伝説の魔法少女
「あの野郎……人を呼び付けておいてどういうつもりだよ」
近くにいるだけでSAN値が削られる広場。待ち合わせの時間を過ぎても愚妹は現れない。
社会人が時間にルーズとは何事だ。学生じゃないんだからしっかりしろよ。
悪態をついていると腹が鳴る。そういえば、突然呼び出されたせいで朝食を食べていない。……とりあえず適当に何か食べ行くか。
メグに待ち合わせ場所変更のメールを送信して移動をしていると、人混みができている場所があった。
「あんなところに行列のできる店とかあったか?」
ちょっとすいませんね、と人混みを掻き分けると箒に乗った少女たちが7人いた。
「観念しなさいイヤガラッセ!私たちが来たからにはあなたの好き勝手になんてさせない‼︎」
「ナンダ、オマエラハ!」
「「「「「「「魔法少女戦隊マジカル・レインボー参上!」」」」」」」
「ナンダッテ?」
うわ〜、これまたイロモノ枠の魔法少女が誕生したな。
少女たちは各々が得意な魔法を使って敵を攻撃するが、経験不足なせいで大したダメージを与えられていない。何人かは腰抜けてるし、泣いてる子までいる始末。それでも手数が多いのでなんとか押してるが、このままじゃジリ貧だな。
ついついあの頃の調子で問題点を教えたり、喝を入れたくなるが、今の俺にはその資格がない。
誰か頼れる先輩がくるまで持ってくれと祈るしかないか……と情けないことを考えた時。
「諦めないで!マジカル・レインボー。あなた達魔法少女はみんなの希望だから!だから頑張って‼︎」
野次馬の中から大学生くらいの女性が飛び出して叫んだ。そして、その言葉がチカラになったのか、マジカル・レインボーたちは全員が一丸となって戦い始めた。
何かが俺の中で燃え上がる。魔力じゃない、熱い心が感情が言葉になる。
「頑張れぇええええええっ!負けるなマジカル・レインボー!全員で必殺技ダァああああああっ‼︎」
30過ぎたおっさんの激励。戦うチカラがなくなってもこれくらいならまだできる。
マジカル・レインボーたちは全員で頷き合い、魔力を合体させて必殺技を放った。未熟ながらも全力のその攻撃はイヤガラッセと呼ばれた敵を呑み込んだ。
よし、やったか⁉︎
思わずガッツポーズをしてしまう。そして俺は自分の行動にすぐ後悔した。
これ、なんていうフラグ!
「オレヲタオスニハ、チカラガタリナカッタミタイダナ」
爆炎の中から傷だらけのイヤガラッセが出て来た。彼女達の攻撃は僅かに逸れてしまい、敵を倒すには至らなかったようだ。
ゆっくりと近づいてくるイヤガラッセ。マジカル・レインボーたちはさっきの攻撃で魔力を使い過ぎたのか、座り込んだままだ。
不味い、このままじゃ!
「邪悪な闇の侵略者。ちょっとお待ちなさい!」
さっき俺より先に飛び出していた女性が杖を振るう。
そして、彼女が小さく何かを呟きながら前に進むと眩い光が膨れ上がり、彼女を包む。
「さて、懺悔の準備はよろしくって?」
その魔法少女が現れてから敵が倒されるまではあっという間だった。
洗礼された美しい動き。あの伝説の魔法少女を彷彿とさせながら、さらに昇華された戦闘。トドメは彼女らしさを全面に出した最大火力の法撃。
今度こそイヤガラッセは消滅した。
後輩たちを魔法で癒して立ち去る直前、こちらを振り向いてウインクした魔法少女。
今を生きる伝説。魔法少女マジカル・ミンキーの姿を俺は見た。




