二人のハンサム
「お嬢様!大丈夫ですか!」
突然アルとキキが居間に飛び込んできた。
二人の事だきっと扉の向こう側で立ち聞き(のぞき見も)していたのだろう。
しかし今は彼らの存在がうれしかった。
「おい!くるくる頭!自分がハンサムだからっていい気になるなよ!お嬢様には何にも関係ないだろ!」
アルは今にも飛びかかりそうな勢いでヘンリーを睨みつけた。
ハンサムがハンサムに「ハンサム」と言うところをはじめて見た。
ハンサムには自分がハンサムだとわかっているハンサムとハンサムなのに自分がハンサムだと自覚の無いハンサムが存在するのだろう。
アルは間違い無く後者だ。
エマはいきり立つアルをなだめ、ヘンリーへ謝罪の言葉をのべた。
意外な事にヘンリー本人はアルが言った言葉がまさか自分に対して放たれたとは思っていなかったようで、少し驚いた表情でゆっくりと微妙な角度にうなずいた。
どうやら彼も後者のようだ。
しかも巻き毛の自覚もないハンサム
この何とも言えない雰囲気を払拭するかのようにヴィッセルが重い口を開いた
「お嬢様…その…実は…困った事に…その…お金の…」
彼の言葉は聞き取れないほど弱々しかった。
「ヴィッセル様?これ以上驚くこと事などあり得ましょうか?あたしなら大丈夫です、ハッキリ申し上げてください」
口ごもる彼に心配をかけたくなく言った言葉たったのだが
人生とは最悪の状態から更に悪い方へ行くこともあるのだと痛感させられた。
「実は…借金の返済期限は来月末なんてす」
意識が少し飛んだ。