油断大敵
ジェームスは複雑な面持ちでいた。
すぐに逃げ出すと思っていたケイティがほぼ毎日現れるからだ。
最初は剣を持つのもおぼつかなかった彼女が今では他の者達と対等に戦えるほどに。そして、そんな彼女の事を楽しみにしている自分に困惑していたのだ。
「何故だ!何故なんだ!!」
抑えても抑えても沸き起こるこの思い…
「ナゼだ!なぜ男に生まれてこなかったのだ!!」
「さすがにそればかりはぁ…」
隊の若者達が困惑してしまうほどの思い。
そんなこととは知らずケイティは日々充実し楽しかった。
「あたしは何故今まで素敵な彼らの事を知らなかったんだろう」不思議でならなかったが「…考えたら…あたし話しかけた事無かったんだ…」ケイティは今までの自分が恥ずかしく思え、そしてもう少し早く仲良くなれていたらどんなに毎日が楽しかっただろうと後悔した。
月日は流れピーターと出逢った日が愛おしい思い出になりかけた頃、そう!物事とはそう言う忘れたかけた頃が肝心!そんな時に限って不意にやってくる!ほんと厄介!
ケイティも完全無防備体制にその時はやってきた。
「お嬢さま~ケイティさま~」
メイドのケリーが大慌てでケイティのもとにやってきた。
「なに?慌ててどうしたの?」ケイティは薬草を摘んでいる手を止め、走って息が上がったメイドの背中をさすった。
「お…奥様が…奥様がお呼び…ですっ!」息も切れ切れやっとの思いで伝える
「お母様が……何かしら?」
「お客様がお見えとのことで、ぜひお嬢様にもご挨拶がしたいと…」落ち着いてきたケリーは額の汗を拭った。
「怪しいわね…」彼女はそう言うと「薬草摘みで忙しいから行けないと伝えて」と言って背中を向けて歩き始めた。
「そんなぁ~お嬢様~連れて行かないと怒られてしまいますぅ~」
泣きそうな声のケリー。
以前のケイティならそんな事、気にもならなかっただろう。
しかし今の彼女は違った。ピーターに出会え、皆と知り合えた事で大きく変わっていた。
「ごめんなさい、ケリー泣かないで。お母様の事だからまた結婚の話しかと…」一生懸命慰めるケイティに、彼女が手にしている物が目に留まった。
「ケリー…これは!?」震えているのが自分でもわかる。
「これは・・・」ケリーはここへ来るまでのいきさつを話しはじめた。
突然訪ねてきた客人は「お嬢様にも挨拶がしたい」と言ってきたが
「申し訳ないのですが娘は…あの子はちょっと変わっておりまして…残念ですか…お会いにはならないと思います…」
何とも言えない表現でケイティの父親がやんわりと断ったが、諦めきれない客人は
「そうですか…それでしたらせめてこの贈り物だけでもお渡しして頂きたいのですが」
と、これを手渡したそうだ。
ケイティは目を疑った。
でも見間違えるはずはない!そんな事はない!
だって頭からすっぽりかぶりずっと包まれていたあのブランケット!
少しだけ色褪せていたが見事な刺繍、暖かそうな生地。
「彼だわ!!」
急にケイティが叫んだので驚いたケリーは泣き出した。




