隊長
「駄目だ!ダメだ!絶対にだめだ!」
隊の訓練の邪魔をされたジェームスは怒っていた。それもかなり怒っていた。
端正な顔立ちをした彼が怒るとそれはそれは怖かった。
「そう言わずに頼むよ~、お嬢様は本気なんだ!そして俺達も本気なんだ!」
何が本気なのかわからないが、どんなに頼んでも首を縦には振らず「男でも剣を扱うのは容易いことではない!それを女に教える!?冗談も休み休み言え!」ジェームスは遠くでこちらを見ているケイティを睨みつけた。
「女じゃない!お嬢様だ!」デニスとマイルズは声をあわせた。
「馬鹿らしい!俺は行くぞ!」呆れたジェームスが隊へ戻ろうとした時
「…本当にいいのか」
コック長のマイルズがすれ違いざまに呟いた。
「どう言う意味だ…」今にも取っ組み合いになりそうな距離で二人は睨み合う。
「本気で俺を怒らせたいのか?」ジェームスが剣柄を握った瞬間
「今日はシチューだ」
夕食のメニューだろうか?
マイルズはジェームスから目をそらし彼の後ろでこちらの状況を心配そうに見てる護衛隊にニコッと笑って見せた。通称《悪魔の微笑み》
「だから何だ!シチューが?何の意味があるんだ!?」ジェームスはマイルズに詰め寄る。
「俺は料理長だ、料理の権限は俺にある」
ジェームスの顔が怒りで赤くなった「で!?その料理長様がなんの意味があるんだ!?」
「俺は料理長だ、料理の権限は俺にある。だから料理の配分も俺に権限がある」マイルズは腕を組み何故かジェームスではなく護衛隊へ話しかけ始めた。
「今日の夕食はシチューだ。とても良い肉が入っている。…………肉の入って無いシチューは寂しいぞ~」
護衛隊の顔が青ざめていくのが遠くにいるケイティにもわかった
「貴様!脅すきか!?」ジェームスがマイルズに掴みかかるが、マイルズも負ずに叫ぶ「ジャガイモも無し!!パンも無し!!」
これにはさすがに皆慌て隊長を止めに入る。
「一日くらい食べなくとも我が隊は…ぐっ!」叫ぶジェームスの口を隊の皆が必死に防ぐ、そして「我々と一緒に練習しましょう!明日から!この時間にこの場所で!」
その言葉を聞いたデニスとマイルズはケイティの方を向き両手で頭の上に大きく輪ををつくって見せた。
「OKってことかしら!?やったわ!」ケイティは喜んだ。
押さえ込みに来る隊の若者を次々と投げ倒す隊長ジェームス、投げられても投げられてもシチューの為何度も向かっていく若者達。
「ジェームス様ありがとうございます!皆さんもありがと~!明日からよろしくお願いしま~す!!」ケイティは叫び頭を下げた。
美人に礼を言われ若者達は嬉しく口の左側がピクピクした。
「さっさと俺の上から降りろ!!」
隊長ジェームスだけは1人イライラしていた
「まったく!何故こんな面倒な事になるのだ!」
不本意でも約束は約束。
汚れた服を叩きながら「ふん!どうせいつもの気まぐれだろう…おらぁ!さっさと剣を構え並べ!!」皆を怒鳴りつけた。
その日の隊の訓練は今までで一番ハードなものになった。




