愚か者
別れの朝…
涙と感動の別れ…になるはずもなく
ウィリアムとハロルド
2人は二日酔いだった
それもハンパない二日酔い、すんごい二日酔い
「おえっ…気持ちわる…」
冷たいタオルを頭に乗せ何度も吐きそうになりながらもこらえるウィリアム、その隣で長椅子に膝をつき懺悔のポーズの涙目のハロルドは
「神様…お願いです!この苦しみから解き放って下さい…もう…お酒は飲みません!」
【二日酔いの懺悔】
『もう…お酒は飲みません!』
正しくは
『もう…お酒は(次飲むまでは)飲みません!』
酒飲みは懲りない…
「ウィリアムのじぃさん…お願いがあるんだけど…」
青ざめた顔を上げハロルドはウィリアムを見る
「…なんだ…」
部屋がぐるぐる回っているウィリアムは目を開けることさえ出来ずにいた
「…出て行くの…明日でいい?」
「……勝手にしろ…おえっ…」
その後2人は泥のように眠った
この時ばかりはさすがのハロルドもグッタリと眠った
「死んでるのか?」と思えるほどピクリとも動かず
そして…
その日の夜…
「ハロルド!酒を持って来い!」
肉を片手に空いたグラスを高く上げ新しいお酒を要求するウィリアム
「このワインすんごい良い匂い!いい葡萄を使っているわね!!」
口に残るパンを一気にワインで流し込むハロルド
2人は愚かです。懲りない奴らです。
そんな感じの夜を繰り返し大幅に旅立ちの時が遅れたハロルドでした
そして本当の本気の別れの朝
「もう!じぃさん!こんなにいっぱい持てないわよ!も~要らない!要らない!無理ムリムリ!」
懸命に両手を振ってウィリアムを拒むハロルド
「遠慮するなっ!どこの誰だかわからん奴に奪われるよりお前さんに持って行って欲しいのだよ!ほれっ!これも持って行け」
ウィリアムはテーブルに広げた大きな布に次々と貴重品をまとめる。
絶対ムリってくらいの大きな絵までハロルドに持たせようと頑張って包む始末
「もぉ~あたしよりデカい絵をど~やって持つって~の!?要らない!要らない!何にも要らな~い!」
小さめのかさばらない指輪とブローチをポケットに押し込みハロルドは急いで部屋から出て行く
「おい!おい!待ってくれ!ハロルド!」
その後ろ姿を追いかけるウィリアム
手に刺繍の入った美しい袋を握り締めて
「頼む!では!これだけでも持って行ってくれ!頼む!」
「もぉ~今度は一体なぁ~にぃ~」
渋々立ち止まるハロルドの手に無理やり袋を手渡す
縦長の刺繍の美しい袋
「…結構重いわよ?何が入っているの?」
刺繍の美しさが気に入ったハロルドは袋を開けた
中には30cmほど長さの剣、そしてその剣柄にリボンで結ばれた指輪
一瞬にして悟ったハロルドは袋を突き返す
「ヤダ!やめてよ!」
ウィリアムは腕を後ろに回し袋から逃げる
「頼む!ハロルド!お前さんに持っていて欲しいのだよ!」
「嫌よ!形見なんて!奥さんと息子の形見なんてぜっったいイヤ!!」
ハロルドは叫んだ




