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左目と噂

≪霧の城の狼≫

通称ウルフの【噂】は彼の風貌も手伝いハミルトン一族の中ではダントツ、ぶっちぎりの多さであった


特に彼の眼帯に隠された左目に関しては


「ウルフ様の左目を見た者は魂を抜かれるそうだ」


「いや、あの左目は絶対的力を手に入れる為悪魔と取引した時の代償だと聞いたぞ」


「いやいや、私が聞いたのはあの左目は夜になると狼の目のように光りどんな暗闇でも見えるそうだ」


など人間離れした噂が多く、人並み外れた体格にあたっては

「狼の血が混じっている証拠」

と言われるほど


しかし、当の本人はそんな事どうでもよく、それよりもこんな子供騙しのような噂がよく広まったものだと感心していた


『人を信じる』と言う心が欠落してしまった彼には世間がどう騒ごうが、どう噂されようが気にもとめる事ではなかった




「人間は淫らで弱く情けない、ちっぽけで卑しい生き物だ…」

お酒を注いだグラスに映る自分の顔の傷痕と黒い眼帯を眺めながら小さく笑う


「何をニヤけている?はっきり言うが…怖いぞ」

長椅子に寝転び退屈そうに天井を見つめていた黒髪の男が眉間にシワを寄せウルフをからかう


「俺だって笑う時もある」

そう言って目の前にある林檎を投げつける、黒髪の男は長い手を伸ばし林檎をキャッチすると天井の代わりに見つめ

「滅多に笑わないからこそ、笑った時が怖いのだ。特に貴方のように感情を表さない方は…」


「俺は笑う時にも、お前に了解を得ないとならないのか?」

ウルフはグラスのお酒を一気に飲み干す


「出来ればそうして頂きたい」

持て余すほどの長い手足を伸ばし男は笑った


「相変わらず勝手な奴だ…俺のことも(あるじ)とは思ってもいないのだろう…そうだろう、イアン?」

ウルフが尋ねると


「心より尊敬しておりますよ、我があるじ【ウルフ】様…」

そう言って黒髪の男、イアンはまたぼんやりと天井を仰いだ


「ふっ…食えない奴だ…」

ウルフは空になった酒瓶をテーブルの上で転がし鼻で笑った


はたから見るとあるじと使用人とは思えないほどの2人だが、イアンは本当にウルフに忠誠を誓っていた。


実はウルフにとってイアンは

『一度は自分の命を狙った相手』

だが、ウルフは彼を気に入り、今では彼を側近にするほどだった


そして、ラルフとイアンが退屈していると言うことは何か悪いことが起きる前触れでもあるのだ

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