう、そんな子供扱いしないで下さい。今は量より質を楽しむのがいいんです」



 そう言いながらコーヒーにたっぷりのミルクを入れる姿は、背伸びをしてたあの頃と重なる。

 キラリちゃんはあの後も魔法少女として活躍してきたらしい。

 最近は、なるべく変身せずに後輩たちに経験を積ませてピンチの時に助太刀するスタンスで活動しているという。まるで、あの頃の誰かのように。



「キラリちゃんは大人だなぁ。……それに比べて俺なんか」

「大人になったんじゃありません。ただ、できる事を精一杯してたらこうなったんです」



 昔の面影を残しながら、少女から女性がへと成長。背は伸び、体つきはメリハリが出ている。

 魔法少女マジカル・ダイヤよりも大人っぽい。



「いつか、もう一度ダイヤに会ったときに誇れる自分でいようとしただけです」

「それはもう……無理じゃないかな」



 魔力を限界まで酷使した魔法少女は変身能力を失う。それは絶対の掟だ。

 だから、俺がダイヤになることは出来ない。相棒として彼女と話すことは出来ない。



「実は、それがそうでもないんですよ」

「えっ?どうして。ダイヤはもういないよ」

「この5年間。私はやれる事をやってきました。そう、今日この日のために」



 パンパンとキラリちゃんが手を叩くと、店員さんたちが店の奥の方へと撤収していった。

 残されたお客さんたちは席から立ち上がり、俺とキラリちゃんのいる周りに輪になるように集まった。



「なに、何これ?誰かのサプライズパーティー⁉︎俺の誕生日はまだ先だけど⁉︎」

「バカ兄貴。五月蝿いよ」



 輪の中には俺をこの街に呼び出したメグも混じっていた。知らない人たちにいきなり囲まれてあたふたしてる俺を見てキラリちゃんが笑った。



「アスカさん。この方達が誰だか気づきませんか?」

「俺、こんな年齢バラバラの女の子たち知らないけど⁉︎」



 上は俺と同い年くらいから下は小学生までいる。皆目検討つきません。その中にはメグもいるからさっぱりだ。




『鈍感ここに極まれりだな。久しぶりアスカ』



 トドメに見知った顔のクマのぬいぐるみが出てきた。しかも隠れるそぶりもなく堂々とだ。



「みんな、私が呼んだんです。私ひとりだけじゃチカラが足りないから。連絡はマロンにお願いしたんですけど」

『生きる伝説、マジカル・ミンキーからの一生のお願いと言われちゃ断れねーよ。それに、俺個人としても参加したかったからな』

「本来なら、一般人のアスカさんは呼ぶべきじゃないって助言もあったけど、私自身がダイヤと一番所縁のある人を呼ばないわけにはいかないって思ったから」



 ここまで来れば流石の馬鹿な俺でも分かった。

 俺は彼女たちに会ったことがある。

 その活躍を見てきた。

 時には背中を預け、助け合いもした。

 だれが予想したか。


 全ての魔法少女が集まるなんて。



「これが、私が……魔法少女が起こす奇跡です」

『特別条例解禁。さぁ、たった一度きりの大魔法と行こうか!』



 変身したキラリちゃん……マジカル・ミンキーの杖にマロンが触れる。

 そして、輪になった魔法少女たちが手を繋ぎ祈りを捧げる。現役も引退した子も。



「ほらよ。手を繋ぎなよ兄貴」

「アスカさん、手を出して下さい」



 光り輝く魔法陣に俺も加わる。そして、輪の中心に一振りの失われた杖が出現する。

 ゆっくりと、見慣れた、使い古された杖がこちらにやってきた。



「変身」



 あり得ないが現実になる。一回限りだろうが、なんだろうが、魔法によって絶対が覆る。



「魔法少女マジカル・ダイヤ参上! ってね」



 彼女たちの願い。もう一度ダイヤに会いたいという祈り。

 それは同時に秘匿されてきた真実を晒すことを意味する。

 中年の男がうら若き魔法少女へと変わる。仲間と思っていた彼女たちへの裏切りがバレた。



「いや〜。この秘密は墓場まで持っていくつもりだったんだが、魔法をかけられたんじゃ仕方ないよな?久しぶりの人も初めましての人もゴメンなさい。これがダイヤの正体さ」



 なんと言われてもいい。罵られたたって、殴られたって構わない。

 どうあろうと俺は、魔法少女マジカル・ダイヤなのだから。



「ダイヤ!!」



 ただ、反応は予想とは違った。みんな微笑むだけで、ミンキーだけが抱きついてきた。



「おいおい。俺はいい歳したおっさんなんだから、嫁入り前の子が抱きつくなんて真似はよしなよ」

「いや!もう絶対に話さない。ダイヤがいなくなって私がどれだけ悲しかったのか。みんながどれだけ心配したかもわからないくせに!」



 うんうん。と頷く新旧魔法少女たち。



「私は同じくらいの時期に活躍してたダイヤに負けないようにと戦い抜いた」


「ウチは新人の頃、危ないところをダイヤさんに助けてもらったんよ。あの時はありがとうございました」


「私たち三人はダイヤ先輩からチームワークの大切さを教わりました」


「私はダイヤ様の凛々しい姿に憧れて、魔法少女をやり遂げました!」


「アタシは……兄貴と一緒に戦えて嬉しかった。姉妹で魔法少女とか夢だったから」


「「「「「「「私たちはダイヤ先輩とミンキー先輩みたいになりたいです」」」」」」」


『性別はどうあれ、ダイヤは立派な魔法少女として世界のために戦ってくれた。俺にとっては親友だよ。感謝してるぜ』



 こんな光景見せられたらさ。5年も……初めての頃からだと15年も隠れてた自分が馬鹿みたいに思えてくる。

 大切なのは姿・性別じゃない。


 魔法少女らしくあることなんだ。



「ねぇ、ミンキー。ダイヤとしての俺……私から一言言わせて」

「なに?」

「マジカル・ダイヤの相棒が、コンビの相手が貴女で良かった」

「私こそ、ダイヤと仲間になれて幸せだった。憧れの人と肩を並べれて良かった」

「……それは違うわね。今のミンキーは私以上にカッコいい最高の魔法少女よ」



「「ありがとう。貴女に出会えて良かった」」




 そして今度こそ、ダイヤという名の魔法少女は世界から姿を消した。

 最高に綺麗な笑顔で。










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