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邪竜と軟弱者  作者: なが
第1部
6/35

3-2



「何か……、一気にやつれたなぁ。」


「仕方ないよ……。」


僕は部屋に帰ると、すぐにベッドに潜り込んだ。

最近グラファイトと一緒に居ない時は寝てばかりいるが、まだ寝足りない。

まだ18時なのに、瞼がくっつきそうだ。

かなり精神的にダメージを受けているのだろうと思う。

思うけど、やんわりとした実感ぐらいしか感じることができなかった。

デルトが心配そうに上から覗いてきた。


「一日ぐらい休めば?」


「いいよ、心配しなくても。あ、そうだ。」


「何?」


「デルトってさ、グ……SD-9のことで何か知ってること、ある?いつから檻に入れられてたとか、噂でも何でも良いから。」


「あー、確か、邪竜があの檻に入れられたのがあの時だ、2年前の時だ。その時に奴が捕虜として捕まったらしい。」


僕は身を乗り出して、デルトの方を見上げた。

2年前、つまりラスヴァル国との戦争があった時だ。

ラスヴァル国との戦争は大小数十回にもわたって行われた。

最後の戦争がちょうど2年前、僕が軍隊に入る前の話なのだ。

どちらが勝ったとか、そのような詳しいことは、僕は全く知らない。

軍に入る直前に、新聞で「戦争があった」という記事を見たことだけを覚えている。


「2年前の捕虜?ということは、元々ラスヴァル国のドラゴンだったの?」


「それは確かだ。長官が言っていたからな。そうか、お前は去年、此処に来たから知らないのか。」


僕はうーんと唸って、顎に手を当てた。

どうにも頭の中はグラファイトのことで埋まっていた。

グラファイト、という名前は、もしかして……


「教えてくれて、ありがとう。」


「気をつけろよ、今までのパートナーの何人かは、奴に殺されてるんだろ。」


「大丈夫、そんな気がするんだ。じゃあ、おやすみ。電気は点けといて良いよ。」


「お、おう、おやすみ。」


僕は頭から布団に被り、その数分後には意識を手放していた。









「グラファイト、」


「その名を呼ぶな。」


グラファイトは普段通り伏せていた。

ただ、今日は天気が曇りのせいで小さな窓から漏れる光が薄暗く、昨日までよりも不気味な雰囲気が漂う。


「……やっぱりダメ?」


「駄目だ。」


僕は深く深呼吸をして、言った。


「その名前が、前のパートナーが付けた名前だから?」


「な、何故それを……」


グラファイトは躯を震わせていた。勘は当たったようだ。

僕は落ち着いてグラファイトと向き合った。


「詳しくは知らないんだ。だから何があったのか、教えて欲しい。」


「……何も話すことはない。」


「…………、今日じゃなくていいから、いつか教えて欲しい。」


「何故そこまで我に構うのだ。我はお前を虐げているのだぞ。」


僕はまた返す言葉に詰まった。

どうしてもその問いに関しては、どこを探しても、気持ちにちょうど合う言葉は見つからない。


「……自分でも分からない、ただ、僕は誰かに強制されている訳じゃない。それは、知っていて欲しい。」


グラファイトは眼をかっと見開いた。

僕はその迫力に一歩後ずさったが、すぐに一歩踏み出した。その躯に触れたいという衝動に駆られた。

昨日と同じ、眼の下あたりに触れた。

グラファイトはびくっとして、……今日は昨日のように避けはしなかった。

ゆっくり撫でてあげると、その鰐のような大きな眼が、瞳孔がギョロリと動いて、僕の方を睨みつけた。

撫でた感触は、ごつごつざらざらとしていて、触り心地が良いとは思わなかった。ただ何より温もり、生物らしい温かみを感じ取ることが出来た。


「離れろ、虫酸が走る。」


頭が動いたかと思うと、体に響く低い声が鳴った。

同時に、獣に似た口臭が鼻についた。

血腥いような臭いに顔をしかめた。さすがに、その強烈な臭いには慣れない。

最後にもう一度撫でると、その場から離れた。


「話してくれないかな。やっぱりダメかな?……」


言い終わるや否やすぐ、グラファイトは尻尾を地面に勢いよく叩きつけた。

すっかり油断していて、僕の体はびくんと跳ねた。

するとグラファイトはその大きな躯体を持ち上げ、四本脚で立ち上がった。見上げると、グラファイトは不気味な笑みを浮かべて見下していた。

薄暗い部屋の中で、グラファイトの顔がおぞましく映った。


「軟弱者に話す義務はない。」


ドシンと巨竜は前足を踏み出した。

振動が伝わってきて、巨顔が迫ってきて、一気に最初の恐怖の感情に支配された。


「や、優しく……」


フン、と大儀そうに邪竜は鼻息を吐いた。

そして、今度は冷淡な無表情で見下して、恐ろしい言葉を放った。


「お前は我の気分を害した。お前は我が血肉となる運命にあるのだ。どう云う事か、分かっておるな? クククッ……」


グラファイトは、見せつけるように舌をなめずった。

その時、一度も考えたことが無かったのに突然、自分の体が溶かされていく映像が思い浮かんだ。

何かグラファイトが何か魔法でも使って、僕に夢を見せているのか……

想像なのに、助けを求めて手を伸ばした僕に恐ろしくなって、さぁっと力が抜けてしまった。


グラファイトはただ、嗤っていた。



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