ちっちゃいオジサン
突然見知らぬ男がイアンの顔を覗き込む
「気がついたか?」
「だれだ!!いっ…!!」
イアンは体を起こし身構えようとしたが、わき腹に激痛が走りその場で倒れこむようにうずくまった
「あぁー!ダメダメダメ!動いちゃダメダメダメ!」
男は慌ててイアンを押さえつける
「離せ!イッっ…!」
「ほらぁ~!だめだめ~!まだ動ける状態じゃなぁ~いの!」
男はイアンより小柄で細身だが見た目に反し怪力だった
「貴様!…何者だ…ナゼ俺を…」
「わたし?私の事か?私はハロルドだ…世間では…そう…そうそう【根無しのハロルド】と呼ばれているあのハロルドだ」
「ね…根無しの…ハロ…ハロルド!?」
噂は聞いたことがあったが…この小柄な男が!?あのハロルド!?
イアンは疑いの目で男を見る
「その…ハ…ロルド…さんが…なぜ俺を助けた…」
ハロルドは小屋の真ん中、小さく燃えている焚き火の中で煮詰め煎じだ薬草をイアンへ差し出し
「少しは痛みが和らぐから飲みなさい…助けた訳ではない…私は頼まれた事をやっただけ」
「頼まれた…?どう言う事だ…」
「坊ちゃんに頼まれたんだよ…」
「…坊ちゃん?…あの子供か?ハミルトンの息子」
「そうそう、ラルフ坊ちゃんだよ。『森の近くで倒れている男を手当てして欲しい』とね、言われるがまま行ってみたらあんたが倒れていたってワケ。そしたらあんた!すんごい血が出てるしびっくりしちゃったよ!」
イアンは力が抜けるような話し方に『イラッ』とした
【ハロルド・スペンサー】
戦いの時、彼がいれば勝利する
そう言われた男
しかし、味方と思って喜んでたら翌日には敵に。
主を持たず風吹くままに生きている、そんな事から付いたあだ名が『根無しのハロルド』
彼を手に入れたいと思う者もあれば、存在を疎ましく思う者もあり
「根無しのあなたが何故…あんな子供に…主を持たない主義では…なかったのか?」
「子供?あたしから見ればアンタも坊ちゃんに負けないくらい子供だよ!まったく!世の中可愛くない子供ばかりだよ!」
イアンの質問には答えずハロルドは不満そうにぶつぶつ言いながら薬草をすり潰していた
「金…か?」
「あんた!正気?相手は子供だよ!?んなっ大金持ってるワケないだろ~」
「なんだか…すごくイラつくが…なぜ…アンタほどの大物が………体は小さいが…」
「あぁー!ひどー!見た目で判断するなんてひどー!」
「・・・」
わき腹の痛みと彼との噛み合わない会話でイアンはあきらめた
『この小柄の男がハロルドだろうがなかろうが誰の味方になろうがならなかろうが…どうでもいい』
プイッとハロルドに背中を向け壁に向かい横になった
「あれー?無視ー?お礼も無しー?」
ハロルドはふてくされたイアンの背中にニヤニヤしながら話しかける
「…この借りは…いずれ返す!」
イアンはそう言ってブランケットを深くかぶった
そんな彼を見てハロルドはますます楽しくなっていた
外では雷に先を越され出遅れた雨が申し訳無さそうに静かに降り始めていた




