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強欲ジジイ

「ちょっと話はまだ終わってないわよ!」


とっとと夕食の後片付けをするイアンに向かってハロルドが叫ぶ


「そりゃ誰でもお金が必要でしょ!?生きていく為ならいやらしくもなるわよ!」

開き直ったように腕を組みあぐらをかきながら何度も床をぺしぺし叩いたかと思うと

「…でもね~…自分でそう思っていただけなのよね~…」

急にしんみりと頬杖をつきハロルドは長いため息をついた


「…?お金ではなかったって事か?」

イアンは持っていた器を床に置き腰を下ろす


「…そうね~…そう気づかされたって感じかしらぁ~?…ふふっ、ちょうどイアン!あんたくらいの年の頃よ!…言ったじゃない?昔同じ事聞かれたって!?」


「あぁ…そう言えば、おれが聞いた時そんな事言ってたな…そいつが?」

興味津々なイアン。実は前々からハロルドの過去が気になっていた彼には絶好のタイミング


「そいつが何を?」


ハロルドはジッとイアンを見つめ

「今のあんたのように怖いもの知らずの頃よ…遠い昔の話になっちゃうわねぇ…自分には出来ない事は無いって思ってた。それがあの男に出会ってから、もう!嫌になっちゃうわ!」

ハロルドは唇を尖らす


「あの男って?誰だ」

身を乗り出すイアン


「強欲な男、ウィリアムよ!人を人とも思わない冷酷人間。ケチな大富豪よ。あ~ヤダヤダ」

下唇を突き出し首を左右に振るハロルドの顔は…不細工だった



【大富豪のウィリアム】


彼のお金持ちっぷりと強欲さは遠くの国まで轟ほど、それ故に命を狙われる日々。

しかし大男のウィリアムにとってチンケな殺し屋など恐るるに足らず、彼の命を狙って逆に命を落とす者も少なくなかった


それで白羽の矢が立ったのがその頃腕の立つ仕事人と名前が知れ渡っていた若き日のハロルド


すでにこの頃から根無しの要素があったハロルドは自分が気に入った依頼しか引き受けず、引き受けたとしても相手の裏切りが分かれば依頼を投げ出し姿を消した


そんな気まぐれ根無しの彼が依頼を引き受けた理由は

『強欲な大富豪ウィリアムの命は誰も奪う事が出来ない』

そんな噂から


「ふ~ん…そのウィリアムってのはそんなにすごい男だったのか?」

強い男に憧れているイアンは興味を掻き立てられた


「大男の上に剣の達人、素手で牛の息の根を止めたって話しもあるのよ!…でも実際あたしが出会ったウィリアムは…ただの老人…恐れられた大男はもうそこには居なかった…期待していたのよ!もぉ~ガッカリ…まぁ勝手に期待した自分も悪いけどぉ」


肩を使い大きくため息をつくハロルド

そんな彼の姿を伝説の男【根無しのハロルド】に憧れを抱いていた自分とダブらせるイアン


「…その気持ち痛いほど良くわかる…」


イアンの言葉には重みが感じられた


しかしイアンのガッカリの原因が自分だとは分かっていないハロルド


「あら!?わかるぅ~?」

イアンと意見が合って喜ぶほどの脳天気120%だった

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