表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/315

取引

冷たい雨に濡れた森は深い霧をまといはじめる

しかし小屋はそんな冷たさとは無縁なほど賑やかだった


「いい加減にしろーー!!」


「やーい!やーい!動けるものなら動いてみろ!!」


子供といい年したオヤジの低レベルのバトルが熱く続いていた


「チクショぉ……」

イアンはまったく抵抗出来ない事と、憧れていた男の正体がただの情けないオヤジだった事に悔しく涙が出てきた


それを見たハロルドは

「悔しいか?こんな低脳な俺にからかわれて悔しいか?」

少し真顔で問いかける


「うるさい!悔しくなどない!向こうへ行け!」

言葉とは裏腹にイアンの目から次々と涙がこぼれ落ちる


「泣け!泣け!泣くのはお前がまだ子供だからだ!大人になればそんなこといちいち悲しんでなどいられない!今の内に泣きまくれ!」


「うるさい!俺は子供じゃない!」

イアンは涙声で叫ぶ


ハロルドはそんなイアンの肩を掴み押さえつけ

「お前はまだ子供だ!粋がるな!!お前の心はまだまだ弱い!口ばかり達者で中身は赤子同然だ!」


肩に感じるハロルドの力の強さと心の中をえぐり取られそうな眼差しに

イアンは声を出して泣いた


「他人に振り回されるな、自分の人生を歩め…」

そう言ってハロルドはイアンの頭をポンと軽く叩いた


いつの間にか雨は上がり濃い霧だけが森には残った


「…それじゃ体が動けるようにしてやるかぁ~…しか~し!条件がある!」

そう言ってハロルドはイアンの目の前に人差し指を突き立てる


「…お前…今『他人に振り回されるな』と言わなかったか…」

イアンは涙も乾かないうちにすでにトンチンカンな事を言うハロルドに呆れた


「あれはあれ!これはこれ!臨機応変ってやつよ!ちょっと違うなぁ…あっ!ファジーだよ!ファジーぃ!」


【ファジー】〓【曖昧/ぼやけた】


「…いや…あんたの場合ファジー(曖昧)と言うより適当だ…適当すぎる」

イアンは失笑する


「……そぉーだ!笑え!笑い飛ばせ!怒りは判断を誤る、笑い飛ばしそして時を待て!」

そう言うとハロルドは声高らかに笑った


「それで…条件とは何だ…」


「あぁ~条件ね~…その前に寒い!寒い!」

ハロルドは脱いだ上着を慌てて着ると

「実はね~わたしね…坊ちゃんと取引したの」


「取引?ラルフと取引?」


「そうそう」


「何の取引だ?」

イアンはかろうじて動く頭だけを気持ちハロルドの方へ向けた


「…ちょっとある依頼で油断しちゃってさぁ~ここグッサリやられてぇ~」

ハロルドはいきなりズボンを下ろし太股のまだ生々しい傷をイアンに見せつけた


「…!!いきなり下ろすな!!さっさとズボン穿け!!」

イアンはこのちっちゃいオジサンの突拍子もない行動だけはいまだ読めなかった


「んだょぉ~男同士だから気にするなよぉ~」


「あんな冗談言われた後だ!気になるだろ!!」


「だからぁ~男に興味無いって言ってるじゃぁ~ん」


「…それで…その傷がどうしたと言うんだ…」

話がなかなか進まないのでいちいち絡まず話を進める


「はっきり言わせもらうけど!この傷はわたしのヘマではないぞ!騙されたの!なぁ~んか怪しいとは思っていたけど…まさかわたしの命が狙われていたなんてなぁ~」


「それで出来た傷がラルフと何の関係がある?」


「んん?あぁ…お前と一緒だよ、あの坊ちゃんに助けられたのさ。何とかこの森まで逃げてきたが力尽きて倒れているのをあの子供が助けてくれてねぇ…」


イアンは納得した、たしかにハロルドほどの小柄な体型なら子供のラルフでも助けることが出来ただろうと


「あっ…あんた今、あたしがちっちゃいから子供でも手助け出来たと思ったでしょ!?失礼しちゃうわね~!ちょっとばかし身長が高くて手足が長いからっていい気になるんじゃないわよー!」

ハロルドは腕を組みふてくされた、そんな彼を見てイアンは

「何をブスッとしている?笑えよ!」

そう言って笑った


「あぁー!嫌な子!大人をからかうなんて!あーやだやだ!」

ハロルドもぶつぶつ文句を言いながら笑った


消えそう焚き火に慌ててハロルドは枝を数本投げ入れ

「助けてもらったお返しに…坊ちゃんが母親の敵討ちをするまで坊ちゃんの身を守ると【取引】したのよ」


ラルフに子供らしからぬ威圧感があったのは、このハロルドの存在があったからなのだ


「それで…まさか俺にその【取引】の子守をやれと言うんじゃないだろうな…」


ハロルドはまたまた人差し指をイアンの目の前に突き立て

「ぴぃ~~んぽぉ~~ん!!大正解!!すごぉーーい!」

嬉しそうに飛び跳ねる


「断る!俺は断るぞ!子守なんてまっぴらごめんだ!」

イアンは引き受ける気などまったくなかったが

しかしハロルドの容赦ない嫌がらせに


数分後…


「わかった!!!やる!やる!やるからやめろーー!このクソオヤジ!!」

【取引】を引き継ぐ事になった


「やめろって言ってるだろ!!やめろー!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ