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『手紙』

【いっその事、お金持ちと結婚なんてどうだ?】


夜明けの帰り道でアルフレッドが言った一言


その一言でエマはある物を思い出した

引き出しの奥にしまい込んでいた『手紙』の事を


「ヴィッセル様!お待たせして申し訳ありません!」

息を切らしながら挨拶をすませるとエマは長椅子へと腰を下ろした


「おはようございます、エマお嬢様。寝坊とは珍しいですな…」

ヴィッセルは慌ててローランドの手紙でもう一つの『手紙』を隠す


「…傷心の為…眠れぬ夜を過ごされた事でしょう…少しでも休まれたのなら安心…いたしました…」


ヴィッセルの言葉が途切れ途切れの訳は、青あざと傷だらけのエマの腕と手にあった


『アルフレッドとキキだな…なんとまぁ…心配の必要はなかったようですな…』

安心したヴィッセルはゆっくりと紅茶をかき回し≪話を切り出すタイミング≫を図っていた



エマはこれから自分が言おうとしている突拍子も無いことに驚いてヴィッセルが紅茶を吹いては困ると思い彼が紅茶を飲み込むのを待っていた


沈黙が続く


意を決しヴィッセルが隠した『手紙』に手を添えた時


「あの!ヴィッセル様」


ヴィッセルは手を止める

「なんでしょうか?」


「実は…相談があるの…」


「相談とは?このヴィッセルに出来る事ならなんなりと」


エマは緊張の汗でしっとりした『手紙』をテーブルへ置いた



ヴィッセルは今自分の左手の中にある『手紙』と同じ『手紙』を目の前に置かれ驚き、動揺した


「これは…」

ヴィッセルが問いかける前に


「実は一月半前に届いた手紙なんですが…自分には関係無い、無縁な手紙だと思ってそのまま引き出しの中に閉まっていたの…」


エマはヴィッセルのカップを持つ手を押さえ言った


「あたし!お金持ちの男性と結婚します!」


紅茶を吹き出す事はなかったが、ヴィッセルは自分が提案しようと思っていた事を先に全部まるまるズバッとエマに言われたので

「あっ…」

と言ったっきり言葉が出てこなかった


『…あぁ…ヴィッセル様…呆れてれて言葉も出ないわ…なんて幼稚な発想だと思われた事だろう……』


エマは【穴があったら入りたい】とはこの事だと実感した

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