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要らぬ心配

イアンは夢を見た


真っ暗闇の中、必死に手を引く夢を…

顔は見えなかったが…間違いなくあれはハロルドの手


しっかり握りしめ暗闇から引っ張り出そうとするのだがハロルドの手が小さすぎて…力が入らない

両手で握りしめ力を入れた瞬間…


スルリと手が離れた


暗闇の中に小さな手が消えて行く

落ちて行くのか上って行くのかわからない小さな手を必死に追いかけるイアンは



『ハロルド!!』



自分の叫びで目が覚めた


外はまだ薄暗く深い霧に包まれている


全速力で走ったように全身が脈を打つ。うっすら額にかいた汗を拭い寝返りを打ち再び目を閉じるが…


夢とは思えないほどリアルに残った手の感触が邪魔をして黒いドロっとした嫌な考えが頭を過ぎる



それからしばらくすると霧が薄れ森が明るくなり始めた頃…




「たっだいまぁーーー!!」


ハロルド元気にご帰還!!



勝手した事とは言え、少しでもこの脳天気変人オヤジの心配をした自分にイアンは腹が立った


そんなイアンの機嫌が悪い理由がわからないハロルドは


「お腹空いてるの?」


一段とイアンをプリプリさせる



「もう聞いてぇ、結婚式が近いからか見張りが厳しくて坊ちゃんに会えなかったのよぉ~」

どんなにイアンが不機嫌でもそんなのお構いなしのハロルドは喋りまくる


「窓からチラッと姿を見せて手を振るだけ…あぁ~さみしぃ~ったらありゃしない…ちょっと!聞いてるの?」


相づちを求めるも知らんぷりのイアンに…


「…まったく…わかんない子ね…そんなんじゃ女の子に嫌われちゃうわよ…あっ!女の子と言えば!ヴィクトリア!彼女また現れたわよ」


【ヴィクトリア】



「ヴィ…!」

名前を聞いただけで反応してしまうイアン。 彼の脳裏にはたいまつの炎に浮かび上がる彼女の横顔がよみがえった。


「ヴィ……継母は…またラルフの部屋を眺めていたのか?」

またしても名前を言えず…


「まぁ!『継母』だなんて!嫌みな言い方!『ヴィッキー』よ!彼女は『ヴィッキー』はい!言ってごらん!『ヴィッキー』」

ナゼか手拍子をしてイアンを促すハロルド


「言えるか!顔見知りでもないのに…図々しい」


「図々しいんじゃないわ!フレンドリー!フレンドリーなの…なに格好つけてるの?あたしの事はすぐ『おっさん』ってフレンドリーに呼んだくせに…」


『おっさん』がフレンドリーな呼び名なのかはさて置き、ヴィクトリアはイアンが見かけた時と同じように部屋着で身を隠すようにブランケットをかぶり、細いろうそくを手に現れた


「何かを探している感じだったわ…壁の隙間や茂みの中をろうそくの火を照らして…何か落とし物でもしたのかしら?まさか!あんな可愛い顔してもう他に男たぶらかして密会のラブレターなんか隠してたりして!?」

首を傾げながらハロルドは勝手に妄想を膨らませる


「ふん…ハンカチでも風に飛ばされたんだろ…」

そう言って起き上がったがったイアンは寒さにポケットに手を入れた。


指先に触れるツルンとした冷たい感触…


「!!」

慌ててポケットから手を出すイアン


彼女が…ヴィクトリアが探していたもの

それはイアンのポケットの中にある『リボン』


そんな不自然な動きのイアンを不思議そうに見つめるハロルド

「どうかしたの?」


「い…いや!何でもない!!…薪を拾ってくる!!」

そう言って出掛けようとするイアンに…


「薪ならまだまだたくさん残っているけど…?これ以上集めたら寝るとこなくなるわよ?」


「………………」


出掛ける理由が無くなった今…でも…ひとまず戸を開けてこの場を去ろうとするイアンに



「はぁはぁ~ん………ヴィッキーに一目惚れしたのね!!」

脳天気オヤジ

【ハロルド・スペンサー】

最近心の声が口から漏れやすいお年頃



「!!!…何言ってるんだ!!そんなわけないだろ!!」


イアンは赤くなっているであろう顔を見られるのが嫌で振り向きもせず足早に小屋を出て森の中に入っていった(逃げた)


ハロルドは1人ニヤニヤ笑いながら何か企む


「若いってうらやましいわっ!イアン夕飯までには自力で帰って来てね~!」

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