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邪竜と軟弱者  作者: なが
第1部
8/35

4-2


その夜。


「教えてください、どうして2年前、あんな酷いことをしたんですか!」


長官に、グラファイトが話したことを突きつけて、詰め寄った。

長官はやけに落ち着いた様子で、僕の方を眺めていた。

ただ、頬から放たれる臭いに顔を歪めているらしかった。

この臭いは僕もまだ慣れていないが、それよりも真実を知りたかった。


「SD-9は嘘をついている。我々はそのようなことはしない。」


「嘘だ、そんな筈は、」


一瞬間、心が揺れた。

でも、僕はグラファイトのことを信じたい。

だって、あんなに辛そうに、そして静かに怒っていたグラファイトが、嘘をつくはずがない。


「ただ単に、邪竜に唆されているだけだ。少し頭を冷やせ、肩入れしすぎだ。」


「そんな事はありません!」


「いいや、肩入れしているのには変わりはない。……そうだ、牢屋の鍵を渡しなさい。新しいパートナー――」


長官は無情にも、手を伸ばしてきた。言葉をさえぎって叫ぶ。


「嫌です、絶対に渡しません。」


僕は首を振って断った。

この鍵だけは渡すものか、と心の中で叫んで、僕は無我夢中で長官室を駆け足で立ち去った。








部屋に入ろうとドアノブに手をかけたとき、「ラグル、」と声をかけられた。

顔を上げると、そこには教官が立っていた。

教官はすぐに顔を歪めた。


「うわ、なんだその臭いは……?」


「グ……SD-9に舐められました。」


「酷い臭いだな……。」


「そうですね……」


僕は半歩退いた。


「……やはり無理してないか?親孝行をしたいのは分かるけども……。」


「無理はしてません。これでも、少しずつ心を開いてくれています。」


そう言うと、教官は目を見開いた。


「そ、それは本当か?」


「はい、ラスヴァル国でパートナーだったアルドという人に、グラファイトという名前をつけてもらったそうです。」


「へえ、教えてくれたのか?」


教官は僕を覗き込むようにして尋ねた。


「はい。色々ありましたが……」


「そうかそうか。……では、少し様子見といったところか、とにかく無理はするなよ。」


「分かっています。」


するとその時、教官の無線機に連絡が入った。

――――至急、長官室まで。

至近距離だったのでよく聞こえた。


「長官がお呼びだ。では、」


「あっ……」


僕は教官を呼び止めようとしたが、あっという間に走り去っていってしまった。


暫く突っ立っていただけだったが、ふと我に返ると、頬の臭いが鼻をついた。

僕はとにかく早く風呂に入ることにした。















ふとカレンダーを見てみると、グラファイトのパートナーとして任命されてから、早くも一週間になるらしい。

全くもって実感というものがない。

ただ、毎日起きてすぐに思い浮かぶのは、いつもグラファイトのことだった。

そして思い出す度、また行かなきゃと急いてしまう。


昨晩の寝る前、デルトが「それはラグルをはめるための罠だ」と言っていた。

確かに、僕は邪竜の罠にはまっているのかもしれない。

ほんの少しそう思っているものの、結局僕はあの小屋の前にいた。

空はどんよりと重苦しいような暗い灰色に塗られている。

僕は重い扉を開けた。


いつものように空っぽの牢を横目に見ながら歩いていく。

そうしていつもの檻の前に辿り着いた。


「グラファイト、」


「……」


特に何も話さなかったが、僕の方をちらと鋭い黄色い眼で静かに睨みつけていた。

もう睨みつけられても、動じないようになっていた。

いや、それ以前に、ただ見ているだけのような気がする。

睨みつけられていても、ただ単に見られているだけでも、その威圧感にはあまり差がない。

そんな事を考えながら南京錠の鍵をがちゃりと開けた、その時。


「その鍵を返してもらおう。」


後ろを振り向くと、そこには長官の姿があった。


「ど、どうしてここに?」


「長官の命令だ。鍵を返しなさい。」


「どうしてそこまで僕にこだわるんですか。何か理由でもあるのですか?」


僕の声は震えていた。

僕はどうして声が震えてまで、グラファイトに味方するのだろう。

ちらとグラファイトの方を見ると、関心の全く無い様子で爪をいじっていた。


「とにかく、こっちへ寄越しなさい。」


「嫌だ、」


僕は慌てて扉を開けて、勢いに任せて檻の中へ押し入った。

そして扉を閉めようとして、向こう側から押された。

頑張って何とか押さえようとしたが、とうとう扉は簡単に開いて、長官は焦った様子で手を目の前に突き出した。

寄越せ、と言われているのなら、何も考えずに渡せばいい。

それだけなのに、体はそれに反発していた。


「僕は、グラファイトのパートナーだ!」


ああ、僕はもう軍を辞めさせられるのかな、気分が高ぶっている中でふと現れたその不安も、結局は高ぶりに抑えつけられた。

長官は面倒そうな顔をして僕に掴みかかろうとした、その時、



「騒がしい、静かにせぬか!」



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