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乙女心

「なんと!珍しい事があるものだ!」

広間に現れたケイティを見て父親が声を上げた。

「まぁ!ほんと」母親も続けて声を上げる


しかし今のケイティにはそんな二人の言葉など耳に入らなかった。夢にまで見た≪彼≫に会える!その事で頭が真っ白になっていた。

震える手をブランケットで覆い隠すのがやっとなほど。


「失礼いたしました。紹介いたします、娘のケイティです」父親に促され前へ出ると、そこには彼が、あの笑顔があった。


「ピーター・ランドールさんだ。お父様が亡くなられて、その後を継いで領主になられたご挨拶に参られたそうだ」

父親の話も途切れ途切れにしか頭に入ってこない。


以前のピーターとは違い長かった髪は短く整えられており、出逢った頃より一段と焼けた肌は白いシャツと品の良いジャケットを引き立たせていた。


しかし緑色の瞳はあの時のままだった、ケイティは目眩がした。


「ケイティ!聞いているの!?」

母親に肘で突っつかれて我に返る。


「もう、ぼんやりして!失礼ですよ!申し訳ありません、甘やかし過ぎて礼儀知らずで…そのせいか、いまだに結婚もせず…」


なんて紹介のしかた!?

「お母様!!やめてください!」

ケイティは慌てて母親を征するが


「いや…こんなお美しい方なら、わがままも仕方ありません」

ピーターの一言で身動きが取れなくなってうつむくしかなかった。


「まぁ、ランドールさん!お上手だこと!」嬉しそうに母親が笑う

「それにお若いのにしっかりされている」父親もピーターに好感を持ったらしい。


みんなが笑顔の中、ケイティだけは笑えずにいた、何故ならピーターの側にいる女性の顔を直視する事が出来ないからだ。


『彼女を、奥様を紹介されたら…!あたしは?どんな顔をすれば!?』その瞬間ばかり考えていた。


その時「紹介が遅れました、こちら私の…」ピーターが女性の手を取り近づいてきた。


≪あぁー!聞きたくない!神様待って!もう少し待って!!≫

心の中で叫びながら強く目をつぶる


女性は「はじめましてピーターの叔母のダーマと申します」と深々とお辞儀をした。


「…おば…?」


「わたしの親代わりであり、なんでも相談にのってくれるやさしい叔母上様です」ピーターは誇らしげに彼女を見つめた。

「まぁ、嫌みに聞こえるわよ!?」ダーマはピーターの背中をピシャリと叩いた。


「叔母さま!?」ケイティはやっと顔を上げ女性へ目をやる、たしかにピーターの妻と言うには年が離れすぎていた。


「は!はじめまして…ケ…ケイティと申します!」

嬉しさと勘違いの恥ずかしさからどんどん顔が赤くなっていく。


しかし『期待をしてはだめ!彼は…だって彼はただ挨拶に来ただけ!期待しないで!ケイティ期待しないで!!』

自分で自分に一生懸命言い聞かせてみるが、感情が暴走してしまいナゼか「ご…ごけっ…ご結婚はされていないのでしょうか!」言葉が勝手にでてしまった。


≪あぁー!バカ!なんて事聞いているの!≫出来ることならこの場から逃げ出したい


「残念ながら…独身です…」ピーターは鼻の頭を掻きながらはにかんだ。


≪あたしじゃダメですか!?≫


そう叫びたい気持ちとは裏腹に

「あなたの妻になられる人はさぞやお幸せになられる事でしょうね」


恋する乙女心は複雑だとケイティは実感した。

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