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イアンとラルフ

女の依頼は数日後、すぐに実行された。

月の無い夜、厚い雲が少しづつ夜空を覆いはじめた頃


女の手引きで屋敷内には安易に入ることが出来た。迷う事無くラルフの部屋にたどり着く、そこにはイアンの住む世界とはかけ離れた景色があった


暖かな暖炉、質の良いシーツに手触りの良さそうな毛布それらに包まれ安らいだ寝顔のラルフ

目には見えないが、息が詰まるほどの親の愛が部屋中に染み着いていた


「気分が悪い…」

嫉妬と憎悪、そして憐れみが交差し彼の心の奥で膨れ上がっていく

殺す理由はそれだけで十分、それどころか幸せのまま夢の中で命を終わらせられる事を感謝して欲しいとまで思うほど


『理由はどうであれ、恨まれ命を狙われて生きるよりはあの世で母親と仲良く暮らせ…』


静かに剣を抜きラルフへ向け

「死んだほうがましな時もある…」

そう呟いた時

西の窓が一瞬明るく、そして激しく雷鳴が鳴り響いた

『マズいな…』

グズグズしている暇は無い、目を覚ます前に始末しなければ!


そんな緊迫した部屋を再び稲光が照らし出す。


イアンは目を疑った


【目が合った】

ラルフの鋭い眼光としっかり目が合ったのだ

それと同時にわき腹が熱く、徐々に痛みが広がっていく


「やられたな…ただの金持ちの坊やじゃないようだ…」

イアンは赤く染まるわき腹からナイフを抜き取り床に投げ捨てた


稲光で見たラルフの青い瞳は今覚めたものなどでは無い、彼ははじめから眠ってなどいなかったのだ


「…はっ…あいつにまんまと…」

イアンは女の言葉を思い出していた

「まんまと騙されたな…」


ラルフは自分の命が狙われている事にすでに気がついていた

だから女はラルフの近くに居るのに彼に近づけなかったのか…



ラルフは人を刺したとは思えないほど落ち着いた声でイアンに問いかける

「お前が母の命を奪ったのか…お前が母を殺したのか?」



「母…母親も殺されたのか…ざ…残念だな…お前の…母親の…事など知らん…」

思ったより深く刺されたようだ、イアンは痛みで何とか意識を保っていた


イアンの言葉を聞いたラルフは

「…それならお前などに用はない、殺す気も捕らえる気も無い…さっさと部屋から出ていけ」

そう言ってベットから起き上がると部屋の窓を開けた


「はっ…は…俺が死んでも…また…別の奴がお前を…狙う…ぞ…」

イアンはふらつきながら開いた窓に腰を下ろす


「俺の命など…欲しければくれてやってもいい、だが今はやれない、母を殺した奴を見つけるまでは…」

遠のく稲光に時折映し出されるラルフはもう子供の顔ではなかった


「己の…命が…絶える前に…仇が討てるとでも…思って居るのか…」

青ざめたイアンの顔を眺めラルフは笑いながら


「人の心配をしている場合では無いだろう、殺すのを失敗したお前も狙われ追われる身になるのだから…もしその傷で生きていたら何度でも俺の命を奪いに来い」

そう言ってイアンの肩をポンっ押した


イアンはまるで人形のように窓から落ちて行く


幸い窓の下の茂みに身を守られかろうじて命だけは助かった


わき腹を押さえふらつきながら歩いた

時折倒れ、また起き上がり再び歩いた


その後の事は何も覚えていない


ただ気がついたら小屋の中にいた


薄暗い森の中の暖かな小屋に


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