フリーダム
「妻も息子も殺された…そしてワシは命を狙う奴らを殺した…お前のように年若い者も…な。哀れだな」
ウィリアムはグラス越しにハロルドを眺めた
「使用人は?使用人達も全員殺されたの?」
ハロルドはベットに横になりながらグラスへお酒を注ぎ足す
ウィリアムの顔色が変わる
「息子は…使用人に殺された。体の弱い息子に薬だと偽って毒を…誰かに雇われての事だろうが…はした金欲しさに息子の命を…金が欲しければ、ワシがその何倍もやったのに!…そしたら息子も!」
グラスを持つ手が微かに震えていた
そんな彼の心情などお構いなしのハロルドは
「そんなの後から何とでも言えるわよ~、当時のあんたがそんなこと考える?笑わさないでよねぇ~強欲でケチな大富豪ウィリアムが」
ズバズバと傷心のウィリアムをブッた切る
「ははっ…そうだな…後からは何とでも言い訳出来るな、お前の言うとおりだ…それにしてもはっきり言う奴だな!ちょっとは気を使わんか!」
口調は怒っているがウィリアムは笑っていた
「それで?誰も信じられなくなって使用人を全員クビにしたって事?」
「そうだ!メイドもコックも番犬でさえも!みんな屋敷から追っ払ってやった!…お陰で料理の腕も上達したぞ!おぉ!明日何か作ってやるから食べていけ!?」
ウィリアムは嬉しそうに椅子から身を乗り出す
「呆れた~!ついさっき『殺せ!』っと言った人の言うセリフ!?」
笑いながらウィリアムを睨む
「おぉー!忘れておった!そうだった!ホレ殺せ!」
「もぉーやだぁー!調子狂うぅ~!こんな仕事引き受けるんじゃなかった~。もう!こうなったら飲みまくるわよ!」
そう言ってベットから起きあがるとハロルドは酒の並んだ棚を物色しはじめる
「あぁ~!それじゃない!もっと右!右のやつ!そ~そ~それそれ!それが一番高いヤツだ。ホレ!ワシにも飲ませろ!」
死ぬ気なのか?そうではないのか?
それともボケてるのか?
よくわからない男、伝説のウィリアム
2人は次々とお酒を開け飲み倒した
「お前気に入った!ワシの息子になれ!」
お酒も入っていい気分になったウィリアムはますます壊れる
「もぉー!酔っ払い!言ったでしょ~あたしは自由なのぉ~誰にも従わない~誰にも命令されないのぉ~!フリーダムよ!フリーダム!」
両腕を大きく広げハロルドはベットに大の字になる
「タハッ!何がフリーダムだ!『根無し』だよ!お前はただの『根無し草』だ!ハハハっー!」
ウィリアムは足元にあったクッションをハロルドに向かって投げた
「ひどい爺さんね~!『裏切り者』の次は『根無し』!?……まぁ否定は出来ないけど」
ハロルドは飛んできたクッションを軽々片手でキャッチし投げ返す
「『根無しのハロルド』…さぁ、ワシは全て喋った!次はお前の事を聞かせてくれ」
はだけたガウンを整え椅子に座り直し腕組みをするウィリアムに
「話す事なんて何も無いわよ…物心ついた時から薄汚れた暗い場所に居るだけ…ただそれだけ、その世界で自由気ままに生きているだけよ…」
自分の事になるとつまらなさそうに喋るハロルド
「自由か…自由は、本当の自由はそんなものではない…お前は、自分で世界を小さくしておる。そしてその小さな世界で自由になった『つもり』でいるのだ…」
「自由になったつもり~?どーゆーこと?」
どうせ酔っ払いの戯言だと軽くあしらったハロルド
そんな彼へ大きな目を細めウィリアムは尋ねる
【お前は今まで何のために人を殺してきた?】




