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雷鳴

「それじゃヴィッセル、エマをよろしく頼むよ」

前日から降り続いた雨で肌寒くなった夜明け前、ピーターの吐く息が白くなる


2人を見送る為早起きしたエマだったが、眠気に勝てず父親の腕の中でぐっすり眠っている


「あぁ…あたしのかわいいお姫様『いってらっしゃい』の言葉が聞きたかったのに…残念だわ」

そう言ってケイティはエマの頬にキスをした


「お嬢様の事はご心配なく」

ヴィッセルはピーターからエマを起こさないように優しく受け取る

そんな夢の中の娘へケイティは綺麗な刺繍の入ったブランケットを掛けてあげた


「なるべく早く帰ります、よろしくお願いします」

ピーターに手を添えてもらいケイティは馬車へと乗り込む


「ヴィッセルの言うことを聞くんだよ」

エマの頬にキスをしてピーターも馬車へと乗り込んだ


「いってらっしゃいませ」

使用人達が見送る雨の中、馬車は2人を乗せて走り出す、小さく見えなくなるまで皆見送った


「さぁ、お嬢様が風邪をひいてしまう。中に入ろう」

ヴィッセルはゆっくりと皆を促した


「雨があがるといいのですが…」

メイドのマーサが空を見上げながら呟やいた


その思いが通じたのか夜明けと共に雨は小降りになりはじめた


エマは寝ている間に2人が出発したことが悲しく、起きれなかった自分に腹をたてていた。


「もう!あたしのバカ!寝ぼすけ!ばかばか!」


何度も何度も額をテーブルに打ちつける


「お嬢様…そろそろ朝食を食べて下さい」

ヴィッセルはぶつけて赤くなったエマの額に手を当てテーブルとのクッションにした


「クローバーを…お母様にクローバーの葉っぱをお願いしたかったのに…」

そう言ってエマは冷めたスープをスプーンでかき回す


一緒に作る約束をした草花の『お守り』にクローバーを入れたかったのだ


「雨が晴れたら一緒にお庭で探しましょう」

ヴィッセルが窓の外を眺めながら言うと


「!!ありがとうヴィッセル!」

エマは急にお腹が空いた気がしてきてものすごい勢いでスープとパンを流し込んだ



雨は一旦上がりそうな気配を見せたが、新たな仲間を引き連れて再び激しい降り始めた


はじめは遠く、次第に近づいてくる雷鳴を引き連れて



「はぁーっ」

曇ったガラスに息を吐き絵を書いてエマは暇を持て余す


「旦那様達、今夜はお泊まりになるかもしれませんね」

ヴィッセルが心配そうに呟くと


「それじゃ!キキを部屋に呼んで一緒に眠てもいいかしら!?」


ランドール家にメイドとして雇われたキキは年が近い事もありエマとは大の仲良し


ヴィッセルはダメもとで言っておく

「騒いだり、夜遅くまで起きてはダメですよ!」


エマは首を何度も縦に振る


「それと、キキをお部屋に泊めた事は旦那様達には内緒!いいですか?」


「内緒!約束!」

そう言ってエマは小指を立てて見せた


ただ大人というのは内緒が多くて大変だと感じていた


実はキキは今までに何度かエマの部屋で過ごしたことがあったからだ


時には母親にお願いし、そして時には父親に


そのたびに


「お父様とマーサには内緒よ」


「お母様とヴィッセルには内緒だよ」


と内緒が増えていく


大人になる頃には《内緒》が隠しきれないほどたまってしまうのではと

エマは心配していた。



夜になるとさすがに雨は降り飽きたのか少し和らいでいたが、雷だけは帰る家がないように厚い雲の中を這いずりまわっていた


エマとキキはベットに潜りお互いの耳を押さえ雷鳴に怯えていたが


その雷もいつしか聞こえなくなり2人は寝息をたて眠った


耳鳴りがするほど辺りは静まり返っていた


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