表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/51

第三十四話・「カレーライスの予定です」

 玄関に向かう途中、喧騒が耳に響いてくる。

 相も変わらず、カレンとナナがゲームに興じているようだった。

 うるわは客間に顔を出すと、二人に声をかける。


「ナナ、カレン、私はハルと夕食の買い出しに行ってきます」

「あっそ、行ってらっしゃい」

「にゃ! ナナもハルとお出かけするっ!」


 ゲーム中にもかかわらず、コントローラーを放り出そうとする。


「ポンコツ! 負けそうだからって逃げるんじゃないわよ!」


 カレンがナナの襟首をぐいっと捕んで引き寄せる。首を絞める形となったのか、ナナが苦悶を漏らした。


「にゃうっ! ……むうぅ、カレン、負けず嫌い。前半だけでナナ、カレンに三点差つけてるよ」

「これからよ、これから! 勝負は下駄を履くまで分からないってね」

「……ナナ、カレンになら下駄を履いても勝てる気がする」

「言ったわね?」


 ナナに鋭い視線が突き刺さり、客間の空気が鋭く動き出した。

 見れば、カレンの袖が揺らめいている。


「二人とも、留守番をしていてください。もしもその間、家の中で何かが壊れていたり、一カ所でも傷がついていたりすれば……夕食は抜きです。よろしいですね?」

「にゃ……わかった」


 沈むナナの隣で、カレンの袖が動きを止める。


「分かったわよ……。まったく、うるわはここに来てからますます小姑になったわね」

「……余計なお世話です」


 眉をぴくりと動かすうるわ。


「それはそれとして、うるわ、今夜の献立は?」

「カレーライスの予定です」

「たまにはいいわね」

「ナナ、カレー大好き!」


 納得するようにうなずくカレンと、挙手しながらよだれをこぼすナナ。


「では、行ってきます。ナナ、カレンをよろしくお願いします」

「はーい! ナナ任されるよ! しっかりカレンの面倒を見るよー」

「さっさと行きなさいよ馬鹿メイド! ええっ!? 今のオフサイドでしょ!?」

「キーパーをかわして……ゴールっ! これで四点差だよっ!」


 ゲームに舞い戻る二人に声をかけ、うるわは玄関口で待つハルと肩を並べる。


「行きましょう、ハル」

「ああ、行こう」


 玄関の外は神々しい光に溢れている。騒ぎ出す体に従うように、ハルは外へと駆け出していく。疲れるそぶりも見せず無言でハルの後を追随するうるわ。

 ふと、うるわが遠く山際の空を見やる。


「……雨が降るかもしれません」


 天気予報を覆すどす黒い雨雲が、青空を浸食しようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ