タヌキオヤジ
「お前の母親が殺されたって証拠があるのか?」
寒空の中イアンとラルフはマントにくるまり肩を寄せ合っていた
「…『しょうこ』ってのは分からないけどお母様は何かをとても怖がっていた、それに口癖のように『あたしの味方はラルフだけ。もう誰も信じられない。あたしがいなくなったらこの子はどうなるの…』そう言ってた」
ラルフの母親は明るく活発で笑顔の絶えない女性だったがある日を境に何かに取り付かれたようにかわってしまったと言うのだ
そして一年ほど前、心身ともに衰弱し亡くなった
確かに彼等のような莫大な財産を相続した人間は命を狙われる危険性があるかもしれない
しかしそれなら父親も狙われるはず。それにそんな理由で殺害を行えは犯人などすぐに特定できてしまう…
「お前が命を狙われ始めたのはいつからだ?」
イアンはうつむいたままのラルフを覗き込み聞いた
「…新しいお母様の話が出た時…かも…でもよくわからない。だって自分の命が狙われているってのもハロルドが教えてくれたから…」
「新しいお母様?あぁ、再婚相手って事か?」
「お父様は『まだ早すぎる』って言ってたんだけど周りの人達が…子供には母親が必要だって…俺、新しいお母様なんていらないのに…」
「…なんであのおっさん…お前の命が狙われているって分かったんだ…おい、ハロルドのおっさん何か言ってなかったか?」
「ん…特に何も…ただ『お母様の敵討ちをしたい』って言った後、同じ事をハロルドにも話したら…『敵討ちをする前に自分が死んじゃったら意味がないわよ』って…その時はじめて自分の命が狙われているって事ハロルドが教えてくれた」
そう言ってラルフはまたうつむき両足をこすりあわせる
イアンはうっすら霧がかかった森の小屋のある辺りを睨み
『あのタヌキオヤジめ!何が「 まぁさぁかぁ~!そんなの分かるわけ無いじゃない~!」だ! しらばっくれやがって!!』
おそらくハロルドは母親殺しの犯人も、そしてラルフの命を狙っている人物の見当もついているのだろう
イアンは拳を握り締め呟く
「帰ったら覚えていろ…変人タヌキ!」
「ふぇ……ふぇぇ…ぶぇっっくしょっ!!」
森に気味の悪いハロルドのくしゃみが響き渡った




