押し売り
「ラルフの元気が無かった?」
イアンは横になったハロルドの側へ腰をおろす
「そう…なんかぁ~大好きだったメイドちゃんが急に辞めちゃったらしいのぉ~」
「メイド…メイドって!もしかして!…」
「間違いなぁいんじゃ~なぁい~。あんたに坊ちゃんの事依頼したメイドちゃんで」
「…ラルフが生きていたから…今度は自分の身が危ないと感じて逃げた…って事か…」
「そうねぇ~…それにしても坊ちゃんが可愛そうでさぁ~。あんた、まさか大好きな人が自分の命を狙っていたなんて…」
「………」
イアンは騙され裏切られ続けた過去の自分とラルフを重ね合わせる
「…人とはそう言うものだ…信じる方がバカなんだ…愛情や優しさなど…」
「…イアン」
「…なんだ?」
「あんた……暗すぎる」
「………」
「あたしはこんなぁ~に愛情いっぱいあなたを愛しているのよ!?それがわからないの!?」
「おっさんの愛情などいらん!」
「ほら!好き嫌いせずにあたしの愛受け取ってみ?」
「いらんと言ってるだろ!」
「添い寝してあげようか?子守歌を歌ってあげるから!」
「やめろ!耳が腐る!!」
「くさるか!」
しばらくハロルドの【愛の押し売り攻撃】が続いたが、さすがに徹夜明けでつらかったのか
「意地っ張り!もう~寝るわよ!」
そう言うとハロルドは小さく丸まり寝息をたてはじめた
やっぱり時々小さく小動物のように震えながら
「………」
そんなハロルドの背中を無言で見守るイアン
ラルフだけじゃない、俺だっていつこの変人に裏切られるかわからない…
いや…違う…俺が裏切るのかもしれない…
だから…
こんな馬鹿騒ぎ…いつまでも続くはずがない
いずれ…もとの生活に戻る日がくる
以前のように…
だから
ダメなんだ
期待しては
この馬鹿騒ぎが続く事を
期待したら
期待しただけ
辛くなる
焚き火のそばに座り直しイアンは何度も何度も自分に言い聞かせた
ところがどっこいしょ
この『馬鹿騒ぎ』なかなか続いた
結構続いた
そんな考えさえ忘れるほど
「こら!ハロルドのおっさん!今日の見張りはあんたの番だろ!!」
「いやーーー!こんな寒い日にあたしに行けって言うの!?ひどい!」
「順番は順番だ!」
「嫌よ!お腹がイタいの!お腹がチクチク痛むの!!」
そんなこんなで日々が過ぎていったのでした




