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招待状

訂正箇所:(誤)祖母→(正)母

遡ること一月半前


エマ宛てに手紙が届いた

差出人は【リチャード・ハミルトン】

ハミルトン公爵からの手紙だった


エマはキキと草花を煮詰めリボンを染めていたところで手が離せずにいた


「ちよっと、エミリー手紙を読んでもらえないかしら?」


メイドのエミリーは大きなお腹を抱え椅子へ腰を下ろし

「読めないスペルがあっても笑わないで下さいよ…」

上目使いでエマに訴えた


「あなたの勉強の成果を発表するチャンスよ、ほら!早く」


エミリーは産まれてくる子供の為にと暇を見つけてはキキと一緒にエマから読み書きを教わっていたのだ


「…それじゃ…読みますよ…『拝啓、エマ・ランドールさま…この度、母の…』…」


≪この度、母アンジェラ80歳の誕生日を盛大にお祝いしたく舞踏会を開くことになりました。つきましては近隣の方々も招待を…≫


「まあ!舞踏会ですって!お嬢様!舞踏会ですよ!」

キキとエミリーは声を合わせ、まるで自分達が招待されたかのように目を輝かせた


「…舞踏会なんて…あたしみたいな田舎者は恥をかきに行くだけよ…エミリー早く続きを聞かせて」

エマはピンク色に染まったリボンをピンと張った紐に一つずつ丁寧に掛けはじめた


「とんでもない!!美しさ!教養!優しさ!どれを取ってもどんなお金持ちの娘だろうとお嬢様にはかないません!」

キキは息を荒げ紫色に染まったリボンをちぎれそうなほど強く絞った


「キキの言うとおり!エマお嬢様はホント自分の魅力をわかっていらっしゃらない、あたしが男なら放っておかないですよ!」

エミリーは手紙を握りしめた


「あ…ありがとう…」

エマは嬉しいような恥ずかしいような変な感じだった


「あっ!!!」


エミリーがいきなり大きな声を出したのでエマとキキはリボンを煮詰めている鍋をひっくり返してしまいそうなほど驚き

「産まれそうなの!!??」

慌ててエミリーのそばに駆け寄る


「出せるものなら出したいですよ…違います!違うんです!思い出したんですよ!!」


少し興奮気味のエミリーを落ち着かせエマとキキは一つの椅子に仲良く半分ずつ腰をおろした


「実は一昨日マーサ様と街へ買い出しに出掛けた時、聞いた話ですが…今仕立て屋がとても繁盛しているそうなんですよ、その訳が【舞踏会】!そう!大きな舞踏会があるからだって言ってました」


エミリーの話はこうだ


その【舞踏会】と言うのがまさにエマ宛てに届いたハミルトン公爵の母アンジェラ様の誕生日祝の事で、しかも【舞踏会】とは名ばかり実は花嫁探しの為に開催されると言うこと

アンジェラ様の孫にあたる男性4人の花嫁探しが本当の理由だとか


アンジェラには3人の息子と1人の娘がいた。

皆、結婚し家庭を持った

子供は男子を1人ずつもうけたが…アンジェラにとって孫にあたる彼らは結婚適齢期を迎えても誰一人結婚する気配すら無く

「曾孫を抱くのが夢」

のアンジェラにとっては腹立たしい事だった


このままだと曾孫を見ることが出来ないと思ったアンジェラは自分の80歳の誕生日に舞踏会を開き、その時に花嫁候補を探すよう命じたのである


本人達が乗り気でなくてもアンジェラはやる気満々だったので舞踏会の招待状はとんでもない枚数が用意され、どんな小さな村の、どんな女性にも送られた


招待状と共に【花嫁探し】の噂も広まり、独身女性は貴族と結婚出来るチャンスだとドレスを新調し【舞踏会】に備えているのだと


「その【舞踏会】の招待状がエマお嬢様にも届くなんて!!」


エミリーは思い出したように

「エマ様!舞踏会には是非あたしも連れて行ってくださいよ!」

慌てて付け加えた


「あたしはお留守番でいいです…」

引っ込み思案のキキは小声でつぶやいた


どうせ自分には関係無いことだと思っていたエマは

「ハイハイ、わかりました。次はハンカチを染めるわよ!」

そう言って話題を【舞踏会】からそらした


その後、手紙は引き出しの奥深くへと押し込められ、存在すら忘れてられてしまったのだった


今の今まで


≪呪いのかかっている田舎娘≫

そんな自分には関係の無い話しだと思っていたから


そんな自分にプロポーズする男性がいるとも思えなかったし、たとえいたとしてもそれはかなりの変わり者だと考えられる


どちらにしろ貴族にも舞踏会にも興味が無かった


しかし今のエマにはそんな事言ってなどいられなかった


≪借金返済の為にお金持ちと結婚する≫

そんな馬鹿げた考えでさえ希望の光なのだ


「相手は4人もいるのよ!1人くらい物好きもいるかもしれないわ!」


そう自分で自分にエール(?)を送りヴィッセルの元へ向かったのだった


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