呪いとウワサ
何年も深く深く地の底を這いながら息を潜めていた『それ』はピーターとケイティの不幸な事故をきっかけに息を吹き返す
【噂】
それは生き物だ
『二人は運が悪かっただけ』
そんな現実お構いなし、執拗に絡みつき大きくなる
『ランドール夫妻は呪いによって死んだのだ』
形を変え駆け巡る
『ランドール家に関わる全ての人に不幸は降りかかる』
『ランドール夫妻はひどい領主だったから村人に呪われて死んだのだ』
『娘のエマにかけられた呪いはその何倍も恐ろしいものだと』
いったいどこの誰が言い出したのか?
真実をねじ曲げ尾ひれを付け、鶏冠も羽も生えて我が物顔で飛び回る
しかしどの【噂】も出だしは決まってこうだ
『ある人から聞いたのだが…』
時には
『知り合いの旦那の従兄弟が…』
はたまた
『娘が嫁いだ先の祖父の知り合いの人が…』
その祖父の知り合いに聞くと
『そのまた知り合いの知り合いが…』
きりがない…
そしてエマの一番のお気に入りが
『ランドール家の娘と結婚すると原因不明の病や、干ばつや山火事に襲われ嫁ぎ先は全財産を失う』
このまるで神か悪魔の能力とも言える【噂】だった
「あたしはついに自然をも操る力を手に入れたのね…我ながらすごいわ」
そう言って笑った
しかし【噂】が怖くてエマに求婚する男性が現れないのも事実である
一度だけ1人勇気がある…と言うか何も考えてないただエマを気に入ったから求婚に来た男がいたが…突然逃げ帰ってしまった事があった。
男はエマの村にも悪評が届くほどの少し離れた村の領主の息子だった。
彼がエマを気に入っても、ランドール家の者や村の者は彼を気に入らなかった
だから
ちょっとだけ
脅かした
ちょっとだけね
エマには内緒でアルフレッドとキキ(他数名)で脅かした
結果
「ランドール家の呪いは本当だった!わたしはこの目ではっきり見たんだ!…ランドールの…エマの両親…ピーターとケイティを!」
少し離れた村の領主の息子は逃げ帰るとランドール家での出来事を村の皆に話した
「ふたりは…暗闇から『エマと結婚したら命を奪う』そう言っていた!命だぞ!冗談じゃない!」
また一つ新たな噂が誕生した瞬間である
その噂がエマの耳に届いた時、アルフレッドとキキ(他数名)は静かに空を見上げた。
【ごめんなさい…お嬢様】
「そんな【呪い】のハンデのあるあたしが大丈夫かしら?」
エマは支度を整えながら何度も自問自答していた。
『ひとまずやるだけやる!』
そう腹をくくると引き出しから一通の封筒を取り出しヴィッセルの元へと急いだ
「たまにはアルも良いこと言うわね」
そう言って手紙を見つめた
ヴィッセルは居間で老眼鏡をかけローランドの手紙を何度も何度も読み直していた
そしてその脇にはもう一通封筒が置いてあった
その封筒はエマが持っている物と筆跡や便箋がとてもよく似ていた




