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魚嫌い

「何のって、お金の為じゃないかしら?あんたの息子の命を奪った奴らと一緒、はした金欲しさよ…」

ハロルドは悪びれる事なくサクッと答える


「…そうか…金か…なら教えてくれハロルド!もしワシが金をやると言ったら?そしたら殺さないでくれるか!?」

ウィリアムは大きな目を見開きハロルドを見る



「命乞いかっ!!」

突然大声でイアンが怒鳴る


「ひゃぁ!!急に大声ださないでって言ったでしょ!?」

またまた驚きすぎてハロルドひっくり返る


「恐怖など感じない男じゃなかったのか!?冷酷な奴のはずだろ!?」

ハロルドに向かって詰め寄るイアンに


「ちょっと落ち着きなさいよ!あたしだって驚いたわよ!散々人を痛めつけておいて、いざ自分が弱い立場になったら『お助け下さい』なんてね!……でも彼は命乞いをした訳じゃなかったの…続きがあったのよ」


「つづき…?」


「そう続き」




「『金をやるから殺さないでくれ』って!命乞い?やめてよぉ~!悪名高きウィリアムが何言ってんのよ~」

ベットに寝そべっていたハロルドは両足をバタつかせ抗議する


ハロルドの言葉にウィリアムは飲みかけたお酒を吹き出し

「ぶっはぁ!ゲホゲホ!勘違いするな!命乞いをしているのではない!ワシを見くびるな!」



「?どーゆーこと?」



ウィリアムは軽く咳払いをし


「ワシの命なんぞお前が嫌がっても無理やりくれてやる!金も…このバカみたいに広い屋敷も宝石も全部くれてやる!持ってけ!…今日からお前はお金持ちだ…一生金には困らない!…だから、もう誰かを殺したりする必要もないな!?そうだろう!?もう誰も殺さないでくれるか?」

座ったまま顔をハロルドへ近づける


「…何言ってるの?呆れるわぁ~…飲み過ぎて頭おかしくなっちゃたのね~」

冗談だと思い軽くあしらうハロルドに


「わはははぁ!冗談ではない!ワシは冗談と魚は嫌いだ!特に魚はあの目がいかん!じぃーっと睨んでいるようで好かん!」

ウィリアムのジジィちょっと話が脱線するも何とか本題に戻す


「さっきお前は『お金の為』と言ったばかりではないか!それなのにワシが金をやるといっているのに…嘘つきだな…お前…『嘘つきハロルド』…」

わざとらしく軽蔑の眼差しをハロルドへ送る


「ひどい!『嘘つきハロルド』とは失礼ね!あたし嘘は嫌いなの!嘘なんかつきません!でも魚は大好物よ!あたしの作る魚料理食べてごらんなさい!絶品なんだから!あっ!明日作ってあげるわよ!」

ちっちゃい兄ちゃんハロルドも負けずに話しが脱線


「急に大金をやるって言われて『はい、そうですか』ってなる訳ないでしょ!?それにこんな大きな屋敷にあたしが住んでご覧なさい!誰だって怪しむに決まっているわ!?人間には釣り合うものと釣り合わないものがあるの!わかった?」

鼻息荒く力説したハロルドだったが


「それではこれを持って行け!」


ウィリアムはゆっくりと椅子から立ち上がると手短な布に身の回りの貴重品を集めそれらをまとめるとテーブルの上に置いた


「他にもまだまだある、好きな物を持って行け!金に変え好きなように使え…そしてそれがあるうちは普通に暮らせ…少しでも世界を広くしろ…本当の自由を楽しめ…」


そう言ってウィリアムは小さな椅子に大きな体を無理やり納める


「…何言ってるの…こんなのもらったってすぐに使い果たして終わりよ…」

ウィリアムの本気に少し戸惑うハロルド


「…怖いのか?変わるのが嫌か?今の生活が変わるのが、変化が怖いか?…お前はお金の為ではない…変わるのが面倒だからだ、変わる事は大変なこと…だから今のままで良いと自分で自分を納得させているだけだ!…『弱虫ハロルド』」

何故かウィリアムは最後のフレーズだけボソッと呟くように言った


「…あんたその語呂合わせ気に入ったみたいね…まったく、あたしだっていつまでもこんな暮らしをするつもりは無いわよ。いずれは…」


「いずれとは?いつだ?今大金を手に入れたのだぞ!?今ではないのか?今ではない『いずれ』とはいつだ!?」

ウィリアムはハロルドをまくし立てるように叫ぶ


「何なの?何が言いたいの?そんな事どうでもいいでしょ?」

ハロルドは珍しくイライラし始めた


「…確かに今でなくても変わるチャンスは何度でもあるだろう…しかしハロルドよ、ジジィになったワシだから言わせてもらうが…その『いずれ』にも最後があるのだ…その最後の『いずれ』を逃した時…それが本当に最後だったと知る時には、それは『後悔』に変わった時なのだ…」


ウィリアムの顔は本気だった

本気でハロルドに今のチャンスを伝えようとしていた


だが


ハロルドは


窓から覗く月を眺め


『この依頼うけるんじゃなかったわぁ~…』


心の底から『後悔』していた



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