親子
「たしかこの辺に落ちたと思ったのだが…」
馬にまたがった小柄の髭の男が辺りを見回す
「父さん!あそこ!大きな木が!」
馴れない手綱さばきで後ろを歩いていた若い男が叫んだ
親子であろう二人の男はたいまつの火を大木にかざす
「ん…!雷はこの木に落ちた!間違い!かなり大きな落雷だったからな心配したが…」
父親らしき男が言うと
「火は出ていない?大丈夫?」
若い男、息子が心配そうに大木の周りを確認する
「あぁ!大丈夫そうだ、この分なら火事の心配はなさそうだ、さぁ、引き上げよう」
父親が馬を促す
「父さん…父さんが子供の頃、落雷からの山火事で村が大変な事になったって本当?」
息子はまだ心配そうに大木を見つめていた
「あぁ、あの時は本当に恐ろしかった。村のすぐ側まで火の手が迫ってきて皆もうダメかと思ったよ」
その時の恐怖を思い出したように首を振る
「あの時の教訓を生かし、防げるものは防げるうちにってやつさ!さぁ、早く村に帰って皆を安心させてあげようじゃないか」
そう言って父親は来た道を戻りはじめた
「そうだね…」
息子はゆっくりと馬の向きをかえる
、そのたいまつの明かりに照らされ遠くの茂みに何かが動いた
「何か…何かいる!父さん!向こう!向こうの茂みに何かいる!」
「ぶるるっ!」
その何かが声を上げた
「うま!馬じゃないか!?野生の馬か!?」
二人は恐る恐る近づいてみる
「野生じゃない…!?…何か変だ!!」
馬は馬車とつなぐ為のハーネスが外れずそこで立ち往生していた
「…!!これは!!この馬車!…………何て事だ!!あぁ!なんて事だ!!」
声を震わせ叫ぶ父親
「父さん!!どうしたの!!」
慌てて近寄る息子へ
「来るんじゃない!!来るな!!」
そう叫ぶと
「お前は急いで村に戻り人を呼んで来るんだ!!村の男どもを皆呼んで来い!!…そしてランドール様の屋敷に行ってヴィッセル様に伝えろ!」
顔面蒼白になっていた父親は静かな声でこう言った
「旦那様と奥様が…大変な事になっていると」




